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巻の八、昔語りを少しばかり
「あのときもキミは、必死だったよね。僕が死んじゃう、誰か! って」
話しながら思い出したのか。四阿で、向かいの席についた明順が、クスクスと笑う。
「そ、そりゃあ。だって、わたしのせいで、アンタが池で溺れかけたんだし」
「だからって、自分まで池に飛び込むのはどうかと思うけど?」
「だって。アンタが沈んじゃうって思ったから……」
だから、誰かを呼ぶのではなく、自分から池に飛び込んだ。結果は……まあ、二人仲良くアップアップして。最終的に父さまに「無事で良かった」とオイオイ泣きつかれ、兄さまたちからは、「無茶をするな」とメチャクチャ叱られた。
「キミまで溺れるようなことして、どうするのさ」
「そ、それはぁ……」
返答できなくて、どういう顔したらいいのかわかんなくて、プウっと頬を膨らます。
「そうかと思えば、キミは、僕を鍛えるんだって、無茶苦茶に木刀振り回して、殴りかかってきて」
「そ、それは……。あ、アンタを鍛えたかったのよ!」
武人の家に生まれたくせに、ウチに遊びに来ても、書ばかり読んでた明順。
兄さまと遊ぶためとウチに来たのに。目的は兄さまではなく、父さまが持っていた書を読むことだった。
年の離れた兄君が南北の守護を担う将軍に任じられても、「兄上はスゴいね~」で、また書を読みふける。そんな明順が歯がゆかった。
「でも。書を読んでる僕の背後から、いきなりポカーンはないと思うけど?」
ゔゔ。
仰るとおりです。
夢中になって書を読んでる人に、後ろから木刀ポカーンは、卑怯でしかない。
「だけど、そんなキミのおかげで、僕は白虎将軍の地位に就くことができた」
「そうなの?」
「そうなの。今の僕はキミのおかげなんだよ」
ニコッと、さっきまでの笑いとは違う笑顔が向けられる。
「そう! そ、それは良かったわ! 鍛えたかいがあったというものよ!」
フンス!
誰か、こういう時に見せるのに正解の顔、誰か教えて!
可愛げなく鼻息鳴らすわたし、絶対間違ってると思うの!
――少し話さないか。
今朝、声をかけてきたのは明順の方。
今日は時間ができたとかなんとかで、庭にある四阿でお茶をしようと誘われた。
昨日のはしたない姿のこと、怒られたりする? あんな格好でうろつくなど、呉家の嫁として失格だ! みたいな。
恐るおそる、彼の後をついていったわたし。
器に温かいお茶を注がれて。さあ、いよいよお説教か! と身を固くしたところで彼が話しだしたのが、「昔、こんなことあったよね」な懐かし過去話。
わたしが池に落とした鞠を拾おうとして、池に落ちた明順と、アップアップしてる彼を見て、思わず助けようと飛び込んだわたしまでアップアップした話とか。彼を鍛えたくて、木刀を振り回してぶん殴った話とか。
過去を、懐かしい出来事として話すだけのお茶会。
それが悪いわけじゃない。怒られなくて、「こんな女は離縁だ、家に帰れ!」じゃなくてホッとしてるんだけど。
(じゃあ、なんのために呼び出してきたの?)
疑問が残る。
今日が暇になったからって。
ただお茶飲んで、昔を懐かしむだけ?
キミに鍛えられたから、今の僕があるんだ、ありがとう?
それだけのために、わざわざわたしを誘いに来たの?
あの頃と違って、裳が似合いそうな雰囲気はどこにも残ってない。あんなに白かった肌はよく日に焼けて男らしくなった体格によく似合っている。
鬢までキレイに撫でつけられた髪。わたしみたいな簪よりも、墨色の幞頭が様になってる。
立派に。立派に大人の男になった明順。昔とは全然違う。
わたしの乳房が膨らみ、月のものが訪れるようになったのと同じように、彼にも男性としての変化が起きている。
向かいに座るのは、懐かしい(恥ずかしい?)思い出話に花咲かすだけの幼馴染じゃない。立派な成人男性。見るたびに、それを嫌でも意識させられる。
「どうしたの、梨花?」
黙り込んでしまったわたしを、心配そうに見てくる明順。その顔は、昔と変わらず、「大丈夫? 梨花」なんだけど。
「寒いよね、ここ」
へ? 寒い?
まあ、庭にポツンと建ってる四阿だし? 風はピューピュー吹いてるけど、寒いかって訊かれると、どうなんでしょうと答えたい。
赤く染まった葉も落ちて、枝だけになった木立。下草も枯れて全体的に茶色い庭。
四阿に向かうことはわかってから、玉鈴が温かい格好をさせてくれたし、今は冷めちゃったけど、あったかいお茶も用意されてたし。
心配されるほど寒いわけじゃないけどな。
というか、何の話されるんだろうで、全然そういうの感じてなかった。
今、「寒いよね」って訊かれて、ようやく寒さを実感したっていうか。
「――戻ろうか」
先に立ち上がった明順。
また、サッと上着を脱ぎかけるけど。
「大丈夫よ。そこまで寒くないし」
わたしにかけてくれようとしたんだろう。それをあわてて止める。
「それに、上着脱いだら、アンタが寒いでしょ? 風邪ひくわよ」
「僕は別に……」
「『僕は別に』じゃないわよ。池に落っこちて、アンタだけ風邪ひいたりしてたじゃない」
鞠を拾おうとして池に落っこちて。それを助けようと、わたしも落っこちて。
でも、風邪をひいて寝込んだのは、明順だけ。わたしは、翌日もケロッとして、兄さまたちと遊んでた。
「わたしをいたわってくれるのはうれしいけど。アンタは将軍っていう大事な体なんだから、もっと気をつけてよね」
プンスカ。
心配してるんだけど、心配してるってことを知られるのが恥ずかしくって、虚勢をはる。ああ、わたしのバカ。
クスッ。
(ふえ?)
今、笑った?
聴こえた音に、驚き、彼を見る。
「いや、ゴメン。梨花、変わってないなって思ってさ」
「変わってない?」
「うん。あのときも、コッソリお見舞いに来てくれたでしょ? お見舞いに来て、なれない手つきで、僕の額を冷やしてくれた。全然絞ってない布をビチャっと額に載っけてね」
ゔゔ。
そう。
あの時、「風邪ひかせて悪かったな~」って思ったから、彼の家にお見舞いに行った。怒られると思ったから、彼の乳母が離れたスキに忍び込んで。
寝てる明順が辛そうで。少しでも楽になるようにしてあげたくて。
でも、濡らした布を絞るって考えもなくて、寝台脇に置いてあった水に布を浸しただけで、そのままビチョ、ベチョンって額に載せた。
まあ、その後、戻ってきた乳母に、思いっきり叱られたけど。「坊ちゃまの風邪を悪化させるつもりか」って。
「フフッ。別にあの時のこと、叱るつもりはないよ」
そうなの?
叱られる、もしくは嫌味を言われると身構えた分、なんか拍子抜け。
「あの時は……。うれしかったんだ」
「うれしかった?」
あのビチョ、ベチョンが?
「乳母はもちろん、僕のことを心配してくれてたけど。家族と乳母以外で、あんなふうに心配してくれるのは、梨花だけだったから」
「そ、それは……」
自分が蹴り上げた鞠が池に落ちて。それを拾おうとして明順が池に落ちて。その結果ひいた風邪だし。悪いなって思ったから看病しようとしただけで……。
「そういう、優しさっていうのかな。それが変わってなくて、いいなって思ったんだ」
そ、そうなの?
話し終えて、ニコッと笑ってくれた明順。
なんだろう。
気の弱い明順の、ヘラヘラ笑う顔は、子どもの頃から何度も見てきたし、それが普通、明順の顔っていったらこれでしょうって思ってたんだけど。
なんでだろう。
胸がキュッと締まって、直視できない。
話しながら思い出したのか。四阿で、向かいの席についた明順が、クスクスと笑う。
「そ、そりゃあ。だって、わたしのせいで、アンタが池で溺れかけたんだし」
「だからって、自分まで池に飛び込むのはどうかと思うけど?」
「だって。アンタが沈んじゃうって思ったから……」
だから、誰かを呼ぶのではなく、自分から池に飛び込んだ。結果は……まあ、二人仲良くアップアップして。最終的に父さまに「無事で良かった」とオイオイ泣きつかれ、兄さまたちからは、「無茶をするな」とメチャクチャ叱られた。
「キミまで溺れるようなことして、どうするのさ」
「そ、それはぁ……」
返答できなくて、どういう顔したらいいのかわかんなくて、プウっと頬を膨らます。
「そうかと思えば、キミは、僕を鍛えるんだって、無茶苦茶に木刀振り回して、殴りかかってきて」
「そ、それは……。あ、アンタを鍛えたかったのよ!」
武人の家に生まれたくせに、ウチに遊びに来ても、書ばかり読んでた明順。
兄さまと遊ぶためとウチに来たのに。目的は兄さまではなく、父さまが持っていた書を読むことだった。
年の離れた兄君が南北の守護を担う将軍に任じられても、「兄上はスゴいね~」で、また書を読みふける。そんな明順が歯がゆかった。
「でも。書を読んでる僕の背後から、いきなりポカーンはないと思うけど?」
ゔゔ。
仰るとおりです。
夢中になって書を読んでる人に、後ろから木刀ポカーンは、卑怯でしかない。
「だけど、そんなキミのおかげで、僕は白虎将軍の地位に就くことができた」
「そうなの?」
「そうなの。今の僕はキミのおかげなんだよ」
ニコッと、さっきまでの笑いとは違う笑顔が向けられる。
「そう! そ、それは良かったわ! 鍛えたかいがあったというものよ!」
フンス!
誰か、こういう時に見せるのに正解の顔、誰か教えて!
可愛げなく鼻息鳴らすわたし、絶対間違ってると思うの!
――少し話さないか。
今朝、声をかけてきたのは明順の方。
今日は時間ができたとかなんとかで、庭にある四阿でお茶をしようと誘われた。
昨日のはしたない姿のこと、怒られたりする? あんな格好でうろつくなど、呉家の嫁として失格だ! みたいな。
恐るおそる、彼の後をついていったわたし。
器に温かいお茶を注がれて。さあ、いよいよお説教か! と身を固くしたところで彼が話しだしたのが、「昔、こんなことあったよね」な懐かし過去話。
わたしが池に落とした鞠を拾おうとして、池に落ちた明順と、アップアップしてる彼を見て、思わず助けようと飛び込んだわたしまでアップアップした話とか。彼を鍛えたくて、木刀を振り回してぶん殴った話とか。
過去を、懐かしい出来事として話すだけのお茶会。
それが悪いわけじゃない。怒られなくて、「こんな女は離縁だ、家に帰れ!」じゃなくてホッとしてるんだけど。
(じゃあ、なんのために呼び出してきたの?)
疑問が残る。
今日が暇になったからって。
ただお茶飲んで、昔を懐かしむだけ?
キミに鍛えられたから、今の僕があるんだ、ありがとう?
それだけのために、わざわざわたしを誘いに来たの?
