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本編
91.「どうしても行くってんなら……『魚』には気を付けなよ?」
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清波の町というのは港街である。
古くは津清と呼ばれ、昔からこの近辺の重要な海路を担ってきた。
港とは人と物資が盛んに行き来する場所。
ここで生み出されるのは、文化であり、技術であり、そして新たなる出会いである。
「う~んと、港はこっちかぁ」
白狐はそんな清波の街を歩いていた。目的は港である。
領地に住んでいる村人白狐はこの清波の町は結構探索しているが、まだ港には行った事がない。
今まで特に行く理由がなかったからだ。ならば今、何故港に向かっているのかというと領地にある村で村人達が『魚食べてみてぇなぁ』と話していたからだ。
碧波村は比較的山の中に位置していたので、あまり魚を食べる習慣がなかった。しかしここは港町……折角だから魚を食べてみたいところだが調理の仕方も分からない。
そんな会話をこっそりとキツネの耳で拾った白狐は、領地の皆に新鮮な魚を食べさせてあげたいと思い港に向かっているという訳だ。
「あ、白狐ちゃん。今日はお野菜買いに来たのかい?」
途中で八百屋のおばさんに話しかけられる。毎日食材の買い出しをしている白狐は既に町の人に受け入れられている。
「んーん、今日はお魚買いに来たんだ!」
「魚かい?あぁ、じゃあ魚屋の青吉のところに……ってあそこは今日休みか……うーん……」
八百屋のおばさんは困った顔をしている。どうやら今日は魚屋が休みのようで悩んでいるようだ。
しかし白狐は別に魚屋に行きたい訳ではない。何十、何百の領民の人達にお魚を食べさせてあげたかったので港から直接大量のお魚を仕入れたいのだ。
「えっと、魚屋さんじゃなくて直接、港に行くから大丈夫だよ!」
白狐がにこりと笑みを浮かべてそう言うと八百屋のおばさんはギョっとしたような目で白狐を見た。
はて、なんだろうこの反応は。白狐が困惑していると、彼女は鬼気迫る表情で白狐に言う。
「港は荒くれ者ばっかりだよ!白狐ちゃんみたいな可愛い子があんなところに行ったら因縁付けられて攫われて、売られちゃうよ!」
「えぇー……?」
彼女の言葉に白狐は怪訝そうな表情を浮かべた。
確かに港というのは文化的に治安が悪くなりやすい。それは海の仕事というのは危険であり、海の男……いや、女達を相手する港の人員も荒い人間でなければ務まらないからだ。
そして自然と港というのは荒くれ者が多くなり、様々な犯罪組織やチンピラの温床となるのだ。
そしてそれはこの清波の町でも例外ではなく、一般人は港にはあまり近寄らないのだ。
……と言っても、歩いていて急に攫われて売り飛ばされるというのはおばさんの誇張であり、いくらなんでもそんな事にはならない。(男が歩いていたならそうなるが……)
「えっと……大丈夫だよ!僕こう見えても強いから!」
「そうなの?でもちっこいし心配だねぇ」
強そうには見えない白狐を見ておばさんは心配そうにそう言い放つ。しかし白狐が強いのは事実である。
少なくともそこら辺の妖怪には負けないし、織波の勢力の中でも上位に位置する実力者である事は確かだ。
懸念は三匹に分裂しているので弱くなっている事だが……まぁなんとかなるだろうと白狐は高を括っていた。
「どうしても行くってんなら……『魚』には気を付けなよ?」
「魚?」
港に行くのに魚に気を付けろとはどういう意味だろうか。もしや人食い魚が港を闊歩しているのだろうか……?
