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2 傀儡??
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今日は何度も「ご機嫌だな」「嬉しそうだな」「調子がいいな」などの言葉を投げかけられた。
そんなに自分は分かりやすい人間だっただろうか。
ギルは自分の顔に手を当てて考える。
村の住人の雑用をこなし終え、リーナの家の裏にある開けた訓練場へ足を運ぶ。
ギルは、リーナの父であり、彼の師匠でもあるグランにだけはスキルのことを話そうと思っていた。
「おっ、来たかギル。とりあえず今日は20周な。」
「わかった。おじさん、ちょっと話しがあるんだけど。」
「なんだ? お前が人に相談なんて珍しいな。そういえば、今日はギルがご機嫌だーってジル爺さんが言ってたぞ。」
訓練場とは名ばかりの草1つ生えていない広場を走るギルとグラン。
一周100メートルはある広場を走りながら話をする二人。
「実は、スキルを取得したんだ。」
「・・・なに? ・・・お前が冗談を言うのは珍しいな。」
グランは、普段うそをつかないギルがいったことを一瞬信じるが、すぐに冗談だろうと判断する。
「まあ、そうなるよね。今晩、この広場でどんなスキルが実際に試したいんだ。あまり知られたくないから見張ってほしくて。」
ギルは、真剣な表情でグランの眼をまっすぐ見る。
「冗談、ではないんだな。」
ギルは黙ってうなずく。
「・・・わかった。ただし、条件が1つ。明日の夜から毎晩そのスキルの訓練をする。おまえがきちんとスキルを扱えるように。いいな?」
「うん。俺から頼みたかったくらいだよ。」
「よーっし。なら今日からは訓練は厳しめでいかないとな!」
「・・・それ本気で言ってる?」
楽しそうな良い笑顔でうなずくグランとは対照的に顔面蒼白になるギルは、それでもなお走り続けていた。
夕食を終えたあと、ギルは屋根裏部屋へ入り、自分のスキルを確認する。
「ふぅ。どんなスキルなんだろう。なんとなくイメージはあるけどな。」
そういいながら、ギルはステータスを開き、そっとスキルをタップする。
『スキル:魔導傀儡』
HPとMPを消費して傀儡を生み出す。
生み出した傀儡は異空間に無制限に収納可能。
『魔導傀儡』固有のポイントで傀儡を強化・多様化することができる。
スキルポイントを消費することで、生み出せる傀儡が増える。
一日一回、消費なしで生み出せる傀儡を増やすことができる。
・・・とんでも、ないな。
つまり、毎日少しずつ傀儡を生み出して保管し、必要に応じて生み出せる、ということだ。
たしかにこれは、使い方次第では大陸を支配することも可能だ。
時間をかけて傀儡を増やし、首都や貿易の重要な場所を傀儡の軍団に襲わせれば良い。
それを繰り返していけば、いずれは大陸の支配も可能だろう。
途中で暗殺されたりなどを無視すればだが。
まあ、俺は大陸の支配なんてするつもりなんて無いが。
スキルについて考えるうちに日が完全に落ち、周囲は暗闇に包まれた。
「それじゃあ、いくか。」
「大きな音がでるタイプではないんだな?」
「多分。とりあえず、いまから試してみる。一度も使ったことがないからどうなるかは分からないけど。」
小さなろうそくの明かりを手にグランがたずねる。
返事を返したギルは深呼吸をして、人生初となるスキル行使をする。
「『魔導傀儡』!」
ヴン
【魔導傀儡】
傀儡:コスト10/0
☆1 小人:コスト3
人:コスト10
SPガチャ
無料 1回 可能
SP1消費 115回 可能
SP5消費 23回 可能
SP10消費 11回 可能
「・・・え?」
「・・・まさか、全部うそか?」
スキル名を口にしたにもかかわらず何も起きないので、グランは怒気を含んだ顔でギルを睨む。
しかし、スキル名を口にした瞬間にスキルの扱い方が頭の中に入り込んできたギルは、グランを押しとどめる。
「ちょっとまっておじさん。今理解した。このスキルがどんなものなのかを。」
「・・・・・・。」
まだ半信半疑なグランを納得させるために、ギルは今度こそと気合を入れる。
念のため、コストが低い『小人』にした方がよさそうだ。
「『魔導傀儡』【小人】召喚!」
ギルの言葉と共に、広場の地面に直径30センチほどの魔方陣が現れ、そこから、白い魔導傀儡がゆっくりと浮かんできた。
グランは、眼を剥いてその光景を凝視するが、ギルはそれどころではなかった。
HPとMPを消費する、っていうのは、こういうことか!
自分の体から生命力が魔方陣へ吸い込まれていく感覚に倒れそうになるが、根性で踏ん張り最後まで耐え切る。
魔方陣から全身を現した魔導傀儡に、これがスキルか、と思いながら、ギルは倒れこんだ。
「おいギル! 大丈夫か!」
何度も揺さぶって起こそうとするが一向に目を覚まさない。
幸い心臓も動いているし息もしている。
しかし、魔導傀儡を生み出すと同時に倒れこんだギルの顔色は青白い。
クイクイ
自分の袖を引っ張る存在に気づくグラン。
そこには、ギルが生み出した魔導傀儡がいた。
50センチほどの大きさで、頭、胴体、上腕、指、の四つのパーツで構成されている。
頭部の真ん中には、眼と思わしき単眼がついており、胴体の中心には核があった。
それぞれのパーツはつながっておらず、少し空間を空けてまるでつながっているかのような動きをしている。
スッ スッ
その小さな魔導傀儡は、ギルを、その次に家を指差した。
「家へ入れろ、ってことか?」
コク
首の無い頭をうなずかせる魔導傀儡。
とりあえず家へ入れて寝かせなければならないということは同意したグランは、ギルを自分のベッドの上へ静かに寝かせ、上から毛布(という名の布)をかけた。
「ふー。顔色も戻ってきたし、一安心だ。」
ペシッ
魔導傀儡がグランの足をその小さな手で殴った。
弱すぎて、はたいた、というべきだが。
「なんだよ。」
魔導傀儡はギルや毛布(ただの布)を指差しながら必死にジェスチャーする。
「なんだなんだ? どういう意味だ?」
なんとか魔導傀儡の意思を読み取ったグランは、ギルにもう2枚毛布(布)をかける。
それをみた魔導傀儡は満足そうにうなずき、ギルのそばに浮いた。
まるで護衛をしているようで、グランは笑ってしまった。
殴ってもはたいたようにしか感じない程度の力しかない小さな人形が、健気に主人を守ろうとしている。
それを見たグランは、この魔導傀儡をかわいいな、と思った。
「うちの娘にゃかなわねーけどな。」
ちなみにグランは親バカだ。
*****
屯神 焔です。
読んでくださり、ありがとうございます。
誤字脱字の報告をしていただければ嬉しいです。
そんなに自分は分かりやすい人間だっただろうか。
ギルは自分の顔に手を当てて考える。
村の住人の雑用をこなし終え、リーナの家の裏にある開けた訓練場へ足を運ぶ。
ギルは、リーナの父であり、彼の師匠でもあるグランにだけはスキルのことを話そうと思っていた。
「おっ、来たかギル。とりあえず今日は20周な。」
「わかった。おじさん、ちょっと話しがあるんだけど。」
「なんだ? お前が人に相談なんて珍しいな。そういえば、今日はギルがご機嫌だーってジル爺さんが言ってたぞ。」
訓練場とは名ばかりの草1つ生えていない広場を走るギルとグラン。
一周100メートルはある広場を走りながら話をする二人。
「実は、スキルを取得したんだ。」
「・・・なに? ・・・お前が冗談を言うのは珍しいな。」
グランは、普段うそをつかないギルがいったことを一瞬信じるが、すぐに冗談だろうと判断する。
「まあ、そうなるよね。今晩、この広場でどんなスキルが実際に試したいんだ。あまり知られたくないから見張ってほしくて。」
ギルは、真剣な表情でグランの眼をまっすぐ見る。
「冗談、ではないんだな。」
ギルは黙ってうなずく。
「・・・わかった。ただし、条件が1つ。明日の夜から毎晩そのスキルの訓練をする。おまえがきちんとスキルを扱えるように。いいな?」
「うん。俺から頼みたかったくらいだよ。」
「よーっし。なら今日からは訓練は厳しめでいかないとな!」
「・・・それ本気で言ってる?」
楽しそうな良い笑顔でうなずくグランとは対照的に顔面蒼白になるギルは、それでもなお走り続けていた。
夕食を終えたあと、ギルは屋根裏部屋へ入り、自分のスキルを確認する。
「ふぅ。どんなスキルなんだろう。なんとなくイメージはあるけどな。」
そういいながら、ギルはステータスを開き、そっとスキルをタップする。
『スキル:魔導傀儡』
HPとMPを消費して傀儡を生み出す。
生み出した傀儡は異空間に無制限に収納可能。
『魔導傀儡』固有のポイントで傀儡を強化・多様化することができる。
スキルポイントを消費することで、生み出せる傀儡が増える。
一日一回、消費なしで生み出せる傀儡を増やすことができる。
・・・とんでも、ないな。
