126 / 1,289
第7話
(17)
しおりを挟む
和彦は、楽しそうな賢吾を睨みつけたあと、相変わらずドアの傍らに立ったままの三田村にも視線を向ける。こういうとき、ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような三田村の無表情に救われる。
「さあ、どっちがいい? どっちでも、たっぷり先生を感じさせてやる」
耳に唇を押し当てながら賢吾に唆され、和彦は陥落した。
「――舐めて、くれ……」
背後から大きく突き上げられて和彦は悲鳴を上げる。同時に、二度目の絶頂の証をシーツに飛び散らせていた。
絶頂の余韻で、内奥深くに押し込まれている賢吾のものをきつく締め上げていたが、いきなり引き抜かれて、和彦の体は仰向けにされる。すぐにまた、内奥に凶暴な欲望を挿入された。
和彦は喘ぎながら、まるで子供のように賢吾にすがりつく。汗で濡れた背に両腕を回すと、力強い律動が再開される。
「二度もイかせたのに、まだ俺のものにしゃぶりついてくるな、先生の中は。やっぱり、大好きなものを中に出してもらわないと、満足できないか?」
汗を滴らせながら賢吾がにんまりと笑い、和彦は睨みつけることもできない。今の和彦は、賢吾から与えられる快感に完全に支配されていた。
唇を吸われると、言われる前に賢吾の口腔に舌を差し込む。内奥で賢吾のものが蠢き、奥深くを逞しいもので掻き回される。
和彦はビクビクと腰を震わせ、たまらず賢吾の背に爪を立てる。あの見事な大蛇の刺青に傷をつけるかもしれないと気遣う余裕もなく、賢吾も嫌がらなかった。それどころか、深く息を吐き出してこう言った。
「ゾクゾクするほど感じるな。痛いことが嫌いな先生が、俺に痛みを与えてくるってのは」
「……ヤクザの中でも、あんたは特に、性質が悪い」
「褒め言葉だ。ヤクザの俺にはな。――さあ、先生、熱いものをたっぷり中に出してやる」
両足を抱え上げられ、狙い澄ましたように内奥深くを強く突き上げられる。一度目で喉を反らして声を上げ、二度目で快感のあまり眩暈に襲われる。三度目で、注ぎ込まれる熱い精の感触に恍惚とした。
和彦は、賢吾にしがみついたまま息を喘がせる。すると、ここまでの手荒さとは打って変わった優しさで、髪を撫でられ、啄ばむようなキスを与えられた。
「――今回は、よくやった。執行部の中じゃ、あいつはもう助からないと思っている人間もいたが、それをお前は助けた」
突然の賢吾の言葉に、和彦は目を丸くする。そこで、ここまで抑えつけていた最低限の好奇心が表に出ていた。
「あれは、どういった人間なのか、聞いていいか?」
「長嶺組の分家の幹部だ。そして刺した人間も、長嶺組の下部組織の人間だ。つまり、内輪揉めだ」
体を起こした賢吾が、内奥からゆっくりと欲望を引き抜く。息を詰めて苦しさに耐えながら、和彦の視線は自然に三田村のほうへと向いていた。
改めて考えると、異常な状況だ。和彦は、今この場にいる二人の男と関係を持っているが、一方との行為を見せ付けることも、それを見続けることも、本来ならありえない。なのにこうして現実に起こっているから、特殊な繋がりを三田村との間に感じる。
和彦がどこを見ているかわかっていながら、やめろとも言わずに賢吾が唇を首筋に這わせる。
「もともとソリが合わない者同士で、ここのところゴタゴタが続いて、うちの執行部が介入を始めたところに、今回の事件だ。もし、刺された幹部が死ぬようなことになったら、幹部を殺したほうの組織に絶縁処分を下さなきゃならん」
「それは本意じゃない、か……」
賢吾のものが引き抜かれた内奥に指が挿入され、蠢かされる。和彦は小さく声を洩らした。
「絶縁しても、組織として存続できる。だが、長嶺組や総和会という後ろ盾を失ったら、まずは商売はできない。そうなったら、組員たちの生活が危うい。俺は、面子は大事にするが、それは組織に属する人間がいてこその面子だ。一部のバカが勝手にケンカをやらかして、それで幹部が死んで、一方だけを厳しく処断したら、禍根が残る」
話しながらも賢吾は指を動かし続け、内奥から自分が注ぎ込んだ精を掻き出している。
「だから俺は、可能な限り死なせるなと言ったんだ。何事も、円満に片がつくほうがいいだろ?」
「円満……。あんたが言うなって言葉だな」
「先生の憎まれ口聞きたさに言ってるんだ。組長とは言っても、俺も可愛いもんだ」
自分で言うなと口中で呟いてから、和彦は賢吾と唇を重ねる。そっと唇を離すと、賢吾に囁かれた。
「――三田村も欲しいだろ、この場所に」
わざと湿った音を立てて内奥を指で掻き回される。ぐっと唇を引き結んだ和彦は賢吾を睨みつけるが、大蛇にはまったく効いていない。それどころか、楽しげに笑っている。
「さあ、どっちがいい? どっちでも、たっぷり先生を感じさせてやる」
耳に唇を押し当てながら賢吾に唆され、和彦は陥落した。
「――舐めて、くれ……」
背後から大きく突き上げられて和彦は悲鳴を上げる。同時に、二度目の絶頂の証をシーツに飛び散らせていた。
絶頂の余韻で、内奥深くに押し込まれている賢吾のものをきつく締め上げていたが、いきなり引き抜かれて、和彦の体は仰向けにされる。すぐにまた、内奥に凶暴な欲望を挿入された。
和彦は喘ぎながら、まるで子供のように賢吾にすがりつく。汗で濡れた背に両腕を回すと、力強い律動が再開される。
「二度もイかせたのに、まだ俺のものにしゃぶりついてくるな、先生の中は。やっぱり、大好きなものを中に出してもらわないと、満足できないか?」
汗を滴らせながら賢吾がにんまりと笑い、和彦は睨みつけることもできない。今の和彦は、賢吾から与えられる快感に完全に支配されていた。
唇を吸われると、言われる前に賢吾の口腔に舌を差し込む。内奥で賢吾のものが蠢き、奥深くを逞しいもので掻き回される。
和彦はビクビクと腰を震わせ、たまらず賢吾の背に爪を立てる。あの見事な大蛇の刺青に傷をつけるかもしれないと気遣う余裕もなく、賢吾も嫌がらなかった。それどころか、深く息を吐き出してこう言った。
「ゾクゾクするほど感じるな。痛いことが嫌いな先生が、俺に痛みを与えてくるってのは」
「……ヤクザの中でも、あんたは特に、性質が悪い」
「褒め言葉だ。ヤクザの俺にはな。――さあ、先生、熱いものをたっぷり中に出してやる」
両足を抱え上げられ、狙い澄ましたように内奥深くを強く突き上げられる。一度目で喉を反らして声を上げ、二度目で快感のあまり眩暈に襲われる。三度目で、注ぎ込まれる熱い精の感触に恍惚とした。
和彦は、賢吾にしがみついたまま息を喘がせる。すると、ここまでの手荒さとは打って変わった優しさで、髪を撫でられ、啄ばむようなキスを与えられた。
「――今回は、よくやった。執行部の中じゃ、あいつはもう助からないと思っている人間もいたが、それをお前は助けた」
突然の賢吾の言葉に、和彦は目を丸くする。そこで、ここまで抑えつけていた最低限の好奇心が表に出ていた。
「あれは、どういった人間なのか、聞いていいか?」
「長嶺組の分家の幹部だ。そして刺した人間も、長嶺組の下部組織の人間だ。つまり、内輪揉めだ」
体を起こした賢吾が、内奥からゆっくりと欲望を引き抜く。息を詰めて苦しさに耐えながら、和彦の視線は自然に三田村のほうへと向いていた。
改めて考えると、異常な状況だ。和彦は、今この場にいる二人の男と関係を持っているが、一方との行為を見せ付けることも、それを見続けることも、本来ならありえない。なのにこうして現実に起こっているから、特殊な繋がりを三田村との間に感じる。
和彦がどこを見ているかわかっていながら、やめろとも言わずに賢吾が唇を首筋に這わせる。
「もともとソリが合わない者同士で、ここのところゴタゴタが続いて、うちの執行部が介入を始めたところに、今回の事件だ。もし、刺された幹部が死ぬようなことになったら、幹部を殺したほうの組織に絶縁処分を下さなきゃならん」
「それは本意じゃない、か……」
賢吾のものが引き抜かれた内奥に指が挿入され、蠢かされる。和彦は小さく声を洩らした。
「絶縁しても、組織として存続できる。だが、長嶺組や総和会という後ろ盾を失ったら、まずは商売はできない。そうなったら、組員たちの生活が危うい。俺は、面子は大事にするが、それは組織に属する人間がいてこその面子だ。一部のバカが勝手にケンカをやらかして、それで幹部が死んで、一方だけを厳しく処断したら、禍根が残る」
話しながらも賢吾は指を動かし続け、内奥から自分が注ぎ込んだ精を掻き出している。
「だから俺は、可能な限り死なせるなと言ったんだ。何事も、円満に片がつくほうがいいだろ?」
「円満……。あんたが言うなって言葉だな」
「先生の憎まれ口聞きたさに言ってるんだ。組長とは言っても、俺も可愛いもんだ」
自分で言うなと口中で呟いてから、和彦は賢吾と唇を重ねる。そっと唇を離すと、賢吾に囁かれた。
「――三田村も欲しいだろ、この場所に」
わざと湿った音を立てて内奥を指で掻き回される。ぐっと唇を引き結んだ和彦は賢吾を睨みつけるが、大蛇にはまったく効いていない。それどころか、楽しげに笑っている。
110
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
帝は傾国の元帥を寵愛する
tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。
舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。
誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。
だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。
それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。
互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。
誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。
やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。
華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。
冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。
【第13回BL大賞にエントリー中】
投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる