オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

文字の大きさ
76 / 120

その26 サンルームにて

しおりを挟む
何やかんやあったが私とルースは学校へ行く日常の生活を取り戻していた。

しかし明らかにいつもの…とは違うのだ。
少し前とはかなり違うのだ。何だかルースがそばにいるのがくすぐったい。まあ、自分の気持ちを自覚してしまいましたからね。
誤魔化したとはいえ、ルースに好き好き好きと連発してしまったから恥ずかしい。

「ル、ルース近い…」
「だって仕方ないじゃないか。ダンスのレッスンなんだから。」
「あ、いや…だからね。」

新年に舞踏会がある。
この舞踏会は王宮の新年第一弾のイベントだ。王家への新年の挨拶はもちろん、16歳の成人の祝いも兼ねている。この国は新年で皆一つ歳をとる。まあ、みんな1月1日が誕生日ということだ。そして16歳からを成人としていてる。
つまりこの舞踏会はニューイヤーパーティーと成人式を兼ねたみたいなものだ。
舞踏会なのだから優雅に踊らなくてはならない。なんと言っても今年16歳になる私は主役なのだ。
しかしはっきり言って運動はまるっきしバツだ。
ダンスなんて踊れない。
前の交流会程度ならいいが、今回は王宮の舞踏会で優雅さを求められる。
撃沈だ。仕方ない…仕方ないが近いのだ。

「シャーリーのダンスに合わせれる人なんて僕くらいしかいないよ。諦めて。」
「仕方ない、仕方ない」

自分に言い聞かせる。恥はかきたくない。でもルースが近い。
「ん?また背高くなった?成長期ね。」
「シャーリーはもう伸びないみたいだね。」
もう少し女の子の扱い優しくならない?そんなんじゃモテないわよ!って、あ~モテてはダメだわ。気を取り直して…。
「そうなのよ。もうあと5センチは欲しいのに。悪役令嬢はモデルばりにスタイルよくなくゃいけないのに!」
「この頃あまり言わなくなったから諦めたと思ったよ。」
そう、確かにあの別荘からは考えていない。諦めたとかではない。まあいつもそう言ってたからついつい口から出てしまう。
私は違う目標を見つけた。目の前にいる人、ルースと共に歩いて行くと言う目標を。

「まあ諦めたというかもともと合わなかったのよ。無理に作り出す必要は無いってことに気づいただけ。本当にもっとこう!そうスタイル良くて、胸がどーんとあって、胸の大きく開いたドレスとか着こなしてみたいの!ん…痛っ。」
突然ルースが止まったから私は彼の胸に顔をぶつけた。
「ルース!突然止まらないで鼻打った!痛い!ん?どうしたの?」
ルースが真っ赤だ。
「あ、いや…ちょっと想像したというか、今当たってる胸は小さくないというか…前より大きくなってるから…違う…そういうことじゃなく…て…」
「ルースって…もしかして…むっつり?」
「あ、いや。違う…あ。」
そうなんだ。ルースの視線が私の胸にある。すぐさま両手で、胸を隠した。
「見ないで!スケベ!」

ルースは一度咳払いをしてから話題を変えた。
「あ、じゃあ、シャーリーは悪役令嬢やスローライフは諦めて僕と結婚してくれるんだよね?」
「へっ??」

…そうだ。そうなのだ。以前とここが大きく違うのだ。ルースがチャラい。チャラすぎる。それにすぐに…ほらほら…
「ん~…」
頬にキスされる。何かあるとすぐこうだ。押してくる。
「ル、ルース!」
こんなに押しの強いタイプだった?
まあ嫌がらない私にも非があるが。

「だって前に僕のこと好きって言ったよね?一緒にいてくれるんだよね?」
「あ、いや。あの時も言ったけど幼なじみとして好きであって、結婚とか…今はまだ」

あ、いや。
すごく考えていますが…。まだ言えません。

「あら。いつにも増して仲良しさんね。」
突然声をかけられた。
「レイクルーゼ様!」
私はワンコになって尻尾を振りながらレイクルーゼ様のもとに駆け寄った。
この頃お茶会に一緒に行ったり、度々お屋敷とかにもお邪魔して今ではかなり可愛がってもらっている。

平和な日常の中で以前と変わったことだ。

あと、変わったことと言えばルピアさんは家の都合で休学している。
ヒロイン不在だ。
悪役令嬢はやめたからいいか。

「また、邪魔しに来たんですか?」
「あなたも難儀ね。この天然相手では先は長いのかしら?」
「いいえ、すぐに決めますからご心配なく。」
「あらお手並み拝見というところね。」
「見ていてください。」
「ん?」
何のことだろうか?

「少しシャーリーを借りていいかしら?」
「少し!少しですよ。」
「まあ、心の狭い男は嫌われるわよ。ホホホッ」

いつも二人は何やら刺々しいやり取りを繰り広げている。
私は首を傾げるしかなかった。しかしいつも思うがやはり息合ってる。この間の取り方はナイスだ。漫才コンビできそうだわ。


「おめでとうございます!」
「ありがとう。」
レイクルーゼ様が紅茶を飲みながら答えた。
淑やかに紅茶を口に運ぶレイクルーゼ様は素敵だ。憧れるわ。
生徒会のメンバーのみが使えるサンルームでレイクルーゼ様とお茶をしている。
ジェシー様、カトレア様も一緒だ。

そう!
レイクルーゼ様は側妃に内定したらしい。
よかった!!

「素敵だわ。あの王太子殿下の隣にレイクルーゼ様って絵になるわ。」
「シャーロレット様もそう思うわよね!」
「ええ!もう早く婚約式にならないかしら。新年会で発表されて次の日が婚約式なんでしょう?わ」
「お二人で並んだ姿~あっ想像しただけで素敵。」

「まあ、シャーリーお世辞でも嬉しいわ。」
「いやいや、羨ましいです。私なんかレイクルーゼ様みたいに綺麗でもなければちんちくりんだし、スタイルも良くない。頭もお花咲いてますし…」
「よくわかっているじゃない。」
…即答、直球ですね。まあわかりきっているので気にはなりませんが。
「でも…いいんですか?隣国の王女様が正妃なんですよ?」
「あら、関係ないじゃない。ただの政略結婚でしょう?要はいかに殿下に愛されるかですわ。まあ負けはしないから安心してください。王宮に招待して差しあげるから遊びにいらっしゃってね。」
「もちろんです!毎日でも伺います。」

レイクルーゼ様は一度紅茶を口にした。 
「シャーリー、あなたはどうなの?あなたももう16歳におなりでしょう?いいかげんに夢見るのおやめになったら?ちゃんと現実をみたらいかがです?」 

少し前に魔科を選んだのはなぜか聞かれたから森で調合師になりたいからだと答えた。何ばかなこと言ってるの?って大きな声で笑われた。
恋愛や結婚に対して恐怖心があること、何もできないから、何も変われないから無理なんだと話した。

その時レイクルーゼ様はうなずきながら聞いてくれた。
しかし後から思ったのだが、15歳の女の子が嫌な経験をしたから恋するの怖い…自分はそこから動けないだなんておかしいと思わない?
たかだか15歳の女の子に何があったのって感じにならない?前世の記憶持ちなんて言ってない。
それこそ何言ってるの?ってことになるはずだ。
しかし
「そうね。いろいろあったのね。」
なんて言われた。

何か引っかかるのよね。
聞き流してくれただけよね?

「はい、この頃はそういう考え方を辞めました。何も出来ないんじゃなくて、しなかったんです。だからちゃんと考えてできることを始めていこうと思ってます。」
「あら?どうしたの。急に物分かりが良くなってないかしら?」
「今が幸せなんです。確かに怖い気持ちがあります。でも以前とは違うんです。だから自分の気持ちを無理に抑えるのは辞めました。結構私は幸せになれるんじゃないかな?って思えるようになりました。」
「それは彼のおかげなのかしらね?」
「だと思います。」
「あなたが良いならいいではなくて?でも何かあったらすぐに言いなさいね。」
「ありがとうございます。」
隣からカトレア様が援護してくれた。
「レイクルーゼ様、大丈夫ですよ。彼女なりに前に進んでいますわ。ねぇ、シャーリー。」
「はい。」

『あら、進歩してるじゃない。ルーズローツはそろそろ報われそうだわね。』

あの時から何だか吹っ切れた。
転生だの、物語だのに囚われすぎていたんじゃないかと思えるようになった。
ルースが見せた彼の闇は物語の中ではないのだ。彼が一生懸命に生きている証拠なのだ。物語の中で生きているのではない。この世界に生きているのだ。みんながみんな生きているから私も頑張らなきゃいけない。逃げちゃ駄目だ。頑張ってみてダメならまた考えよう。

私はあの時思ってしまったのだから。

ルースと共に生きていきたい。

とにかく前世とは違う。私はこの世界でシャーロレットとして未来を、前を向いてあるいていこう。

彼は違う。私も違う。出来ることも違う。必ず大丈夫だと信じよう。信じていくことから始めよう。

しかし彼に気持ちを伝える前に一つだけやりたい事があった。
彼に自分の気持ちをちゃんと言って、彼を受け入れるのはその後。
そう決めていた…決めていたのだが…
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...