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第六話 桃栗三年 梅干し何年?
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梅干しはいくつもの工程を経て完成する。
真奈美と節子がヘタを取った梅。それを琺瑯の容器に塩と交互に入れ、重石を載せる。すると、一週間ほどで梅から「白梅酢」と呼ばれる透き通った汁が出る。その汁とよく洗った紫蘇の葉を合わせ、再び漬け直す。今度は二週間ほど。
「後は、晴れ間が続く日が来るのを待てばオッケーや」
そこまでの工程を真奈美とともに終えた節子が言った。
「梅干しって、こんな面倒なことやってたんだ」
「せやよ。けっこう面倒なんよ、梅干しは」
節子が笑った。
吾輩も、梅干し作りを傍で見ていたが、これほど様々な工程が含まれていたことは、今の今まで知らなかった。京一朗が知っていたのは、せいぜい、梅と紫蘇を盆ザルに平たく並べて天日干しすることぐらい。
「これ、私が帰るまでに完成するかな?」
「アンタ、出来上がるまで帰らへんつもりか? 学校は?」
「大丈夫だよ。今は卒論だけだし。それもリモートでなんとかなってるし」
そうなのか。
そういえば、時折真奈美は、持ってきたパソコンで誰かと話しているようだったが。あれは、授業を受けていたのか。遊びではなく。
勉学というものは、学校に赴いて、師から教えを授かるものだ――なんて考えは古いのかもしれない。
「それに、せっかく漬けた梅干しだもん。出来上がったのを持って帰りたいじゃない」
「遼介くんのためか?」
「あー、うん。これ持って帰ったら仲直りもやりやすいかな~って」
エヘヘと笑った真奈美。
遼介というのは真奈美が同棲している相手で、出奔してくるキッカケは、ソイツとの料理に対する見解の違いだったらしい。
――いっしょに遊びに行った帰りさぁ、「夕飯、どうする?」って訊いたら、「あるもので、テキトーに作ってくれればいいよ」だもん。腹立っちゃって。疲れてるのは私も一緒だし、あるものでテキトーって、変なもの作ったら、不味いって怒るのそっちじゃん?
真奈美の言葉に、節子が頷いていた。
――私は、「帰りに適当に食べて帰りたいなあ」って気持ちを込めてどうするって訊いたのにさぁ。「あるものでテキトー」なんてパパッと作るだけのスキルも、パワーも残ってないんだってば。
真奈美の愚痴に、ギクリとする。
――あーあ。どうしてそういうとこ、わかってくんないのかなあ。
疲れているから作りたくない。パパッと作る苦労を知ってほしい。
それは過去の節子からの意見を代弁されたかのようで、申し訳ないような気分になる。真奈美が飛び出してくるようなケンカをしでかした遼介なる男に、最初は怒りを覚えていたが、今では「もうちょっと相手のことを慮ってやれ」と忠告したい気分になっている。でないと、いつか後悔することになるぞ、と。
「とにかくさ。ここで梅干し作りとかおばあちゃん直伝のレシピを仕入れてさ。帰ったら、パパッとなにかを作ってあげて。ちょっとだけ『ドヤァッ』ってしてやりたいのよね」
「『ドヤァッ』はええけど。今度からは『疲れてるから作りたくない』、『外食ですませたい』ってちゃんと話し合わなあかんで?」
「うん。わかってるよぉ」
「それにな、『梅干しは三年作り続けなならん』って言葉があってな。そうにわかには覚えられへんよ」
「うえっ、三年も?」
真奈美が眉をしかめた。
「そうさ。そう簡単にコツとか覚えられへん。未だに、ばあちゃんでも失敗することのある、奥の深い食べ物なんやで。アンタらは、ポイッて食べて、『酸っぱぁ』言うとるだけやったけどな」
何十年も作り続けている先達の意見は重い。
「さて、こっから干せるようになるまでの間、何しようかねえ」
琺瑯容器の上に重石を載せ、節子が言った。
「あたし一人なら、京都にちょいと出かけてくるけど。真奈美はどうする? 一緒に行くか?」
「え、また? おばあちゃん、この間も京都に行ってきたって言ってなかった?」
驚く真奈美。そして吾輩。
節子、また京都に行くつもりだったのか?
「この間ので、見て来れんかった場所があったんよ。調べそこねてて、訪ねそびれたんよ」
「おばあちゃん、そんなに京都、好きだったっけ?」
「いや。あたしは京都より奈良のほうが好きや。そもそも、出かけるのはあんま好きやないけどな。家でジッと本読んどるほうがええ」
ならば、何故。笑う節子に、首を傾げる吾輩。
京都より奈良が好きなら、そっちに出かけたらいいのに。
それにこの梅雨の季節、ジメジメした空気の中で、好きでもない旅行に行きたがる理由がわからない。雨に濡れた寺社仏閣。その風情を楽しみたいというのならわからなくもないが、そうでなければ、家で本を読んで大人しく過ごせばいい。そちらのほうが好きだというのなら尚更、晴耕雨読、好きなように過ごせばいい。
傾げた首がグルンと一回転しそうなほど理解ができない。
「とにかくや。真奈美も行くなら、連絡入れやんとあかんから。どうする? 行くか?」
「いや、おばあちゃんが行くのなら、私もついて行くけど」
留守番イヤだし。
「そっか。なら、斎藤さんに、もう一人分、ホテルと新幹線の予約を追加してもらうわ」
ヨッコラショッと立ち上がった節子。座敷の卓の上に置きっぱなしてあったスマホを手に取る。
「ねえ、ミドリ。おばあちゃんの言うこと、理解できる?」
真奈美がコソッと我輩に問う。
理解できていたら、吾輩はここまで首を捻らぬ。
猫だから理解できないのではない。吾輩が京一朗であって、節子と充分に語り合えたとしても、その言い分は少しも得心できないであろう。
「おばあちゃん、変わったよねえ。昔は、あんなにインドア派だったのに」
その言葉には首を縦にふる。
「私の知ってるおばあちゃんはさあ、縫い物したり編み物したり、そういうのが好きで、家のこもってることの多い人――だったんだよねえ」
真奈美が、スマホでお喋りを続ける節子を眺める。
「アンタが座ってる、そのお気に入りの座布団。それだって、おばあちゃんの手作りなんだよ。おじいちゃんのために、何度も綿を打ち直してさあ。カバーだって破れたら繕い直して。おばあちゃんって、そういう手作りが、家でなんかやってることが好きな人だと思ってたんだけどなあ」
知っている。
何度も打ち直して入れ直した綿は、素人作業のせいで、あまりふっくらせず、すぐに京一朗の重みで真ん中がヘタってしまっていた。それでも京一朗が腰を据えたものだから、カバーも擦り切れ、生地が薄けたところはツギの布が当てられ、裂けたところは手術痕のように縫い合わされた。
それでも京一朗はそこに座り続け、座布団はヘタレ続けていた。
もしかすると、京一朗が死ななかったら、この夏にでもまた綿を打ち直して、新しい生地で作り直されていたかもしれない。そういう座布団だ。
しかし、今の節子が真奈美が来なかったら、きっと梅干しを漬けることすらしなかっただろう。梅干しなんぞ、市販のもので充分。きっとそう笑ったに違いない。座布団だって直さない。
「おじいちゃんが死んで。変わっちゃったなあ、おばあちゃん」
感慨深げな真奈美。
長年連れ添ってきた吾輩ですらそう思うのだから、真奈美がそう感じるのも不思議ではない。
「じゃあ、明後日から二日間、京都に決定したから」
「はやっ!!」
電話を終えた節子に、真奈美がツッコむ。
「しょうがないやろ。梅を干す支度の前に、行かんとならんのやで」
「ねえ、おばあちゃん。なんでそんなに出かけたがるの?」
「なんでって……」
「おじいちゃんが死んでからさ、おばあちゃん、なんか変だよ? 頻繁に出かけたがったり、家のことやらなくなったりさ」
「それは……」
節子が言いよどむ。
「この家、座布団以外のおじいちゃんのもの、何一つ残ってないしさ。写真すら飾ってないじゃん」
矢継ぎ早に喋る真奈美。
「ねえ。おばあちゃんって、おじいちゃんのこと、嫌いだったの?」
だから、写真も飾ってない。
だから、遺品を撤去した。
だから、思い出の家にいるのではなく、旅行に出かけたがる。
節子は孫の問いかけにどう答えるのか。
聞きたいような、耳を塞いでしまいたいような気分で、耳をそばだてジッと座布団の上に寝そべる。
「それは――」
「ちょっ、おばあちゃんっ!?」
強気で問いかけていた真奈美が驚いて立ち上がる。
グラリと揺れた節子の体。そのまま崩れるように畳の上に倒れていく。
「だ、大丈夫やよ。ちょっとめまいがしただけやから――」
青い顔の節子。
息は荒く、とても浅い。
額には、暑さではない別の汗が滲んでいる。
医者だ、医者をっ!!
