深窓の令嬢はダンジョンに狂う ~ハイエルフの姫に転生したけどなかなかダンジョンに行かせてもらえません~

吉都 五日

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2章

レシピ

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「トレントも喧嘩するんだねえ」


喧嘩したから罰として林檎の枝をくくりつけた。
この発想はすごい。いろんな意味ですごい。


「まあ、わいのトレントのことはええねん。うわさのお嬢ちゃん特製スライム牛乳とやらを飲ませてほしいんやけど。」

「うわさになってるの?」

「なっとるで。嬢ちゃんのとこの料理人が一時大騒ぎしてたけど、突然ピタッと止まったんや。怖い王妃様に怒られたんやろなとは思ったんやけどな。」

「不思議な事もあるもんねえ。」

「せ、せやな。睨むなや。お嬢ちゃんにだけ言うなら大した問題やないやろ?」

「まあ私の気分の問題だけね。今度敵対したときは覚えときなさいよ」

「おーこわ。まあ、そん時はそん時やな。所でわいにそのうわさの牛乳飲ませてんか」


そんなにうわさになってるのか。でもここじゃミルクは出せないよ。ミルクちゃんはカバンの中に連れてきてるけど、水槽どころか器もない。


「入れ物がないから無理だよ」

「わいが作るがな。ほらほら」


キングさんはママと同じように魔力で水槽を作った。『『おおーっ』』と近くの知らない人からの驚きの声が聞こえる。やっぱりこれってすごい魔法だよねえ。


「ほらほら。頼むでお嬢ちゃん」

「はいはい。しょうがないなあ」


ミルクちゃんを水槽に入れて魔力水をじょばじょばじょば


「ええ?スライム?」「あの子の魔力濃度!どうなってんだ!?」

「というかあのオッサンもしかして魔王様じゃ……」「あの魔力水飲んでみてえなあ」


なんだか周りがザワザワしている気がするけどこういうのは気にしちゃダメだ。
カボチャか何かだと思えってママがいつも言ってるアレだ。

そうこうしているうちに魔力水をたっぷり取り込んだプリンちゃんが真っ白の牛乳を吐き出す。


「できたよキングさん」

「おう。ありがとな。どれどれ……」


キングさんはどこからともなくコップを取り出し、ミルクを掬ってゴクゴクゴク


「うまい!テーテッテテー!」

「ふざけるなら飲まないでいいわよ?」

「いや、冗談や。しっかしこらうまい!こんな牛乳飲んだことないわ。お嬢ちゃんの魔力がやたら上質やからやなあ。いやたまらんなこれは!おかわりおかわり……」


2杯3杯と飲んでいく。だいじょうぶかなあ?


「うまいうまい。何杯でもいけるなあ。何かかわったモン入ってるんちゃうかと思うくらい美味いな。ウチにもこのスライムほしいわ」

「私の先生も牛乳スライム作ったけどミルクの味は違ったみたいだよ」

「ほう。そりゃええ情報やなあ。でもそれでもワイも一匹ほしいのは欲しいねん。作り方教えてんか」

「ええ?いいのかなあ?牛乳農家さんが困るってママが前に言ってたよ?」


チラッとママの方を見る。
前にそういうことをチラッと言っていたママは少し困った顔をしている。


「あんまり量産されると牛乳農家の人が困ると思ったのよ。でもその後思ったんだけどね、シエラ先生のお話だと、多分味は元になった魔力水に左右されているわ。とは言ってもシエラ先生の魔力が薄いはずはないんだけどね。不思議ねえ」

「ええやん。レシピ教えてえな。魔界のワイの家だけでしか飼わんから。な?」

「ママどうおもう?」

「いいんじゃない?でもこの人達はどうしようかしらねえ」

「え?」


この人たちって?
と思ってママが指差す方を見ると、人だかりができていた。私と牛乳スライムちゃんの周りにだ。


「あのデブすげえ!スライムが出したミルク飲んでるぜ!?」「いや、あのお方はもしや……?」

「ミルクの香りすげえいい香りしてないか?」「で、でもあの幼女の方がいい香りしそうなんだな!」「ハイエルフか?かわいいなあ」「あれ?あの人魔王様じゃ?」「ょぅι"ょくんかくんかしたいお」

「変態は死ね!!」


ママが2人ほど周りの人をぶっ飛ばした。あわててキングさんがその人を助けに走る


「ママちょっとやりすぎだよ!」

「ちょっとイラッとしてね。ついね。」


ついで周りの人をぶっとばさないで欲しい。大体あの人たちが何をしたというのか
なんだかおかしなことをワイワイ言っていただけのような?


「私の大事なものを汚そうとしたわ」

「そうなんだ?それは大変だね。よく洗わないと!それでママ怒っちゃったんだね。よしよし。」

「怒ったのはわかるけどあんなに遠くまでぶっ飛ばさんでくれるかなあ?」

「キングさんおかえりー」

「ただいま。ママに会場の端まで飛ばすのはやめてって嬢ちゃんからも言っといてもらえるか?わし走るのは苦手やねん。もうジジイやしなあ」


1万歳だっけ?でもままもそうなんだっけ?よくわかんない。ママやおじさんは何でそんな年なんだろう?パパよりだいぶ年上なんだけどママは人間のはずなんだけどなあ。


「そこら辺はまだ内緒よ。そのうち教えてあげるわ」

「そうやな。お嬢ちゃんなら資格もありそうやで。でもなあ、こんな年まで生きるのがいいことかどうかはなんとも言えんな」

「私は今は幸せだけどね。さて、それはそうと。牛乳スライムのレシピはココで公開しちゃえば?」

「レシピって言われても。ぷちスライムちゃんに牛肉あげただけだよ?」


普通どおりの魔力水とあとは牛肉しかあげてない。そんなに特別なことは何一つしていないのだ。
それをレシピと言われてもなあ。
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