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第28話
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反論は唇に吸い取られ、そのまま舌を絡め合う。賢吾の指が器用に動き、ネクタイを解かれ、ワイシャツのボタンを外されていく。賢吾の指がわずかに肌を掠めるだけで、鳥肌が立ちそうなほど感じてしまい、浅ましく愛撫をねだってしまいそうになる自分が忌々しい。
「……そんな、気分じゃ、ない……」
ほんの一時間ほど前に会った南郷の顔がちらつき、情欲のうねりとは裏腹に、拒否感がチクリと胸の奥を刺激する。嫌でも、あの男に触れられたときのことを思い出していた。
そして、賢吾に申し訳ないと感じてしまうのだ。
「生憎だが、俺は、そんな気分だ。――他の男の毒気にあてられたオンナを、さっさと正気に戻してやらねーとな」
大蛇が潜む目でじっと見据えられ、危うく息が止まりそうになる。一見、普段と変わらない――むしろ機嫌がよさそうにすら見えた賢吾だが、胸の内では激しいものが吹き荒れているのだと、この瞬間、思い知らされた。
怯えた和彦が何も言えなくなった間に、賢吾にワイシャツのボタンをすべて外され、ベルトも緩められる。
「うっ……」
賢吾の熱い体が覆い被さってきて、首筋に唇が押し当てられる。所有の証を刻み付けるように、強く肌を吸い上げられた。さらに舌で舐め上げられ、このとき和彦は、首筋に牙を突き立てる大蛇の姿を想像し、恐怖で竦み上がる。
和彦の体の強張りを感じ取ったのだろう。皮肉げな口調で指摘される。
「俺が怖いか?」
「……ぼくはいつでも、あんたが怖い」
「あんたじゃない。賢吾さんだろ。今は」
再び首筋に唇を這わされながらワイシャツを脱がされ、腹部から胸元へとてのひらが這わされる。愛しげに丹念に肌を撫で回されているうちに、寸前の会話を忘れ、簡単に身を任せてしまいそうになっていた。
期待と興奮で硬く凝った胸の突起を、焦らすように指の腹でくすぐられてから、摘まみ上げられる。小さく声を洩らした和彦は、無意識のうちに賢吾の頭に手をかけていた。
和彦の求めがわかったらしく、賢吾の唇が首筋から移動し、胸元に押し当てられる。
「ふっ……」
胸の突起を唇に捉えられ、和彦はきつく目を閉じる。全身の神経が鋭敏に研ぎ澄まされ、たとえ直視しなくても、賢吾が愛撫を加える様を鮮明に映像として脳裏に映し出していた。
優しく突起を吸われたかと思うと、熱い舌先に舐められ、転がされる。そして、歯を立てられた。和彦は胸を反らし、吐息を洩らす。賢吾は勢いを得たように、露骨に濡れた音を立てながら突起を嬲り、もう片方の突起も乱暴に抓るようにして刺激し始める。
和彦は控えめに声を上げながら、煩悶していた。
「――南郷にも、ここを可愛がられたか?」
前触れもなく発せられた言葉は、氷の針のような鋭さで、和彦の鼓膜に突き刺さった。目を開いた和彦を、上目遣いの賢吾がじっと見つめていた。
和彦はようやく声を絞り出す。
「言いたく、ない……」
「触れる前から、物欲しげに反応している部分だ。まったく無視はできんだろうな」
まるで和彦に見せつけるように、賢吾が舌先で突起を転がす。卑猥な舌の動きに和彦は見入り、肌に賢吾の熱い吐息が触れるだけで、体中に強烈な疼きが駆け抜ける。
「何より、美味い」
突起を口腔に含まれ、痛いほどきつく吸われる。和彦は間欠的に声を上げ、体を震わせる。思い出したくないのに、賢吾の言葉によって、南郷の愛撫が蘇っていた。同時に、そのとき味わった恐怖と不快さも。だが今、情熱的な愛撫を与えてくれているのは、賢吾だ。
和彦の中でささやかな混乱と困惑が生まれ、咄嗟に賢吾の肩に掴まる。かまわず賢吾は、愛撫を続けながら、こう問いかけてきた。
「南郷に触れられて、感じたか?」
一度は唇を引き結んだ和彦だが、ウソはつけない。和彦の体を誰よりも知っているのは、今自分に触れている賢吾なのだ。
「……ああ」
「鷹津のときもそうだったが、求めてくる男には、とことん甘い体だ。忌々しいが、愛しくて仕方ない。ここも、ここも――」
賢吾の片手が両足の間に入り込み、スラックスの上から敏感なものに触れられる。和彦は反射的にその手を押しのけようとするが、ぐっと力を込められると、怯えて動けなくなる。乱暴にスラックスと下着を引き下ろされ、身につけていたものすべてを奪い取られていた。
「うっ」
感じやすいものを直接握り締められる。荒々しく上下に扱かれたとき、和彦の全身を恐怖が駆け抜けたが、それを上回って被虐的な悦びが湧き起こっていた。
「ここも、触れられたな?」
「……そんな、気分じゃ、ない……」
ほんの一時間ほど前に会った南郷の顔がちらつき、情欲のうねりとは裏腹に、拒否感がチクリと胸の奥を刺激する。嫌でも、あの男に触れられたときのことを思い出していた。
そして、賢吾に申し訳ないと感じてしまうのだ。
「生憎だが、俺は、そんな気分だ。――他の男の毒気にあてられたオンナを、さっさと正気に戻してやらねーとな」
大蛇が潜む目でじっと見据えられ、危うく息が止まりそうになる。一見、普段と変わらない――むしろ機嫌がよさそうにすら見えた賢吾だが、胸の内では激しいものが吹き荒れているのだと、この瞬間、思い知らされた。
怯えた和彦が何も言えなくなった間に、賢吾にワイシャツのボタンをすべて外され、ベルトも緩められる。
「うっ……」
賢吾の熱い体が覆い被さってきて、首筋に唇が押し当てられる。所有の証を刻み付けるように、強く肌を吸い上げられた。さらに舌で舐め上げられ、このとき和彦は、首筋に牙を突き立てる大蛇の姿を想像し、恐怖で竦み上がる。
和彦の体の強張りを感じ取ったのだろう。皮肉げな口調で指摘される。
「俺が怖いか?」
「……ぼくはいつでも、あんたが怖い」
「あんたじゃない。賢吾さんだろ。今は」
再び首筋に唇を這わされながらワイシャツを脱がされ、腹部から胸元へとてのひらが這わされる。愛しげに丹念に肌を撫で回されているうちに、寸前の会話を忘れ、簡単に身を任せてしまいそうになっていた。
期待と興奮で硬く凝った胸の突起を、焦らすように指の腹でくすぐられてから、摘まみ上げられる。小さく声を洩らした和彦は、無意識のうちに賢吾の頭に手をかけていた。
和彦の求めがわかったらしく、賢吾の唇が首筋から移動し、胸元に押し当てられる。
「ふっ……」
胸の突起を唇に捉えられ、和彦はきつく目を閉じる。全身の神経が鋭敏に研ぎ澄まされ、たとえ直視しなくても、賢吾が愛撫を加える様を鮮明に映像として脳裏に映し出していた。
優しく突起を吸われたかと思うと、熱い舌先に舐められ、転がされる。そして、歯を立てられた。和彦は胸を反らし、吐息を洩らす。賢吾は勢いを得たように、露骨に濡れた音を立てながら突起を嬲り、もう片方の突起も乱暴に抓るようにして刺激し始める。
和彦は控えめに声を上げながら、煩悶していた。
「――南郷にも、ここを可愛がられたか?」
前触れもなく発せられた言葉は、氷の針のような鋭さで、和彦の鼓膜に突き刺さった。目を開いた和彦を、上目遣いの賢吾がじっと見つめていた。
和彦はようやく声を絞り出す。
「言いたく、ない……」
「触れる前から、物欲しげに反応している部分だ。まったく無視はできんだろうな」
まるで和彦に見せつけるように、賢吾が舌先で突起を転がす。卑猥な舌の動きに和彦は見入り、肌に賢吾の熱い吐息が触れるだけで、体中に強烈な疼きが駆け抜ける。
「何より、美味い」
突起を口腔に含まれ、痛いほどきつく吸われる。和彦は間欠的に声を上げ、体を震わせる。思い出したくないのに、賢吾の言葉によって、南郷の愛撫が蘇っていた。同時に、そのとき味わった恐怖と不快さも。だが今、情熱的な愛撫を与えてくれているのは、賢吾だ。
和彦の中でささやかな混乱と困惑が生まれ、咄嗟に賢吾の肩に掴まる。かまわず賢吾は、愛撫を続けながら、こう問いかけてきた。
「南郷に触れられて、感じたか?」
一度は唇を引き結んだ和彦だが、ウソはつけない。和彦の体を誰よりも知っているのは、今自分に触れている賢吾なのだ。
「……ああ」
「鷹津のときもそうだったが、求めてくる男には、とことん甘い体だ。忌々しいが、愛しくて仕方ない。ここも、ここも――」
賢吾の片手が両足の間に入り込み、スラックスの上から敏感なものに触れられる。和彦は反射的にその手を押しのけようとするが、ぐっと力を込められると、怯えて動けなくなる。乱暴にスラックスと下着を引き下ろされ、身につけていたものすべてを奪い取られていた。
「うっ」
感じやすいものを直接握り締められる。荒々しく上下に扱かれたとき、和彦の全身を恐怖が駆け抜けたが、それを上回って被虐的な悦びが湧き起こっていた。
「ここも、触れられたな?」
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