そう思った吾輩は、縁側からピョンッと飛び降り、一目散に駆け出した。
医者を!! 医者を呼ばねば、節子がっ!!
真奈美と節子がヘタを取った梅。それを琺瑯の容器に塩と交互に入れ、重石を載せる。すると、一週間ほどで梅から「白梅酢」と呼ばれる透き通った汁が出る。その汁とよく洗った紫蘇の葉を合わせ、再び漬け直す。今度は二週間ほど。
「後は、晴れ間が続く日が来るのを待てばオッケーや」
そこまでの工程を真奈美とともに終えた節子が言った。
「梅干しって、こんな面倒なことやってたんだ」
「せやよ。けっこう面倒なんよ、梅干しは」
節子が笑った。
吾輩も、梅干し作りを傍で見ていたが、これほど様々な工程が含まれていたことは、今の今まで知らなかった。京一朗が知っていたのは、せいぜい、梅と紫蘇を盆ザルに平たく並べて天日干しすることぐらい。
「これ、私が帰るまでに完成するかな?」
「アンタ、出来上がるまで帰らへんつもりか? 学校は?」
「大丈夫だよ。今は卒論だけだし。それもリモートでなんとかなってるし」
そうなのか。
そういえば、時折真奈美は、持ってきたパソコンで誰かと話しているようだったが。あれは、授業を受けていたのか。遊びではなく。
勉学というものは、学校に赴いて、師から教えを授かるものだ――なんて考えは古いのかもしれない。
「それに、せっかく漬けた梅干しだもん。出来上がったのを持って帰りたいじゃない」
「遼介くんのためか?」
「あー、うん。これ持って帰ったら仲直りもやりやすいかな~って」
エヘヘと笑った真奈美。
遼介というのは真奈美が同棲している相手で、出奔してくるキッカケは、ソイツとの料理に対する見解の違いだったらしい。
――いっしょに遊びに行った帰りさぁ、「夕飯、どうする?」って訊いたら、「あるもので、テキトーに作ってくれればいいよ」だもん。腹立っちゃって。疲れてるのは私も一緒だし、あるものでテキトーって、変なもの作ったら、不味いって怒るのそっちじゃん?
真奈美の言葉に、節子が頷いていた。
――私は、「帰りに適当に食べて帰りたいなあ」って気持ちを込めてどうするって訊いたのにさぁ。「あるものでテキトー」なんてパパッと作るだけのスキルも、パワーも残ってないんだってば。
真奈美の愚痴に、ギクリとする。
――あーあ。どうしてそういうとこ、わかってくんないのかなあ。
疲れているから作りたくない。パパッと作る苦労を知ってほしい。
それは過去の節子からの意見を代弁されたかのようで、申し訳ないような気分になる。真奈美が飛び出してくるようなケンカをしでかした遼介なる男に、最初は怒りを覚えていたが、今では「もうちょっと相手のことを慮ってやれ」と忠告したい気分になっている。でないと、いつか後悔することになるぞ、と。
「とにかくさ。ここで梅干し作りとかおばあちゃん直伝のレシピを仕入れてさ。帰ったら、パパッとなにかを作ってあげて。ちょっとだけ『ドヤァッ』ってしてやりたいのよね」
「『ドヤァッ』はええけど。今度からは『疲れてるから作りたくない』、『外食ですませたい』ってちゃんと話し合わなあかんで?」
「うん。わかってるよぉ」
「それにな、『梅干しは三年作り続けなならん』って言葉があってな。そうにわかには覚えられへんよ」
「うえっ、三年も?」
真奈美が眉をしかめた。
「そうさ。そう簡単にコツとか覚えられへん。未だに、ばあちゃんでも失敗することのある、奥の深い食べ物なんやで。アンタらは、ポイッて食べて、『酸っぱぁ』言うとるだけやったけどな」
何十年も作り続けている先達の意見は重い。
「さて、こっから干せるようになるまでの間、何しようかねえ」
琺瑯容器の上に重石を載せ、節子が言った。
「あたし一人なら、京都にちょいと出かけてくるけど。真奈美はどうする? 一緒に行くか?」
「え、また? おばあちゃん、この間も京都に行ってきたって言ってなかった?」
驚く真奈美。そして吾輩。
節子、また京都に行くつもりだったのか?
「この間ので、見て来れんかった場所があったんよ。調べそこねてて、訪ねそびれたんよ」
「おばあちゃん、そんなに京都、好きだったっけ?」
「いや。あたしは京都より奈良のほうが好きや。そもそも、出かけるのはあんま好きやないけどな。家でジッと本読んどるほうがええ」
ならば、何故。笑う節子に、首を傾げる吾輩。
京都より奈良が好きなら、そっちに出かけたらいいのに。
それにこの梅雨の季節、ジメジメした空気の中で、好きでもない旅行に行きたがる理由がわからない。雨に濡れた寺社仏閣。その風情を楽しみたいというのならわからなくもないが、そうでなければ、家で本を読んで大人しく過ごせばいい。そちらのほうが好きだというのなら尚更、晴耕雨読、好きなように過ごせばいい。
傾げた首がグルンと一回転しそうなほど理解ができない。
「とにかくや。真奈美も行くなら、連絡入れやんとあかんから。どうする? 行くか?」
「いや、おばあちゃんが行くのなら、私もついて行くけど」
留守番イヤだし。
「そっか。なら、斎藤さんに、もう一人分、ホテルと新幹線の予約を追加してもらうわ」
ヨッコラショッと立ち上がった節子。座敷の卓の上に置きっぱなしてあったスマホを手に取る。
「ねえ、ミドリ。おばあちゃんの言うこと、理解できる?」
真奈美がコソッと我輩に問う。
理解できていたら、吾輩はここまで首を捻らぬ。
猫だから理解できないのではない。吾輩が京一朗であって、節子と充分に語り合えたとしても、その言い分は少しも得心できないであろう。
「おばあちゃん、変わったよねえ。昔は、あんなにインドア派だったのに」
その言葉には首を縦にふる。
「私の知ってるおばあちゃんはさあ、縫い物したり編み物したり、そういうのが好きで、家のこもってることの多い人――だったんだよねえ」
真奈美が、スマホでお喋りを続ける節子を眺める。
「アンタが座ってる、そのお気に入りの座布団。それだって、おばあちゃんの手作りなんだよ。おじいちゃんのために、何度も綿を打ち直してさあ。カバーだって破れたら繕い直して。おばあちゃんって、そういう手作りが、家でなんかやってることが好きな人だと思ってたんだけどなあ」
知っている。
何度も打ち直して入れ直した綿は、素人作業のせいで、あまりふっくらせず、すぐに京一朗の重みで真ん中がヘタってしまっていた。それでも京一朗が腰を据えたものだから、カバーも擦り切れ、生地が薄けたところはツギの布が当てられ、裂けたところは手術痕のように縫い合わされた。
それでも京一朗はそこに座り続け、座布団はヘタレ続けていた。
もしかすると、京一朗が死ななかったら、この夏にでもまた綿を打ち直して、新しい生地で作り直されていたかもしれない。そういう座布団だ。
しかし、今の節子が真奈美が来なかったら、きっと梅干しを漬けることすらしなかっただろう。梅干しなんぞ、市販のもので充分。きっとそう笑ったに違いない。座布団だって直さない。
「おじいちゃんが死んで。変わっちゃったなあ、おばあちゃん」
感慨深げな真奈美。
長年連れ添ってきた吾輩ですらそう思うのだから、真奈美がそう感じるのも不思議ではない。
「じゃあ、明後日から二日間、京都に決定したから」
「はやっ!!」
電話を終えた節子に、真奈美がツッコむ。
「しょうがないやろ。梅を干す支度の前に、行かんとならんのやで」
「ねえ、おばあちゃん。なんでそんなに出かけたがるの?」
「なんでって……」
「おじいちゃんが死んでからさ、おばあちゃん、なんか変だよ? 頻繁に出かけたがったり、家のことやらなくなったりさ」
「それは……」
節子が言いよどむ。
「この家、座布団以外のおじいちゃんのもの、何一つ残ってないしさ。写真すら飾ってないじゃん」
矢継ぎ早に喋る真奈美。
「ねえ。おばあちゃんって、おじいちゃんのこと、嫌いだったの?」
だから、写真も飾ってない。
だから、遺品を撤去した。
だから、思い出の家にいるのではなく、旅行に出かけたがる。
節子は孫の問いかけにどう答えるのか。
聞きたいような、耳を塞いでしまいたいような気分で、耳をそばだてジッと座布団の上に寝そべる。
「それは――」
「ちょっ、おばあちゃんっ!?」
強気で問いかけていた真奈美が驚いて立ち上がる。
グラリと揺れた節子の体。そのまま崩れるように畳の上に倒れていく。
「だ、大丈夫やよ。ちょっとめまいがしただけやから――」
青い顔の節子。
息は荒く、とても浅い。
額には、暑さではない別の汗が滲んでいる。
医者だ、医者をっ!!
そう思った吾輩は、縁側からピョンッと飛び降り、一目散に駆け出した。
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