79 / 120
小話 氷の気配
しおりを挟む「ようやくラリルリ草が手に入るようになったのね。よかった。」
「もうあの時はルキシス様のおかげだよ。ほらおまけしておいたよ。」
花屋のマチルダさんは今日もたくさんの花を用意してくれた。
トムは元気そうだ。やっぱりトムには今日もアメをあげた。
「レオ様、ルキシス様、ありがとございます。」
今日は街に来ているが、何故かまたこの二人と遭遇している。
レオンハルト王太子殿下とはよべないのでレオ様と呼ばせていただいています。
そして何か家で用事があるルースにかわりジョーカスがついてきてくれていた。
ルキシス様は花持ち係と化している。
「姉さん、なんで王太子殿下がいるの?」
ジョーカスが小声で話してきた。
「暇なんじゃない?」
小声で答えた。が…
「シャーリー…聞こえたがそんなことはないよ。」
「せっかく姉さんと二人きりだと思ったのに。」
ジョーカスの緑色の瞳が少し細くなった。
「姉さん、ねぇこれ見て!」
ジョーカスが手を引いて雑貨屋の前まで連れて行く。
「かわいいわね。」
「姉さんに似合いそうだよ。」
蝶のモチーフの付いた髪留めだった。銀色の針金を幾度となく合わせて作った蝶の真ん中には綺麗な緑のガラス玉がはまっていた。
「姉さん、いつも青色ばかりだからたまには他の色はどうかな?」
「ん…一応他の色とかも持っているんだけど、ルースが青いリボンばかりくれるからどうしても寄ってしまうのよね。」
「ねぇ、姉さんに僕が買ってあげるよ。」
「あら、嬉しいわ。ふふふっ。」
「ふーん、女はこう言うのが好きなのか。」
「あら?レオ様も誰かに贈り物かしら?」
「でも金の方が似合いそうだな。」
ん?社交辞令で言ってみただけだけど?
誰に似合うのかしら?ふふっ。
「ルキシスはどう思う??」
「ん…確かに金です。あっあそこに同じものの金がありますよ。ほら、ガラスの色もいろいろあります。」
レイクルーゼ様よね?
殿下は金で水色のガラス玉のものをお買い上げしていた。私もジョーカスにプレゼントしてもらった。
私のものは銀で緑だ。多分レイクルーゼのとお揃いだ。
何だが嬉しい。
パンヤさんのクロワッサンと花を持って孤児院に行く。
「シャーロレット様、いつもありがとうございます。」
孤児院は教会の敷地内にある。牧師さんが挨拶しにきた。
「あ!シャーリーだ!」
「シャーリー!今日本もって来てくれた?」
「クロワッサンだ!」
子供達が私を囲む。何だか保母さんだわね。
「お前のお姉さんは本当に人気者だな。」
「はい、自慢の姉です。」
「まあ、その程度に留めておけよ。」
「そのつもりです。姉が幸せならいいんです。」
いろいろ回っていたら夕方になってしまった。
「王太子殿下、ルキシス様、今日はお付き合い頂き有難うございました。」
「歩いて帰るのか?」
「ええ、そんなに遠くないですから。」
「しかしもうすぐ暗くなるぞ。」
「確かにそうですね。」
「殿下!」
ルキシス様が何やらすっと体の向きを変えた。さすが騎士様だ。王太子殿下の前に出る。
「殿下、シャーロレット譲とジョーカス様を後ろに。」
え!私達殿下に守られるの?あ、いや恐れ多すぎます。
殿下が私達の前に出る。更に私の前にジョーカスが出る。
何があるの?誰かいる?
もしかして殿下が狙われてるの。
ルキシス様が腰につけている剣に手をかけた。カチャっと剣をゆっくり鞘から抜く音がする。
殿下もゆっくり剣に手を回す。
シーンと静まり返る。わたしには何も感じない。
痛いくらいに張り詰めた空気。
「姉さん、何か寒くない?」
夕方で昼間より寒いことは寒いがちゃんとコートも着てるし、さっきまではそんかに感じなかったが寒くなった気がする。
ルキシス様が息を吐いた。
剣から手を離して少し脱力した。
「殿下もわかりましたか?」
「ああ、殺気は感じたが攻撃する気配はなかったな。」
「誰だ?二人いたような気がするが一人は気配しか感じなかった。」
「ん?シャーリー寒いのか。」
私は腕を差すっていた。しかし
「あら?もう大丈夫だわ。ねぇジョーカス。」
ジョーカスもうなずいた。
私達は結局殿下が乗ってきた馬車で一緒に家に帰ることになった。 お忍びなので豪華でなくて安心した。
丁寧にお礼を言って彼らと別れた。
かなり狭かった。特に殿下とルキシス様が隣同士だったので私達より窮屈だっただろう。ジョーカスが私の隣を変わろうとしなかったから。すみません…。
「ルキシス、さっきのはどう思う。」
「寒かったと言っていました。しかし私は感じませんでしたが。」
「私もだ。シャーリー、ジョーカスの周りだけ?氷…まさかな。上に報告はしておけ。」
「かしこまりました。狙いは殿下でしょうか?シャーロレット嬢でしょうか?」
「多分…シャーリーだと思う。ザイン家には別に使いを送れ。何か嫌な感じがする。何故シャーリーの周りだけ寒さを感じた…私はすぐ前にいたはずだが…」
※※※※※
川の音がする薄暗い部屋に男と女は戻ってきた。
「あの騎士ヤバくない?気づかれちゃったわね。」
「だからすぐ転移した。」
「あれがザイン家次男の弱点シャーロレット。覚えた?」
「さっきマーキングはしておいた。」
「まあ、ぬかりないのね。あいつを攫えば助けにくるはずよ。」
「ザインは絶対にくるのか?」
「来るわよ。なんたってザイン家の末っ子ルーズローツの愛しの婚約者なんだから。ルーズローツが一人でくるとは考えられない。絶対ザイン家が動くわよ。」
「わかった。10日後。」
「情報提供したんだから約束は守ってね。」
「大丈夫。」
「シャーロレットは生かしては帰さないでね。約束よ。」
101
あなたにおすすめの小説
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。
困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。
さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず……
────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの?
────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……?
などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。
そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……?
ついには、主人公を溺愛するように!
────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる