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巻の七、来ないなら、先手必勝、いざ征かん!
「――どうしたの、梨花」
夜遅く、暗く静かな回廊。
そこで「偶然!」出くわしたことに、明順が驚きの声を上げる。
「少し、眠れなくて……」
言って、解きっぱなしの髪をファサッと肩から払いのける。
「もしかして、僕の音がうるさかった?」
「い、いえ。そういうわけじゃないわ」
しまった。
寝てたのに、アンタがうるさくって起きちゃったじゃない。
文句を言いに来たみたいに見えたか。
夜着一枚のわたし。どこからどう見ても、そういうふうにしか見えないかも。
「の、喉も乾いちゃったから。お水でも飲もうかと……」
よし!
とっさに考えた言い訳だけど。わたしの歩いて行こうとしてた方には、台盤所もある。嘘だけど、もっともらしい言い訳になった!
「そんなの。侍女にでも頼めばよかったのに」
「そ、そうね」
うぐ。
奥方自ら水を求めに行くなんて、おかしかったか。普通は、リンリンと鈴でも鳴らして侍女を呼んで、「お水、持ってきて頂戴」だもんねえ。
「それに……」
目の前に立つ、明順が動く。
嘘の浅さに視線をそらしてたら、近づいてきた明順に抱かれ――え?
「そんなはだけた夜着で、一人歩くなんて。家のなかでも不用心だよ」
抱かれたと思ったのは、彼にではなく。彼の上着に。
彼は、脱いだ上着を、夜着がはだけてあられもない格好のわたしにかけてくれただけ。彼の温もりと香りの染みついた上着と、わたしにかけるために近づいたことで、「抱きしめられた」と勘違いしてしまっただけ。
(なによ、作戦は失敗?)
夜着を「ワザと」はだけさせたのも。髪をかき上げてそれを強調したのも。
なにより、こうして「眠れなくて」って夜着一枚で回廊を歩いて、彼にバッタリ偶然(を装って)出会ったのも。
(全部、全部作戦だったのにぃぃっ!)
明順をムラムラさせて、夫婦のことをさせちゃおう作戦。
美人じゃないけど、女性の胸の谷間とか、夜着から透けて見える肢体を見れば、もしかしたら、そういう気になるかもよ? 大作戦。――だったのに!
(なによ、そのすました顔!)
ムラムラの「ム」の字も見えない。
それどころか。
「今日はもう遅い。早く寝なさい」
わたしが室に帰るのを見届けたいのか。作戦失敗でトボトボ歩くわたしに随伴する明順。
これが。これが、「もう我慢できない。キミが欲しい」なら、どんなによかったか。
でもその場合、こんなつかず離れずで歩くんじゃなくて、口づけの一つもして、抱き上げて足早に室に向かうわよね。
(……ハア)
心のなかで、思いっきりため息を吐く。
こんなの、夫のやることじゃない。妹を気遣う兄のやること。(それか父)
(ねえ、そんなにわたしに魅力ない?)
こんなに前面に「女」を出してみたのに。どうしてアンタは、そんな涼しい顔をしてるわけ?
隣を歩く、残酷なほど優しい横顔。
(気遣ってくれるのはうれしいけど、そうじゃないのよ、朴念仁!)
朴念仁! 唐変木! 見当違いのトンチキ野郎!
優しければそれでヨシ! じゃないのよ!
うつむくと泣きそう。だから、グッと前だけを見て歩く。
「――じゃあ。お水は、侍女に持ってこさせるから。キミは温かくして休んでて」
「うん。ありがとう」
室の前に来ても。なかから玉鈴が扉を開けてくれても。わたしが一歩室に入っても。
彼は、扉が境界線、領土侵犯しちゃいけない! みたいな感じで立ち止まる。
(――侵犯しちゃいけない! じゃないわよ! ここは、アンタん家で、室はアンタの妻の場所なんだから、ズカズカ入ったっていいのよ!)
