血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
739 / 1,289
第32話

(4)

しおりを挟む
「外にいた幹部連中と、何か悪だくみがあるそうだから、まだ当分戻ってこない。戻ってきたところで、せいぜい見せつけてやればいい」
 そんなことを言いながら賢吾にジャケットを脱がされる。その手つきから賢吾の高ぶりを感じ取り、ふと和彦は、千尋のことを思い出していた。
 千尋も、賢吾の部屋で和彦を抱くことにひどく興奮していたのだ。父親の部屋で、父親のオンナを抱くことに、異常で特殊な興奮を覚えたのだろうが、おそらく賢吾も今、同じ状態なのだ。
 そして和彦は、長嶺の男たちの高ぶりに容易に感化されてしまう。
「うっ……」
 Tシャツを押し上げられ、触れられる前から痛いほど凝った胸の突起をきつく吸い上げられる。もう片方の突起は指で摘み上げられ、押し潰すように刺激されると、呻き声を洩らしてビクビクと胸を震わせる。
「オヤジに毎晩吸われてるか? ここも、こっちも――」
 賢吾の手が両足の間に這わされ、布の上から敏感なものをぐっと押さえつけられる。和彦が否定しないでいると、賢吾は忌々しげに眉をひそめる。
「……我がオヤジながら、呆れるほど元気なジジイだ」
 一旦体を起こした賢吾に下肢を剥かれ、乱暴に両足を抱えられて左右に広げられる。射抜くほど鋭い眼差しで賢吾が探しているのは、和彦の体に残る守光の痕跡だ。もしかすると、もう一人の男の痕跡も――。
 触れられることなく、ただ見つめられているだけなのに、和彦の体はすぐさま反応を示す。
「賢吾っ……」
 羞恥のあまり、堪らず声を上げたが、賢吾は許してくれない。指先が内腿をなぞり、熱くなりかけた欲望をそっと撫で、柔らかな膨らみを軽く弄んだあと、尻の間に指先を這わせてくる。まさぐられたのは、内奥の入り口だった。
「傷つけられてはないみたいだな。さすがに、丁寧に扱われているか」
 敏感な粘膜を指の腹で擦られ、顔を背けた和彦はビクンと腰を跳ねさせる。賢吾が自分を痛めつけるはずがないと確信しているからこそ、体は素直に反応してしまう。見られたくないと強く思いながらも、賢吾から向けられる眼差しすら愛撫のように感じられ、肌が熱を帯びていく。
「ほんの何日か触れなかっただけなのに、俺を欲しがっているのか?」
 残酷なほど優しい声音で問われて、胸の奥が疼く。和彦は、低い声で囁き返した。
「あんたはどうなんだ……」
 賢吾は軽く目を見開いたあと、ニヤリと笑った。
「悪いオンナだな。――和彦」
 これみよがしに自分の指をベロリと舐めた賢吾が、再び内奥の入り口をまさぐり、湿らせてくる。半ば強引に指を含まされ、肉を捏ねるように蠢かされると、和彦は堪え切れずに呻き声を洩らす。自分ではどうしようもできない反応として、必死に指を締め付けていたが、その感触を楽しむように賢吾の指の動きは大胆になる。
「うあっ、あっ、あぁっ」
 痛みは確かにあるが、まるで小さな火が灯るように疼きが生まれていた。賢吾の指は官能を掘り起こすように、内奥を解していく。
「和彦、ネクタイを取ってくれ」
 真上から和彦の顔を覗き込み、賢吾が言う。和彦は息を喘がせながらのろのろと両手を伸ばし、緩められていたネクタイを解き、首から引き抜く。満足げに賢吾が笑い、一旦内奥から指を抜き取った。
「しっかり掴まってろよ」
 賢吾がスラックスの前を寛げ、欲望を引き出す。和彦は両腕を賢吾の首に回してしがみついた。
 指でわずかに解されただけの内奥の入り口に、凶暴な高ぶりが押し当てられ、慎重に肉をこじ開けられる。苦しさに声を洩らしながら和彦は、ワイシャツ越しに賢吾の肩に歯を立てる。こちらが味わっている苦痛の何分の一かを分け与えたかったのだが、力を入れて噛みつくことはできない。大蛇の反撃は怖い。
「……可愛いな、和彦」
 揶揄するように賢吾が洩らし、和彦は羞恥で全身が熱くなってくる。
「いいから、早く終わらせてくれっ……」
「いいのか、そんなこと言って」
 賢吾の欲望の一際逞しく張り出した部分を、内奥に含まされる。犯されていると強く実感する瞬間だった。和彦は大きく息を吐き出して顔を背ける。すかさず耳に賢吾の唇が押し当てられ、魅力的なバリトンで鼓膜を愛撫される。
「物欲しげによく締まってる。それとも、俺が入ってくるのを嫌がっているのか?」
「うる、さい……。いつになく、意地が悪いな、あんた」
「お前が、あのオヤジにどれだけちやほやされていたのかと思ったら、嫉妬で意地悪の一つもしたくなるだろ」
 本音なのか冗談なのか、声音から推し量ることはできない。それでなくても和彦の意識は、興奮のため舞い上がっている。

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

帝は傾国の元帥を寵愛する

tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。 舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。 誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。 だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。 それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。 互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。 誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。 やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。 華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。 冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。 【第13回BL大賞にエントリー中】 投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

オム・ファタールと無いものねだり

狗空堂
BL
この世の全てが手に入る者たちが、永遠に手に入れられないたった一つのものの話。 前野の血を引く人間は、人を良くも悪くもぐちゃぐちゃにする。その血の呪いのせいで、後田宗介の主人兼親友である前野篤志はトラブルに巻き込まれてばかり。 この度編入した金持ち全寮制の男子校では、学園を牽引する眉目秀麗で優秀な生徒ばかり惹きつけて学内風紀を乱す日々。どうやら篤志の一挙手一投足は『大衆に求められすぎる』天才たちの心に刺さって抜けないらしい。 天才たちは蟻の如く篤志に群がるし、それを快く思わない天才たちのファンからはやっかみを買うし、でも主人は毎日能天気だし。 そんな主人を全てのものから護る為、今日も宗介は全方向に噛み付きながら学生生活を奔走する。 これは、天才の影に隠れたとるに足らない凡人が、凡人なりに走り続けて少しずつ認められ愛されていく話。 2025.10.30 第13回BL大賞に参加しています。応援していただけると嬉しいです。 ※王道学園の脇役受け。 ※主人公は従者の方です。 ※序盤は主人の方が大勢に好かれています。 ※嫌われ(?)→愛されですが、全員が従者を愛すわけではありません。 ※呪いとかが平然と存在しているので若干ファンタジーです。 ※pixivでも掲載しています。 色々と初めてなので、至らぬ点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。 いいねやコメントは頂けましたら嬉しくて踊ります。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...