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巻の二十、タガの外れた溺愛は重い
「――梨花。どうしたの?」
わたしが動いたこと。腕を枕として貸してくれていた明順にも伝わったらしい。
わたしと同じで眠っていたはずの彼。眠そうな声で問いかけてくる。
「なんでもない。ちょっと目が覚めただけ」
言って、モゾモゾと身を動かす。
窓から差し込む月明かり。その明かりに照らされた、彼の端正な寝顔を見ようとしていたことは内緒。
いつの間に月が昇るような夜になっていたのか。
散々愛し合って、身をつなげて。
疲れて二人、衣を着直すことすら大儀で、そのまま寄り添って眠ってしまっていた。
(これ、家に帰ったら、父さまも兄さまも、驚くだろうなあ)
いきなり妹がいなくなったと思ったら、「あっちで夫婦になってきました~」だもんなあ。義姉さまたちは、「それでっ? 明順さまとの初めてはどうだったのっ!?」みたな勢いで、訊きに来そうだけど。家の男どもはなあ。
(ま、いっか)
なるようになれ。
というか、わたしたち夫婦なんだし。そういうことして仲直りしても悪くないわけだし。
考えるのを止めにして、彼の腕に頭を載せ直す。
「わたし、幸せだなあって思っただけ」
「幸せ?」
「うん。こうしてるとね。わたしのなにもかも、明順に抱かれてる、包まれてる感じがして、幸せなの」
「梨花……」
彼の肌から伝わる熱。鼓動の音。
寝台にも染みついてる彼の匂い。
彼の寝台の上。こうして寄り添っていると、彼のすべてにスッポリ収まってるような感覚になる。スッポリ収まって、守られて。そして、二人の熱で溶けて一つになっていくような感覚。
「夫婦って素敵よね。こうしていっしょにいても、誰にも文句言われない」
モゾモゾ。ムギュ。
わたしの腕では抱えきれないけど、それでも、彼を抱きしめる。
「寒い時は、とっても幸せ」
「でも、逆に暑い日は辛いかも」
「もう! そういうことは言わない!」
真面目にツッコんできた明順を怒る。――って、あれ?
「ねえ、これ、何?」
彼の腕や、肩のあたりに、普通とは違う肌の色を見つける。真っ直ぐだったり、やや歪んでいたり。でもどれも同じなのは、周りの肌より薄い色の、ちょっと盛り上がったりしてる場所。
「それ? 傷の跡だよ」
「傷っ!? 明順怪我したのっ!?」
バッと上掛けを弾き飛ばし、横たわる彼の体を見る。
腕や肩だけじゃない。脇腹、太もも、胸にもその跡があった。
「――寒いよ、梨花」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!」
いつの間にこんなに傷を?
笑う明順を叱りつける。
傷のなかには、太く雷のような形に白く色が抜けている箇所もある。それも胸の上に。
こんなの、絶対ヒドい怪我だったはず。それこそ生死の境を彷徨うような。
「大したことないよ」
「大したことあるわよ! バカ!」
どうして?
どうしてこんな傷……。どうしてこんなにたくさん……。
「将軍になるためには、それだけの戦功も必要だからね」
「え?」
「僕にもう少し剣術の腕があれば、負わなかった傷なんだけど。仕方ないよね」
フフッと笑った明順。
(そういえば。後宮に入ったわたしを下賜されるように、戦功を立てたって言ってた)
戦功を立てれば、もしかしたら後宮に入った女を報奨として下賜されるかもしれない。
ずっとむかしから、わたしを好きでいてくれた彼。
もしかしたら、この傷は、わたしのために……。
「だから。そんな顔しないでって、梨花。こんな傷、今はなんともないし、痛みもないんだから」
「明順……」
「これはね、キミを得るためについた、名誉の負傷だよ。まあ、将軍ならカッコよく、父のように傷跡一つない体でいたかったけど。こればかりは仕方ないよね」
目が熱くなってくるわたしに、上半身を起こした彼が軽く言う。
「だから、泣かない。キミにそうして泣かれると、怪我をしてしまうような軟弱な自分を責めたくなる」
「もうっ……!」
「でもね。僕、背中には傷はないんだ」
ホラ。
彼が滑らかな背中を見せてくれる。
大きくてたくましい背中だけど、その肌はとてもキレイだ。
「僕が逃げなかった証拠。敵に背を向けなかった証だよ」
「明順……」
その背中に、そっと手を伸ばす。
手だけじゃない。
「ちょっ! 梨花っ!?」
少し張った肩甲骨に、無駄な肉のない肩に。
チュッ、チュッと口づけを落としていく。
「――っ!」
途中、ビクンッと彼の体が揺れた。
「ご、ゴメン。痛かった?」
そこでようやく気づく。背中に全く傷がないわけじゃないことに。
「大丈夫。ちょっと驚いただけ」
ハハッと、情けなさそうに彼が眉を寄せて笑うけど。
(これって、わたしがつけた傷だよね?)
首の根元から肩にかけて。いくつもついてる赤い筋。
これは、戦で受けた傷じゃない。わたしが、快感に耐えられなくて引っ掻いた傷だ。
血こそ流れてないけど、これ、結構痛そう。お風呂に入ったら、絶対シミる。地味に嫌な攻撃。
(――ゴメン)
コツンと彼の背中に額をぶつける。
きっと言葉にして謝罪しても受け入れてくれないだろうから。こうして触れることで、思ってることが伝わればいい。
「梨花」
彼がふり向く。
彼は優しいから、こんなぐらい大した事ないよって笑うんだ。そうやって、わたしを甘やかすんだ。
いつだってそう。
わたしの鞠を取ろうとして池に落ちたときも。梨花は悪くない、悪いのは池に落ちた自分だってくり返し言ってた。
(一度ぐらい、お前のせいだ、どうしてくれるんだって怒ってくれてもいいのに)
わたしの旦那さまは、甘やかし上手の叱り下手。
今だって、その傷、絶対シカシカと痛いだろうに。――って。
「え?」
伸びてきた手。掴まれた腰。
「ええっ!?」
グルンと回った視界。気づいたら寝台の上で、四つん這いになってる体。
「えっ!? ちょっ……!」
掴まれたお尻。その割れ目に沿うように、擦りつけられる硬く熱いもの。
「アアッ!」
グププ。
それが、わたしの膣へと侵入してくる。
「ゴメンね、梨花。キミは初めてなんだし、我慢しようと思ってたんだけど……」
「ンヒッ、アッ、そっ……んなっ、アアッ」
隘路を無理やり押し広げて挿ってきた、それ。
もうすでに破瓜はすませてるからか。二度目のそれは痛くない。痛くないけど。
「ンっ、ヒッ、ア……、ア……」
こんなにやすやすと咥え込めるなんて! わたしの膣、どうなってんのよ!
「キミがかわいすぎるのが、いけない。僕を、簡単に煽ってくる」
「あっ、煽ってなんかっ、アッ、アアッ!」
ズチュ、ズチュ、ズチュ。
グチョ、グチュ。
なかをこすられるたび、動かれるたび、繋がった部分からいやらしい音がする。
それだけじゃない。
「アッ、そこっ、そこぉっ……」
「スゴい。中がものすごくビクビクしてる。……ここ? 気持ちいいの?」
「うっ、うんっ! だからっ、アアッ……!」
体勢が違うせいか、最初と違う場所に、切っ先が当たる。
突き上げられるたび、そこから痺れるような、重い快感が背中を伝って頭に響いてくる。
喘ぐことに必死な口は、閉じることもできなくて。溢れた唾液が顎を伝って敷布にシミを作る。
「ダメッ、ダメェッ……」
「でも、『もっとして』って、腰が揺れてる。僕のを追いかけるように、なかが蠢いてる」
「そっ、そんなことぉ、アア……ッ!」
知らないっ!
知らない、知らない、知らないっ!
わたし、こんな苦しいぐらい気持ちいいことなんて知らないっ!
「ンッ、ヒッ、アッ、アアッ、明順、明順っ!」
待って!
またあの、頭のなかが真っ白になるような大きな波が来る!
逃げたい。
「アヒッ!」
「ダメだよ。逃げないで。終われなくなる」
グッと掴まれ、引きずり戻された腰。そして。
「アアッ、そんなにっ、アッ、アアッ……」
気持ちいいといったその場所に、ゴリッ、ドチュッと容赦なく切っ先がぶつかってくる。
「もっ、もうダメっ、限界っ!」
「うん、僕も、だっ! いっしょにイこ?」
彼の声に余裕がない。でも、そんなことに気づける余裕はもっとなくて。
「アッ、アア――ッ!」
「グッ……!」
襲った快感に、絶叫する。彼も、腰を押しつけ、くぐった声を漏らす。
ドクドクと精が迸る。わたしのなかに、熱く。満たすように。
(気持ちいい……)
これで子が授かるのかどうかは知らない。
けど、こうして注がれることの幸せを、わたしは覚えた。
彼に与えられた快楽のなかで、ゆったりとたゆたう。
「ンッ!」
のに、ビクンと体が快楽の海から戻って来る。
「え? ちょっ、明順っ!」
体が震えたのは、繋がりを解かないまま、彼がわたしの首筋に口づけしたから。
「お返し」
「お返しって、アッ、ンッ……!」
「梨花の背中って、キレイだよね。僕のよりきっと何倍も」
「アッ、ヤッ、そこっ……! 噛んじゃっ、アアッ!」
首筋、肩。彼の唇の届く範囲を舐められ、吸われ、噛まれて。
「ヒッ、アッ、アアァ……」
穏やかになりかけてた快楽が、また激しく波立ち始める。胸とか、膣とは違う、ゾワゾワするような快楽。
それに。
「やっぱり梨花はずるい。色っぽくて、かわいくて。何度でも僕を煽ってくる」
煽ってない! 全然煽ってないのにっ!
「アッ……!」
ズチュ。グチュ。
わたしのなかで、質量を取り戻した彼のイチモツが動き出す。
あんなに出したのにっ! また、大きくなれるわけっ!?
「次は、梨花の顔を見ながらイきたいな。蕩けたキミの顔が見たい」
グルっと、仰向けに直されたわたしの体。でも、貫くことは止めてくれなくて。
「アッ、明順、明順ッ!」
わたし、このままじゃ、快楽の海で溺れ死んじゃうっ!
「梨花」
抱きしめてはくれるけど、わたしを犯す律動は止まらない。
「かわいい、かわいい僕の梨花。やっと手に入れた、僕の奥さん」
コチュ、コチュ。
腰を揺らしながら、彼が囁く。
「キミが後宮に入ったと聞いて、僕は絶望と嫉妬で気が狂うかと思った。キミを手に入れられる皇太子殿下を羨み、呪いそうになったよ」
「明順……」
「だから、こうしてキミを手に入れて。こうして交わって。今の僕は、とても幸せなんだ」
それは、わたしも同じ。
家のために仕方なく後宮に入って。でも要らないって捨てられて。
皇太子が好きだったわけじゃない。けど、辛かった。悲しかった。
でも、今はアナタに愛されて、これ以上ないってぐらいの幸せを実感してる。後宮を追い出されて良かったと思ってる。
「わたしも、幸せよ?」
「梨花」
「きっと、世界中の誰よりも幸せ。アナタに愛されて。わたし以上に幸せな人は、いないんじゃないかな」
「……うれしいこと、言ってくれるね」
わたしを抱きしめる腕を解き、彼が身を起こす。
「キミは、僕をどこまで溺れさせるつもりなの?」
「え? アッ、アアッ……」
ドチュドチュと激しく腰を動かされる。
「こんなに繋がって。精を吐き出しても、まだキミを求める。キミを愛さずにいられないほど、キミに溺れてる」
「アッ、そ、それはっ、わたしも、アアッ、ンアッ……、同、じっ!」
激しいと、少し辛いけど。でも「やめて」とは言わない。
愛されて、愛されて、愛されて。
わたしも、アナタに溺れてる。苦しいほどの幸せで満たされてる。
「梨花」
繋がる気持ちよさに、酩酊するように、腰を動かす彼。受け止めるわたしも、今度ははっきり自覚できるぐらい、腰を揺らして彼を求める。
「梨花、梨花、梨花ッ……!」
律動が乱れて、わたしを呼ぶ声も荒れる。
「明順、明順ッ……!」
わたしも必死に彼を呼ぶ。
もう、なにもかもグチャグチャだ。
心も体も、なにもかも。
「アッ、イッ……!」
奥を強く穿たれ、その衝撃に背を反らす。
「クッ……!」
わたしの腰を掴んだ彼。突き上げ、精を迸らせる。
「ア、ヒ……、ア、ア……」
わたしのなかを、熱く満たす。
ドクドクとほしかったものを注ぎ込まれ、体が何度もヒクヒクと震えた。
「愛してるわ、明順……」
恍惚と、深く満足したような声で告げる。
「僕もだよ、梨花」
身を繋げたまま、彼が優しい眼差しと、包容をくれる。
包まれる幸せ。与えられる悦び。
わたし、本当に彼を好きになってよかった。
わたしが動いたこと。腕を枕として貸してくれていた明順にも伝わったらしい。
わたしと同じで眠っていたはずの彼。眠そうな声で問いかけてくる。
「なんでもない。ちょっと目が覚めただけ」
言って、モゾモゾと身を動かす。
窓から差し込む月明かり。その明かりに照らされた、彼の端正な寝顔を見ようとしていたことは内緒。
いつの間に月が昇るような夜になっていたのか。
散々愛し合って、身をつなげて。
疲れて二人、衣を着直すことすら大儀で、そのまま寄り添って眠ってしまっていた。
(これ、家に帰ったら、父さまも兄さまも、驚くだろうなあ)
いきなり妹がいなくなったと思ったら、「あっちで夫婦になってきました~」だもんなあ。義姉さまたちは、「それでっ? 明順さまとの初めてはどうだったのっ!?」みたな勢いで、訊きに来そうだけど。家の男どもはなあ。
(ま、いっか)
なるようになれ。
というか、わたしたち夫婦なんだし。そういうことして仲直りしても悪くないわけだし。
考えるのを止めにして、彼の腕に頭を載せ直す。
「わたし、幸せだなあって思っただけ」
「幸せ?」
「うん。こうしてるとね。わたしのなにもかも、明順に抱かれてる、包まれてる感じがして、幸せなの」
「梨花……」
彼の肌から伝わる熱。鼓動の音。
寝台にも染みついてる彼の匂い。
彼の寝台の上。こうして寄り添っていると、彼のすべてにスッポリ収まってるような感覚になる。スッポリ収まって、守られて。そして、二人の熱で溶けて一つになっていくような感覚。
「夫婦って素敵よね。こうしていっしょにいても、誰にも文句言われない」
モゾモゾ。ムギュ。
わたしの腕では抱えきれないけど、それでも、彼を抱きしめる。
「寒い時は、とっても幸せ」
「でも、逆に暑い日は辛いかも」
「もう! そういうことは言わない!」
真面目にツッコんできた明順を怒る。――って、あれ?
「ねえ、これ、何?」
彼の腕や、肩のあたりに、普通とは違う肌の色を見つける。真っ直ぐだったり、やや歪んでいたり。でもどれも同じなのは、周りの肌より薄い色の、ちょっと盛り上がったりしてる場所。
「それ? 傷の跡だよ」
「傷っ!? 明順怪我したのっ!?」
バッと上掛けを弾き飛ばし、横たわる彼の体を見る。
腕や肩だけじゃない。脇腹、太もも、胸にもその跡があった。
「――寒いよ、梨花」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!」
いつの間にこんなに傷を?
笑う明順を叱りつける。
傷のなかには、太く雷のような形に白く色が抜けている箇所もある。それも胸の上に。
こんなの、絶対ヒドい怪我だったはず。それこそ生死の境を彷徨うような。
「大したことないよ」
「大したことあるわよ! バカ!」
どうして?
どうしてこんな傷……。どうしてこんなにたくさん……。
「将軍になるためには、それだけの戦功も必要だからね」
「え?」
「僕にもう少し剣術の腕があれば、負わなかった傷なんだけど。仕方ないよね」
フフッと笑った明順。
(そういえば。後宮に入ったわたしを下賜されるように、戦功を立てたって言ってた)
戦功を立てれば、もしかしたら後宮に入った女を報奨として下賜されるかもしれない。
ずっとむかしから、わたしを好きでいてくれた彼。
もしかしたら、この傷は、わたしのために……。
「だから。そんな顔しないでって、梨花。こんな傷、今はなんともないし、痛みもないんだから」
「明順……」
「これはね、キミを得るためについた、名誉の負傷だよ。まあ、将軍ならカッコよく、父のように傷跡一つない体でいたかったけど。こればかりは仕方ないよね」
目が熱くなってくるわたしに、上半身を起こした彼が軽く言う。
「だから、泣かない。キミにそうして泣かれると、怪我をしてしまうような軟弱な自分を責めたくなる」
「もうっ……!」
「でもね。僕、背中には傷はないんだ」
ホラ。
彼が滑らかな背中を見せてくれる。
大きくてたくましい背中だけど、その肌はとてもキレイだ。
「僕が逃げなかった証拠。敵に背を向けなかった証だよ」
「明順……」
その背中に、そっと手を伸ばす。
手だけじゃない。
「ちょっ! 梨花っ!?」
少し張った肩甲骨に、無駄な肉のない肩に。
チュッ、チュッと口づけを落としていく。
「――っ!」
途中、ビクンッと彼の体が揺れた。
「ご、ゴメン。痛かった?」
そこでようやく気づく。背中に全く傷がないわけじゃないことに。
「大丈夫。ちょっと驚いただけ」
ハハッと、情けなさそうに彼が眉を寄せて笑うけど。
(これって、わたしがつけた傷だよね?)