思ったけど、言葉にしない。
言って、「いや、そんなこと言われても。僕、キミを見ても勃たないんだ」とか、困り顔になられても、こっちが困るし。いや、そうなったら、泣くな、自分。涙と感情が爆発する自信ある。
「それじゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみなさい……」
いっしょに歩いた回廊を、一人戻っていく明順。
「――失敗でしたか」
「うん」
玉鈴の言葉に頷きながら、見えなくなるまで彼の背中を見送る。
作戦失敗。
彼は、一度もふり返らずに、回廊の先を曲がっていった。
「むずかしいもんね。男性を誘惑するって」
羽織ったままの上着を掴みながら、室の中に入る。
「彼、チロっとも欲情してくれなかったわ」
「梨花さま……」
キイっと、扉を閉めた玉鈴。心配そうな彼女の顔に、余計にいたたまれなくなる。
「まあ、いいわ。また作戦を考えるだけよ」
あの手がダメならこの手。この手もダメならその手。どの手でも使ってやるわ。
「梨花さま」
意を決したように、軽く喉を上下させた玉鈴が近づいてくる。
「もしなんでしたら、薬をご用意いたしましょうか?」
「薬?」
わたし、元気だけど?
「明順さまに盛るのですよ。さかってさかって、どうにもならないぐらいにギンギンになって、女を何度も抱かないといられないぐらいに滾らせる薬です」
「それって。媚薬?」
春本なんかじゃ、よく出てくる品物だけど。
男女のどっちかが飲んじゃって、「ダメ、治まらない!」ってなるやつ。ああいうのって、ホントに存在するの?
「ええ。薬がダメだと仰るなら、お香もございますが」
「なんと」
お香まで!
現実は小説より奇なり。というか、現実は小説よりスゴい。
「必要なら、ご用意いたしますが……」
「ダメよ。それは絶対にダメ!」
即答否定。却下よ、却下!
そんなので、ギンギンに滾らせて、「もう我慢できない」とかで抱かれても。夫婦になっても、全然うれしくない!
だって。
だって、それって、女なら、孔さえ開いてりゃ誰でもいい、突っ込んで気持ちよく出せれば、わたしじゃなくてもいいってことでしょ?
そんな、そんなモノみたいな扱いされて抱かれるのなら、一生抱かれないままのがマシ!
「ゴメン。わたしのこと思って言ってくれたのはわかるけど……」
ショボンとした玉鈴に、悪かったかなって思う。彼女は、わたしのことを案じて提案してくれただけなのに。
「もういいわ。今日はこのまま寝るわ」
「梨花さま」
「こんな遅くまでつき合ってもらって、ごめんね。玉鈴ももう休んで」
わざとらしく聞こえるかもだけど、それでも明るくサッパリと言いのける。言うだけじゃない。自分から、寝台に近づく。
「では、おやすみなさいませ」
「うん。おやすみ」
頭を下げ、玉鈴が室から出ていく。
パタリと閉じられた扉。その音を聴きながら、ジッと寝台を見下ろす。
本当なら、作戦が成功してたら、ここにはくんずほぐれつ身を絡め合って、ピンっときれいに張った敷布を乱して、ここでそういうことが始まる予定だったのに。その時のためにと、玉鈴に甘ったるい香を焚きしめておいてもらったのに。
窓から差し込む月明かりが照らす、青く染まった敷布。
(泣くな。泣いちゃダメ)
泣いたら絶対惨めになる。
「ウッ……、フッ……」
唇を噛みしめるけど、こらえきれなかった嗚咽が端から漏れた。
(明順のバカ!)
かけてくれた上着の温もり。優しさ。
すべてが憎らしい。
なのに。
なのに、どうしてか手離せない。離したくない。
このままずっと包まれていたい。
我慢しきれず、キツく上着を握りしめ、膝から床に崩れ落ちる。
相手にされないのに。優しくはしてくれるけど、それ以上のことはしてくれない。
(こんなの。こんなの後宮にいた時より、惨めだわ)
後宮なら。まあ、皇太子殿下に気に入られなかっただけよ、他にもそういう女性はいたし。気にすんな。ですむ。けど、今は明順の相手はわたし一人。なのに、相手にされないなんて。こんなふうに色仕掛けでも、なんの反応もしてくれないなんて。
部屋に満ちる青い光が、そんな惨めなわたしを照らした。
夜遅く、暗く静かな回廊。
そこで「偶然!」出くわしたことに、明順が驚きの声を上げる。
「少し、眠れなくて……」
言って、解きっぱなしの髪をファサッと肩から払いのける。
「もしかして、僕の音がうるさかった?」
「い、いえ。そういうわけじゃないわ」
しまった。
寝てたのに、アンタがうるさくって起きちゃったじゃない。
文句を言いに来たみたいに見えたか。
夜着一枚のわたし。どこからどう見ても、そういうふうにしか見えないかも。
「の、喉も乾いちゃったから。お水でも飲もうかと……」
よし!
とっさに考えた言い訳だけど。わたしの歩いて行こうとしてた方には、台盤所もある。嘘だけど、もっともらしい言い訳になった!
「そんなの。侍女にでも頼めばよかったのに」
「そ、そうね」
うぐ。
奥方自ら水を求めに行くなんて、おかしかったか。普通は、リンリンと鈴でも鳴らして侍女を呼んで、「お水、持ってきて頂戴」だもんねえ。
「それに……」
目の前に立つ、明順が動く。
嘘の浅さに視線をそらしてたら、近づいてきた明順に抱かれ――え?
「そんなはだけた夜着で、一人歩くなんて。家のなかでも不用心だよ」
抱かれたと思ったのは、彼にではなく。彼の上着に。
彼は、脱いだ上着を、夜着がはだけてあられもない格好のわたしにかけてくれただけ。彼の温もりと香りの染みついた上着と、わたしにかけるために近づいたことで、「抱きしめられた」と勘違いしてしまっただけ。
(なによ、作戦は失敗?)
夜着を「ワザと」はだけさせたのも。髪をかき上げてそれを強調したのも。
なにより、こうして「眠れなくて」って夜着一枚で回廊を歩いて、彼にバッタリ偶然(を装って)出会ったのも。
(全部、全部作戦だったのにぃぃっ!)
明順をムラムラさせて、夫婦のことをさせちゃおう作戦。
美人じゃないけど、女性の胸の谷間とか、夜着から透けて見える肢体を見れば、もしかしたら、そういう気になるかもよ? 大作戦。――だったのに!
(なによ、そのすました顔!)
ムラムラの「ム」の字も見えない。
それどころか。
「今日はもう遅い。早く寝なさい」
わたしが室に帰るのを見届けたいのか。作戦失敗でトボトボ歩くわたしに随伴する明順。
これが。これが、「もう我慢できない。キミが欲しい」なら、どんなによかったか。
でもその場合、こんなつかず離れずで歩くんじゃなくて、口づけの一つもして、抱き上げて足早に室に向かうわよね。
(……ハア)
心のなかで、思いっきりため息を吐く。
こんなの、夫のやることじゃない。妹を気遣う兄のやること。(それか父)
(ねえ、そんなにわたしに魅力ない?)
こんなに前面に「女」を出してみたのに。どうしてアンタは、そんな涼しい顔をしてるわけ?
隣を歩く、残酷なほど優しい横顔。
(気遣ってくれるのはうれしいけど、そうじゃないのよ、朴念仁!)
朴念仁! 唐変木! 見当違いのトンチキ野郎!
優しければそれでヨシ! じゃないのよ!
うつむくと泣きそう。だから、グッと前だけを見て歩く。
「――じゃあ。お水は、侍女に持ってこさせるから。キミは温かくして休んでて」
「うん。ありがとう」
室の前に来ても。なかから玉鈴が扉を開けてくれても。わたしが一歩室に入っても。
彼は、扉が境界線、領土侵犯しちゃいけない! みたいな感じで立ち止まる。
(――侵犯しちゃいけない! じゃないわよ! ここは、アンタん家で、室はアンタの妻の場所なんだから、ズカズカ入ったっていいのよ!)
思ったけど、言葉にしない。
言って、「いや、そんなこと言われても。僕、キミを見ても勃たないんだ」とか、困り顔になられても、こっちが困るし。いや、そうなったら、泣くな、自分。涙と感情が爆発する自信ある。
「それじゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみなさい……」
いっしょに歩いた回廊を、一人戻っていく明順。
「――失敗でしたか」
「うん」
玉鈴の言葉に頷きながら、見えなくなるまで彼の背中を見送る。
作戦失敗。
彼は、一度もふり返らずに、回廊の先を曲がっていった。
「むずかしいもんね。男性を誘惑するって」
羽織ったままの上着を掴みながら、室の中に入る。
「彼、チロっとも欲情してくれなかったわ」
「梨花さま……」
キイっと、扉を閉めた玉鈴。心配そうな彼女の顔に、余計にいたたまれなくなる。
「まあ、いいわ。また作戦を考えるだけよ」
あの手がダメならこの手。この手もダメならその手。どの手でも使ってやるわ。
「梨花さま」
意を決したように、軽く喉を上下させた玉鈴が近づいてくる。
「もしなんでしたら、薬をご用意いたしましょうか?」
「薬?」
わたし、元気だけど?
「明順さまに盛るのですよ。さかってさかって、どうにもならないぐらいにギンギンになって、女を何度も抱かないといられないぐらいに滾らせる薬です」
「それって。媚薬?」
春本なんかじゃ、よく出てくる品物だけど。
男女のどっちかが飲んじゃって、「ダメ、治まらない!」ってなるやつ。ああいうのって、ホントに存在するの?
「ええ。薬がダメだと仰るなら、お香もございますが」
「なんと」
お香まで!
現実は小説より奇なり。というか、現実は小説よりスゴい。
「必要なら、ご用意いたしますが……」
「ダメよ。それは絶対にダメ!」
即答否定。却下よ、却下!
そんなので、ギンギンに滾らせて、「もう我慢できない」とかで抱かれても。夫婦になっても、全然うれしくない!
だって。
だって、それって、女なら、孔さえ開いてりゃ誰でもいい、突っ込んで気持ちよく出せれば、わたしじゃなくてもいいってことでしょ?
そんな、そんなモノみたいな扱いされて抱かれるのなら、一生抱かれないままのがマシ!
「ゴメン。わたしのこと思って言ってくれたのはわかるけど……」
ショボンとした玉鈴に、悪かったかなって思う。彼女は、わたしのことを案じて提案してくれただけなのに。
「もういいわ。今日はこのまま寝るわ」
「梨花さま」
「こんな遅くまでつき合ってもらって、ごめんね。玉鈴ももう休んで」
わざとらしく聞こえるかもだけど、それでも明るくサッパリと言いのける。言うだけじゃない。自分から、寝台に近づく。
「では、おやすみなさいませ」
「うん。おやすみ」
頭を下げ、玉鈴が室から出ていく。
パタリと閉じられた扉。その音を聴きながら、ジッと寝台を見下ろす。
本当なら、作戦が成功してたら、ここにはくんずほぐれつ身を絡め合って、ピンっときれいに張った敷布を乱して、ここでそういうことが始まる予定だったのに。その時のためにと、玉鈴に甘ったるい香を焚きしめておいてもらったのに。
窓から差し込む月明かりが照らす、青く染まった敷布。
(泣くな。泣いちゃダメ)
泣いたら絶対惨めになる。
「ウッ……、フッ……」
唇を噛みしめるけど、こらえきれなかった嗚咽が端から漏れた。
(明順のバカ!)
かけてくれた上着の温もり。優しさ。
すべてが憎らしい。
なのに。
なのに、どうしてか手離せない。離したくない。
このままずっと包まれていたい。
我慢しきれず、キツく上着を握りしめ、膝から床に崩れ落ちる。
相手にされないのに。優しくはしてくれるけど、それ以上のことはしてくれない。
(こんなの。こんなの後宮にいた時より、惨めだわ)
後宮なら。まあ、皇太子殿下に気に入られなかっただけよ、他にもそういう女性はいたし。気にすんな。ですむ。けど、今は明順の相手はわたし一人。なのに、相手にされないなんて。こんなふうに色仕掛けでも、なんの反応もしてくれないなんて。
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