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2章
スライム育成計画
しおりを挟むあの運命の日、あの決意の日から早2年が過ぎ、私は11歳になった。
といっても『ダンジョンに好きにいけるようになるまでスライム天国を作るぞ』って決意だけど。
そしてダンジョン行き放題権の獲得まではあと1年もある。長いなあ。
この2年で変わったことがあると言えば、それはもちろんスライムたちだ。
私がやる事がなかったのでスライムを沢山育てまくった結果、私のお部屋はスラちゃんたちで溢れてしまった。
スラちゃんたちと一緒にお勉強したり、寝たり起きたりできる。
なんて幸せな空間だ!と思っていたら、残念ながらママの一言で私の隣の部屋がスライム部屋になってしまった。
ここは元々侍女の控え室だったみたいなんだけど、気のせいだろう。
さて、スライム育成計画のことだ。
スカベンジャースライム、通称ウ○コスライムの例のように、スライムちゃんたちは食べ物によって育ち方が違うのではないかという事をまず考えた。
ママに聞いたら実際そういう説が濃厚らしい。
そこで私は色々と検証してみた。
まず最初に水を敢えてあげずに育てた。
もちろん食べ物はあげる。お肉にお魚に果実といろいろだ。
そうするとなんと、スライムはだんだん干からびていって、へろへろになった。
もう死んじゃうわよとママが言うのであわてて水をあげたのだ。
危なく尊い犠牲が生まれてしまうところだったが、この実験により水が必須であることは分かった。
水さえあげれば何とでもなるみたい。とは言っても果実の中に含まれている水分なんかじゃダメ。
かなり多めに必要なようだ。
だけど、タダの水だけだと段々弱っていっちゃった。
タダの水だけで飼っていた子も同じようにだんだんと衰弱していったのだ。
ただ、干からびるんじゃなくて、とろとろになって解けてなくなりそうになってしまったけど。
このままだと死んでしまいそうだったので、あわててその子の実験は中止して魔力たっぷりのお水に変えてあげたら急に元気になった。
つまり、魔力水ならそれだけで大丈夫のようだ。
そして魔力の水だけをあげたスライムは今の所何ら特徴がない普通スライムちゃんだ。
次に有名どころを試してみた。
いわゆるヒーリングスライムだ。
ポーションの原料にもなる薬草ばかりをあげたスライムは傷ついた所を突っ込んだり、傷の上に乗せると治してくれるヒーリングスライムになった。
ヒーリングスライムの作成は一般にも知られており、薬草とかポーションの類をエサにあげると出来るってママが教えてくれたんだよね。んで、その通りやってみたらあっさり出来た。
ダンジョンからつれて帰ってきて飼育を始めてから10日も経たずにできた。
目標だったヒーリングスライムがあっさり出来ちゃったもんで、色々試してみようと思って次々とエサを変えて実験を繰り返した。
香辛料ばっかり食べさせたスライムは真っ赤になって触るとヒリヒリするようになった。
お魚ばっかりあげたスライムは水中の移動が速くなった。
金属ばっかりあげたスライムはピカピカ光るカチカチのスライムになった。
カチカチちゃんを見たママがテンション上がってたけど、走るのが速くないのでがっかりしていた。
そして牛肉ばっかりあげたスライムは、なんと牛乳を出すようになった。
……牛乳スライムおかしくない?
普通、この流れなら力が強いスライムとか角が生えてるスライムとか、そういうのじゃないかなあと思うんだけど。
でもおうちでは牛乳スライムが大活躍だ。
私の魔力水を取り込ませると、1分後には牛乳になって出てくるのだ。そんなわけで毎朝の食事に牛乳が出る。
パパも最初は微妙な顔をしていたけど、ためしに飲ませてみると『普通の牛乳よりアーシャちゃん牛乳のほうがおいしいなあ!』だってさ。
私は牛乳出してないんだけど?って言うと、『元はアーシャちゃんのだと思うと3倍おいしい!』
……うーん。国王様がこんなでウチの国大丈夫かな?
いっぱい実験を繰り返す。どんどんぷちスライムを拉致監禁して。
そのうちに、私の部屋はスライム水槽ばっかりになっちゃった。
それでママが呆れて隣のお部屋に移動させられてしまったのだ。
スライムは頭が悪くって飼育中に逃げ出したりするって言うけど、ウチのスライムちゃんたちは一番最初にペットにしたプリンちゃんの言うことが分かるみたい。
プリンちゃんが『めっ!』ってプルプルすると水槽から逃げようとしないし、私の言う事もなんとなく分かっている様子。
なんてえらい、かしこい子たちだ!と思うと可愛さもなおさらだ。
そんなスライムちゃんたちをプリンちゃんと眺めていると、カリナが朝食が出来たと呼びに来た。
「アーシャ様、朝食の時間ですよ。スラちゃんたちと戯れてないでご飯の方に行きますよ」
「はーい」
スラちゃんたちと別れ、カリナと一緒に食堂へ向かう。パパとママはもう席に座っていた。
「ごめんね遅くなっちゃった」
「またスラちゃんの所に行ってたの?好きねえ」
「スライムを競わせる大会があるよ。アーシャちゃんも出てみたらどうだい?」
「えっ!それってスカベンジャースライムのやつでしょ?絶対やだよ!」
前にママに聞いた事がある。トイレで育てたスカベンジャースライム、通称ウン○スライムを育てて競い合うのだ。
主に色とか艶とかを。
そんな恐ろしい大会があるらしい。絶対行きたくないじゃん。
そんな大会を可愛い娘に勧めるなんてパパはどうなってるんだ!?
「スカベンジャーの大会じゃないよ。流石にあれはパパも嫌だよ。娘が出たいとか言い出したら泣いちゃうねえ。だってアレのレギュレーションに便のみで育成ってあった気がするんだよねえ」
「ええ……?」
れぎゅ?って規則の事だよね?
ウン○のみで育てるって恐ろしい決まりだなあ。
それって自分のウンコがこんなになりましたって言うみたいなもんだよね。恐ろしい大会だわあ
「ねえ、パパもアーシャちゃんも朝食の前にその話はどうかしら?」
「「ご、ごめんなさい……」」
ママは頬をピクピクさせながら怒っている。
まあそうだよね。これからご飯って時にする話じゃなかったよね。
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