いやそんな危険な港誰も使わない。魚が一体なんだというのか。
おばさんの真意を聞こうとした白狐であったが、ちょうど運悪く他の客が来てしまいおばさんはそっちに行ってしまった。
白狐は少しだけ不安になるも、持ち前の楽天的な性格で『きっとなんとかなる』と思い港に歩き出した。
「よぉし、お魚さん買いにいきましょー!」
しばらく歩いていると港が見えてきた。
そこには沢山の船が並んでいたり、様々な船の積荷が降ろされていたりしている。
白狐は初めて見る光景に目を輝かせながら、港の奥へと進む。
「どいたどいたー!積み荷を降ろすぞー!」
「野菜だ!野菜を運べー!」
港では沢山の船員や港の水夫達が忙しなく働いていた。様々な色の衣服に身を包んだ彼らは、さながらカラフルな魚達のようだ。
もしかして彼女達が魚……?いや、そんなわけないか。
そんな事を考えながらその脇を白狐は抜けていき、お魚が積み上げられている場所を探しに歩き回る。
「むー……どこだろ?」
お魚を探して三千里。白狐は大量のお魚が積まれている場所にすぐに辿り着いた。
キツネの嗅覚を駆使すればお魚を見つける事など造作もない……と思っていたが、一つ問題があった。
「うー……いっぱいありすぎて分かんないや……」
お魚は種類によって大きな箱に入れられているが、どれがなんのお魚なのかがさっぱり分からないのだ。
魚の専門家でもないので、魚なんてどれも同じに見えてしまう。
「どうしよ……」
う~んと悩む白狐であったが、ふと人に聞けばいいと思い立ち誰かいないか辺りを見渡してみる。
しかし何故かこの辺りには人がいないようで、とても静かだ。
「誰かいませんかー!?」
こんなに魚が置かれているのに何故誰もいないのだろう。そんな疑問を抱きながら白狐は大きな声で助けを求めてみる。
すると海の方からバシャバシャと水の音が聞こえてきた。まるで大きな魚が泳いでいるようなその音に、白狐は興味を持ってそちらの方へと向かう。
もしかしたら巨大魚が泳いでいるのかもしれない。捕まえればみんな喜んでくれるかも……
そんな事を考えながら、白狐は海の方へと足を向けた。
「えっ……」
しかし白狐が目にしたのは予想だにしないものだった。
水飛沫を上げて海から飛び出してきたのは魚などではなく、若い女性であった。
黒色の波打った長い髪をたなびかせ、綺麗な顔に海水が滴っている。
そして何より目を引くのは、その女性の下半身が魚のような鱗に覆われた『尻尾』であった事だ。
ーーー人魚。
いや、魚の半化生か。初めて見るその姿に白狐は目を奪われ、そのまま立ち尽くしてしまう。
見た所年齢は二十歳前後のように見えるが、その美しい容姿からは触れれば壊れてしまいそうな儚さを感じさせる。
白狐は彼女に見惚れたまま動けなかったが、人魚もまた白狐を見ると少し驚いた表情を見せ、そしてにっこりと微笑む。
その笑顔はとても美しく、人とは思えない美貌であった。
「あ、あの……お魚さん欲しいんですけど……」
「…………!」
意を決して白狐は人魚に話し掛ける。すると彼女は一瞬何かを考える素振りを見せた後、ポンと手のひらを拳で叩いた。
そして尾びれで直立し、ぴょんぴょんと器用に尾びれを使い跳ねるようにして箱の近くまで移動すると、一つの箱を指差した。
箱の中には大量のお魚が入っており、焼いて食べたら美味しそうなお魚さんである……
「わぁ!美味しそう!これっていくらですか!?」
白狐が目を輝かせて人魚に尋ねるも、彼女は困ったような表情で何か喋ろうとして口をパクパクとさせるが何も聞こえない。
その姿を見て、白狐は彼女が地上で『声』を出せない事に気付いた。
人魚……もとい魚の半化生は地上では声が出せず、陸で暮らすには何かしらの『道具』を必要とする。
しかし彼女はそれを持ち合わせていないようだ。
「……!……!」
なんとかジェスチャーで白狐に何かを伝えようとしているが白狐には全く伝わらなかった。
彼女は喋るのを諦めると、すごすごと海の中に戻って行ってしまった。
「えっーと……」
そうしてその場に一人残される白狐。今の魚の半化生はなんだったんだろうか?
一人佇む白狐だが、暫くすると再び海のほうからバシャバシャと波音が聞こえてくる。
何か忘れ物でもしたのだろうかと思っていると、海から先程と同じくバシャバシャという音を立てて人魚が一匹……いや、二匹……いやいや、五匹……?
何匹もの人魚が陸に上がってくるではないか。
「えっ!?何これ!?」
「……!……!!!……?」
「!!!……!?!?」
白狐が驚いていると、その人魚達(もう数え切れない)は白狐に群がり、あっという間に簀巻きのようにされてしまった。
一体何が起きているのか。混乱した頭では理解が追い付かない。
そんな白狐を余所に、彼女達は簀巻きにした白狐を担ぐとそのまま近くにあった倉庫らしき建物へとぴょんぴょんと跳ねて入っていく。
「ちょ……何するの!?」
「……!」
「……」
「……!!!」
白狐は叫んだものの、人魚達は気にせずに進んでいき建物の中に入った所でようやく降ろされた。
倉庫の中は何やら薄暗く、そしてなんとなく魚臭い場所である。
「えっと……一体……」
白狐が簀巻きのまま困惑していると、何やら人魚達が木桶みたいな物を持ってきた。
その桶には薄く水が張っており、そしてなにやら大きな魚卵のような物体がぷかぷかと浮かんでいる。
「え?なにこれ?」
いくら……?そう思い白狐が困惑していると、人魚達はその桶をそっと地面に置いた。
そして一匹の人魚がおもむろに服を脱ぎ始めたではないか。
「わわっ!?」
白狐は目の前で繰り広げられる光景に驚き目を逸らす。しかし彼女達は脱ぐ事をやめる事なく、そのまま全裸になる。
衣服がなくなり露になる彼女の肢体はとても美しく、その豊満な乳房やスラリとしたお腹は白狐が見てもドキドキする程だ。
下半身こそ魚なものの、上半身は絶世の美女達なのだ。白狐は目を奪われ動けなかった。
そしてそのまま彼女達は木桶に張られている水にぷかぷかと浮かぶ卵をちょんとつつくと、そのまま白狐に群がり彼の衣服を脱がし始めた。
「ふにゃあ!?♡」
突然の行為に白狐が驚いている間に、彼女達はあっという間に彼の衣服を脱がし全裸にしてしまう。
白狐の可愛らしいお稲荷さんが人魚達の前に晒されるも、彼女は一切気にする事なく白狐の体をまさぐり始めた。
「にゃっ!♡やんっ♡」
「……♡」
人魚の一人が、白狐に囁くように何かを呟いたような気がしたが、彼にはその言葉は聞こえなかった……
─────────
白狐くんには聞こえなかった人魚達の声。
『あれ?貴方もしかしてオス!?そうでしょ!?』
『魚欲しいの?え~とじゃあ……そうだ!お金の代わりに私達のタマゴに射精してくれない?』
『う~ん、伝わらないわねぇ……。別に了承なんか取らなくても拉致して射精させればいいだけじゃない!私ったらドジね♪』
ーーーーーーーーー海に一旦戻ってから
『おいテメーら!!今陸にチンポ来てっから攫うぞ!!(野太い声)』
『マジかよ大姉貴!?』
『うおおお若いチンポじゃねぇか!!誰か早くタマゴ産んで待機しとけ!』
『みんな!タマゴは産んだか!?』
『チンポビュービューさせてぶっかけさせるぞ!!』
ーーーーーーーーー白狐くんを攫ってから
『おいおい可愛いキツネちゃんじゃねぇかよぉ!』
『おい男の前で汚ぇ言葉遣いするんじゃねぇ、殺すぞ!』
『す、すまねぇ大姉貴……』
『えっと……言っても分からないと思うけど……これから君のおちんちんシコシコぴゅっぴゅってして私のタマゴにおちんちん汁かけてもらうね♡(乙女声)』
古くは津清と呼ばれ、昔からこの近辺の重要な海路を担ってきた。
港とは人と物資が盛んに行き来する場所。
ここで生み出されるのは、文化であり、技術であり、そして新たなる出会いである。
「う~んと、港はこっちかぁ」
白狐はそんな清波の街を歩いていた。目的は港である。
領地に住んでいる村人白狐はこの清波の町は結構探索しているが、まだ港には行った事がない。
今まで特に行く理由がなかったからだ。ならば今、何故港に向かっているのかというと領地にある村で村人達が『魚食べてみてぇなぁ』と話していたからだ。
碧波村は比較的山の中に位置していたので、あまり魚を食べる習慣がなかった。しかしここは港町……折角だから魚を食べてみたいところだが調理の仕方も分からない。
そんな会話をこっそりとキツネの耳で拾った白狐は、領地の皆に新鮮な魚を食べさせてあげたいと思い港に向かっているという訳だ。
「あ、白狐ちゃん。今日はお野菜買いに来たのかい?」
途中で八百屋のおばさんに話しかけられる。毎日食材の買い出しをしている白狐は既に町の人に受け入れられている。
「んーん、今日はお魚買いに来たんだ!」
「魚かい?あぁ、じゃあ魚屋の青吉のところに……ってあそこは今日休みか……うーん……」
八百屋のおばさんは困った顔をしている。どうやら今日は魚屋が休みのようで悩んでいるようだ。
しかし白狐は別に魚屋に行きたい訳ではない。何十、何百の領民の人達にお魚を食べさせてあげたかったので港から直接大量のお魚を仕入れたいのだ。
「えっと、魚屋さんじゃなくて直接、港に行くから大丈夫だよ!」
白狐がにこりと笑みを浮かべてそう言うと八百屋のおばさんはギョっとしたような目で白狐を見た。
はて、なんだろうこの反応は。白狐が困惑していると、彼女は鬼気迫る表情で白狐に言う。
「港は荒くれ者ばっかりだよ!白狐ちゃんみたいな可愛い子があんなところに行ったら因縁付けられて攫われて、売られちゃうよ!」
「えぇー……?」
彼女の言葉に白狐は怪訝そうな表情を浮かべた。
確かに港というのは文化的に治安が悪くなりやすい。それは海の仕事というのは危険であり、海の男……いや、女達を相手する港の人員も荒い人間でなければ務まらないからだ。
そして自然と港というのは荒くれ者が多くなり、様々な犯罪組織やチンピラの温床となるのだ。
そしてそれはこの清波の町でも例外ではなく、一般人は港にはあまり近寄らないのだ。
……と言っても、歩いていて急に攫われて売り飛ばされるというのはおばさんの誇張であり、いくらなんでもそんな事にはならない。(男が歩いていたならそうなるが……)
「えっと……大丈夫だよ!僕こう見えても強いから!」
「そうなの?でもちっこいし心配だねぇ」
強そうには見えない白狐を見ておばさんは心配そうにそう言い放つ。しかし白狐が強いのは事実である。
少なくともそこら辺の妖怪には負けないし、織波の勢力の中でも上位に位置する実力者である事は確かだ。
懸念は三匹に分裂しているので弱くなっている事だが……まぁなんとかなるだろうと白狐は高を括っていた。
「どうしても行くってんなら……『魚』には気を付けなよ?」
「魚?」
港に行くのに魚に気を付けろとはどういう意味だろうか。もしや人食い魚が港を闊歩しているのだろうか……?
