オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

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幕間 チャールズ=ボガルノのつぶやき

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「そうか。明後日行くんだ。」
「いろいろお世話になったわ。」
「思えば長かったが、よかったな。」
「ありがとう。」

彼女は笑った。

「本当、あなたが突然現れた時は驚いたけどね。一言目があれだからね。」
「ふふふ。あの時はごめんなさい。ついこの間も他の人に同じようなこといわれたわ。」
「謝ることはない。君があの時現れてくれてよかったんだ。
では、私も明後日に終わらせることにするよ。準備はできているからね。君が旅立つ時に合わせようと前から用意してたんだ。
さあ、ゲームは終わらせよう。」

彼女との出会いは私が12歳、彼女は5歳の時だった。
私の養父は小さな町の教会の司祭だった。

彼女は最近、近所に引っ越してきたようで両親につれられて教会にやって来た。それからは毎週のよう来るから子守程度に遊んだ記憶がある。

しかし養父が事故で亡くなり、私は養父と知り合いだと言うボガルノ公爵家に引き取られた。
建前は懇意にしていた友達の忘れ形見。
実際は浮気相手の子供を里子に出していたが、里親が亡くなったので仕方なく引き戻したというところだ。当然浮気相手の子供に公爵夫人が愛情をもって接してくれるわけではなく、冷たい目に怯えながら生きてきた。

必死に勉強して首席で卒業し、先生の職についた年に彼女は私の前に再び現れた。私は18歳、彼女は11歳になっていた。
髪の色が印象的で、母親に似ていたのですぐに彼女だとわかった。

「私を買って。」

再会した一言目がその言葉だった。
話を聞いていく内に彼女は意外なことを言いだした。彼女は異世界からの転生者で先日、目が覚めたら全て思い出し、ここが自分の作ったゲームの世界なのだと言う。

「あなたが私を買ってくれるなら私が持っている知識を全部あげる。私は隣国の王妃になりたいの。だから私に手を貸して。あなたをこの国に一番の権力者にしてあげる、そしてあなたの復讐を叶えてあげる。」

あの当時の私は狂い始めていたのかもしれない。そんな彼女の話をすんなり受け入れ、公爵家を乗っとる計画をたてた。

父親である公爵は無理矢理抱いて孕ませてしまったメイド、そう私の母を殺した。
公爵から身を隠してひっそりと暮らしていた私達母子の前にあいつが現れたのは私が5歳の時だった。夕食時にいきなり家のドアを開けて入ってきた。
逃げるように私を庇った母は公爵に後ろから切られて私を抱きしめたまま事切れていた。

目の前で血だらけになり動かなくなった母に泣きつく私をあいつは無理やり母から剥がした。
あいつはゴミを捨てるかのように母を床に投げ捨てた。

その光景はいまでもはっきりと思い出す。
その時の公爵の嘲笑った顔を私は一生許さない。

当時公爵と正妻の間にはまだ子供がいなかった。たまたま私が男だったから殺されなかったが女なら母と一緒に殺されていただろう。その後正妻には無事男の子が2人産まれたから私は必要なくなった。
しかし一応公爵の血は引いている。万が一の為に生かしてくれているのだ。

育ててくれた恩?そんなものあるわけ無い。愛情を貰った記憶などかけらも無い。
記憶にあるのは私達母子を物としか見なかったあの目、母を嘲笑い見下したあの目だ。

必ずあいつに復讐する。
そう思いだけで生きていた。
その為に私には力が必要だった。

彼女は先の未来、自分が隣国の王妃になる為、同じく転生した妹がこの国に王妃になる為に協力して欲しいと言った。
現宰相の地位にあり飛ぶ取りを落とす勢いのボガルノ家の表の権力と裏の権力が欲しいと言うのだ。
ボガルノ家は成り上がりの公爵家だ。
裏ではかなり危ないことをしている。陛下やその重臣達が気付かない所で裏の力を伸ばし、宰相としての地位を確固たるものにしている。
みんな表の顔に騙されているだけだ。自分の子を生んだ女を簡単に殺すぐらいだ。さぞかし他にもいろいろやっているんだろう。

さらに彼女はヴィクセレーネ公爵家のシャーロレットをルーズローツルート入れなければならないとも言った。ルートとは?と思ったが、結局シャーロレットとルーズローツを恋仲にするばいいのだと理解した。

利害は一致した。

私は彼女を買った。協力者として手を組んだ。
ザイン公爵とヴィクセレーネ公爵を何とか会わせて欲しい。それが彼女が私にした初めてのお願いだった。

18歳で卒業したばかりで何の力もない私だったが、彼女の知る情報を駆使してあいつが一番信頼している片腕の秘書をこちら側につける事ができた。
実はそいつがこの家の公爵夫人と裏でできていて、跡取り息子がその秘書との間の子供だなんて情報をよく持っていたな。

裏で手を回し経済的に話し合いが必要な問題を起こした。
会議を開かせた上、二人を隣の席に座らせるように指示した。
たまたま予定をブッキングさせておいて公爵の代理として私が出席した。そして何事もなくヴィクセレーネ公爵の隣に座りシャーロレット嬢の話題を出した。

やはり彼女の前もって教えてもらっていた情報通り幼なじみが欲しいと言っていることについて公爵は悩んでいた。

ここぞとばかりにザイン公爵に同い年の子がいるのでは?ちょうどいいんじゃないかと、ヴィクセレーネ公爵の隣に座っていたザイン公爵に問いかけた。

ザイン公爵ははじめ消極的だったが、私が巧みに話しかけたら息子を連れてヴィクセレーネ家に遊びに行くことに約束してくれた。
ヴィクセレーネ公爵は喜んでいた。

そうやって私は何とか彼女の最初のお願いを叶えることができた。

それからは面白いように思い通りに事が進んでいった。
彼女はみんなが知らないような情報を膨大に持っていた。
私はまるで公爵家とは関係ない生活をしているかのように教師として過ごすことに努めた。
いずれ復讐を果たす為に息を潜めていた。

いつのまにか彼女はルーズローツとも手を組んでいた。
シャーロレットを手に入れる為利害が一致していたのだ。

ザイン公爵家王家の闇、陛下の隠し子。
私にとっても強い味方を手に入れてくれた。いつのまにかシャーロレットはルーズローツの幼なじみ兼婚約者になっていた。

彼女は着々と自分の目標に進んでいった。
私も彼女からの情報を使い、着々と公爵の裏の権力を自分のものにしていった。
高笑いするあいつが地獄に堕ちる日は目の前になった。

今頃、王宮の新年の舞踏会でレオンハルト王太子殿下の婚約が発表されているはずだ。あいつもさぞかし楽しんでいることだろう。だって表面上はアインシュバッツ侯爵は自分の手駒だと思っているのだから。

あー楽しい。実はアインシュバッツ侯爵と組んでいるのは私なんだから。アインシュバッツ侯爵は以前あいつと組んで美味しい蜜を吸っていた時期があった。今ではそれをネタに脅され、いいように使われていることに不満を感じている。
娘が王妃になれば立場は逆転するかに思われるがあいつからは釘を刺されているようだ。そんな抜け目のないところは親子なんだなと思う時がある。
しかし私はあんなに間抜けではない。
私はそこを突いて彼を味方につけた。

今日は思いっきり高笑いしておけ。絶頂から地獄へ突き落としてやる。

明後日、彼女は隣国に旅立つ。
だから私も明後日に全てを終わらよう。
悪事がバレて項垂れるがあいつが見れるのは今から楽しみだ。
アインシュバッツ侯爵やその他の人の罪も一緒につけてやろう。
まあ、命だけは助けてやる。
ああ、そうだ。せっかく婚約者まであつらえてもらったのだから早く彼女をこの屋敷に呼ばなくちゃいけない。
私の婚約者は侯爵の令嬢だ。まあたまに会うことがあるが綺麗で気さくないい子だ。世間知らずだから私には都合が良い。

私達のゲームは終わるんだ。
ああ、ゲームと言うと彼女はいつも否定する。
ほらまた、言い出した。いつものセリフ。

「ここはゲームの中の世界だけど私達は登場人物じゃないわ。私達はこの世界に生きている心を持つ人間なの。ゲーム内の知識を利用させてもらって自分の好きな道を進んだだけ。これからは自分で未来を切り開いて生きていくわ。終わりじゃないわ、始まるのよ。私達の人生なんだから楽しまなきゃ。ふふふっ」


では明後日のシナリオでも復習しようか。
その前に…

「君に会えてよかったよ。」
「私もよかった。」
「ありがとう。幸せに。」
「あなたもね。」
彼女はベッドから起きて、水差しのあるテーブルまで移動した。
私もゆっくり立ち上がり、水を飲んでいる彼女を後ろから抱きしめた。
「しかし残念ですね。もうあなたを抱けないのですか。」
「仕方ないわ。私も残念なんだけどね。」
「まだ時間ありますよね?」
「ふふふ、そうね。」

薄暗くなった世界を夕日が赤く染め上げている。
雲の隙間から赤い光が差し込んでいた。
かすかに鳥が羽を広げと飛び立った音が聞こえた。
明後日はきっと最高の日になる。

その前に、最後の彼女をゆっくり堪能させてもらおうか。








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