追放された聖騎士は《武具分解》と《武具融合》を駆使して成り上がる

くぬぎ

文字の大きさ
7 / 37

《武具分解》と《武具融合》

しおりを挟む
 祈るような気持ちでスキルスクロールを広げ、魔力を注ぐ。羊皮紙から放たれた光が、俺の体を包み込んだ。

   『――スキル《武具分解》を習得しました』
   『――スキル《武具融合》を習得しました』

   「……は? 2つもあるのか……?」

   脳内に響いた声が告げたのは、聞いたこともないスキル名だった。恐らく戦闘用ではない。かといって、生産スキルとも少し違うようだ。俺はすぐさま冒険者カードを取り出し、詳細を確認した。


   ■スキル
   ・
   ・
   武具分解:武具を素材レベルまで分解し、その武具に込められた特性を抽出することができる。
   武具融合:分解によって抽出した特性を、別の武具に付与することができる。ベースとなる武具と特性には相性がある。
   ・
   ・

   「なんだこれ……鍛冶師向けのスキルじゃないか……」

   俺は聖騎士だ。鍛冶師ではない。
   がっかりして俺はベッドに倒れ込んだ。80万ゴルドをドブに捨てたも同然だった。パーティを追放され、なけなしの金で手に入れたスキルは、戦闘では何の役にも立たないものだった。

   「……もう、終わりか」

   冒険者を続ける気力も、資金も尽きかけていた。

   その夜、俺は眠れずに、手に入れたスキルについてぼんやりと考えていた。

   「武具分解……武具融合……」

   どうせもう後がないんだ。このスキルが一体どんなものなのか、確かめてみるだけ無駄ではないだろう。


   俺は持ち物袋から、ゴブリン討伐で手に入れたまま放置していた、錆びついた剣を取り出した。どうせ売っても二束三文のガラクタだ。

   「《武具分解》」

 スキルを発動させると、手の中の剣が淡い光を放ち始めた。やがて光は収束し、剣があった場所には、こぶ
   し大の鉄の塊と、小さな光の玉が残されていた。

   「これが……分解か」

   鉄の塊は、ただの素材のようだ。俺は光の玉に意識を集中する。すると、文字が浮かび上がってきた。

   『特性:斬れ味(劣化)』

   「なるほど。武具は『素材』と『特性』に変換されるってわけか」

   次に、同じく持ち物袋の肥やしになっていた、傷だらけの木の小盾を取り出し、同じように《武具分解》を試す。すると今度は粗悪な木材と、別の光の玉が現れた。

   『特性:物理耐性(微)』

   「ほう……武具によって抽出できる特性は違う、と。そして、元の質が悪いと、特性も『劣化』とか『微』とか、ランクが低いものになるわけか」

   少しだけ、このスキルの仕組みが分かってきた。次は《武具融合》だ。
   俺は自分の愛用しているロングソードを鞘から抜き、先ほど抽出した『斬れ味(劣化)』の光の玉を近づけて、スキルを発動させた。

   「《武具融合》」

   光の玉がすっと剣身に吸い込まれていく。剣がかすかに輝いたが、見た目に大きな変化はない。試しに指で刃をなぞってみるが、切れ味が増したかは正直よく分からなかった。

   「まあ、『劣化』じゃこんなものか……」

   次に、俺はロングソードに『物理耐性(微)』を融合させようと試みた。

   「《武具融合》」

   しかし、今度はスキルが発動しない。光の玉は剣に弾かれ、その場に留まっている。

「……………………」

 何も変化がない。
 どういうことだ?
 なぜ何も起こらないんだ……?

「いやまさか……相性か!」

『物理耐性(微)』は盾から抽出した特性だ。
 つまり盾から抽出した特性は、武器との相性が悪いのだろう。

  「相性……。なるほどな。剣に防御の特性は付けられない、ということか」

   では、これならどうだ。
   俺は壁に立てかけてあった長年使っていた盾を手に取り、『物理耐性(微)』の光の玉をかざし、再びスキルを発動する。

   「《武具融合》!」

   今度は成功した。光の玉は、まるで水が染み込むように盾の表面に吸い込まれていった。
   盾が、先ほどの剣とは比べ物にならないほどの強い光を放ち、表面に刻まれた紋様が一瞬だけ輝きを増したように見えた。

   「おお……!」

   俺は急いで盾の情報を鑑定する。すると、確かに『物理耐性(微)』の項目が、追加されていた。

   「すごい……本当に強化できたぞ……!」

   一つの仮説が頭に浮かんだ。
   もし、同じ特性を、何個も何個も重ねて融合させたら?
   ガラクタから抽出した『微』や『劣化』の特性でも、数を集めれば、とんでもない効果を生み出すのではないか?

   俺の心に絶望の闇を振り払うような、小さな希望の火が灯った。

   「……試してみる価値は、ある」

 このスキルは、一攫千金をもたらすような派手なものではないかもしれない。だが、地道にコツコツと続ければ……あるいは。

 俺はベッドから跳ね起き宿屋を飛び出した。向かう先は街の武具屋という武具屋だ。
 目的はただ一つ。分解するための、安物のガラクタ武具を買い漁ることだった。

  俺の地道で果てしない検証作業が……今、始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...