血と束縛と

北川とも

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第22話

(6)

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 すっかり硬く凝った胸の突起を、いきなりきつく吸い上げられる。そうかと思えば、濡れた舌先にくすぐるように舐められ、転がされ、軽く歯を立てられた。和彦は喉を反らして震える吐息を洩らし、促されるまま両足を開いて、身を起こしかけた欲望を握り締められた。
「あっ、あっ」
 軽く扱かれて、爪の先で感じやすい先端を弄られる。ビクビクと腰を震わせて和彦が身悶えると、下腹部から胸元にかけてじっくりと舌を這わされる。
 これまで以上に和彦が乱れるのが早いと感じたのか、相手もペースを合わせてくる。濡れた指に内奥の入り口をまさぐられた。
 今夜は潤滑剤ではなく、唾液を使って濡らしているようだった。少しずつ内奥をこじ開けられながら、指を出し入れされる。和彦は息を喘がせてシーツを握り締める。他の男たちの愛撫にはない慎重さがもどかしく、そう感じる自分の浅ましさが、感度を高めているようだった。
 ようやく指がしっかりと内奥に挿入されたとき、意識しないままきつく締め付ける。相手は巧みに指を蠢かす一方で、反り返った和彦のものをもう片方の手で握り、扱く。前後から押し寄せてくる快感に、和彦は甲高い声を上げて腰を浮かせていた。
「うあっ、あっ、んんっ――」
 再び欲望の先端を爪の先で弄られ、今度は腰が砕けるように力が抜けた。
 思わせぶりに内奥から指が引き抜かれ、片足を抱え上げられる。目隠しをされていて見えるはずもないのだが、相手の強い眼差しを感じることはできた。指で綻ばされてひくつく部分を、じっと見つめられているのだ。
 本能的な怯えから身を捩ろうとしたが、その行動を封じるように熱く硬いものが内奥の入り口に擦りつけられた。
「あっ……」
 和彦が声を洩らしたときには、内奥の入り口をこじ開けるようにして欲望が押し入ってくる。咄嗟に頭上の枕を握り締めて、顔も見えない相手と繋がる。
「くっ……ぅ、うっ、うっ、ううっ」
 たっぷりの唾液をすり込まれた襞と粘膜を強く擦り上げられ、苦痛が一瞬あとにはゾクゾクするような肉の疼きへと変化していく。
 ある程度まで欲望が内奥に埋め込まれると、両足を折り曲げるようにして抱えられ、深々と突き上げられる。和彦は声も出せずに仰け反り、小刻みに体を震わせる。
 相手の欲望に屈服させられ、受け入れた証として、すでに内奥は淫らな蠕動を繰り返していた。その感触を堪能するように相手は腰の動きを止める。その代わり、和彦の体をてのひらで撫で回してくる。
 これまでと同じ、じっくりと時間をかけての交わりだった。相手は、自分好みの攻め方で和彦に快感を与え、体に刻みつけてくる。他の男たちのような激しさで振り回すことはないが、じわじわと嬲られて狂わされていくのは、まるで甘い責め苦だ。
 思い出したように内奥深くを抉られ、和彦は息を詰めて喉を反らす。抱えられた両足の爪先をピンと突っ張らせて、全身を駆け抜ける肉の悦びを堪能する。このとき、触れられないまま絶頂に達し、下腹部を精で濡らしていた。
 引き絞るように内奥が収縮する。相手が緩やかに腰を動かし、発情しきった襞と粘膜を擦り上げてきた。
「んっ、んんっ……、くぅっ――……」
 首筋に唇が這わされ、それが驚くほど心地よくて、和彦は喘ぎ声を上げる。相手の唇が耳の形をなぞり、こめかみに押し当てられ、唇の端に触れてくる。ハッと我に返って顔を背けようとしたが、あごを掴まれて唇を塞がれていた。
 肌に唇が触れただけでなく、唇にまで触れてきたのだ。今夜は何か違うと察知するには十分で、急に怖くなった和彦は必死に口づけを拒もうとしたが、内奥に埋め込まれたものが蠢き、腰から背筋にかけて快感が這い上がってくる。堪えきれず呻き声を洩らすと、待ちかねていたように口腔に舌が入り込んできた。
 ここまでされて、ようやく相手が生身の人間なのだと実感できる。掛け軸に画かれた若武者の姿は、すでに脳裏から消えかかっていた。
「あうっ」
 大きく内奥を突き上げられ、反射的に相手の肩に手をかける。相手は浴衣を脱いですらいないが、てのひらを通して感じた硬い感触に、すぐに和彦は手を引く。本能的に、軽々しく触れてはいけないと感じたのだ。
 どれだけ相手が生身の人間だと実感できようが、〈長嶺の守り神〉という事実は変わらない。和彦は、その守り神に捧げられた生け贄だ。
 だからこうして――食われている。
 胸の突起を強く吸い上げられ、女のような嬌声を上げて煩悶する。達したばかりだというのに和彦の欲望は再び反応し、相手の手の中で弄ばれていた。
 和彦の体のどの部分が、どのタイミングで攻められるとより感じるか、相手は分析しつくしていた。
「ああっ……、はっ、あっ、あうっ、も、うっ――」

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