つまり、毎日少しずつ傀儡を生み出して保管し、必要に応じて生み出せる、ということだ。
たしかにこれは、使い方次第では大陸を支配することも可能だ。
時間をかけて傀儡を増やし、首都や貿易の重要な場所を傀儡の軍団に襲わせれば良い。
それを繰り返していけば、いずれは大陸の支配も可能だろう。
途中で暗殺されたりなどを無視すればだが。
まあ、俺は大陸の支配なんてするつもりなんて無いが。
スキルについて考えるうちに日が完全に落ち、周囲は暗闇に包まれた。
「それじゃあ、いくか。」
「大きな音がでるタイプではないんだな?」
「多分。とりあえず、いまから試してみる。一度も使ったことがないからどうなるかは分からないけど。」
小さなろうそくの明かりを手にグランがたずねる。
返事を返したギルは深呼吸をして、人生初となるスキル行使をする。
「『魔導傀儡』!」
ヴン
【魔導傀儡】
傀儡:コスト10/0
☆1 小人:コスト3
人:コスト10
SPガチャ
無料 1回 可能
SP1消費 115回 可能
SP5消費 23回 可能
SP10消費 11回 可能
「・・・え?」
「・・・まさか、全部うそか?」
スキル名を口にしたにもかかわらず何も起きないので、グランは怒気を含んだ顔でギルを睨む。
しかし、スキル名を口にした瞬間にスキルの扱い方が頭の中に入り込んできたギルは、グランを押しとどめる。
「ちょっとまっておじさん。今理解した。このスキルがどんなものなのかを。」
「・・・・・・。」
まだ半信半疑なグランを納得させるために、ギルは今度こそと気合を入れる。
念のため、コストが低い『小人』にした方がよさそうだ。
「『魔導傀儡』【小人】召喚!」
ギルの言葉と共に、広場の地面に直径30センチほどの魔方陣が現れ、そこから、白い魔導傀儡がゆっくりと浮かんできた。
グランは、眼を剥いてその光景を凝視するが、ギルはそれどころではなかった。
HPとMPを消費する、っていうのは、こういうことか!
自分の体から生命力が魔方陣へ吸い込まれていく感覚に倒れそうになるが、根性で踏ん張り最後まで耐え切る。
魔方陣から全身を現した魔導傀儡に、これがスキルか、と思いながら、ギルは倒れこんだ。
「おいギル! 大丈夫か!」
何度も揺さぶって起こそうとするが一向に目を覚まさない。
幸い心臓も動いているし息もしている。
しかし、魔導傀儡を生み出すと同時に倒れこんだギルの顔色は青白い。
クイクイ
自分の袖を引っ張る存在に気づくグラン。
そこには、ギルが生み出した魔導傀儡がいた。
50センチほどの大きさで、頭、胴体、上腕、指、の四つのパーツで構成されている。
頭部の真ん中には、眼と思わしき単眼がついており、胴体の中心には核があった。
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スッ スッ
その小さな魔導傀儡は、ギルを、その次に家を指差した。
「家へ入れろ、ってことか?」
コク
首の無い頭をうなずかせる魔導傀儡。
とりあえず家へ入れて寝かせなければならないということは同意したグランは、ギルを自分のベッドの上へ静かに寝かせ、上から毛布(という名の布)をかけた。
「ふー。顔色も戻ってきたし、一安心だ。」
ペシッ
魔導傀儡がグランの足をその小さな手で殴った。
弱すぎて、はたいた、というべきだが。
「なんだよ。」
魔導傀儡はギルや毛布(ただの布)を指差しながら必死にジェスチャーする。
「なんだなんだ? どういう意味だ?」
なんとか魔導傀儡の意思を読み取ったグランは、ギルにもう2枚毛布(布)をかける。
それをみた魔導傀儡は満足そうにうなずき、ギルのそばに浮いた。
まるで護衛をしているようで、グランは笑ってしまった。
殴ってもはたいたようにしか感じない程度の力しかない小さな人形が、健気に主人を守ろうとしている。
それを見たグランは、この魔導傀儡をかわいいな、と思った。
「うちの娘にゃかなわねーけどな。」
ちなみにグランは親バカだ。
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読んでくださり、ありがとうございます。
誤字脱字の報告をしていただければ嬉しいです。
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