好きです、今も。

めある

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いざ、決戦の時。

眠い眠い授業を終えて、いざ、決戦の時。


「よしよし、逃げなかったな。」
「…ほんとに行くんですよね。」


ちょっと顔がこわばっている。緊張してるな、これ。
誰だって謝りに行くのは怖いもんなぁ。


でも、ここで引いてしまったら、今のままなにも変わらない。


「あぁ、行くぞ!とりあえず俺が呼んでくるから、ここで待ってろ。逃げるなよ~。」
「…さすがにもう逃げませんって…」

頭を抱えて、はぁ、とため息をこぼす安達に手を振ってあの子の教室をのぞくと、彼女は教室で友達とお昼を食べていた。

近くにいる下級生に声をかけて呼んできてもらう。友だちとの時間をつぶしてしまって申し訳ないが、仕方がない。


こちらにやってくる彼女に微笑んで、手を振る。


「きっ、桐越先輩!こっこんにちは!どうしたんですか!?」
「ははっ、こんにちは。ちょっと話したいことがあってな。時間、少しもらえるか?」
「えっ…はいっ…大丈夫です…」


先輩からの急な呼び出しに、少し戸惑っているのが分かる。目線が合わないし、どこかそわそわしている。
そりゃそうだ、俺だって、たいして仲良くもない先輩から急に話しかけられたら怖い。すまんな、と心の中で謝っておく。


しかしながら、とりあえず、ミッション完了だ。
その子とたわいもない話をしながら、昼休みで賑わう廊下を歩く。


「ほんとにごめんな、急に呼び出して。実は、安達が話したいことがあるらしくって。」


そう言って、安達の待つ空き教室の扉を、開けた。
そこには。もう、ガチガチに緊張してますって顔の安達が居た。
それに対して、彼女は大きく目を見開いた後、思わず一歩後退った。顔色も少し蒼くなっていて、本当にごめん、ともう一度胸中で謝っておいた。


俺は、緊張してるやつに安心させるように微笑んで、そっと背中を押した。


「…ほら。大丈夫だ、いってこい。」


安達はちょっとこちらを振り向いて、こくり、と頷いた。


「…この前はすいませんでした。」


声は少し掠れていたけれど、彼女の目を見て、ちゃんと、言葉にした。


「…言い方が悪かったです。ほんとに悪気とかはなくて。」

そうして首に手を当てて、合わせていた目をそらした。
それでも、眼の前にいる子にはちゃんと伝わったみたいだ。

「…こっちも、ちょっと気が動転しちゃって…。大げさな反応しちゃって…ごめんね。」

視線をさまよわせながら、頬を掻いた彼女の、その言葉に、胸をなでおろす。
うん、上手く行きそうだ。
安達も、どこかほっとした顔をしている。

「…あの、良かったら、また今度、ちゃんとアドバイスさせてください。」
「いいの!?っじゃあ、今日の部活終わりとかどう!?」
「…分かりました。」

おっと、思ったより上手く行ってしまったのでは…?
どこか距離の縮まった二人に、なぜかモヤモヤとしたものが胸に広がる。なんだ、これ。

「じゃっ、じゃあ友達待たせてるので!安達君今日よろしくね!き、桐越先輩、失礼します!」

そう言って教室を出ていった、その子に手を振って見送る。
少し頬を染めて、廊下を駆けていく姿は可愛くて。
…このまま上手く行ったら、二人は付き合ったりするのだろうか、なんて想像したら、なぜか胸がぎゅっと痛くなった。

それを誤魔化すように、俺は口角をぐっと上げて、笑顔を作った。

「ははっ、上手く行ったじゃん。良かったな。」
「…上手く行った…んですかね。…はぁ、緊張した…。」
「うんうん、お疲れ。」

ふらふらと倒れ込みそうな背中をさすってやる。

「俺、いらなかったかもなぁ…。」

ふいに、さっきの二人を思い出してしまって、思わず、そんな言葉が口からこぼれ出る。
それが聞こえたのか、安達はこちらを向いた。


「そんなことないです。」


っておいおい、即答かよ。


「先輩がいなかったら、謝る、なんて勇気も出なかったし、きっと、ずっとモヤモヤしたままでした。」


ぽつりぽつりと零されるその言葉は、ざわついていた俺の心を落ち着かせて、温めてくれる。



「…謝ってるときも。なんか失敗したら、先輩がフォローしてくれるって思って…緊張しましたけど…安心して謝れました。…だから、ありがとう、ございました。」

そう、まっすぐ告げられて、胸の奥がきゅっとなった。


「ははっ、そうか…。なら、良かった。」

なんだかいつものように上手く言葉が出てこなくて焦る。
なんだ、これ。


「じゃっ、じゃあ、俺はこれで。また、部活でなっ!」
「…はい。ありがとうございました。」


思わず、逃げるように教室を飛び出してきてしまった。
なんだ、なんで俺はこんなあいつの言動ひとつひとつに振り回されてるんだ―。

その答えは、この混乱した頭じゃ、見つけられそうになかった。

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