血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
299 / 1,289
第15話

(18)

しおりを挟む
 和彦の体の上で、再び鷹津が動き始める。すでに、鷹津に対して従順になっている襞と粘膜は、行き来する逞しいものに絡みつき、吸いつく。体はとっくに、鷹津を受け入れているのだ。それどころか、和彦の気持ちも――。
 奥深くを間断なく突き上げられ、波のように肉の悦びが押し寄せてくる。狂おしい快感に乱れながら和彦は、ただ本能的に鷹津の背に両腕を回し、しがみついていた。
「うっ……ぁ、んうっ、うっ、はうっ……、うっ」
 刺青のない背を撫で回し、爪を立てる。内奥で、鷹津のものが震えたような気がした。閉じた瞼の裏で鮮やかな閃光が走り、その光に酔ってしまいそうで目を開けると、思いがけず間近に鷹津の顔があった。
 吸い寄せられるように見つめ合っていたが、自然な流れで唇が重なり、そのまま夢中で吸い合う。
 余裕のない口づけの最中、鷹津は内奥深くにたっぷりの精を放った。
 和彦は鷹津の下で身を震わせ、男を受け入れ、精を受け止めた悦びに浸る。相手が誰であろうが、このときに得る悦びの深さは変わらない。
「――お前のオトコも、こうして感じさせてくれたか?」
 唐突に鷹津に問いかけられ、和彦はぼんやりとしながらも応じる。
「ああ」
「俺相手にも、感じたな?」
「……ああ」
「性質が悪いオンナだな。ヤクザと刑事を手玉に取って、こうも平然としていられるなんて」
 和彦は鷹津を見据えると、低い声で告げた。
「ぼくは、あんたのオンナじゃない。それに三田村は、ぼくの〈オトコ〉だ。あんたは、〈番犬〉。立場の違いははっきりさせておいてくれ」
「そういうことを、この状況で言えるってのが、やっぱり性質が悪いんだ。――なあ、俺のご主人」
 嫌な男だと思いながらも、鷹津に緩く腰を動かされると、感じてしまう。
 小さく悦びの声を上げた和彦は、求められるまま鷹津と舌を絡める。まだひくついている内奥は、新たな快感の訪れに歓喜するように、逞しい欲望をきつく締め上げ、鷹津を呻かせた。


 鷹津は、貪り尽くそうとするかのように、和彦を抱いてくる。欲望に歯止めがかからなくなり、ただひたすら、求めてくるのだ。
 時間の制限というものがなければ、賢吾より先に、鷹津に抱き殺されるかもしれない。
 自分の上で動く鷹津を見上げながら、和彦はそんなことを考える。すると、和彦の視線に気づいたのか、鷹津に手荒く頬を撫でられ、唇を吸われた。同時に、内奥深くをゆっくりと突かれ、快感が背筋を這い上がってくる。
「あっ……、はあぁっ」
「もっと感じたいなら、また裸にひん剥いてやろうか? それこそ、全身を舐め回してやるぜ。好きだろ、舐められるの」
 そんなことを言いながら、鷹津の片手がワイシャツの下に入り込もうとする。和彦は懸命にその手を押し返した。
「時間が、ないんだっ……。もう、ロビーに下りないと――」
「組員なんて、待たせておけばいいだろ」
「あんたと違って、こっちは予定がある」
「……組長のオンナは、忙しいことだな」
 和彦が睨みつけると、鷹津は鼻先で笑う。上体を起こして和彦の両足を抱え直すと、衰えることのない力強い律動を内奥で刻み始めた。和彦は甲高い声を上げ、仰け反りながら頭上のクッションを握り締める。
 鷹津と体がドロドロになるほど求め合ったあと、和彦はシャワーを浴びる時間も惜しくて、手早く後始末だけを済ませてスーツを着込んだのだが、その姿が鷹津の何かを刺激したらしい。再びベッドに引っ張り込まれて下肢だけを剥かれ、貫かれた。
 内奥で、興奮した鷹津のものが脈打っている。その逞しいもので突き上げられるたびに、和彦の体は悦びに震える。
「あっ、あっ、いっ、い、ぃ……」
「本当に、ムカつくぐらい、快感に脆い体だな。ここなんて、涎を垂らしっぱなしだ」
 身を起こして震える和彦のものに鷹津の手がかかり、先端をヌルヌルと撫でられる。鋭い快感に息を詰めると、鷹津が乱暴に腰を突き上げた。
「あうっ」
 先端に爪を立てて弄られ、和彦は身をしならせながら嬌声を上げ、再び内奥を突き上げられて、精を噴き上げた。
 鷹津が楽しげに目を細めてから、ゆっくりと腰を動かし始める。その動きはすぐに余裕のないものとなり、察するものがあった和彦は、なんとか声を上げる。
「中は、嫌だっ……」
「いまさら何言ってる。さっき出しただろ」
「すぐに部屋を出ないと行けないんだ」
 聞く気があるのかないのか、鷹津は返事をしない。和彦は熱い体の下から抜け出そうとしたが、もちろんそれは不可能だ。もう抗議の声も上げられず、ただ鷹津を睨みつける。そんな和彦をおもしろがるように見下ろしていた鷹津だが、ふいに顔を寄せてきた。

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

帝は傾国の元帥を寵愛する

tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。 舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。 誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。 だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。 それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。 互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。 誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。 やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。 華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。 冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。 【第13回BL大賞にエントリー中】 投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...