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2章

酔っ払い

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「おじさんこの魔道具いいね!私に売ってよ!」


A級 (笑)冒険者さんは寝たままだから無視して露店のおじさんと交渉を開始だ!


「いいけどお嬢ちゃんは魔力切れしそうにないのかい?さっきから『纏い』も使ってるだろ?」

「これくらいならまだまだ平気かなあ。燃費は多少悪いみたいだけど、バリアだけじゃなくって反射も付いてていい魔道具じゃない。いざって時に役に立ちそうだね!」

「そうだろそうだろ。ちょーーーっと燃費が悪いもんで発動できないゴミみたいなやつが文句言って来るんだよ。いくつも機能付けりゃ当然じゃないか。なあ?」


そりゃそうだ。というか、買う時にちょっと試せば済む話だと思うけど、どうしてこんなトラブルになったんだろうなあ。


「そうだよね。どうして試さなかったのかなあ?」

「昨日来たとき一瞬は発動できたんだよ。そんで魔力量がちょっと足りないんじゃないかって言ったら知り合いの魔術師に使わせるから大丈夫だっていわれちゃってなあ。まあそれなら良いかなと思ったんだけどさあ。」

「うーん。結局本人が使ったのかなあ」

「A級だ!って言ってたしな。魔力が少ないんだなんて認められなかったのかもな」

「まあしょうがないね。所でこれ私に売ってくれるんでしょ?」


これは中々いい。これならジェネラルさんのパンチも一発は防げそう。
オークキングさんのパンチはぜんっぜん無理だろうけど。
2年前にダンジョンで出会ってから時々オークさんたちと遊んでるけど、キングさんには全く勝てそうにないや。ジェネラルさんもまだまだ無理っぽいなあ。


「お嬢ちゃんならちゃんと使いこなせそうだから売ってあげるよ。それは一応そこのA級さんのだから別の奴を売ることになるけど。値段はおまけして30万ゼニーってとこかな」

「買いまーす。カリナお金有る?」

「申し訳ありませんが、手持ちはあと10万ゼニーしかありません。これで手付けと言うことにして後日ではどうでしょうか?」

「俺は今日までしか露店空けてねえんだ。明日からはちっと用事がな……」

「そうですか。困りましたねえ」

「どうしよっか。今から取りに帰る?」


お金がないんじゃしょうがないなあ。おまけして欲しいな!ってのも言いづらいし。
ちなみに私はコツコツコツコツとスライムを狩るだけ狩って、特に遊んでないのでお小遣いがたまっている。毎月の1万ゼニーとお年玉合わせて100万ゼニーはあるぞ!これで魔道具とか魔法武器を買うつもりだったのだ。ぬっふっふ。

こうなるのならもっといっぱい持ってくればよかった。
ギルドを冷やかしに行って精々その辺で買い食いするくらいしか考えてなかったからなあ。


「あー……?ああ、お嬢ちゃん達はスライムテイムしてんのか。もしかして明日の学会を見にきたのかい?」

「ん?そうだよ。よく分かったねえ」


プリンちゃんは今カリナの服の下ちいさくなってて分からないくらいなのに見分けるなんて。こやつなかなかやりおるな!


「うまく隠してるけどな。一応俺も色んなも道具持ってるのさ。明日の学会に行くならそっちで会おう。多分お互い見りゃ分かるだろう」

「わかったー。じゃあ明日お金持っていくね。」

「おうよ!お嬢ちゃん用にカスタマイズしといてやるからな。楽しみにしとけよ!」


いやあいい店に出会えたもんだなあ。

魔道具自体の品質はかなりいいとおもう。A級のおじさんは使えなかったみたいだけど、あれは明らかにおじさんの魔力不足だ。それにしても30万はやすいんじゃないかな!
一流の魔剣とかだと何千万って値段が付くけど、普通のそれなりの剣は10万くらいで名工の鍛えた剣だと50万以上はする。魔道具や魔力の宿った武器だと100万以上が目安だ。それを30万かあ。


「30万だとお買い得だよねー」

「自分で作ってるから安いとかじゃないですかね?それにここは魔族領で魔道具の本場ですし。」

「結構強そうだったし、もしかしたら材料も自分で取ってきてたりするかもね。それにテイミング仲間かもしれないし。いい人と知り合ったね!」

「そうですね。市場も捨てたもんじゃないでしょう?」

「そうだね。冒険者ギルドよりあたりだったかもねえ」


冒険者ギルドはたまーに大当たりの時があるけど、大体はいつも同じ暇そうにしてる人、つまり駄目な部類の冒険者か引退した人ばっかりがいるのだ。
そうは言ってもその人たちと遊んでもらう?遊んであげる?というのも楽しいものなんだけども。

さて、いい出会いもあったし、時間も遅くなってきたのでユグドラシル王国の大使館に帰ろう。
大使館に帰ると、パパとママは魔族の国の人と会ってるみたいだったので私用に用意された部屋へと入る。

でも今日のお出かけは楽しかった。
いいもの見れたし、私用に調整してくれるって言ってたし、明日が楽しみだなあ。
私はプリンちゃんをお部屋に放流して、すごくいい気分のままミルクちゃんの入った水槽にじょばばばーっと魔力水を注いで、1分待って出来たてミルクをゴクゴクゴク。


「アーシャ様!私にも!」

「ん?勝手に取れば?」

「ははあ。ありがとうごぜえますたー!」


カリナはマイコップを懐から取り出して水槽に突っ込み、ゴクゴクと飲む。


「いやあ、やっぱり姫のミルクは最高ですね!」

「私のじゃないよ。ミルクちゃんのミルクだよ」

「そうそう、ミルクちゃんが出した姫のミルクです。いやあ美味しい。」


そういいながらお代わり。なんだかんだ言いながらまたお代わり。
もう5杯目だけど?大丈夫?


「カリナそんなに飲まなくっても」

「らいじょーぶれふ。ひょーっとのどが渇いてたもんで。いやあ、姫のミルクはホントに最高れふ」

「……ホントに大丈夫?ケビンさんみたいになってるよ?」


ケビンさんはエルフの冒険者で元々は一流だったけど、年を取ってひざが悪くなって引退した。
エルフのクセにお酒大好きでギルドの食堂でいつもお酒を飲んで私に冒険譚を聞かせてくれるおじさんだ。
でもいっつも酔っ払ってて赤い顔でお酒臭くてろれつが回ってないんだよなあ。


「わらしがケビンさんのわけないじゃないれふか。姫ったらもうー!だめれふよ。私の事もちゃんと見てくれらいと。姫の所から離れちゃうかもしれないれふよ!」

「ええっ!カリナどっか行っちゃうの!?」

「……私が姫を置いてどこかへ行くわけないじゃないですかー!姫の、アーシャ様のばかー!私がこんなに好きなのに!もう!」

「ごめんごめんって。もう飲みすぎだよ。ほら座って!」


泣きながら暴れるカリナを座らせる。
おかしいなあ。どう見ても酷く酔っ払った冒険者のおじさんたちと同じような行動だ。ミルクで酔うはずないと思うんだけどなあ。


「アーシャちゃん帰ったのね。楽しかったかしら?」

「ママ!カリナがへんなことになっちゃった!」


ママがお部屋に入ってきた。お客様は帰ったのかな?
まあ、今はそれよりカリナだ。


「ミルクをのどが渇いたとか言ってゴクゴク飲んだの。そしたらこんなになっちゃって」

「飲みすぎたのね……」


もうカリナは机に突っ伏してイビキをかいている。顔は真っ赤のままだ。


「飲みすぎたって言ってもミルクだよ?」

「うーん。なんだか今日はいつもより魔力が濃いみたいね。カリナは魔力酔いでしょ。たぶん」

「いつもと同じつもりだけど。失敗しちゃったかな?」

「失敗じゃないわ。何か楽しいことあったでしょ?だからちょっといつもより魔力が濃くなっただけよ」


いいこと?あったなあ。
私は今日の市場での出来事と魔道具との出会いをママに話した。
明日またテイミング学会で会えるって言われたし、楽しみだなあってウキウキしてた事。
話してて気が付いた。ああ、だから魔力が濃くなったのかあ。


「理由は分かったようね。いつもより少し魔力が濃いのよ。それをガブガブ飲んだカリナが悪いわ。あんまり気にしないでいいんじゃないかしら?」

「そうだね。そういう事にしておこう。」


カリナは今日は使い物になりそうにないし、ベッドに寝かせてママとパパと一緒にご飯食べよっと。
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