彼女(寵姫)以外は要らないと、後宮をお払い箱にされましたが、幼馴染の猛虎将軍が溺愛してくれるので問題ありません

若松だんご

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巻の二十五、愛に溺れる

 「キレイだ……」

 夜もしっかり更けて。
 燭台の明かりだけが照らす室で。寝台に腰掛けていた明順ミンジュンが、それだけを呟くと、そのまま惚けたようにわたしを見続ける。

 ――もう一度、着付けてくれないか?

 どうせ脱ぐのに。
 思ったけど、素直にお願いをきいた。

 ――ナニがあったんですか! お嬢さまっ!

 キチンと着付けてもらってた衣装がかろうじて、帯で留めてるだけのグシャグシャになってたら、誰だって驚くだろうって感じの玉鈴ユイリンの声。
 でも、彼の言う通り、もう一度だけ着付け直してってお願いしたら、「説明! 説明求む!」って何か問いたげな顔のまま、衣装を直してくれた。
 衣装を、ちゃんと直して。
 髪も、妻らしく結い上げ、簪でまとめ直して。
 化粧だけ落として。
 いつものわたしが、ちょっとだけ良い物着てます、な感じになって、彼の待つ室を訪れたんだけど。

 (うわ、素敵……)

 感嘆したのは、彼だけじゃない。わたしも同じ。
 彼の浅葱色の袍。ものすごく似合ってる。
 いつもが「うわ、カッコいいな」なら、今は「すっごい! すっごいカッコいいんだけどっ!」状態。

 「どうしたの梨花リファ。おいで」

 「う、ん……」

 ものすごく胸がドキドキする。
 彼に名前を呼ばれるのも、手をつなぐのも、抱き寄せられるのも、見つめられるのも。全部これが初めてってわけじゃないのに。

 「――梨花リファ

 優しく名前を呼ばれて、唇が重なる。
 それだけで、わたしの心臓は苦しいぐらいに暴れて、胸がはちきれそう。

 「これ。僕の奥さんって感じで悪くないけど……」

 言いながら、彼の手が、後頭部に挿した簪にかかる。グッと引き抜かれる感覚。一拍遅れてバサッと背中に広がるわたしの髪。

 「うん。やっぱり、いつもの梨花リファがいいな」

 わたしの頬に触れ、彼が言う。お化粧すらしてないのに。簪まで外されたら、衣装以外は、「いつものわたし」になってしまう。

 「それって。わたしなんかがお化粧してもあんまり意味ないから――とか?」

 なんか満足そうに見つめてくるけど。それだったら、甘い雰囲気出てたけど、拳でぶん殴るよ?

 「違う。こうして直に触れられるからいいなってだけ。化粧されてると、こうして直に触れるとか、口づけができないから」

 クスッと笑って、わたしの頬を何度もこする。

 「それに。普段もかわいくて仕方ないのに、化粧までされたら。惚れ直すどころか、僕の心臓が止まりそうになる。キレイすぎるのも罪だよね。殺されるかと思ったよ」

 「そ、んな……」

 ことないと思う。化粧してもしなくても、わたしが平凡、十人並みなのは変わらない。せいぜい、十人並みが八人並みぐらいになる程度。
 
 「無自覚なのも罪深いけど。今は、こうしてキミを僕の妻にしておける幸せを噛みしめてる」

 「明順ミンジュン……」

 彼が、わたしを強く抱きしめる。

 「――キミが無事でよかった」

 かすれ、絞り出された声。グリグリと頬を擦り寄せ抱きしめる彼は、わたしがここにいることを確認しているかのよう。宝物が失われていないか。抱きしめて確認している。
 わたしも。
 わたしも確認している。
 今、生きていることを。わたしだけじゃない。彼も生きていることを。
 わたしを手に入れるため、彼はその体に傷を負ってまでして戦ってくれていた。白虎将軍になって、命をかけてわたしを手に入れた。
 この間の出征もそう。彼は、わたしのために戦に赴く。――昔は、泣き虫で怖がりだったのに。

