追放された聖騎士は《武具分解》と《武具融合》を駆使して成り上がる

くぬぎ

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強化作業

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 俺とリリの日常には、再び穏やかな時間が戻ってきた。

「さて、と」

 宿屋の部屋に戻った俺は、テーブルの上にずしりと重い革袋を置いた。中には、アンデッド事件解決の報酬としてギルドから支払われた、大量の金貨が入っている。これだけの金額があれば、当面の生活には困らない。
 だが俺たちの目的はそこではなかった。

「リリ、行くぞ。今日はお前の装備を、徹底的に強くする日だ」
「うん!」

 リリは俺の言葉に、満面の笑みで頷いた。嫉妬の雨が降った後は、地面が固まるらしい。昨日の出来事を経て俺たちの絆は、また一段と強くなった気がした。

 俺たちはその報酬金の大半を握りしめ、街中の武器屋や防具屋を巡り始めた。目的は、ただ一つ。リリの装備を強化するための、「素材」となる武具を買い漁ることだ。

「店主、この棚にあるダガーを、全部貰う」
「アルゼストの旦那!? 正気かい、こんなにたくさんどうするんだ?」
「こいつの剣をもっと速くしてやりたいんでな」

 リリのショートソードに『俊敏性』の特性を重ねがけするため、軽量なダガーやショートソードを、店の在庫がなくなる勢いで買い占めていく。

「こっちの革鎧も、小さいサイズのやつを全部だ」
「旦那、そりゃ無茶だぜ!」
「こいつの鎧を、もっとカチカチにしてやりたいんでな」

 リリの革鎧に『物理耐性』や『衝撃吸収』の特性を付与するため、手頃な革製の防具も片っ端から購入していく。
 最初は驚いていた武器屋の店主たちも、俺が金貨を積み上げると、やがては呆れたようにしかし喜んで商品を売ってくれた。

 数時間後。俺たちの宿屋の部屋は、まるで武器屋の倉庫のように、大量の武具で埋め尽くされていた。

「さて、リリ。第二ラウンド開始だ」
「うん! まかせて!」

 買ってきた武具を、片っ端から《武具分解》していく。リリはその隣で、分解によって生まれた特性の「キラキラ」を、種類ごとに丁寧に仕分けしていく。

『俊敏性(小)』が、50個。
『物理耐性(微)』が、80個。
『斬れ味(劣化)』が、120個。

 それはまさに圧巻の光景だった。

「よし、まずは剣からだ。リリ、頼む」
「うん!」

 リリのショートソードを手に取り、リリの鑑定に従いながら最適な特性を、最適な順番で融合させていく。

「この子はね、速いキラキラが大好きだけど、ちょっとだけ、硬いキラキラも混ぜてあげると、もっと喜ぶって!」

 リリの言葉通り、『俊敏性』の特性を10個融合させた後、『頑丈さ(微)』の特性を一つ混ぜ込む。すると、剣が今までとは違う、澄んだ輝きを放った。ただ速いだけではない、芯の通った強さが、その刃に宿ったのだ。

 次に革鎧。
『物理耐性』と『衝撃吸収』の特性を、交互に、何層にも重ねるように融合させていく。それは根気のいる作業だった。

「残りの特性は、こっちの手甲とブーツに融合させよう」

 俺たちは夜通し、作業を続けた。
 俺が分解と融合を繰り返し、リリがその武具の「声」を聞き、最高のパフォーマンスを発揮できる組み合わせを導き出す。

 そして、東の空が白み始める頃。
 リリの全く新しい装備一式が、ついに完成した。

 ショートソードは、『俊敏性(中)』と『斬れ味(中)』の特性を宿し、風を切るたびに、見えない刃を生み出すかのような鋭さを手に入れた。
 革鎧と手甲、ブーツは、幾重にも重ねられた防御特性によって、鋼鉄の鎧にも匹敵するほどの防御力を持ちながらその軽やかさは失われていない。

「……すごい」

 生まれ変わった自分の装備を身につけ、リリは呆然と呟いた。その体からは、以前とは比較にならないほどの、強力なオーラが放たれている……ような気がする。

「どうだリリ。今ならホブゴブリンだって、一人で楽に倒せるんじゃないか?」
「……うん。なんだかすごく、力が湧いてくる。これなら、おにいちゃんのこと、もっとちゃんと守れる」

 リリは新しいショートソードを、ぎゅっと握りしめた。その瞳には、もはや、かつてのような不安の色はない。そこにあるのは、俺の隣で戦うことへの、揺るぎない自信と誇りだった。
 そんなリリの姿を満足げに、そしてほほえましく見つめていた。

「さて、と」

 俺は自分の大盾を手に取った。

「次は俺の番だな。リリ、手伝ってくれるか?」
「もちろん! おにいちゃんの盾さんも、もっともっと、強くしてあげなきゃ!」

 ランプの光の下、俺たちの工房は、再び温かい光に包まれる。
 この地道な作業はまだまだ続く。
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