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1章

伝説の名……棒

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今日も今日とて特にいつもと変わりはなく。ぷちスライムやヤツホシテントウを押しつぶすプリンちゃんを2人で見つめ、1階層の奥のほうまで行って広間になっているところで休憩タイム。

串焼きをモグモグしながらプリンちゃんにはお水をあげる。プルプルして喜んでて可愛いなあ。
でもいい加減飽きたといえなくもない。いや飽きた。

私が思っていたダンジョンとずいぶん違う。ダンジョンと言うのはもっとこう、殺伐としてるべきなんだよ!素人にはお勧めできない?みたいな。

其れに引き替え、私達のダンジョン探索はほんわかノンビリ、おやつ持参のピクニックみたいだもんね。いまさらだけど。


そろそろ2階層のゴブリンを見てみたいなあ。
どうやってもテイムできないゴブリンをあっさりとテイムしちゃう私。

げえ!すごい!何だあの幼女は!?みたいな?それいいな!

「ねえカリナぁ。いい加減2階層のゴブリン行っても余裕だよね?2階層に行こうよー?そしてテイムしようよー」

「まあ恐らく探索自体は余裕だろうとは思いますが……約束は約束ですので。ダメです」


カリナはお堅いなあ。そんなこっちゃあ嫁の貰い手がないぞ。しょうがないから私のとこに来る?


「アーシャ様の所なら大歓迎ですけど」

「声でてた!?ん、ゴホンまあ2階はいいや。また今度ママにお願いしよっと」

「そうですね。そうしてください。プリンちゃんの育成もそろそろここじゃ厳しいでしょうし」

「だよね。もうあんまり育ってない気が……ん?」

「 ? どうしました、アーシャ様?」

「この感じ……なんだろ?今までと何か違うのが来るよ」


今までここで戦った事があるのはぷちスライムとヤツホシテントウだけだ。

はっきり行ってザコで魔力もカケラほどしか感じ取れないような、そんな存在だ。近殿はそれに怪我はえた程度だけどさっきまでとは明らかに違う。

もうすぐそこの曲がり角まで来てる。

そいつはニョキっと角から現れた。私と大して変わらない身長に手には錆びた短剣、不健康そうな緑色の肌、ちょっと紫のところもあるけど。それにぼろぼろの茶色い腰巻。短剣を持っていない左腕には怪我をしているようだけど、そこはまあいいか。この緑のちっこいの、コイツはアレだ、間違いない!


「ゴブリンだ!ゴブリンだよカリナ!」

「ゴブリンですね。何でこんなところに。しかもアレはここの2層にいるゴブリンじゃないですよ?」

「なんでわかるのよ?」

「だって、短剣持ってるじゃないですか」

「なるほど。腰巻で判別してるのかと思った」


茶色はえらい、青は弱い、赤は強い!みたいな?
大事な所をちゃんと隠してるだけえらいと思うけど。エチケットだね!

と言うかゴブリンか。ゴブリンだな?と言うことは……


「よし、つまりアレを捕獲すればよいと」

「……なんでそういうことになったのですか?」

「さっきそんな話してたじゃん。あのゴブリンをテイムした!?げえ!ナンダッテー!って」

「言ってませんが……?」

「そうだっけ?ってうわあっ!」

「ギイイイイイ!」


ノンビリ話してたら急に襲い掛かってきた。恐ろしいほど暴力的なヤツだ!


「モンスターなんだから襲い掛かってくるのは当たり前ですよ、アーシャ様!」


そりゃそうか。ちょっとここの1層が平和すぎて感覚がおかしくなってる。
私が短剣をよけていたらカリナが横から魔法で倒そうとするのでそれを手で制する。


「私がやるわ。この、スライムスレイヤーの棒の真の力を見せて差し上げましょう」


そういってスライムスレイヤーの棒を構える。
ぬふふ、今宵のスライム丸は血に餓えておるわ!


「でええい!」

「ギリイイイ!」


棒を上段から切り下ろすが、短剣で防がれる。そのまま力比べだ。
うぬぬ!ぐぎぎ!やりおるわ!


押して押して押して、そこから急に力を抜いて斜め後ろに下がるとゴブリンは前につんのめった。
そこで上から斬る!


「とりゃあああ!」

「ギイイ!」


スパッ!とかズバッ!とかブシュッ!って音はしない。
ボコンという鈍い音と共に地面に倒れるゴブリン。そしてその上からプリンちゃんがのしかかる。
顔に乗っかって窒息狙いだ!やるな!なかなか狙いがえげつない。カリナママに似たのかな!?


「そこだ!いけ!そのまま押さえつけて溺れさせちゃいなさい!」

「えげつない、さすがカリナ。頑張れプリンちゃん!」


プリンちゃんはズシシッとのしかかる。
すると、そのままゴブリンは死んだみたいで、錆びた短剣だけ落として消えていった。

ふふっ、 完 全 勝 利 !


「やったぜー!勝った!」

「やりましたねアーシャ様!」


カリナとハイタッチのあと、プリンちゃんを抱きしめてヨシヨシする。プリンちゃんめちゃくちゃうれしそうにビヨンビヨンしてる!いやあ、やっぱり戦いはいい。


「今夜はうまい酒が飲めそうだね!」

「はい。おいしい桃がありますから桃のジュースを造りましょうね」

「桃のジュース!やった!……はっ!?あああ!」

「どうしましたかアーシャ様?」


浮かれていてすっかり忘れてたけど、そういやゴブリンテイムしようとか思ってたんじゃなかったっけ!
あああ、しくじった!しまったなあ。


「カリナぁ、ゴブリンの事テイムしようと思ってたのにすっかり忘れちゃってた」

「ああ、そこですか。どちらにしろ難しかったと思いますよ。ここは仕方ないと言う事で。短剣が出たからいいじゃないですか」


テイム失敗してゲットしたのが錆び錆びの短剣かあ。
でもこれで棒と短剣の2刀流が出来るようになった。

2刀流というのもなかなかカッコいいではないか。
そう思ってスライムスレイヤーの棒を見ると、なんと真ん中から折れてプラプラしている!


「ぷわああああ!カリナああああ!」

「今度は何ですか!?」

「私のスライムスレイヤーの棒がああ!」

「ああ、ついにご臨終ですね。お城の庭の棒が。」

「なんてこったあ。これじゃあ割に合わないよ」

「いや、合ってますよ。それ庭師のおじいさんが切った枝でしょう?沢山切ったから燃やしてたくらいじゃないですか。」

「はあ、まあかえろっか」

「はい。お疲れ様でした」


伝説の名剣になる予定だったのになあ。残念。
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