635 / 1,289
第28話
(6)
しおりを挟む
和彦がぎこちなく手を動かしているのとは対照的に、賢吾の指の動きは巧みだ。確実に和彦の弱みを探り当て、弄んでくる。すべてを賢吾に委ねた証として、無意識のうちに力が抜け、自ら大きく足を開いて愛撫を求めてしまう。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾はそっと目を細めた。
オンナの従順ぶりを愛でているようでもあり、そのオンナに、同じような愛撫を施した男の動きを追っているようでもある。
「どの男に対しても、こんなにいやらしい蜜を垂らして悦んで見せているんなら、少し仕込みすぎたかもしれねーな」
ゾッとするほど優しい声で囁いた賢吾の片手が、反り返り、先端から尽きることなく透明なしずくを垂らしている和彦の欲望にかかる。唇を噛んで声を堪えたが、反応そのものを堪えることはできない。賢吾の手が動くたびに腰を揺らし、熱くなったものを震わせる。
「ふっ……」
凶暴な熱の塊が、ひくつく内奥の入り口に擦りつけられる。それだけで和彦の背筋に、痺れるような疼きが駆け抜けていた。指で解されたとはいえ、まだ狭い場所をゆっくりとこじ開けられ、痛みと異物感が生まれはするものの、大蛇の化身のような男に内から食らわれるという高揚感の前には、あまりに淡い感覚だ。
和彦はすがるように賢吾を見上げながら、逞しい腕に懸命にしがみつく。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾が残酷な質問をぶつけてきた。
「――こんなふうに、南郷を受け入れたか?」
瞬間的に怯えた和彦だが、欲望の太い部分を内奥に呑み込まされ、強い刺激に気を取られてしまう。さらに追い討ちをかけるように、賢吾が緩く腰を揺する。
「んあっ、あっ、あうっ……」
「どうだ」
反り返った欲望を、賢吾の下腹部に擦り上げられながら、唇の端を軽く吸われる。吐息をこぼした和彦は、ようやく言葉を発することができた。
「……な、い……。受け入れて、ないっ……」
「本当か?」
賢吾の口調が穏やかだからこそ、腹の内に滾っているものを想像して恐怖する。和彦は恥らう余裕もなく、事実を答えていた。
「触れただけだ……。擦り、つけられて――、それだけだ」
「その気になれば南郷は、易々と先生を抱けたというわけだな」
ビクリと体を震わせた和彦は、怯えながら賢吾を見上げる。自分のオンナだと言いながら、和彦が複数の男と関係を持つことを許している賢吾だが、南郷のことを口にするときだけは、何かが違う。普段は見せない激しい感情が透けて見えそうなのだ。
瞬きも忘れて見上げている和彦に気づいたのか、賢吾が薄い笑みを向けてくる。
「本当に忌々しいほど、性質の悪い尻だ。だが俺は、その尻に包み込まれて、甘やかされるのが、たまらなく好きなんだ」
そう言って賢吾の大きな手に尻の肉を掴まれ、荒々しく揉まれる。同時にゆっくりと腰を突き上げられ、有無を言わせず太いものを内奥に捩じ込まれていく。
「うっ、うっ、うっ――」
容赦なく肉を押し開かれる痛みに呻き声を洩らしながらも、無意識のうちに和彦の腰は、追いすがるように賢吾の動きに同調していた。もっと深く、よりしっかりと繋がれるように。
賢吾が乱暴に腰を突き上げ、和彦は声にならない悲鳴を上げて喉を反らす。さきほどから反り返り、震えていた和彦の欲望が精を噴き上げていた。
「相変わらず、尻を開かれる瞬間に弱いな、先生。怯えるように窄まって、ひどいことをしているんじゃねーかと、罪悪感を抱きそうになるが、すぐに様子が変わる。物欲しげにひくついて、熱くなった肉がねっとりと絡みついてくる。そして、これだ」
まだ力を失っていない和彦のものに、優しく慰撫するように賢吾の指が触れてくる。
「先生が男でよかったと、つくづく思う。――愛しくて仕方ない」
もっと俺を喜ばせろと言いたげに、欲望を柔らかく握り込まれて扱かれる。呻き声を洩らした和彦が上体を捩ろうとすると、緩慢な動作で腰を突き上げられ、内奥深くを攻められる。
「あっ……ぅ、んっ、んうっ、あっ……」
「あとでたっぷり舐めてやる。まずは、俺を満足させろ」
傲慢な物言いに官能を刺激され、喉を鳴らした和彦は賢吾の背に両腕を回す。両てのひらで大蛇の刺青をまさぐると、勢いを得たように賢吾の律動が大きく力強いものとになる。
「あっ、あんっ、けっ……、賢、吾っ――」
息が弾み、声が途切れる。思いがけず賢吾を呼び捨てにすることになったが、当の賢吾は気を悪くするどころか、和彦の顔を覗き込み、ニヤリと笑った。
「興奮するな。先生に呼び捨てにされると。そろそろ、他人行儀な『さん』付けはやめるか」
「……あんたとは、他人だろ」
オンナの従順ぶりを愛でているようでもあり、そのオンナに、同じような愛撫を施した男の動きを追っているようでもある。
「どの男に対しても、こんなにいやらしい蜜を垂らして悦んで見せているんなら、少し仕込みすぎたかもしれねーな」
ゾッとするほど優しい声で囁いた賢吾の片手が、反り返り、先端から尽きることなく透明なしずくを垂らしている和彦の欲望にかかる。唇を噛んで声を堪えたが、反応そのものを堪えることはできない。賢吾の手が動くたびに腰を揺らし、熱くなったものを震わせる。
「ふっ……」
凶暴な熱の塊が、ひくつく内奥の入り口に擦りつけられる。それだけで和彦の背筋に、痺れるような疼きが駆け抜けていた。指で解されたとはいえ、まだ狭い場所をゆっくりとこじ開けられ、痛みと異物感が生まれはするものの、大蛇の化身のような男に内から食らわれるという高揚感の前には、あまりに淡い感覚だ。
和彦はすがるように賢吾を見上げながら、逞しい腕に懸命にしがみつく。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾が残酷な質問をぶつけてきた。
「――こんなふうに、南郷を受け入れたか?」
瞬間的に怯えた和彦だが、欲望の太い部分を内奥に呑み込まされ、強い刺激に気を取られてしまう。さらに追い討ちをかけるように、賢吾が緩く腰を揺する。
「んあっ、あっ、あうっ……」
「どうだ」
反り返った欲望を、賢吾の下腹部に擦り上げられながら、唇の端を軽く吸われる。吐息をこぼした和彦は、ようやく言葉を発することができた。
「……な、い……。受け入れて、ないっ……」
「本当か?」
賢吾の口調が穏やかだからこそ、腹の内に滾っているものを想像して恐怖する。和彦は恥らう余裕もなく、事実を答えていた。
「触れただけだ……。擦り、つけられて――、それだけだ」
「その気になれば南郷は、易々と先生を抱けたというわけだな」
ビクリと体を震わせた和彦は、怯えながら賢吾を見上げる。自分のオンナだと言いながら、和彦が複数の男と関係を持つことを許している賢吾だが、南郷のことを口にするときだけは、何かが違う。普段は見せない激しい感情が透けて見えそうなのだ。
瞬きも忘れて見上げている和彦に気づいたのか、賢吾が薄い笑みを向けてくる。
「本当に忌々しいほど、性質の悪い尻だ。だが俺は、その尻に包み込まれて、甘やかされるのが、たまらなく好きなんだ」
そう言って賢吾の大きな手に尻の肉を掴まれ、荒々しく揉まれる。同時にゆっくりと腰を突き上げられ、有無を言わせず太いものを内奥に捩じ込まれていく。
「うっ、うっ、うっ――」
容赦なく肉を押し開かれる痛みに呻き声を洩らしながらも、無意識のうちに和彦の腰は、追いすがるように賢吾の動きに同調していた。もっと深く、よりしっかりと繋がれるように。
賢吾が乱暴に腰を突き上げ、和彦は声にならない悲鳴を上げて喉を反らす。さきほどから反り返り、震えていた和彦の欲望が精を噴き上げていた。
「相変わらず、尻を開かれる瞬間に弱いな、先生。怯えるように窄まって、ひどいことをしているんじゃねーかと、罪悪感を抱きそうになるが、すぐに様子が変わる。物欲しげにひくついて、熱くなった肉がねっとりと絡みついてくる。そして、これだ」
まだ力を失っていない和彦のものに、優しく慰撫するように賢吾の指が触れてくる。
「先生が男でよかったと、つくづく思う。――愛しくて仕方ない」
もっと俺を喜ばせろと言いたげに、欲望を柔らかく握り込まれて扱かれる。呻き声を洩らした和彦が上体を捩ろうとすると、緩慢な動作で腰を突き上げられ、内奥深くを攻められる。
「あっ……ぅ、んっ、んうっ、あっ……」
「あとでたっぷり舐めてやる。まずは、俺を満足させろ」
傲慢な物言いに官能を刺激され、喉を鳴らした和彦は賢吾の背に両腕を回す。両てのひらで大蛇の刺青をまさぐると、勢いを得たように賢吾の律動が大きく力強いものとになる。
「あっ、あんっ、けっ……、賢、吾っ――」
息が弾み、声が途切れる。思いがけず賢吾を呼び捨てにすることになったが、当の賢吾は気を悪くするどころか、和彦の顔を覗き込み、ニヤリと笑った。
「興奮するな。先生に呼び捨てにされると。そろそろ、他人行儀な『さん』付けはやめるか」
「……あんたとは、他人だろ」
86
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
オム・ファタールと無いものねだり
狗空堂
BL
この世の全てが手に入る者たちが、永遠に手に入れられないたった一つのものの話。
前野の血を引く人間は、人を良くも悪くもぐちゃぐちゃにする。その血の呪いのせいで、後田宗介の主人兼親友である前野篤志はトラブルに巻き込まれてばかり。
この度編入した金持ち全寮制の男子校では、学園を牽引する眉目秀麗で優秀な生徒ばかり惹きつけて学内風紀を乱す日々。どうやら篤志の一挙手一投足は『大衆に求められすぎる』天才たちの心に刺さって抜けないらしい。
天才たちは蟻の如く篤志に群がるし、それを快く思わない天才たちのファンからはやっかみを買うし、でも主人は毎日能天気だし。
そんな主人を全てのものから護る為、今日も宗介は全方向に噛み付きながら学生生活を奔走する。
これは、天才の影に隠れたとるに足らない凡人が、凡人なりに走り続けて少しずつ認められ愛されていく話。
2025.10.30 第13回BL大賞に参加しています。応援していただけると嬉しいです。
※王道学園の脇役受け。
※主人公は従者の方です。
※序盤は主人の方が大勢に好かれています。
※嫌われ(?)→愛されですが、全員が従者を愛すわけではありません。
※呪いとかが平然と存在しているので若干ファンタジーです。
※pixivでも掲載しています。
色々と初めてなので、至らぬ点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。
いいねやコメントは頂けましたら嬉しくて踊ります。
帝は傾国の元帥を寵愛する
tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。
舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。
誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。
だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。
それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。
互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。
誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。
やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。
華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。
冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。
【第13回BL大賞にエントリー中】
投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる