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第12話
(9)
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「解釈の違いだな。俺は先生に、一度だってひどいことをしてないだろ。目一杯甘やかしてはいるが」
腕力ではもちろん、口でも賢吾に勝てる気がしない。
賢吾に頭を引き寄せられ、唇を奪われる。ここまでの会話で、すっかり口づけに応える気が失せた和彦だが、ふいに、今朝までさんざん味わっていた鷹津との口づけを思い出し、体が熱くなる。
賢吾は、和彦の異変を見逃さなかった。髪の付け根を指でまさぐられ、思わず身震いしてしまう。
「まだ、体に火がついたままのようだな、先生」
優しい声で囁かれ、その声に潜む残酷なほどの淫らさを感じ取った和彦は、本能的に賢吾の肩を押し退けようとする。すると、反対に軽く突き飛ばされ、和彦の体は千尋に受け止められた。
こういうとき、この父子は妙に息が合う。千尋にきつく抱き締められた次の瞬間、和彦は両足を大きく左右に開かれ、賢吾が頭を割り込ませてきた。
「んっ……」
咄嗟に顔を背けて、唇を引き結ぶ。賢吾が内腿に唇を寄せながら、じっくりと体を検分しているのがわかった。一方の千尋は、胸元に手を這わせ、まだ疼いている二つの突起を弄り始める。
「……こういうのは、嫌だ」
敏感なものをてのひらに包み込まれて扱き上げられたところで、たまらず和彦は訴える。そんな和彦を上目遣いにちらりと見て、賢吾は笑った。
「今朝まで鷹津にさんざん抱かれているのに、それでもこうされると感じる自分が嫌、というところか?」
「うるさい……」
素直だな、と洩らした賢吾の濡れた舌に、和彦のものは舐め上げられる。ビクリと体を震わせて背をしならせると、先端を柔らかく吸い上げられる。腰の辺りにじんわりと心地よさが広がり、それがあっという間に快感へと変わっていた。
疲れた体は、激しい愛撫に耐えられそうにはないが、甘やかすような愛撫は喜んで受け入れていく。
「――先生」
千尋に呼ばれて振り向くと、唇の端にキスされる。軽く唇を啄ばまれていくうちに、和彦も千尋と唇を吸い合い、舌先を触れ合わせていた。
鷹津に染められていた体が、賢吾と千尋によって染め直されていくと感じた。この二人の目的は、和彦の体を検分しながら、鷹津の名残りを消してしまうことなのかもしれない。
それが気遣いからくることなのか、ヤクザの所有欲からの行動なのか、和彦にはわからない。わかっているのは、自分の中で官能が高まりつつあるということだった。
「鷹津に、ここは舐めてもらったか?」
先端を舌先でチロチロと舐められながら賢吾に問われる。和彦は正直に答えた。
「……舐められて、ない……」
「先生を抱く楽しみがわかってないな、あの男は。尻に入れればいいと思ってるのか」
「品のない言い方をするなっ」
「極道相手に、上品さなんて求めているのか」
なんとも言いようがなくて和彦が眉をひそめると、千尋がそっと耳打ちしてきた。
「先生、あいつのは、舐めた?」
「バカっ……」
冗談で聞いてきたのかと思ったが、千尋は真剣だ。毒気を抜かれた和彦は、小さく首を横に振る。
何を求められるのか、予測はついた。
和彦はうつ伏せにされ、これ以上なく高々と尻を突き出した姿勢を取らされながら、千尋の両足の間に顔を埋める。すでに興奮のため身を起こした千尋のものに、丹念に舌を這わせ始めると、和彦は後頭部を押さえつけられ、口腔深くまで呑み込むことを求められた。
口腔を、千尋の欲望に犯されているようだと思うと、気が遠くなるような高揚感を覚える。こんなふうに扱われることは、嫌ではなかった。それに、不思議なほど屈辱感もない。
この男たちに求められ、応えるということは、同じだけの〈何か〉を与えられるということなのだ。
現に今も――。
「んんっ」
千尋の欲望を口腔に含んだまま、和彦は呻き声を洩らす。突き出した尻を手荒に割り開かれたかと思うと、内奥の入り口に柔らかく濡れた感触が触れたからだ。それがなんであるか理解する前に、痺れるほどの快感が背筋を駆け抜ける。
「――まだ、柔らかいな。トロトロだ。それに、発情しまくっている。舌を這わせただけで、ひくついてるぞ」
背後から、楽しげな口調で賢吾が言う。そして、内奥の入り口にたっぷりの唾液を施され、舌がいやらしく蠢く。それだけではなく、内奥に舌先が入り込むのだ。浅い侵入とはいえ、逞しいもので押し広げられ、擦り上げられるのとは違う繊細な感触は、強烈だ。
和彦は喉の奥から声を洩らしながら、口腔の粘膜で千尋のものを包み込む。唇で根元を締め付けると、頭上で千尋が吐息を洩らした。
和彦に対して、底なしの甘えっぷりを発揮する千尋が、次に何を求めてくるかは、わかりきっていた。そしてその求めを、自分が拒否できないことも。
腕力ではもちろん、口でも賢吾に勝てる気がしない。
賢吾に頭を引き寄せられ、唇を奪われる。ここまでの会話で、すっかり口づけに応える気が失せた和彦だが、ふいに、今朝までさんざん味わっていた鷹津との口づけを思い出し、体が熱くなる。
賢吾は、和彦の異変を見逃さなかった。髪の付け根を指でまさぐられ、思わず身震いしてしまう。
「まだ、体に火がついたままのようだな、先生」
優しい声で囁かれ、その声に潜む残酷なほどの淫らさを感じ取った和彦は、本能的に賢吾の肩を押し退けようとする。すると、反対に軽く突き飛ばされ、和彦の体は千尋に受け止められた。
こういうとき、この父子は妙に息が合う。千尋にきつく抱き締められた次の瞬間、和彦は両足を大きく左右に開かれ、賢吾が頭を割り込ませてきた。
「んっ……」
咄嗟に顔を背けて、唇を引き結ぶ。賢吾が内腿に唇を寄せながら、じっくりと体を検分しているのがわかった。一方の千尋は、胸元に手を這わせ、まだ疼いている二つの突起を弄り始める。
「……こういうのは、嫌だ」
敏感なものをてのひらに包み込まれて扱き上げられたところで、たまらず和彦は訴える。そんな和彦を上目遣いにちらりと見て、賢吾は笑った。
「今朝まで鷹津にさんざん抱かれているのに、それでもこうされると感じる自分が嫌、というところか?」
「うるさい……」
素直だな、と洩らした賢吾の濡れた舌に、和彦のものは舐め上げられる。ビクリと体を震わせて背をしならせると、先端を柔らかく吸い上げられる。腰の辺りにじんわりと心地よさが広がり、それがあっという間に快感へと変わっていた。
疲れた体は、激しい愛撫に耐えられそうにはないが、甘やかすような愛撫は喜んで受け入れていく。
「――先生」
千尋に呼ばれて振り向くと、唇の端にキスされる。軽く唇を啄ばまれていくうちに、和彦も千尋と唇を吸い合い、舌先を触れ合わせていた。
鷹津に染められていた体が、賢吾と千尋によって染め直されていくと感じた。この二人の目的は、和彦の体を検分しながら、鷹津の名残りを消してしまうことなのかもしれない。
それが気遣いからくることなのか、ヤクザの所有欲からの行動なのか、和彦にはわからない。わかっているのは、自分の中で官能が高まりつつあるということだった。
「鷹津に、ここは舐めてもらったか?」
先端を舌先でチロチロと舐められながら賢吾に問われる。和彦は正直に答えた。
「……舐められて、ない……」
「先生を抱く楽しみがわかってないな、あの男は。尻に入れればいいと思ってるのか」
「品のない言い方をするなっ」
「極道相手に、上品さなんて求めているのか」
なんとも言いようがなくて和彦が眉をひそめると、千尋がそっと耳打ちしてきた。
「先生、あいつのは、舐めた?」
「バカっ……」
冗談で聞いてきたのかと思ったが、千尋は真剣だ。毒気を抜かれた和彦は、小さく首を横に振る。
何を求められるのか、予測はついた。
和彦はうつ伏せにされ、これ以上なく高々と尻を突き出した姿勢を取らされながら、千尋の両足の間に顔を埋める。すでに興奮のため身を起こした千尋のものに、丹念に舌を這わせ始めると、和彦は後頭部を押さえつけられ、口腔深くまで呑み込むことを求められた。
口腔を、千尋の欲望に犯されているようだと思うと、気が遠くなるような高揚感を覚える。こんなふうに扱われることは、嫌ではなかった。それに、不思議なほど屈辱感もない。
この男たちに求められ、応えるということは、同じだけの〈何か〉を与えられるということなのだ。
現に今も――。
「んんっ」
千尋の欲望を口腔に含んだまま、和彦は呻き声を洩らす。突き出した尻を手荒に割り開かれたかと思うと、内奥の入り口に柔らかく濡れた感触が触れたからだ。それがなんであるか理解する前に、痺れるほどの快感が背筋を駆け抜ける。
「――まだ、柔らかいな。トロトロだ。それに、発情しまくっている。舌を這わせただけで、ひくついてるぞ」
背後から、楽しげな口調で賢吾が言う。そして、内奥の入り口にたっぷりの唾液を施され、舌がいやらしく蠢く。それだけではなく、内奥に舌先が入り込むのだ。浅い侵入とはいえ、逞しいもので押し広げられ、擦り上げられるのとは違う繊細な感触は、強烈だ。
和彦は喉の奥から声を洩らしながら、口腔の粘膜で千尋のものを包み込む。唇で根元を締め付けると、頭上で千尋が吐息を洩らした。
和彦に対して、底なしの甘えっぷりを発揮する千尋が、次に何を求めてくるかは、わかりきっていた。そしてその求めを、自分が拒否できないことも。
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