30 / 49
2章
スライム育成計画
しおりを挟むあの運命の日、あの決意の日から早2年が過ぎ、私は11歳になった。
といっても『ダンジョンに好きにいけるようになるまでスライム天国を作るぞ』って決意だけど。
そしてダンジョン行き放題権の獲得まではあと1年もある。長いなあ。
この2年で変わったことがあると言えば、それはもちろんスライムたちだ。
私がやる事がなかったのでスライムを沢山育てまくった結果、私のお部屋はスラちゃんたちで溢れてしまった。
スラちゃんたちと一緒にお勉強したり、寝たり起きたりできる。
なんて幸せな空間だ!と思っていたら、残念ながらママの一言で私の隣の部屋がスライム部屋になってしまった。
ここは元々侍女の控え室だったみたいなんだけど、気のせいだろう。
さて、スライム育成計画のことだ。
スカベンジャースライム、通称ウ○コスライムの例のように、スライムちゃんたちは食べ物によって育ち方が違うのではないかという事をまず考えた。
ママに聞いたら実際そういう説が濃厚らしい。
そこで私は色々と検証してみた。
まず最初に水を敢えてあげずに育てた。
もちろん食べ物はあげる。お肉にお魚に果実といろいろだ。
そうするとなんと、スライムはだんだん干からびていって、へろへろになった。
もう死んじゃうわよとママが言うのであわてて水をあげたのだ。
危なく尊い犠牲が生まれてしまうところだったが、この実験により水が必須であることは分かった。
水さえあげれば何とでもなるみたい。とは言っても果実の中に含まれている水分なんかじゃダメ。
かなり多めに必要なようだ。
だけど、タダの水だけだと段々弱っていっちゃった。
タダの水だけで飼っていた子も同じようにだんだんと衰弱していったのだ。
ただ、干からびるんじゃなくて、とろとろになって解けてなくなりそうになってしまったけど。
このままだと死んでしまいそうだったので、あわててその子の実験は中止して魔力たっぷりのお水に変えてあげたら急に元気になった。
つまり、魔力水ならそれだけで大丈夫のようだ。
そして魔力の水だけをあげたスライムは今の所何ら特徴がない普通スライムちゃんだ。
次に有名どころを試してみた。
いわゆるヒーリングスライムだ。
ポーションの原料にもなる薬草ばかりをあげたスライムは傷ついた所を突っ込んだり、傷の上に乗せると治してくれるヒーリングスライムになった。
ヒーリングスライムの作成は一般にも知られており、薬草とかポーションの類をエサにあげると出来るってママが教えてくれたんだよね。んで、その通りやってみたらあっさり出来た。
ダンジョンからつれて帰ってきて飼育を始めてから10日も経たずにできた。
目標だったヒーリングスライムがあっさり出来ちゃったもんで、色々試してみようと思って次々とエサを変えて実験を繰り返した。
香辛料ばっかり食べさせたスライムは真っ赤になって触るとヒリヒリするようになった。
お魚ばっかりあげたスライムは水中の移動が速くなった。
金属ばっかりあげたスライムはピカピカ光るカチカチのスライムになった。
カチカチちゃんを見たママがテンション上がってたけど、走るのが速くないのでがっかりしていた。
そして牛肉ばっかりあげたスライムは、なんと牛乳を出すようになった。
……牛乳スライムおかしくない?
普通、この流れなら力が強いスライムとか角が生えてるスライムとか、そういうのじゃないかなあと思うんだけど。
でもおうちでは牛乳スライムが大活躍だ。
私の魔力水を取り込ませると、1分後には牛乳になって出てくるのだ。そんなわけで毎朝の食事に牛乳が出る。
パパも最初は微妙な顔をしていたけど、ためしに飲ませてみると『普通の牛乳よりアーシャちゃん牛乳のほうがおいしいなあ!』だってさ。
私は牛乳出してないんだけど?って言うと、『元はアーシャちゃんのだと思うと3倍おいしい!』
……うーん。国王様がこんなでウチの国大丈夫かな?
いっぱい実験を繰り返す。どんどんぷちスライムを拉致監禁して。
そのうちに、私の部屋はスライム水槽ばっかりになっちゃった。
それでママが呆れて隣のお部屋に移動させられてしまったのだ。
スライムは頭が悪くって飼育中に逃げ出したりするって言うけど、ウチのスライムちゃんたちは一番最初にペットにしたプリンちゃんの言うことが分かるみたい。
プリンちゃんが『めっ!』ってプルプルすると水槽から逃げようとしないし、私の言う事もなんとなく分かっている様子。
なんてえらい、かしこい子たちだ!と思うと可愛さもなおさらだ。
そんなスライムちゃんたちをプリンちゃんと眺めていると、カリナが朝食が出来たと呼びに来た。
「アーシャ様、朝食の時間ですよ。スラちゃんたちと戯れてないでご飯の方に行きますよ」
「はーい」
スラちゃんたちと別れ、カリナと一緒に食堂へ向かう。パパとママはもう席に座っていた。
「ごめんね遅くなっちゃった」
「またスラちゃんの所に行ってたの?好きねえ」
「スライムを競わせる大会があるよ。アーシャちゃんも出てみたらどうだい?」
「えっ!それってスカベンジャースライムのやつでしょ?絶対やだよ!」
前にママに聞いた事がある。トイレで育てたスカベンジャースライム、通称ウン○スライムを育てて競い合うのだ。
主に色とか艶とかを。
そんな恐ろしい大会があるらしい。絶対行きたくないじゃん。
そんな大会を可愛い娘に勧めるなんてパパはどうなってるんだ!?
「スカベンジャーの大会じゃないよ。流石にあれはパパも嫌だよ。娘が出たいとか言い出したら泣いちゃうねえ。だってアレのレギュレーションに便のみで育成ってあった気がするんだよねえ」
「ええ……?」
れぎゅ?って規則の事だよね?
ウン○のみで育てるって恐ろしい決まりだなあ。
それって自分のウンコがこんなになりましたって言うみたいなもんだよね。恐ろしい大会だわあ
「ねえ、パパもアーシャちゃんも朝食の前にその話はどうかしら?」
「「ご、ごめんなさい……」」
ママは頬をピクピクさせながら怒っている。
まあそうだよね。これからご飯って時にする話じゃなかったよね。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
アタシたち第四救護団!~頭を使う戦場の天使は回復魔法ゼロで駆け抜ける~
夕姫
ファンタジー
怪我して治すのは二流。怪我させないことこそ一流。分かるか?頭を使え!
自称「布団の妖精」ことガチニートのアリス・ミリエル(18)の野望は、一生働かずに寝て暮らすこと。
しかし、その夢は地上最強の母・マリアンヌの物理攻撃(ドア爆破)で粉砕される。
「誕生日おめでとう、今日で子育て終了よ♡」
という慈愛に満ちた宣告と共に、アリスは家から物理的に追い出され、所持金ゼロで庭に放置。野宿回避の道は、嫌々ながらも王宮騎士団に就職することのみ。
安眠と食い扶持のため、不純度MAXの動機で試験会場へと殴り込むが、元々、魔力ゼロで態度も悪い彼女は、騎士団の就職試験にことごとく不合格。
路頭に迷い、空腹の限界で辿り着いたのは、変人ばかりが集まる掃き溜め部署「第四救護団」だった
そして、アリスは屁理屈を使い、なんとか「第四救護団」に採用されることになるのだが……
凝り固まった戦況を打破し、歪んだ常識を打ち砕く、回復魔法ゼロの彼女の衝撃的な「手当て」とは――。
痛みこそが生きている証。最底辺の救護団が世界を揺るがす、痛快医療(?)ファンタジー開幕!
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
縫剣のセネカ
藤花スイ
ファンタジー
「ぬいけんのせねか」と読みます。
--
コルドバ村のセネカは英雄に憧れるお転婆娘だ。
幼馴染のルキウスと共に穏やかな日々を過ごしていた。
ある日、セネカとルキウスの両親は村を守るために戦いに向かった。
訳も分からず見送ったその後、二人は孤児となった。
その経験から、大切なものを守るためには強さが必要だとセネカは思い知った。
二人は力をつけて英雄になるのだと誓った。
しかし、セネカが十歳の時に授かったのは【縫う】という非戦闘系のスキルだった。
一方、ルキウスは破格のスキル【神聖魔法】を得て、王都の教会へと旅立ってゆく。
二人の道は分かれてしまった。
残されたセネカは、ルキウスとの約束を胸に問い続ける。
どうやって戦っていくのか。希望はどこにあるのか⋯⋯。
セネカは剣士で、膨大な魔力を持っている。
でも【縫う】と剣をどう合わせたら良いのか分からなかった。
答えは簡単に出ないけれど、セネカは諦めなかった。
創意を続ければいつしか全ての力が繋がる時が来ると信じていた。
セネカは誰よりも早く冒険者の道を駆け上がる。
天才剣士のルキウスに置いていかれないようにとひた向きに力を磨いていく。
遠い地でルキウスもまた自分の道を歩み始めた。
セネカとの大切な約束を守るために。
そして二人は巻き込まれていく。
あの日、月が瞬いた理由を知ることもなく⋯⋯。
これは、一人の少女が針と糸を使って世界と繋がる物語
(旧題:スキル【縫う】で無双します! 〜ハズレスキルと言われたけれど、努力で当たりにしてみます〜)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる