634 / 1,289
第28話
(5)
しおりを挟む
念を押すように賢吾に問われ、顔を背けながら和彦は頷く。ここで一旦賢吾が体を起こし、ベッドに沈められそうな圧迫感から解放される。だが、ほっとはできなかった。顔を背けたままの和彦の耳には、しっかりと衣擦れの音が届いていたからだ。
再びのしかかられ、今度はしっかりと素肌同士が重なる。全身で感じる賢吾の体の重みと熱さに和彦は、一気に高まった高揚感から眩暈に襲われる。その間にも膝を掴まれて両足を広げられると、逞しい腰が割り込まされる。擦りつけられた賢吾の欲望は、すでに猛っていた。
「先生、俺を見ろ」
傲慢に命令され、和彦はおずおずと従う。見上げた先で、賢吾は唇に薄い笑みを浮かべていた。かつては酷薄そうに見えていた笑みだが、今は違う。ひどく官能を刺激される魅力的な表情だと思った。
「あっ……」
こちらの求めがわかったように、賢吾に唇を吸われる。和彦は箍が外れたように賢吾の唇を吸い返しながら、夢中で両腕を広い背へと回し、てのひらで存分に大蛇を撫で回す。口づけの合間に賢吾に問われた。
「――こいつが愛しいか?」
和彦は息を喘がせながら、賢吾の目を覗き込む。背だけではなく、この男は身の内にも大蛇を棲まわせている。残酷で獰猛なくせに、蕩かしそうなほどオンナを甘やかしながら、底知れない強い執着心と独占欲を持つ生き物だ。だからこそ、己の手から離れると知ったとき、この生き物は容赦なく、オンナの首をへし折ってしまうだろう。他人の手に渡るぐらいなら、と。
「そんなわけ……ない。こんな、怖いもの……」
「だが、欲しいだろ?」
甘く優しい声で囁かれ、和彦は賢吾を睨みつける。しかし賢吾の唇が瞼に押し当てられると、もう抗えなかった。
「……欲し、い」
指にたっぷりの唾液を絡めた賢吾が身じろぐ。予期したとおり、濡れた指が内奥の入り口をまさぐり始め、和彦は反射的に腰を揺らしていた。内奥をこじ開けるようにして指を挿入され、堪えきれず呻き声を洩らしていたが、賢吾は冷静に和彦の内を探る。
きつい収縮を繰り返す内奥から指を出し入れし、確実に入り口を解していく。二本目の指を挿入してからは、円を描くように内奥を掻き回しながら、繊細な襞と粘膜を撫でる。和彦の呼吸が弾み始めると、賢吾は戯れのように唇を啄ばんできた。
最初は戸惑っていた和彦だが、内から加えられる愛撫によって、いつものように自分が反応し始めていることを感じ取っていた。
「だらしない顔になってきた」
ふいに賢吾に囁かれ、我に返った和彦は慌てて自分の頬をてのひらで擦る。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾が低く声を洩らして笑った。
「いまさら恥ずかしがるもんでもねーだろ」
「うるさ――」
上体を起こした賢吾に膝裏を掴まれて、片足をしっかり抱え上げられる。指を咥え込んだ内奥の入り口を観察されていると知り、和彦は身を捩ろうとするが、ささやかな抵抗を賢吾はものともしない。執拗に内奥を愛撫しながら、視線を逸らさないのだ。
「――ここも、触られたな?」
指が付け根まで突き込まれ、すっかり発情した和彦の内奥は、きつく締め付けてしまう。その感触を堪能するように賢吾が妖しく指を蠢かし、肉の愉悦が生まれる。南郷との間にあったことを知られたくないのに、賢吾は巧みに和彦から反応を引き出してしまう。
言葉ではなく、和彦の体から答えを得た賢吾は、皮肉っぽく唇の端を動かす。
「ちょっと機嫌を取られたら、どんな男も咥え込もうとする、性質の悪い尻だ」
「そんな言い方、するなっ……」
「わかっている。痛い思いをしたくない先生は、怖い男に逆らえない。しかも、その怖い男たちは、本能的に感じ取るのか、先生を大事に扱う。怯えさせるより、感じさせて、艶やかな姿を眺めるほうが楽しいしな。――さて、南郷は楽しめたんだろうか」
話しながら賢吾が内奥から指を引き抜き、代わって、さきほどから猛っている欲望を、和彦の尻に擦りつけてきた。この瞬間、和彦の中で、南郷に強いられた行為が蘇る。あの男は、欲望を和彦に握らせ、扱かせたのだ。
和彦はぎこちなく片手を伸ばし、賢吾の欲望に触れる。和彦の意図がわかったのだろう。賢吾は和彦の手を取り、しっかりと欲望を握らせた。
欲望の逞しさを確かめるように、和彦はゆっくりと手を動かす。力強く脈打つそれは、和彦に恐怖もおぞましさも与えてはこない。それどころか――。
「うっ、あぁっ……」
和彦の愛撫に応えるように、賢吾の片手が再び両足の間に這わされた。柔らかな膨らみをてのひらで包み込むように揉みしだかれると、和彦はビクビクと腰を震わせながら、強烈な愛撫を受け入れるしかない。
再びのしかかられ、今度はしっかりと素肌同士が重なる。全身で感じる賢吾の体の重みと熱さに和彦は、一気に高まった高揚感から眩暈に襲われる。その間にも膝を掴まれて両足を広げられると、逞しい腰が割り込まされる。擦りつけられた賢吾の欲望は、すでに猛っていた。
「先生、俺を見ろ」
傲慢に命令され、和彦はおずおずと従う。見上げた先で、賢吾は唇に薄い笑みを浮かべていた。かつては酷薄そうに見えていた笑みだが、今は違う。ひどく官能を刺激される魅力的な表情だと思った。
「あっ……」
こちらの求めがわかったように、賢吾に唇を吸われる。和彦は箍が外れたように賢吾の唇を吸い返しながら、夢中で両腕を広い背へと回し、てのひらで存分に大蛇を撫で回す。口づけの合間に賢吾に問われた。
「――こいつが愛しいか?」
和彦は息を喘がせながら、賢吾の目を覗き込む。背だけではなく、この男は身の内にも大蛇を棲まわせている。残酷で獰猛なくせに、蕩かしそうなほどオンナを甘やかしながら、底知れない強い執着心と独占欲を持つ生き物だ。だからこそ、己の手から離れると知ったとき、この生き物は容赦なく、オンナの首をへし折ってしまうだろう。他人の手に渡るぐらいなら、と。
「そんなわけ……ない。こんな、怖いもの……」
「だが、欲しいだろ?」
甘く優しい声で囁かれ、和彦は賢吾を睨みつける。しかし賢吾の唇が瞼に押し当てられると、もう抗えなかった。
「……欲し、い」
指にたっぷりの唾液を絡めた賢吾が身じろぐ。予期したとおり、濡れた指が内奥の入り口をまさぐり始め、和彦は反射的に腰を揺らしていた。内奥をこじ開けるようにして指を挿入され、堪えきれず呻き声を洩らしていたが、賢吾は冷静に和彦の内を探る。
きつい収縮を繰り返す内奥から指を出し入れし、確実に入り口を解していく。二本目の指を挿入してからは、円を描くように内奥を掻き回しながら、繊細な襞と粘膜を撫でる。和彦の呼吸が弾み始めると、賢吾は戯れのように唇を啄ばんできた。
最初は戸惑っていた和彦だが、内から加えられる愛撫によって、いつものように自分が反応し始めていることを感じ取っていた。
「だらしない顔になってきた」
ふいに賢吾に囁かれ、我に返った和彦は慌てて自分の頬をてのひらで擦る。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾が低く声を洩らして笑った。
「いまさら恥ずかしがるもんでもねーだろ」
「うるさ――」
上体を起こした賢吾に膝裏を掴まれて、片足をしっかり抱え上げられる。指を咥え込んだ内奥の入り口を観察されていると知り、和彦は身を捩ろうとするが、ささやかな抵抗を賢吾はものともしない。執拗に内奥を愛撫しながら、視線を逸らさないのだ。
「――ここも、触られたな?」
指が付け根まで突き込まれ、すっかり発情した和彦の内奥は、きつく締め付けてしまう。その感触を堪能するように賢吾が妖しく指を蠢かし、肉の愉悦が生まれる。南郷との間にあったことを知られたくないのに、賢吾は巧みに和彦から反応を引き出してしまう。
言葉ではなく、和彦の体から答えを得た賢吾は、皮肉っぽく唇の端を動かす。
「ちょっと機嫌を取られたら、どんな男も咥え込もうとする、性質の悪い尻だ」
「そんな言い方、するなっ……」
「わかっている。痛い思いをしたくない先生は、怖い男に逆らえない。しかも、その怖い男たちは、本能的に感じ取るのか、先生を大事に扱う。怯えさせるより、感じさせて、艶やかな姿を眺めるほうが楽しいしな。――さて、南郷は楽しめたんだろうか」
話しながら賢吾が内奥から指を引き抜き、代わって、さきほどから猛っている欲望を、和彦の尻に擦りつけてきた。この瞬間、和彦の中で、南郷に強いられた行為が蘇る。あの男は、欲望を和彦に握らせ、扱かせたのだ。
和彦はぎこちなく片手を伸ばし、賢吾の欲望に触れる。和彦の意図がわかったのだろう。賢吾は和彦の手を取り、しっかりと欲望を握らせた。
欲望の逞しさを確かめるように、和彦はゆっくりと手を動かす。力強く脈打つそれは、和彦に恐怖もおぞましさも与えてはこない。それどころか――。
「うっ、あぁっ……」
和彦の愛撫に応えるように、賢吾の片手が再び両足の間に這わされた。柔らかな膨らみをてのひらで包み込むように揉みしだかれると、和彦はビクビクと腰を震わせながら、強烈な愛撫を受け入れるしかない。
81
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
帝は傾国の元帥を寵愛する
tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。
舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。
誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。
だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。
それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。
互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。
誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。
やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。
華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。
冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。
【第13回BL大賞にエントリー中】
投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる