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2章
不意打ち
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そんなこんなでお昼休憩も終わってもうすぐ夕方という時間になった。
楽しかったモンスター発表会も終わってしまった。
残念無念。もっといっぱい見たかったなあ。
「国際テイミング学会よ。ちゃんと覚えなさいよ」
私とママは馬車に乗り込んで移動しながらさっきまでの会の話で盛り上がっていた。
そうだったね、テイミングね。ヤダナア覚えてたよ。
「そうだったね。でもやってることは『ぼくのモンスター発表会』って感じだったよ」
「うぐ……それはそうね。特にひどかったのはキメラ作成のやつだったわね」
「アレはひどかったね。会場の人もブーイングしてたもんねえ」
キメラ作成とは先ほど壇上で発表していた話の長い学長さん研究報告だ。
近年の研究結果報告のメインとして発表されていたものだが、キングさんのトレントは木だからまだ何とかってところはあったけど、生モノはきつい。
生きてるモンスターの足を切断して他のモンスターの足を代わりに取り付けて固定してポーションドバーっととかそんな乱暴な処置。それで動くってのもびっくりだ。
最後の考察で人間でもいけちゃうんじゃないかとかなんてひどいことをと思うけど、ママは『足を失った人とかならありかも』ってぼそぼそ言ってから、私は『そうなったらキングさんに治してもらえばいいと思うよ?』って返したら『それもそうね』って。
キングさんの回復魔法なら足くらいニョキニョキ生やせそうだし。
そう思うと凄い発見だとは思うけど意味ないんじゃないかなあと。
足取り替えられたモンスターも困っちゃうよね?左右で大きさがずれてると歩きにくそうだし。
何より取り替えるところを記録水晶に記録してそれを壇上のスクリーンに投影していたけど、モンスターが痛そうにしててもう。ココで会場から大ブーイングだったよ。
「私はああいう実験はやりたくないなあ」
「そうねえ。研究のためとはいえ命だしね。」
私もスライムちゃんをあわてて死なせてしまいそうになったこともある。
でもこの実験だと沢山モンスターが死んじゃったらしい。
中には死ぬだろうと予想しながら行った実験もあるとか。なんというか、それは可愛そう過ぎるよ。
観てる人たちもそれで怒ったに違いない。みんなモンスターが好きで一緒にいる人たちだからね。
「まあ切り替えて帰りましょ。今夜も忙しいし」
「今夜?帰ってご飯食べて寝るんでしょ?」
「なにを言ってるのよ。晩餐会があるでしょうが。そのために色々と練習したんじゃないのよ」
「何の話やらさっぱりですなあ……」
本当に何の話やら。まったく聞いてないぞ!?
これは絶対に聞いてない!忘れてたわけじゃない!
「さくっと用意するわよ」
「いや、ホントに聞いてないよ!?」
「そう?でも今言ったわ。今夜がアーシャちゃんの社交界デビューね!いやあ楽しみだなあ」
「私は楽しみでもなんでもないよ」
「まあそう言わずに、さくっとこのまま会場に向かうわよ」
「ええー!?」
これ絶対はじめから逃がさないように晩餐会のことは内緒にして、モンスター展覧会に連れ出して、そのまま拉致する!ってつもりだったよね!?ママってばひどいわ……
「……帰りたいよお」
「だーめ。ご挨拶だけしてニッコリしてればいいから。それだけでみんなメロメロよ。」
「ふええ。やだなあ」
やだなあと思っていたけどあれよあれよという間に馬車は会場に着いた。らしい。
今夜の晩餐会の会場はここ、魔族の国フレスベルグ共和国の王城だ。ココって……?
「所謂魔王城ってやつよ。歴代魔王と勇者の戦いが行われたって話だけどね。ふふっ」
「何で笑ってるの?」
「ん?歴史なんて嘘ばっかりだなーって。魔王と勇者が一騎打ちなんてするわけないじゃん。ってことよ。それにいつも魔王側がやられすぎでしょ?お城にまで攻め込まれるとか国としてほとんど終わってるよね。まあそんなギリギリの戦いはココしばらくはないわよ」
「昔はあったんだ?」
「大昔はね。」
ふーん?ママの言う大昔って何年くらい前なんだろうなあ。
ああそれにしても嫌だ嫌だ。
ママは顔パスで城門を潜るといっぱいある建物の内のひとつに入る。
そこに待っていたのはウチのメイドさんたちだ。
メイドさんの手によって私はざっぱーんとお風呂に沈められ、上から下までぜーんぶ綺麗に洗われて香油を付けられ服を着せられ……もう言っても無駄なのでやりたいようにさせる。
後でカリナに聞くと、このときの私は飼い主の子供に好きなように振り回されて、もうすっかり諦め切ったペットの犬みたいだったらしい。
「おお、アーシャ様なんと美しい!」
「本当に。神々しいですわ!」
「記録水晶!記録水晶を早く!」
「アーシャ様……美しすぎてこのカリナはもう……ぶふぉ」
「キャー!カリナ様が鼻血を!」
着せ替え人形になって諦めきっていたらみんながおかしなテンションになってしまった。
そのうち一番おかしかったのはカリナだ。
カリナも伯爵令嬢としてドレスに着替えていたのだが、私を見て鼻血をボタボタと垂らしていた。
うすうす気付いてたけどカリナってだいぶダメな子だなあ。
「アーシャちゃん終わった?あらかわいい!最高ね!」
「ママも綺麗だね!えへへ。」
「カリナは……やっぱり残念な子ねえ」
私は薄いグリーンのかわいらしいひらひらの付いたドレス。ママは髪の色と合わせたみたいで、ワインレッドの落ち着いたデザインのドレスだ。
カリナ?カリナはブルーのドレスに赤い斑点が付いてるよ。メイドさんたちが頑張ってその染みを魔法で除去してる。便利な魔法だなあ。
便利ですばらしい魔法だなあ。
洗濯いらずだなあ。いいなあ。
と思ってじーっと見ていると、カリナが
「私めをそれほど見つめて頂いて……アーシャ様っ!カリナはっ!」
と叫んで今度は反対の鼻から鼻血を出した。
このバカはどうすればいいんだ!
楽しかったモンスター発表会も終わってしまった。
残念無念。もっといっぱい見たかったなあ。
「国際テイミング学会よ。ちゃんと覚えなさいよ」
私とママは馬車に乗り込んで移動しながらさっきまでの会の話で盛り上がっていた。
そうだったね、テイミングね。ヤダナア覚えてたよ。
「そうだったね。でもやってることは『ぼくのモンスター発表会』って感じだったよ」
「うぐ……それはそうね。特にひどかったのはキメラ作成のやつだったわね」
「アレはひどかったね。会場の人もブーイングしてたもんねえ」
キメラ作成とは先ほど壇上で発表していた話の長い学長さん研究報告だ。
近年の研究結果報告のメインとして発表されていたものだが、キングさんのトレントは木だからまだ何とかってところはあったけど、生モノはきつい。
生きてるモンスターの足を切断して他のモンスターの足を代わりに取り付けて固定してポーションドバーっととかそんな乱暴な処置。それで動くってのもびっくりだ。
最後の考察で人間でもいけちゃうんじゃないかとかなんてひどいことをと思うけど、ママは『足を失った人とかならありかも』ってぼそぼそ言ってから、私は『そうなったらキングさんに治してもらえばいいと思うよ?』って返したら『それもそうね』って。
キングさんの回復魔法なら足くらいニョキニョキ生やせそうだし。
そう思うと凄い発見だとは思うけど意味ないんじゃないかなあと。
足取り替えられたモンスターも困っちゃうよね?左右で大きさがずれてると歩きにくそうだし。
何より取り替えるところを記録水晶に記録してそれを壇上のスクリーンに投影していたけど、モンスターが痛そうにしててもう。ココで会場から大ブーイングだったよ。
「私はああいう実験はやりたくないなあ」
「そうねえ。研究のためとはいえ命だしね。」
私もスライムちゃんをあわてて死なせてしまいそうになったこともある。
でもこの実験だと沢山モンスターが死んじゃったらしい。
中には死ぬだろうと予想しながら行った実験もあるとか。なんというか、それは可愛そう過ぎるよ。
観てる人たちもそれで怒ったに違いない。みんなモンスターが好きで一緒にいる人たちだからね。
「まあ切り替えて帰りましょ。今夜も忙しいし」
「今夜?帰ってご飯食べて寝るんでしょ?」
「なにを言ってるのよ。晩餐会があるでしょうが。そのために色々と練習したんじゃないのよ」
「何の話やらさっぱりですなあ……」
本当に何の話やら。まったく聞いてないぞ!?
これは絶対に聞いてない!忘れてたわけじゃない!
「さくっと用意するわよ」
「いや、ホントに聞いてないよ!?」
「そう?でも今言ったわ。今夜がアーシャちゃんの社交界デビューね!いやあ楽しみだなあ」
「私は楽しみでもなんでもないよ」
「まあそう言わずに、さくっとこのまま会場に向かうわよ」
「ええー!?」
これ絶対はじめから逃がさないように晩餐会のことは内緒にして、モンスター展覧会に連れ出して、そのまま拉致する!ってつもりだったよね!?ママってばひどいわ……
「……帰りたいよお」
「だーめ。ご挨拶だけしてニッコリしてればいいから。それだけでみんなメロメロよ。」
「ふええ。やだなあ」
やだなあと思っていたけどあれよあれよという間に馬車は会場に着いた。らしい。
今夜の晩餐会の会場はここ、魔族の国フレスベルグ共和国の王城だ。ココって……?
「所謂魔王城ってやつよ。歴代魔王と勇者の戦いが行われたって話だけどね。ふふっ」
「何で笑ってるの?」
「ん?歴史なんて嘘ばっかりだなーって。魔王と勇者が一騎打ちなんてするわけないじゃん。ってことよ。それにいつも魔王側がやられすぎでしょ?お城にまで攻め込まれるとか国としてほとんど終わってるよね。まあそんなギリギリの戦いはココしばらくはないわよ」
「昔はあったんだ?」
「大昔はね。」
ふーん?ママの言う大昔って何年くらい前なんだろうなあ。
ああそれにしても嫌だ嫌だ。
ママは顔パスで城門を潜るといっぱいある建物の内のひとつに入る。
そこに待っていたのはウチのメイドさんたちだ。
メイドさんの手によって私はざっぱーんとお風呂に沈められ、上から下までぜーんぶ綺麗に洗われて香油を付けられ服を着せられ……もう言っても無駄なのでやりたいようにさせる。
後でカリナに聞くと、このときの私は飼い主の子供に好きなように振り回されて、もうすっかり諦め切ったペットの犬みたいだったらしい。
「おお、アーシャ様なんと美しい!」
「本当に。神々しいですわ!」
「記録水晶!記録水晶を早く!」
「アーシャ様……美しすぎてこのカリナはもう……ぶふぉ」
「キャー!カリナ様が鼻血を!」
着せ替え人形になって諦めきっていたらみんながおかしなテンションになってしまった。
そのうち一番おかしかったのはカリナだ。
カリナも伯爵令嬢としてドレスに着替えていたのだが、私を見て鼻血をボタボタと垂らしていた。
うすうす気付いてたけどカリナってだいぶダメな子だなあ。
「アーシャちゃん終わった?あらかわいい!最高ね!」
「ママも綺麗だね!えへへ。」
「カリナは……やっぱり残念な子ねえ」
私は薄いグリーンのかわいらしいひらひらの付いたドレス。ママは髪の色と合わせたみたいで、ワインレッドの落ち着いたデザインのドレスだ。
カリナ?カリナはブルーのドレスに赤い斑点が付いてるよ。メイドさんたちが頑張ってその染みを魔法で除去してる。便利な魔法だなあ。
便利ですばらしい魔法だなあ。
洗濯いらずだなあ。いいなあ。
と思ってじーっと見ていると、カリナが
「私めをそれほど見つめて頂いて……アーシャ様っ!カリナはっ!」
と叫んで今度は反対の鼻から鼻血を出した。
このバカはどうすればいいんだ!
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