 「明順ミンジュン……」

 伝わる熱は、鼓動は、彼が生きている証。
 腕の力も、鼻腔をくすぐる彼の匂いも。目も耳も。すべてを使って彼を感じる。
 彼とわたし。生きていることを、愛していることを実感する。
 そして。

 「ン、フ、ンッ……」

 どちらからともなく見つめ合い微笑むと、口づけを交わす。
 優しく、ついばむように。強く、息すら呑み込むように。
 
 「ン、アフッ……」

 口づけの角度を変えて。途中苦しくて喘ぎながらも、口づけを止めない。
 わたしの背中をまさぐる彼の手も、段々と強く力がこもり始める。

 (好き。大好き……)

 世の中には、どうして「好き」「愛してる」以外の、もっといろんな想いを伝える言葉がないんだろう。
 ずっと思っていた。もっといろんな言葉で伝えればいいのに。もっとカッコよく伝えられたらいいのに。
 でも。

 「好き」しかない。「好き」でいい。

 単純に。明快に。
 「好き」なんだから「好き」でいい。それ以外、カッコつける必要はない。
 どれだけ想ってるか、どれだけ好きか。伝わってるかどうか、怪しいけど。でも、「好き」なんだから、それでいいじゃんとも思う。

 「ねえ、脱がせてもいい?」

 口づけを止め、彼に訊く。
 好き。
 だから、もっとアナタの熱を感じたい。カッコいいアナタも好きだけど、わたしはもっとアナタに触れたい。

 「うん。じゃあ、僕も」

 言って互いの衣を脱がし合う。
 彼の熱い手が、帯を解き、一枚一枚、衣を丁寧に脱がせていく。まるで、宝物をくるむ包み紙を、剥がしていくように。

 「キレイだ、梨花リファ

 そしてまろび出たわたしの肌を、チュッと吸い上げる。

 「ちょっ、アッ、待って……」

 吸われるたび、触れられるたび、彼の熱さを感じるたび。
 彼の衣を脱がせていたわたしの手が止まる。そんなことされてちゃ、動けなくなる。わたしだってアナタが欲しいのにっ!
 意地になって、必死に彼を脱がせることに集中するけど――

 「アァンッ!」

 彼の手淫で、簡単に集中力が途切れる。喘いでも治まらない、襲ってくる快感に身を委ねたくなる。

 「梨花リファ、愛してる」

 そ、そんなこと言われたらっ!

 「みっ、ミンジュ……、アアッ!」

 わたしの意志は脆く崩れて。彼のなすがままに、快楽に溺れていく。

 「お、お願っ、わたしにも脱がさせてっ!」

 わたしは裳も脱がされて、それこそ生まれたての素っ裸だけど、アンタはまだ衣、残ってるでしょうがっ!

 「……わかった。じゃあ、お願いするよ」

 ゔ。
 そんなかしこまって脱がされるのを待たれると。
 そんなふうに、カッコよく微笑まれると。
 ――わたし、結構な痴女じゃない? 好きだからって、男性の衣を脱がせたいだなんて。
 手が止まりそうになったけど。ええーい! 男は度胸、女も度胸じゃ! やってやろうじゃないの! フンス!
 勢いつけて取り掛かると、袍もなにもかもババッと引っ剥がす。上半身、傷跡の残る彼の素肌が晒される。
 ここで女性なら、「きゃあっ!」って声の一つも上げるんだろうけど、明順ミンジュンは、ただ微笑むだけ。……って。ん? わたし、今裸なのに、全然「きゃあっ!」って言わなかったぞ? それどころか、触れられて感じてだだけだ。女として、どうなんだ、それ。
 
 「どうしたの、梨花リファ。怖くなった?」

 「ううんっ! 大丈夫!」

 怖くない。別に平気。
 わたしは、わたしの体はものすごくアナタを求めてる。だから。

 ブルンッ。

 (うわっ!)

 下履きを脱がせにかかって。下ろす下履きに抵抗するように震えて、ブルンっと飛び出したイチモツに驚く。わたしの胸は、どれだけ乳首を尖らせようと、全然衣に引っかからなかったのに。スルッと衣とサヨナラしたのに。

 (やっぱり、大きい……)

 そそり立つイチモツ。脈が筋となって浮かび上がるそれは、赤黒くて淫猥なのに、一度見たら絶対目を離せない。それどころか、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。

 (これが、いつもわたしの中に……)

 わたしの中に挿って、わたしを絶頂へと押し上げてくる。

 「梨花リファ、だから、あんまり見ないでくれ。キミが積極的なのはうれしいけど。――照れる」

 あ。
 かわいい。
 明順ミンジュン、耳まで真っ赤。

 「――ンッ!」

 わたしがその顔を見て笑ったのを怒ったのか。それともただの照れ隠しか。
 噛みつくような口づけで襲われた。

 「ンッ、フッ、ンン……!」

 口の中に忍び込んできた彼の舌。わたしの歯列を舐め、口蓋をなぞり、舌を吸い上げ絡める。
 それだけで。それだけで、体の中に快楽の火が灯されていく。散々交わって教えられた行為に、思考が淫らに染まっていく。
 けど。

 「ン! り、梨花リファ!」

 彼がビクンと体を震わせ、口づけを止めた。
 わたしが、彼のイチモツに触れたから。
 
 「そ、んな、ンッ……!」

 触れるだけじゃない。手でシッカリ握った。

 (やっぱり、大きい)

 手のひらに収まりきらないイチモツ。

 (確か、こうするのよね)

 春本知識を頼りに、そのまま手を動かし、イチモツをしごく。
 春本には、こうやってしごいてあげると、男が喜ぶって書いてあった。女が膣に触れられると気持ちよくなれるのと同じで、男はイチモツを擦り上げられると――

 (ほら、腰が跳ねた)

 本人は我慢しているつもりかもしれないけど。
 ピクン、ビクンと震える明順ミンジュンの腰。
 腰だけじゃない。少し苦しそうに顔を歪め始める。何かを耐えるように、吐息を漏らす。
 座ってるのも難しそう。

 「梨花リファ、ダメだ、そんなことしたら……」

 彼が呻く。同時に、ヌルっとしたものがしごく手に滴り落ちてきた。

 (これって……子種?)

 男性が感じると、イチモツからそれが溢れることは知ってる。

 (明順ミンジュン、感じてくれてるの?)

 わたしに?

 (うれしい)

 だから。

 ハクッ。

 「うっ、梨花リファッ!」

 そのイチモツを、口で咥える。少し苦いけど、でもそうしたかった。物語で読んだから実践――じゃない。愛しいからしてみたかった。
 口をすぼめ、吸い上げる。全部呑み込んであげたくて、口を前後させる。
 浮かび上がった血管をなぞるように全体を舌で舐める。

 「ンッ、フッ……、クッ……」

 時折、彼の腰が突き上げるように動く。必死に耐えようとしてるのか。でも――

 (大きくなった)

 手とは比べものにならないぐらいの勢いで、硬く熱く大きくなっていく。えずきそうになるぐらいの勢いで、ゴツゴツと喉を突いてくる。

 「ダメ、だっ……、梨花リファッ!」

 乱暴にわたしの肩を掴んだ彼。勢いよく引き剥がされ、ズボッとイチモツが口腔から消える。

 「このままだと、キミの、口を汚してしまう」

 真っ赤な顔で、ハアハアと息を荒らす彼。
 ――汚しても、出してもいいのに。

 「じゃあ、こっちに頂戴」

 肩で息をしてた彼を、グイッと仰向けに押し倒す。押し倒すだけじゃない。その彼の上に自分から跨る。

 「わたしの中に、アナタを頂戴」

 なんて大胆。なんて淫らな。
 でも、止まらない。やめられない。
 口がダメなら、こっちに頂戴。

 クチュ。

 少し腰を落としただけなのに。
 いつの間にかトロトロに濡れていた膣は、淫らな水音を立てて、彼のイチモツを呑み込み始める。
 わたしの中をミチミチと押し広げ、挿ってくる彼。
 その圧倒的質量。欲しくてほしくて、仕方なかったもの。
 わたしの空虚を埋めてくれるもの。

 「う、ア……」

 「ア、アアッ……」

 互いに、訪れる快感に身を震わせた。
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