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第5話-1 記憶喪失でもがんばりましょうか。

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次の日、私はジェイデン殿下の魔法実験室に行ってみた。
王宮の中庭にポツンとある小さな小屋だ。
ここで私は爆発に巻き込まれて今の状況になったんだ。

扉には『実験中!立ち入り禁止』と、書かれている。
私はくすりと笑った。

「ジェイデン殿下。」
「ああ、ラティディア嬢。もう大丈夫?」
「ええ、まだタンコブはありますが、だいぶおさまりました。
「本当にすまなかった。」
「へぇ、ここで薬を作るんですか?
ジェイデン殿下は魔法をすごく使いこなせるんですね。」
「ああ。って?君もすごいけど…。」
「そうなんですか?すみません記憶がないから…」
たしか生活魔法くらいは使えたはずだ。
しかしその程度だ。
「学園では魔法の講義に関してはなかなか良い成績だったけどな。結構バンバンっと攻撃魔法も簡単に出来てたけどな。かなり笑みを浮かべて…。少しゾクリとしたよ。まだ思い出さないのか?」

ゾクリとって・・・なんか想像するだけで私の5年間は怖いのですが・・。

ジェイデン殿下がすごく申し訳なさそうな表情をして私を見ていた。

「気にしなくていいですよ。たった5年間の記憶です。
たいしたことないです。きっと体や頭は覚えています。
勉強も教科書みれば大体わかったので安心しました。大丈夫です。そう昨日は教科書をありがとうございました。」

そう昨日エディシスフォード殿下に夕食の時に教科書を見たいとお願いしていた。
その後すぐに使用人の方がジェイデン殿下の教科書を持ってきてくれた。

「もう読んだの?」
「というかジェイデン殿下のものを借りていたら申し訳ないので今日、公爵家から持ってきてもらえるはずです。
ぺらぺらと見ましたがだいたいわかりました。
私って成績良かったんですか?」
「あ、下から3番目だったな・・・。」
「えっ?でもほとんど全部わかりましたよ。」
「まあいろいろあるからね・・・。わからないよりは分かる方がいいよ。あの学園は貴族の学歴のためにあるから別にたいしたことやってないけどな。だから俺も研究があるときは休みがちなんだ。兄上も仕事でなかなかいけないみたいだ。」
「じゃあ私が少しの間休んでいても大丈夫そうですね。
それと、記憶の事なんですが何だかすっきりした気分なんですから。
反対に感謝したいくらいです。」

ジェイデン殿下がかなり気にしているのでこのくらい言っておけば大丈夫だろう。
「そういってくれるだけでうれしいよ。ありがとう。」

ジェイデン殿下の実験室を見回した。
いろいろな草や液体がある。
紫色の液体。緑色の液体。
窓から差し込む光に照らされてきらきら光って綺麗だ。
ん…触って爆発でもしたら危ない。見てるだけにしておかないと。
しかしいっぱい物があるわね。

ふと机の上をみた。半分以上本に埋もれている。
「本もたくさんあるのですね。」
「まあいろいろ勉強しないといけないからね。」
「・・あなたはかなり頭が良さそうですね。」
「いい・・というよりもう知っていることばかりだからね。」
「ふーん。今は何を作っているんですか?」
「魔除けの薬かな?何だかこのところ少し魔物の動きが激しくてね。割と王都近くにもくるんだ。」

ええ!王都に魔物が出るんですか!
たしかに魔物はいましたが森とかだけでしたよね?

「最近多いんだ。市民がおちおち寝れないみたいなんだ。王宮だと結界があるから大丈夫なんだけど、街は何もないからね。」
「やっぱりジェイデン殿下は素晴らしい方ですね。市民の方のことを考えているのですね。」
「はっ、えっ?」
「私おかしなこといいましたか?」
「あ、いや。そうだな…。ああ、いや、いいんだ。」
おかしなジェイデン殿下。
というか照れてる?なんだかかわいい。
って王子様に向かって何考えているんだ。

「あの。魔法ってどう使うんですか?教えてもらえますか?先日聞いたのですがもう少し教えていただきたいのですか?」
私はワクワクして聞いてみた。
「難しいよ。」
「でも私はできてたんですよね?コツをつかめば思い出します。先生より強くなっても後悔しないでくださいね。お願いします!」
「まったく生意気な生徒だな。」
なんだか同じ年なのか気負いがないのか話しやすい。
少し記憶が無くて不安とかだっだけど吹き飛んでしまいそう。なんだか彼と話すのは楽しい。

「あのその前に少しこの本を整理していいですか?」
「ああ、ありがとう。たしかに乱雑におかれているだけだから。よかったらお願いするよ。」

「は?もう終わったの?」
「右側が薬草についての本です。この辺が魔法。で下の方が精製学、あとは専門的過ぎて分類できないのものです。すみません。私知識がないので・・・。」
「へえ。さすが図書委員だね。」
「私図書委員なんですか?」
「ああ、そうだよ。本好きなのはかわらないね。」
「へっ?あ、見出しを作りたいのですがここら辺にある薄い板を使ってもいいですか?」
「ああ、どれでも使っていいよ。」
「こうやってやっておくと探しやすいですよ。目でみてすぐわかるように色も分けておきますね。」
「すごくいろいろ気づくんだね。やっぱり得意だね。」
「やっぱり?」
「あ、いや。以前からそう思ってはいたけれどもあまり人前ではやってなかったよね。本当に別人になったようだね。」
「は?もう昨日から何回言うんですか?何だか自分が5年間何していたのか知るのが怖くなりました。
エディシスフォード殿下と二人して言うなら人違いじゃないんですか?
それともその5年間私は誰かに操られていたんですか?」
「操られ・・か。そうかもね。」
「怖い魔女とか、魔王とかかもしれませんよ。」
「案外かわいい女の子かもしれないね。」
「へ?」

私はその日、ジェイデン殿下に専門的なことを訪ねながら本を綺麗に並べた。
何かやり切った感があった。

何度もすごいと褒められて気分がいい。
「ジェイデン殿下、ありがとうございました。
でも、すみません。今日一日お仕事の邪魔をしてしまいました。」
「こちらこそ助かったよ。」

「そういえば、そのペンダントをちょっと見せてくれるかな?」
やっぱり気にしてたんだ。あの時かなり見ていた。
私は首から外して渡した。
「やっぱり…」
ジェイデン殿下は少し光にかざしてみた。
少しきらりと黄色く光った。
「何かありました?」
「ちょっと珍しい石だなと思って…ごめんね
ありがとう。」

ジェイデン殿下はペンダントを返してくれた後すごく機嫌が良かった。
隣に置いてあった深緑の泡の出ている飲み物を一気に飲み干した。
何だかまた怪しい飲み物です。

「あ、ラティディア嬢。明日も来る?」
「来てもいいですか?」
「遠慮することはないよ。明日は魔法教えてあげるよ。」
「えー、でもまた爆発に巻き込まれたくはないですから…」
「滅多にはならないよ。」
「…一度あることは二度あるって言うでしょう!」
「でもニ度あることは三度あるともいうよ。」
「確かに…」

私達はお互いにフフフっと笑った。

「ふふ、なんかいいね。」
「えっ?何かいいました?」
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