星明かりの記憶

もり ひろかず

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エピローグ: 星明かりの記憶

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暗い夜、風一つない静かな海辺。波は優しく寄せては岸に触れ、また引いていく。その音はまるで深い息のように、空気の中に広がっていく。そこに私は立っている。私の顔は空一面に広がる星明かりの中で、かすかに照らされている。星たちは私に近づけない過去の傷のように、冷たい光を投げかける。

私は記憶の彼方に埋もれた過去を必死に思い出そうとする。愛した人の名前、共に交わした笑いと切なさ、温かな手のひら。しかし、私の心の中にはその全てが薄れ、時にはまるで夢のように消え去ってしまう。彼は海を見つめ、唇を震わせながら呟く。

「どうして記憶が消えてしまったのだろう?」

海の波音は私の心の奥底まで響き渡るように感じる。その音が私の傷をさらに深く掘り進め、目の前に浮かぶ懐かしい顔がぼんやりと消えていく。静かな夜、私の視線は遠くの星明かりに向けて伸びていくが、依然として何一つ掴むことのできない虚無感だけが私を包み込む。

「記憶を取り戻したい…」私はもう一度小さく呟きながら、頭を下げる。その瞬間、星明かりが一瞬瞬き、まるで私の心の中に応答しているかのような感覚が湧く。少しの間、時間が止まったようなその瞬間が過ぎ、私の視線は夜空から落ちる小さな光を追いかける。その光は星明かりというよりも、何か別のもののように、近くで輝いているようだった。

私は慎重に足を踏み出し、その光に向かって歩き始める。地面に落ちた小さな光を追っていた私は、ふと目の前にどこかで見覚えのある物が見え始める。その光は古びた日記帳に触れていた。私の指先が日記帳に触れると、かつて大切にしていた記憶が綴られたそのページたちが浮かび上がる。私の心は震え、日記帳を開いたとき、失われていた記憶がパズルのように一つ一つはまっていくような感覚を覚える。

日記帳の中には、愛していた人と共に過ごした日々がそのまま収められていた。その人たちの声、温かな笑顔、手をつないで歩いた道…私は目を閉じて、その記憶を反芻しながら、過去の傷と向き合う。いつの間にか、切なさと痛みは一つとなり、私を包み込み、懐かしい人の名前を呟く。

「記憶は戻ってくるのだろうか?」私は独り言のように呟きながら、日記帳を手にしたままその場に座り込む。そして再び空を見上げる。星明かりは依然として彼に向けて光を投げかけ、終わりのない問いに対する答えを待っているようだ。

私は深い息を吐きながら思いにふけると、このシーンはゆっくりと終わりを迎え、第一のエピソードが始まる瞬間が近づいてくる。記憶を取り戻し、過去と向き合う旅路が今、始まったのだ。
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