あの頃と違って、裳が似合いそうな雰囲気はどこにも残ってない。あんなに白かった肌はよく日に焼けて男らしくなった体格によく似合っている。
鬢までキレイに撫でつけられた髪。わたしみたいな簪よりも、墨色の幞頭が様になってる。
立派に。立派に大人の男になった明順。昔とは全然違う。
わたしの乳房が膨らみ、月のものが訪れるようになったのと同じように、彼にも男性としての変化が起きている。
向かいに座るのは、懐かしい(恥ずかしい?)思い出話に花咲かすだけの幼馴染じゃない。立派な成人男性。見るたびに、それを嫌でも意識させられる。
「どうしたの、梨花?」
黙り込んでしまったわたしを、心配そうに見てくる明順。その顔は、昔と変わらず、「大丈夫? 梨花」なんだけど。
「寒いよね、ここ」
へ? 寒い?
まあ、庭にポツンと建ってる四阿だし? 風はピューピュー吹いてるけど、寒いかって訊かれると、どうなんでしょうと答えたい。
赤く染まった葉も落ちて、枝だけになった木立。下草も枯れて全体的に茶色い庭。
四阿に向かうことはわかってから、玉鈴が温かい格好をさせてくれたし、今は冷めちゃったけど、あったかいお茶も用意されてたし。
心配されるほど寒いわけじゃないけどな。
というか、何の話されるんだろうで、全然そういうの感じてなかった。
今、「寒いよね」って訊かれて、ようやく寒さを実感したっていうか。
「――戻ろうか」
先に立ち上がった明順。
また、サッと上着を脱ぎかけるけど。
「大丈夫よ。そこまで寒くないし」
わたしにかけてくれようとしたんだろう。それをあわてて止める。
「それに、上着脱いだら、アンタが寒いでしょ? 風邪ひくわよ」
「僕は別に……」
「『僕は別に』じゃないわよ。池に落っこちて、アンタだけ風邪ひいたりしてたじゃない」
鞠を拾おうとして池に落っこちて。それを助けようと、わたしも落っこちて。
でも、風邪をひいて寝込んだのは、明順だけ。わたしは、翌日もケロッとして、兄さまたちと遊んでた。
「わたしをいたわってくれるのはうれしいけど。アンタは将軍っていう大事な体なんだから、もっと気をつけてよね」
プンスカ。
心配してるんだけど、心配してるってことを知られるのが恥ずかしくって、虚勢をはる。ああ、わたしのバカ。
クスッ。
(ふえ?)
今、笑った?
聴こえた音に、驚き、彼を見る。
「いや、ゴメン。梨花、変わってないなって思ってさ」
「変わってない?」
「うん。あのときも、コッソリお見舞いに来てくれたでしょ? お見舞いに来て、なれない手つきで、僕の額を冷やしてくれた。全然絞ってない布をビチャっと額に載っけてね」
ゔゔ。
そう。
あの時、「風邪ひかせて悪かったな~」って思ったから、彼の家にお見舞いに行った。怒られると思ったから、彼の乳母が離れたスキに忍び込んで。
寝てる明順が辛そうで。少しでも楽になるようにしてあげたくて。
でも、濡らした布を絞るって考えもなくて、寝台脇に置いてあった水に布を浸しただけで、そのままビチョ、ベチョンって額に載せた。
まあ、その後、戻ってきた乳母に、思いっきり叱られたけど。「坊ちゃまの風邪を悪化させるつもりか」って。
「フフッ。別にあの時のこと、叱るつもりはないよ」
そうなの?
叱られる、もしくは嫌味を言われると身構えた分、なんか拍子抜け。
「あの時は……。うれしかったんだ」
「うれしかった?」
あのビチョ、ベチョンが?
「乳母はもちろん、僕のことを心配してくれてたけど。家族と乳母以外で、あんなふうに心配してくれるのは、梨花だけだったから」
「そ、それは……」
自分が蹴り上げた鞠が池に落ちて。それを拾おうとして明順が池に落ちて。その結果ひいた風邪だし。悪いなって思ったから看病しようとしただけで……。
「そういう、優しさっていうのかな。それが変わってなくて、いいなって思ったんだ」
そ、そうなの?
話し終えて、ニコッと笑ってくれた明順。
なんだろう。
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