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第20話 大きく胸に吸う不満。静かに執事に返すべし。
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「……なにを、なさってるんです?」
戸惑いしかないキースの質問。部屋に入ってこようとして、ドアノブに手をかけたまま固まってる。
「見てわかんない? 鍛えてるの!!」
言いながら、ビシィッと腕を前に伸ばす。右手。そして左手。
すべて握りこぶしつき。
「寄宿学校時代にねっ!! 教えてもらったの、よっ!!」
正拳突き。裏拳打ち。
こぶしを手刀に変え、前へ叩き出す。右手と右足。左手と左足。手刀と同時に足も前へ。腰を落として、右足から左足へと流れるように重心移動。ゆっくりと動いたかと思えば、右へ左へ拳をくり出す。グルンッと一回転して腕も回し、手刀を振り下ろす。蹴りも……やりたいけど、さすがにドレスじゃ無理なので、軽く踏み出すにとどめておく。
たしか、東洋の「カンフー」とかいうヤツ。「ケンポー」とかそういうの。上海だったか香港だったか。そのへん帰りの級友が教えてくれた。「アチョーォ」とか叫んでやるんだって。
「アタシだって、自分でなんとかっ、できるようにっ、しておかないとっ!!」
アタシは狙われてる。
“誰に”に“どうして”狙われてるのかはわかんないけど、キースに守ってもらってばっかりじゃいられない。自分のことぐらい、自分で守れなきゃね。
ってことで、体を鍛える!!
ホントは、敵を探しだしてそこに乗り込んでいきたい。ソイツの胸ぐら掴んでやりたい。こうしてジッと守りに入るのは性に合わない。もどかしいのは大嫌いなのよ。
けど、それはやっぱり無謀だと思ったから。出ていって決着をつけたいけど、そうすることで誰かを巻き込んじゃいけないから。この間のキースみたいに。
だから、こうして体を動かすことで、溜まる鬱憤を晴らす。その溜まったストレスを発散させて、少しでも前向きになれるようにってことで、「カンフー」やってるんだけど。
「――ハッ!!」
ピュッと風を切って伸ばした手。そのまま見えないストレス(と敵)を握りつぶすと、溜めていた息を静かに吐き出す。
動きも重要だけど、大事なのは呼吸。「静」と「動」。
そう教えてもらったけど、これ、結構やってると気持ちいい。なんか胸がスカッとする。ダンスのレッスンより楽しいかも。
「……お嬢さま」
ヤレヤレと頭を振るキース。こめかみに当てられた指と、大きなため息。
「ジュディス、お嬢さまをお止めしなかったのですか?」
「え? だって、やりたいようにさせておくほうがいいじゃん。なんか不満溜まってるみたいだったし。それに、見てて面白いもん」
部屋の隅に立っていたジュディス。キースに睨まれたけど、ケロリとした声で答えていた。というか、最近のジュディスって男の子っぽい喋り方するのよね。以前の花売りの頃みたいな気分になってるのかな。キースもあえて咎め立てたりしないし。
キースがジュディスの小間使い教育を諦めたのか、それともキース自身が丸くなったのか。どっちかわかんないけど、二人が仲良くなったのなら、それでいいかなと思う。
「では、お嬢さま。ほどよく体もほぐれたことですし、少々お出かけいたしませんか?」
「出かける? どこに?」
公園とかになら、出かける気はないんだけど――。
「とっても素敵な鬱憤ばらし、反撃に――ですよ、レディ」
内容はヒ・ミ・ツ。
口に人差し指を立てたキースのいたずらっぽい笑み。うっわ、クッソ悪いこと考えてる顔だわ、それ。
* * * *
男は焦っていた。
ナゼだ。ナゼなんだ。
北側の窓から、少し鈍い日差しが入る部屋。その窓際に置かれた重厚なオーク材の書斎机に手当たり次第書類をぶちまける。
これも、これも、あれも。全部、全部だ――。
土地の権利書、投資契約書。資産に関わる全て。
他に何か残っていないのか。
自分が気づかなかっただけで、もっと他の資産は残っていないのか。なんでもいい、何か、何か――。
目ぼしい書類を見つけるたび、脇に置かれた電話を使って問い合わせる。
――その書類はすでに無効となっています。
――その資産はすでに凍結、あるいは別の方に買収されております。
戻ってくる返事は淡々と無情なものばかりだった。
それどころか。
――アナタのホテルが何者かに買収されました。
――抵当に入っていたものすべて、何者かが次々に買い占めております。
誰が?