いやそんな危険な港誰も使わない。魚が一体なんだというのか。
おばさんの真意を聞こうとした白狐であったが、ちょうど運悪く他の客が来てしまいおばさんはそっちに行ってしまった。
白狐は少しだけ不安になるも、持ち前の楽天的な性格で『きっとなんとかなる』と思い港に歩き出した。
「よぉし、お魚さん買いにいきましょー!」
しばらく歩いていると港が見えてきた。
そこには沢山の船が並んでいたり、様々な船の積荷が降ろされていたりしている。
白狐は初めて見る光景に目を輝かせながら、港の奥へと進む。
「どいたどいたー!積み荷を降ろすぞー!」
「野菜だ!野菜を運べー!」
港では沢山の船員や港の水夫達が忙しなく働いていた。様々な色の衣服に身を包んだ彼らは、さながらカラフルな魚達のようだ。
もしかして彼女達が魚……?いや、そんなわけないか。
そんな事を考えながらその脇を白狐は抜けていき、お魚が積み上げられている場所を探しに歩き回る。
「むー……どこだろ?」
お魚を探して三千里。白狐は大量のお魚が積まれている場所にすぐに辿り着いた。
キツネの嗅覚を駆使すればお魚を見つける事など造作もない……と思っていたが、一つ問題があった。
「うー……いっぱいありすぎて分かんないや……」
お魚は種類によって大きな箱に入れられているが、どれがなんのお魚なのかがさっぱり分からないのだ。
魚の専門家でもないので、魚なんてどれも同じに見えてしまう。
「どうしよ……」
う~んと悩む白狐であったが、ふと人に聞けばいいと思い立ち誰かいないか辺りを見渡してみる。
しかし何故かこの辺りには人がいないようで、とても静かだ。
「誰かいませんかー!?」
こんなに魚が置かれているのに何故誰もいないのだろう。そんな疑問を抱きながら白狐は大きな声で助けを求めてみる。
すると海の方からバシャバシャと水の音が聞こえてきた。まるで大きな魚が泳いでいるようなその音に、白狐は興味を持ってそちらの方へと向かう。
もしかしたら巨大魚が泳いでいるのかもしれない。捕まえればみんな喜んでくれるかも……
そんな事を考えながら、白狐は海の方へと足を向けた。
「えっ……」
しかし白狐が目にしたのは予想だにしないものだった。
水飛沫を上げて海から飛び出してきたのは魚などではなく、若い女性であった。
黒色の波打った長い髪をたなびかせ、綺麗な顔に海水が滴っている。
そして何より目を引くのは、その女性の下半身が魚のような鱗に覆われた『尻尾』であった事だ。
ーーー人魚。
いや、魚の半化生か。初めて見るその姿に白狐は目を奪われ、そのまま立ち尽くしてしまう。
見た所年齢は二十歳前後のように見えるが、その美しい容姿からは触れれば壊れてしまいそうな儚さを感じさせる。
白狐は彼女に見惚れたまま動けなかったが、人魚もまた白狐を見ると少し驚いた表情を見せ、そしてにっこりと微笑む。
その笑顔はとても美しく、人とは思えない美貌であった。
「あ、あの……お魚さん欲しいんですけど……」
「…………!」
意を決して白狐は人魚に話し掛ける。すると彼女は一瞬何かを考える素振りを見せた後、ポンと手のひらを拳で叩いた。
そして尾びれで直立し、ぴょんぴょんと器用に尾びれを使い跳ねるようにして箱の近くまで移動すると、一つの箱を指差した。
箱の中には大量のお魚が入っており、焼いて食べたら美味しそうなお魚さんである……
「わぁ!美味しそう!これっていくらですか!?」
白狐が目を輝かせて人魚に尋ねるも、彼女は困ったような表情で何か喋ろうとして口をパクパクとさせるが何も聞こえない。
その姿を見て、白狐は彼女が地上で『声』を出せない事に気付いた。
人魚……もとい魚の半化生は地上では声が出せず、陸で暮らすには何かしらの『道具』を必要とする。
しかし彼女はそれを持ち合わせていないようだ。
「……!……!」
なんとかジェスチャーで白狐に何かを伝えようとしているが白狐には全く伝わらなかった。
彼女は喋るのを諦めると、すごすごと海の中に戻って行ってしまった。
「えっーと……」
そうしてその場に一人残される白狐。今の魚の半化生はなんだったんだろうか?
一人佇む白狐だが、暫くすると再び海のほうからバシャバシャと波音が聞こえてくる。
何か忘れ物でもしたのだろうかと思っていると、海から先程と同じくバシャバシャという音を立てて人魚が一匹……いや、二匹……いやいや、五匹……?
何匹もの人魚が陸に上がってくるではないか。
「えっ!?何これ!?」
「……!……!!!……?」
「!!!……!?!?」
白狐が驚いていると、その人魚達(もう数え切れない)は白狐に群がり、あっという間に簀巻きのようにされてしまった。
一体何が起きているのか。混乱した頭では理解が追い付かない。
そんな白狐を余所に、彼女達は簀巻きにした白狐を担ぐとそのまま近くにあった倉庫らしき建物へとぴょんぴょんと跳ねて入っていく。
「ちょ……何するの!?」
「……!」
「……」
「……!!!」
白狐は叫んだものの、人魚達は気にせずに進んでいき建物の中に入った所でようやく降ろされた。
倉庫の中は何やら薄暗く、そしてなんとなく魚臭い場所である。
「えっと……一体……」
白狐が簀巻きのまま困惑していると、何やら人魚達が木桶みたいな物を持ってきた。
その桶には薄く水が張っており、そしてなにやら大きな魚卵のような物体がぷかぷかと浮かんでいる。
「え?なにこれ?」
いくら……?そう思い白狐が困惑していると、人魚達はその桶をそっと地面に置いた。
そして一匹の人魚がおもむろに服を脱ぎ始めたではないか。
「わわっ!?」
白狐は目の前で繰り広げられる光景に驚き目を逸らす。しかし彼女達は脱ぐ事をやめる事なく、そのまま全裸になる。
衣服がなくなり露になる彼女の肢体はとても美しく、その豊満な乳房やスラリとしたお腹は白狐が見てもドキドキする程だ。
下半身こそ魚なものの、上半身は絶世の美女達なのだ。白狐は目を奪われ動けなかった。
そしてそのまま彼女達は木桶に張られている水にぷかぷかと浮かぶ卵をちょんとつつくと、そのまま白狐に群がり彼の衣服を脱がし始めた。
「ふにゃあ!?♡」
突然の行為に白狐が驚いている間に、彼女達はあっという間に彼の衣服を脱がし全裸にしてしまう。
白狐の可愛らしいお稲荷さんが人魚達の前に晒されるも、彼女は一切気にする事なく白狐の体をまさぐり始めた。
「にゃっ!♡やんっ♡」
「……♡」
人魚の一人が、白狐に囁くように何かを呟いたような気がしたが、彼にはその言葉は聞こえなかった……
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白狐くんには聞こえなかった人魚達の声。
『あれ?貴方もしかしてオス!?そうでしょ!?』
『魚欲しいの?え~とじゃあ……そうだ!お金の代わりに私達のタマゴに射精してくれない?』
『う~ん、伝わらないわねぇ……。別に了承なんか取らなくても拉致して射精させればいいだけじゃない!私ったらドジね♪』
ーーーーーーーーー海に一旦戻ってから
『おいテメーら!!今陸にチンポ来てっから攫うぞ!!(野太い声)』
『マジかよ大姉貴!?』
『うおおお若いチンポじゃねぇか!!誰か早くタマゴ産んで待機しとけ!』
『みんな!タマゴは産んだか!?』
『チンポビュービューさせてぶっかけさせるぞ!!』
ーーーーーーーーー白狐くんを攫ってから
『おいおい可愛いキツネちゃんじゃねぇかよぉ!』
『おい男の前で汚ぇ言葉遣いするんじゃねぇ、殺すぞ!』
『す、すまねぇ大姉貴……』
『えっと……言っても分からないと思うけど……これから君のおちんちんシコシコぴゅっぴゅってして私のタマゴにおちんちん汁かけてもらうね♡(乙女声)』
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