首の根元から肩にかけて。いくつもついてる赤い筋。
これは、戦で受けた傷じゃない。わたしが、快感に耐えられなくて引っ掻いた傷だ。
血こそ流れてないけど、これ、結構痛そう。お風呂に入ったら、絶対シミる。地味に嫌な攻撃。
(――ゴメン)
コツンと彼の背中に額をぶつける。
きっと言葉にして謝罪しても受け入れてくれないだろうから。こうして触れることで、思ってることが伝わればいい。
「梨花」
彼がふり向く。
彼は優しいから、こんなぐらい大した事ないよって笑うんだ。そうやって、わたしを甘やかすんだ。
いつだってそう。
わたしの鞠を取ろうとして池に落ちたときも。梨花は悪くない、悪いのは池に落ちた自分だってくり返し言ってた。
(一度ぐらい、お前のせいだ、どうしてくれるんだって怒ってくれてもいいのに)
わたしの旦那さまは、甘やかし上手の叱り下手。
今だって、その傷、絶対シカシカと痛いだろうに。――って。
「え?」
伸びてきた手。掴まれた腰。
「ええっ!?」
グルンと回った視界。気づいたら寝台の上で、四つん這いになってる体。
「えっ!? ちょっ……!」
掴まれたお尻。その割れ目に沿うように、擦りつけられる硬く熱いもの。
「アアッ!」
グププ。
それが、わたしの膣へと侵入してくる。
「ゴメンね、梨花。キミは初めてなんだし、我慢しようと思ってたんだけど……」
「ンヒッ、アッ、そっ……んなっ、アアッ」
隘路を無理やり押し広げて挿ってきた、それ。
もうすでに破瓜はすませてるからか。二度目のそれは痛くない。痛くないけど。
「ンっ、ヒッ、ア……、ア……」
こんなにやすやすと咥え込めるなんて! わたしの膣、どうなってんのよ!
「キミがかわいすぎるのが、いけない。僕を、簡単に煽ってくる」
「あっ、煽ってなんかっ、アッ、アアッ!」
ズチュ、ズチュ、ズチュ。
グチョ、グチュ。
なかをこすられるたび、動かれるたび、繋がった部分からいやらしい音がする。
それだけじゃない。
「アッ、そこっ、そこぉっ……」
「スゴい。中がものすごくビクビクしてる。……ここ? 気持ちいいの?」
「うっ、うんっ! だからっ、アアッ……!」
体勢が違うせいか、最初と違う場所に、切っ先が当たる。
突き上げられるたび、そこから痺れるような、重い快感が背中を伝って頭に響いてくる。
喘ぐことに必死な口は、閉じることもできなくて。溢れた唾液が顎を伝って敷布にシミを作る。
「ダメッ、ダメェッ……」
「でも、『もっとして』って、腰が揺れてる。僕のを追いかけるように、なかが蠢いてる」
「そっ、そんなことぉ、アア……ッ!」
知らないっ!
知らない、知らない、知らないっ!
わたし、こんな苦しいぐらい気持ちいいことなんて知らないっ!
「ンッ、ヒッ、アッ、アアッ、明順、明順っ!」
待って!
またあの、頭のなかが真っ白になるような大きな波が来る!
逃げたい。
「アヒッ!」
「ダメだよ。逃げないで。終われなくなる」
グッと掴まれ、引きずり戻された腰。そして。
「アアッ、そんなにっ、アッ、アアッ……」
気持ちいいといったその場所に、ゴリッ、ドチュッと容赦なく切っ先がぶつかってくる。
「もっ、もうダメっ、限界っ!」
「うん、僕も、だっ! いっしょにイこ?」
彼の声に余裕がない。でも、そんなことに気づける余裕はもっとなくて。
「アッ、アア――ッ!」
「グッ……!」
襲った快感に、絶叫する。彼も、腰を押しつけ、くぐった声を漏らす。
ドクドクと精が迸る。わたしのなかに、熱く。満たすように。
(気持ちいい……)
これで子が授かるのかどうかは知らない。
けど、こうして注がれることの幸せを、わたしは覚えた。
彼に与えられた快楽のなかで、ゆったりとたゆたう。
「ンッ!」
のに、ビクンと体が快楽の海から戻って来る。
「え? ちょっ、明順っ!」
体が震えたのは、繋がりを解かないまま、彼がわたしの首筋に口づけしたから。
「お返し」
「お返しって、アッ、ンッ……!」
「梨花の背中って、キレイだよね。僕のよりきっと何倍も」
「アッ、ヤッ、そこっ……! 噛んじゃっ、アアッ!」
首筋、肩。彼の唇の届く範囲を舐められ、吸われ、噛まれて。
「ヒッ、アッ、アアァ……」
穏やかになりかけてた快楽が、また激しく波立ち始める。胸とか、膣とは違う、ゾワゾワするような快楽。
それに。
「やっぱり梨花はずるい。色っぽくて、かわいくて。何度でも僕を煽ってくる」
煽ってない! 全然煽ってないのにっ!
「アッ……!」
ズチュ。グチュ。
わたしのなかで、質量を取り戻した彼のイチモツが動き出す。
あんなに出したのにっ! また、大きくなれるわけっ!?
「次は、梨花の顔を見ながらイきたいな。蕩けたキミの顔が見たい」
グルっと、仰向けに直されたわたしの体。でも、貫くことは止めてくれなくて。
「アッ、明順、明順ッ!」
わたし、このままじゃ、快楽の海で溺れ死んじゃうっ!
「梨花」
抱きしめてはくれるけど、わたしを犯す律動は止まらない。
「かわいい、かわいい僕の梨花。やっと手に入れた、僕の奥さん」
コチュ、コチュ。
腰を揺らしながら、彼が囁く。
「キミが後宮に入ったと聞いて、僕は絶望と嫉妬で気が狂うかと思った。キミを手に入れられる皇太子殿下を羨み、呪いそうになったよ」
「明順……」
「だから、こうしてキミを手に入れて。こうして交わって。今の僕は、とても幸せなんだ」
それは、わたしも同じ。
家のために仕方なく後宮に入って。でも要らないって捨てられて。
皇太子が好きだったわけじゃない。けど、辛かった。悲しかった。
でも、今はアナタに愛されて、これ以上ないってぐらいの幸せを実感してる。後宮を追い出されて良かったと思ってる。
「わたしも、幸せよ?」
「梨花」
「きっと、世界中の誰よりも幸せ。アナタに愛されて。わたし以上に幸せな人は、いないんじゃないかな」
「……うれしいこと、言ってくれるね」
わたしを抱きしめる腕を解き、彼が身を起こす。
「キミは、僕をどこまで溺れさせるつもりなの?」
「え? アッ、アアッ……」
ドチュドチュと激しく腰を動かされる。
「こんなに繋がって。精を吐き出しても、まだキミを求める。キミを愛さずにいられないほど、キミに溺れてる」
「アッ、そ、それはっ、わたしも、アアッ、ンアッ……、同、じっ!」
激しいと、少し辛いけど。でも「やめて」とは言わない。
愛されて、愛されて、愛されて。
わたしも、アナタに溺れてる。苦しいほどの幸せで満たされてる。
「梨花」
繋がる気持ちよさに、酩酊するように、腰を動かす彼。受け止めるわたしも、今度ははっきり自覚できるぐらい、腰を揺らして彼を求める。
「梨花、梨花、梨花ッ……!」
律動が乱れて、わたしを呼ぶ声も荒れる。
「明順、明順ッ……!」
わたしも必死に彼を呼ぶ。
もう、なにもかもグチャグチャだ。
心も体も、なにもかも。
「アッ、イッ……!」
奥を強く穿たれ、その衝撃に背を反らす。
「クッ……!」
わたしの腰を掴んだ彼。突き上げ、精を迸らせる。
「ア、ヒ……、ア、ア……」
わたしのなかを、熱く満たす。
ドクドクとほしかったものを注ぎ込まれ、体が何度もヒクヒクと震えた。
「愛してるわ、明順……」
恍惚と、深く満足したような声で告げる。
「僕もだよ、梨花」
身を繋げたまま、彼が優しい眼差しと、包容をくれる。
包まれる幸せ。与えられる悦び。
わたし、本当に彼を好きになってよかった。
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