複数の名義人が、それぞれ別々の資産を金に物を言わせ奪い去っていく。正当な手順を踏んだ買収だが、こんな同時期に一気に複数人が買うわけがない。偽名を使った買収。それぐらい想像はつく。
だが、誰がそんなことを?
金に飽かした者の道楽? そんなわけがない。
ホテル、鉄道事業、抵当に入っていた屋敷。借金の借用書。
何のために?
もし万が一それが必要だったとしても、すべてを自分から奪っていかなくてもいいのではないか? それも、こんな短期間に。
借金の借用書まで買い取って、何をするつもりだ? 借金を肩代わりしたことで、こちらを手駒にするつもりか?
取り戻したい。取り戻すならまず金がいる。
そう思って、金になりそうなものを探しているのだが――。
「――クソッ!!」
腹立ち紛れに、手にした書類を丸め投げ飛ばすと、机を蹴りつけた。
おかしい。
ここまで上手くいったはずなのに。
すべて上手くいってたはずなのに。
あと少し、あと少しのところで何かに邪魔をされている。
「……なあ、旦那さんよぉ」
コンコンと軽く、開きっぱなしだった扉をノックする音と同時に投げつけられた言葉。
「苛立つのもいいけどさあ、先立つもの、払ってくんないかなぁ」
振り向けば、そこにいたのは年若い少年。長い髪を頭頂部で無造作にまとめ、ナイフを片手にクルクルと弄んでいる。街のチンピラ、ゴロツキの予備軍と言うには堂々とした態度で、ドアにもたれかかって立っていた。
「仕事した分の報酬、サッサと払ってくんないかなぁ」
「――仕事はまだ終わってないだろう」
「今のじゃなくって前の。あれ、苦労したんだぜぇ?」
睨みつけても怯む様子はない。それどころか意味ありげに、片方の口角を持ち上げるような笑いを見せてきた。嫌な笑い方だ。
「馬車ごとガス燈にドカンッ!! んでもって、馬車ごと丸焼け。人通りのある通りは避けたかったし、オレだけ飛び降りるのって結構難しいんだよね。下手すりゃこっちも丸焼けだもん」
――お前ごとき焼けようがどうなろうが構わん。このチンピラふぜいが。
喉まで出かけた言葉をグッと呑み込む。
自分が依頼したのはもっと別の男。このガキはその男が使ったチンピラだろう。金欲しさにやってきた――というところか。
「報酬は、次の仕事も終わってからだ。次も完璧にこなせば、倍にして支払ってやる」
「うっわ、魅力的ぃ」
ヒューッ。
少年が軽く口笛を鳴らした。
「でもさ、今のアンタのどこに、それだけの金があるのさ。倍もなにも、支払うだけの金ねーじゃん」
「だからこその仕事なのだ」
コイツが仕事を済ませたら、それこそ何もしなくても大金が手に入る。
領地、屋敷、財産、事業。
それらを手に入れれば、今のこんな苦境などすぐに吹き飛ぶ。
誰がどんな魂胆で自分を狙っているのか知らないが、そんな小細工は何の役にも立たなくなる。
それほどのものが、このガキの手にかかっているのだ。
「わかったら、サッサと仕事をしてこい」
「おーこわ。なかなかに苛立ってんねえ、旦那」
「うるさい」
「そんな旦那さんに朗報でーす」
ニヤけたまま、おどける少年。
「旦那さんのために、特別なお客様をお招きしましたーっ!! どうぞぉ」
なに?
少年がドアの向こうにいた者を部屋に入るように促す。
「……お久しぶりです」
固い、若い女性の声。胸の前でギュッと手を握りしめている。そんな女の背後には見知った顔の若い男。怯えるような女性を優しく導くその手には、白い手袋。
「お前、キース……」
「お久しぶりです、ボードウィン卿」
男が胸に手を当て、優雅に一礼する。向き合ったその顔には、不敵なまでの笑みが浮かぶ。
「さあ、そろそろ終わりにいたしましょうか」
戸惑いしかないキースの質問。部屋に入ってこようとして、ドアノブに手をかけたまま固まってる。
「見てわかんない? 鍛えてるの!!」
言いながら、ビシィッと腕を前に伸ばす。右手。そして左手。
すべて握りこぶしつき。
「寄宿学校時代にねっ!! 教えてもらったの、よっ!!」
正拳突き。裏拳打ち。
こぶしを手刀に変え、前へ叩き出す。右手と右足。左手と左足。手刀と同時に足も前へ。腰を落として、右足から左足へと流れるように重心移動。ゆっくりと動いたかと思えば、右へ左へ拳をくり出す。グルンッと一回転して腕も回し、手刀を振り下ろす。蹴りも……やりたいけど、さすがにドレスじゃ無理なので、軽く踏み出すにとどめておく。
たしか、東洋の「カンフー」とかいうヤツ。「ケンポー」とかそういうの。上海だったか香港だったか。そのへん帰りの級友が教えてくれた。「アチョーォ」とか叫んでやるんだって。
「アタシだって、自分でなんとかっ、できるようにっ、しておかないとっ!!」
アタシは狙われてる。
“誰に”に“どうして”狙われてるのかはわかんないけど、キースに守ってもらってばっかりじゃいられない。自分のことぐらい、自分で守れなきゃね。
ってことで、体を鍛える!!
ホントは、敵を探しだしてそこに乗り込んでいきたい。ソイツの胸ぐら掴んでやりたい。こうしてジッと守りに入るのは性に合わない。もどかしいのは大嫌いなのよ。
けど、それはやっぱり無謀だと思ったから。出ていって決着をつけたいけど、そうすることで誰かを巻き込んじゃいけないから。この間のキースみたいに。
だから、こうして体を動かすことで、溜まる鬱憤を晴らす。その溜まったストレスを発散させて、少しでも前向きになれるようにってことで、「カンフー」やってるんだけど。
「――ハッ!!」
ピュッと風を切って伸ばした手。そのまま見えないストレス(と敵)を握りつぶすと、溜めていた息を静かに吐き出す。
動きも重要だけど、大事なのは呼吸。「静」と「動」。
そう教えてもらったけど、これ、結構やってると気持ちいい。なんか胸がスカッとする。ダンスのレッスンより楽しいかも。
「……お嬢さま」
ヤレヤレと頭を振るキース。こめかみに当てられた指と、大きなため息。
「ジュディス、お嬢さまをお止めしなかったのですか?」
「え? だって、やりたいようにさせておくほうがいいじゃん。なんか不満溜まってるみたいだったし。それに、見てて面白いもん」
部屋の隅に立っていたジュディス。キースに睨まれたけど、ケロリとした声で答えていた。というか、最近のジュディスって男の子っぽい喋り方するのよね。以前の花売りの頃みたいな気分になってるのかな。キースもあえて咎め立てたりしないし。
キースがジュディスの小間使い教育を諦めたのか、それともキース自身が丸くなったのか。どっちかわかんないけど、二人が仲良くなったのなら、それでいいかなと思う。
「では、お嬢さま。ほどよく体もほぐれたことですし、少々お出かけいたしませんか?」
「出かける? どこに?」
公園とかになら、出かける気はないんだけど――。
「とっても素敵な鬱憤ばらし、反撃に――ですよ、レディ」
内容はヒ・ミ・ツ。
口に人差し指を立てたキースのいたずらっぽい笑み。うっわ、クッソ悪いこと考えてる顔だわ、それ。
* * * *
男は焦っていた。
ナゼだ。ナゼなんだ。
北側の窓から、少し鈍い日差しが入る部屋。その窓際に置かれた重厚なオーク材の書斎机に手当たり次第書類をぶちまける。
これも、これも、あれも。全部、全部だ――。
土地の権利書、投資契約書。資産に関わる全て。
他に何か残っていないのか。
自分が気づかなかっただけで、もっと他の資産は残っていないのか。なんでもいい、何か、何か――。
目ぼしい書類を見つけるたび、脇に置かれた電話を使って問い合わせる。
――その書類はすでに無効となっています。
――その資産はすでに凍結、あるいは別の方に買収されております。
戻ってくる返事は淡々と無情なものばかりだった。
それどころか。
――アナタのホテルが何者かに買収されました。
――抵当に入っていたものすべて、何者かが次々に買い占めております。
誰が?
複数の名義人が、それぞれ別々の資産を金に物を言わせ奪い去っていく。正当な手順を踏んだ買収だが、こんな同時期に一気に複数人が買うわけがない。偽名を使った買収。それぐらい想像はつく。
だが、誰がそんなことを?
金に飽かした者の道楽? そんなわけがない。
ホテル、鉄道事業、抵当に入っていた屋敷。借金の借用書。
何のために?
もし万が一それが必要だったとしても、すべてを自分から奪っていかなくてもいいのではないか? それも、こんな短期間に。
借金の借用書まで買い取って、何をするつもりだ? 借金を肩代わりしたことで、こちらを手駒にするつもりか?
取り戻したい。取り戻すならまず金がいる。
そう思って、金になりそうなものを探しているのだが――。
「――クソッ!!」
腹立ち紛れに、手にした書類を丸め投げ飛ばすと、机を蹴りつけた。
おかしい。
ここまで上手くいったはずなのに。
すべて上手くいってたはずなのに。
あと少し、あと少しのところで何かに邪魔をされている。
「……なあ、旦那さんよぉ」
コンコンと軽く、開きっぱなしだった扉をノックする音と同時に投げつけられた言葉。
「苛立つのもいいけどさあ、先立つもの、払ってくんないかなぁ」
振り向けば、そこにいたのは年若い少年。長い髪を頭頂部で無造作にまとめ、ナイフを片手にクルクルと弄んでいる。街のチンピラ、ゴロツキの予備軍と言うには堂々とした態度で、ドアにもたれかかって立っていた。
「仕事した分の報酬、サッサと払ってくんないかなぁ」
「――仕事はまだ終わってないだろう」
「今のじゃなくって前の。あれ、苦労したんだぜぇ?」
睨みつけても怯む様子はない。それどころか意味ありげに、片方の口角を持ち上げるような笑いを見せてきた。嫌な笑い方だ。
「馬車ごとガス燈にドカンッ!! んでもって、馬車ごと丸焼け。人通りのある通りは避けたかったし、オレだけ飛び降りるのって結構難しいんだよね。下手すりゃこっちも丸焼けだもん」
――お前ごとき焼けようがどうなろうが構わん。このチンピラふぜいが。
喉まで出かけた言葉をグッと呑み込む。
自分が依頼したのはもっと別の男。このガキはその男が使ったチンピラだろう。金欲しさにやってきた――というところか。
「報酬は、次の仕事も終わってからだ。次も完璧にこなせば、倍にして支払ってやる」
「うっわ、魅力的ぃ」
ヒューッ。
少年が軽く口笛を鳴らした。
「でもさ、今のアンタのどこに、それだけの金があるのさ。倍もなにも、支払うだけの金ねーじゃん」
「だからこその仕事なのだ」
コイツが仕事を済ませたら、それこそ何もしなくても大金が手に入る。
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それらを手に入れれば、今のこんな苦境などすぐに吹き飛ぶ。
誰がどんな魂胆で自分を狙っているのか知らないが、そんな小細工は何の役にも立たなくなる。
それほどのものが、このガキの手にかかっているのだ。
「わかったら、サッサと仕事をしてこい」
「おーこわ。なかなかに苛立ってんねえ、旦那」
「うるさい」
「そんな旦那さんに朗報でーす」
ニヤけたまま、おどける少年。
「旦那さんのために、特別なお客様をお招きしましたーっ!! どうぞぉ」
なに?
少年がドアの向こうにいた者を部屋に入るように促す。
「……お久しぶりです」
固い、若い女性の声。胸の前でギュッと手を握りしめている。そんな女の背後には見知った顔の若い男。怯えるような女性を優しく導くその手には、白い手袋。
「お前、キース……」
「お久しぶりです、ボードウィン卿」
男が胸に手を当て、優雅に一礼する。向き合ったその顔には、不敵なまでの笑みが浮かぶ。
「さあ、そろそろ終わりにいたしましょうか」
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