オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

文字の大きさ
16 / 120

その7 市井にて(1)

しおりを挟む
「美味しい!」
私はお忍び中。屋台のお肉は美味しい!!
日頃、マナーとかでお淑やかに食べてるがあまり食べた気にならない。
って食べ歩きが最高ね。

いつもなら一緒に来るルースはジェラルド卿が明日帰国するため、家族揃ってのランチで昼間は出かれられないらしい。
だから今日にしたんだけどね!
内緒ね。いつも一緒なんて肩苦しいわ。
!のびのびするわよ!

街に来るとルースはいつも
僕の側から離れないでと、がっしり手を繋ぐ。
もう15歳だがなんでそう子供扱いするのかしら。
ルースだって同い年じゃない。
まあ、それなりに私よりはしっかりしてると思うけど。
口うるさい母親みたい。
も前世は子供達に対してをそんなふうにしていたかも。
鬱陶しかったわね。
1人と言ってもちゃんと、侍女には付いてきてもらってるから大丈夫。

ドン!あら、だれかとぶつかってしまったわ。
「すみません。」
フードを深く被った男の人だった。

「申し訳ない。あ!えっ??ちょっと、ちょっと来てくれ」

私は腕をグイッて引っ張られてフルーツ屋の屋台の横に連れてこらた。
何この人!人攫い?いやっ~!

サンドラ、ああ侍女の名前ね、は私を見失っていないかしら。

「離してください!いやっ」
「シャーリー、ごめんごめん。落ち着いて私だよ。一人で何やってるんだ?」

彼はすっとフードを脱いで自分の顔を見せた。
フードの中から出てきたのは金髪の爽やかイケメンだ。
殿下~???!!

「いやっ、何って、ちょっと、ねぇ~。」
「ははん、お忍びか。大丈夫、わかるよ。毎日毎日屋敷の中じゃつまらないからね。実は私も同じなんだよ。」

私達は顔を見合ってクスッと笑った。

「殿下は何ですか?フードかぶっていかにも怪しい人じゃないですか?」
「その点君はちゃんと平民の格好だね。三つ編みかわいいよ。似合ってる。」

今日は三つ編みにメイクにはそばかすなんていれて庶民ファッションだ。

「殿下はどうにかならないんですか?いつもなんですか?」
「まあ、そうだが…」

すっと隣に体格のいいグレイの短い髪をした人がやってきた。

「レオンハルト様。」
「ああ、知り合いだ。大丈夫だ。」

ああ、護衛さんね。

「せっかくだから今日は君とご一緒してもいいかな?」
「その格好でですか?」
「あ、いや。この格好が嫌なら何とかしようか?」
「ま、いいですよ。
でも私は少し寄りたいところがあるんです。付き合っていただけるならいいですよ。」

仲間が一人加わった。チャラララーン、って感じね。

「パンヤさん!こんにちは。」
「おや、シャーリー。久しぶりだね。」
「学校が始まったがりなかなか来れないの。あ!カーターも久しぶりね。」
「シャーリーだ!」

小さな男の子が飛びついてきた。
パンヤさんはこの街のパン屋さんだ。
名前を聞いた時は少し笑ってしまった。
カーターはその息子だ。

「今日はまだクロワッサンは残ってる?パンヤさんのクロワッサン大好きなのよ。」
「おや?今日はいつもの子じゃないね?」

殿下はフードを脱いで頭を下げた。

「いつもの子のお兄さんかい?よく似てるね。」

少し殿下の顔色が変わったような気がした。

「でもいつもの子はいつも鋭い目つきをしているけど、彼はいいわね。
とても優しそうだ。シャーリーも結婚するんならこっちの彼にした方がいいよ。
絶対に幸せにしてくれそうだよ。」
「もう!パンヤさんったら何言ってんですか。」

ん?殿下の顔が明るくなった。ニコニコしてるわ。

「腰の調子はどうですか?今日も湿布を持ってきましたよ」
「いつもありがとうね。助かるよ。」
「こんなに美味しいパンを食べさせてもらえるんです。
早く腰治してどんどん作ってもらわないといけないですからね。
あ、この小麦粉はあちらの棚でいいですか?」
「ああ、いつもありがとう。」
「僕も手伝ってるんだよ!」
カーターが嬉しそうに隣にやってくる。
「カーターは良い子ね。
そんなお利口さんには飴を持ってきたから後であげるね。
これを片付けるまで待っててね。」

どこの世界でも子供は飴ちゃんに弱いのだ。

私がいつものように小麦粉を倉庫の棚にしまおうとしたら

「私がやるよ。」

すっと殿下が隣に立って持ってくれた。
さすがです。そんなさりげなく優しくされたら好きになってしまいますよ。
私は隣の砂糖が入っているらしい片手で持てる小さな袋を持ち上げた。

「あんたは王妃にはならないのかい?」

パッ、パンヤさん!何言い出すの!!
王太子殿下がいるのよっ!!
思わず袋を落としそうになってしまった。
隣で殿下も吹き出した。

「今の国王様も王妃様とても良い方で、少しは私達の暮らしも以前より良くなってはいるんだけど、あんたが王妃になったらもっと良くなりそうだ。この街のみんなそう思ってるよ。」
「無理です!無理!そんなの無理です!!
国王様も王妃様、そして周りの方もすごくすごく頑張っているんです。私なんか何も出来ないです。」
「だね。お忍びでばかりでお城には居なさそうだ。そんな跳ねっ返りの王妃なんていらないわね~。」
「でしょう~。私はこの方がいいんです。」
顔が引きつるわ。
はははっ。本当突然何言位出すのか。
焦ったわ。ん?殿下が隣でニヤニヤしてる。

「私はいつでも歓迎するがどうだ?」
「えっ!」
殿下は隣で大笑いしていた。
冗談か・・冗談だよね。
びっくりした。


その後も靴屋のパンキソンさん、食堂のヤードンさん、雑貨屋の…花屋の…まあいろいろ回ったわ。

最後に近くの孤児院にパンヤさんのパンを届けに行って終了だ。

「シャーリー、君はいつもこんなに回ってるのか?」
「あら?殿下。お疲れですか?」
「大丈夫だ。一応これでも鍛えてるからね。」
行く先々でいろいろ手伝わせてしまった。
しかしそれでも笑顔を崩さない殿下は流石だわ。

「さあ!行きましょうか?」
「へっ?今からまだどこか行くのか?」
「はい!近くに美味しいレストランがあるんです。
いろいろ力仕事までさせてしまい申し訳ありません。
疲れたでしょう?冷たい果実水でも飲みながら食事にしませんか?」
「それ、いい提案だね。」

もうお昼の時間はとっくに過ぎている。
私は目的の店に向かって殿下と歩き出した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...