スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔

文字の大きさ
3 / 10

2 傀儡??

しおりを挟む
 今日は何度も「ご機嫌だな」「嬉しそうだな」「調子がいいな」などの言葉を投げかけられた。
 そんなに自分は分かりやすい人間だっただろうか。

 ギルは自分の顔に手を当てて考える。

 村の住人の雑用をこなし終え、リーナの家の裏にある開けた訓練場へ足を運ぶ。
 ギルは、リーナの父であり、彼の師匠でもあるグランにだけはスキルのことを話そうと思っていた。

 「おっ、来たかギル。とりあえず今日は20周な。」
 「わかった。おじさん、ちょっと話しがあるんだけど。」
 「なんだ? お前が人に相談なんて珍しいな。そういえば、今日はギルがご機嫌だーってジル爺さんが言ってたぞ。」

 訓練場とは名ばかりの草1つ生えていない広場を走るギルとグラン。
 一周100メートルはある広場を走りながら話をする二人。

 「実は、スキルを取得したんだ。」
 「・・・なに? ・・・お前が冗談を言うのは珍しいな。」

 グランは、普段うそをつかないギルがいったことを一瞬信じるが、すぐに冗談だろうと判断する。

 「まあ、そうなるよね。今晩、この広場でどんなスキルが実際に試したいんだ。あまり知られたくないから見張ってほしくて。」

 ギルは、真剣な表情でグランの眼をまっすぐ見る。

 「冗談、ではないんだな。」

 ギルは黙ってうなずく。

 「・・・わかった。ただし、条件が1つ。明日の夜から毎晩そのスキルの訓練をする。おまえがきちんとスキルを扱えるように。いいな?」
 「うん。俺から頼みたかったくらいだよ。」
 「よーっし。なら今日からは訓練は厳しめでいかないとな!」
 「・・・それ本気で言ってる?」

 楽しそうな良い笑顔でうなずくグランとは対照的に顔面蒼白になるギルは、それでもなお走り続けていた。





 夕食を終えたあと、ギルは屋根裏部屋へ入り、自分のスキルを確認する。

 「ふぅ。どんなスキルなんだろう。なんとなくイメージはあるけどな。」

 そういいながら、ギルはステータスを開き、そっとスキルをタップする。

     『スキル:魔導傀儡』
   HPとMPを消費して傀儡を生み出す。
   生み出した傀儡は異空間に無制限に収納可能。
   『魔導傀儡』固有のポイントで傀儡を強化・多様化することができる。
   スキルポイントを消費することで、生み出せる傀儡が増える。
   一日一回、消費なしで生み出せる傀儡を増やすことができる。

 ・・・とんでも、ないな。

 つまり、毎日少しずつ傀儡を生み出して保管し、必要に応じて生み出せる、ということだ。
 たしかにこれは、使い方次第では大陸を支配することも可能だ。

 時間をかけて傀儡を増やし、首都や貿易の重要な場所を傀儡の軍団に襲わせれば良い。
 それを繰り返していけば、いずれは大陸の支配も可能だろう。
 途中で暗殺されたりなどを無視すればだが。

 まあ、俺は大陸の支配なんてするつもりなんて無いが。

 スキルについて考えるうちに日が完全に落ち、周囲は暗闇に包まれた。

 「それじゃあ、いくか。」





 「大きな音がでるタイプではないんだな?」
 「多分。とりあえず、いまから試してみる。一度も使ったことがないからどうなるかは分からないけど。」

 小さなろうそくの明かりを手にグランがたずねる。

 返事を返したギルは深呼吸をして、人生初となるスキル行使をする。

 「『魔導傀儡』!」

 ヴン

     【魔導傀儡】
   傀儡:コスト10/0
    ☆1 小人:コスト3
       人:コスト10

   SPスキルポイントガチャ
    無料     1回   可能
    SP1消費  115回 可能
    SP5消費  23回  可能
    SP10消費 11回  可能

 「・・・え?」
 「・・・まさか、全部うそか?」

 スキル名を口にしたにもかかわらず何も起きないので、グランは怒気を含んだ顔でギルを睨む。

 しかし、スキル名を口にした瞬間にスキルの扱い方が頭の中に入り込んできたギルは、グランを押しとどめる。

 「ちょっとまっておじさん。今理解した。このスキルがどんなものなのかを。」
 「・・・・・・。」

 まだ半信半疑なグランを納得させるために、ギルは今度こそと気合を入れる。

 念のため、コストが低い『小人』にした方がよさそうだ。

 「『魔導傀儡』【小人】召喚!」

 ギルの言葉と共に、広場の地面に直径30センチほどの魔方陣が現れ、そこから、白い魔導傀儡がゆっくりと浮かんできた。

 グランは、眼を剥いてその光景を凝視するが、ギルはそれどころではなかった。

 HPとMPを消費する、っていうのは、こういうことか!

 自分の体から生命力が魔方陣へ吸い込まれていく感覚に倒れそうになるが、根性で踏ん張り最後まで耐え切る。

 魔方陣から全身を現した魔導傀儡に、これがスキルか、と思いながら、ギルは倒れこんだ。





 「おいギル! 大丈夫か!」

 何度も揺さぶって起こそうとするが一向に目を覚まさない。
 幸い心臓も動いているし息もしている。
 しかし、魔導傀儡を生み出すと同時に倒れこんだギルの顔色は青白い。

 クイクイ

 自分の袖を引っ張る存在に気づくグラン。
 そこには、ギルが生み出した魔導傀儡がいた。

 50センチほどの大きさで、頭、胴体、上腕、指、の四つのパーツで構成されている。
 頭部の真ん中には、眼と思わしき単眼がついており、胴体の中心には核があった。
 それぞれのパーツはつながっておらず、少し空間を空けてまるでつながっているかのような動きをしている。

 スッ スッ

 その小さな魔導傀儡は、ギルを、その次に家を指差した。

 「家へ入れろ、ってことか?」

 コク

 首の無い頭をうなずかせる魔導傀儡。

 とりあえず家へ入れて寝かせなければならないということは同意したグランは、ギルを自分のベッドの上へ静かに寝かせ、上から毛布(という名の布)をかけた。

 「ふー。顔色も戻ってきたし、一安心だ。」

 ペシッ

 魔導傀儡がグランの足をその小さな手で殴った。
 弱すぎて、はたいた、というべきだが。

 「なんだよ。」

 魔導傀儡はギルや毛布(ただの布)を指差しながら必死にジェスチャーする。

 「なんだなんだ? どういう意味だ?」

 なんとか魔導傀儡の意思を読み取ったグランは、ギルにもう2枚毛布(布)をかける。
 それをみた魔導傀儡は満足そうにうなずき、ギルのそばに浮いた。

 まるで護衛をしているようで、グランは笑ってしまった。

 殴ってもはたいたようにしか感じない程度の力しかない小さな人形が、健気に主人を守ろうとしている。

 それを見たグランは、この魔導傀儡をかわいいな、と思った。

 「うちの娘にゃかなわねーけどな。」

 ちなみにグランは親バカだ。


   *****


 屯神 焔です。
 読んでくださり、ありがとうございます。
 誤字脱字の報告をしていただければ嬉しいです。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...