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第34話
(15)
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「まだ、役目があるんだから、イッたらダメだ。その代わり、こっちを――」
和彦は、中嶋の欲望をくすぐるように撫でてから、柔らかな膨らみをてのひらに包み込む。ビクリと中嶋の体が震え、間欠的に声を上げる。内奥を緩やかに突きながら、柔らかな膨らみを優しく揉みしだき、探り当てた弱みを指先で弄る。
内奥が激しく蠢き、和彦の欲望を舐め上げるように刺激してくる。普段、自分もこんなふうに反応しているのだとしたら、男たちが執拗にこの部分を攻めてくるのもわかる気がした。
中嶋の興奮を鎮めるため、柔らかな膨らみから手を離し、ビクビクと震えている内腿に指先を這わせてくすぐる。激しい律動は必要なかった。和彦は二度、三度と内奥から欲望を出し入れしたあと、ぐうっと奥深くへと押し入り、絶頂を迎える。
精が注ぎ込まれていると感じたのか、中嶋の内奥が激しい収縮を繰り返し、まるで絞り上げるように和彦の欲望を咥え込む。
腰から溶けてしまいそうな快感は数瞬のうちに去り、次に押し寄せてきたのは脱力感だった。和彦は大きく息を吐き出してから体を離すと、中嶋の隣に転がる。
手足の指先にまで充足感が満ちていき、全身から汗が噴き出す。自分が主導して動くとやはり体の反応がいつもとは違う。これまでも中嶋とは体を重ねていたが、今夜は特別な気がした。
中嶋がしどけなく髪を掻き上げて顔を上げ、熱っぽい眼差しを向けてくる。
「やみつきになりそうですよ。先生とのセックス。秦さんも三田村さんもいないから、本気を出しました?」
「君のほうこそ、いままでと反応が違った。本気でぼくに応えてくれたか?」
ここで中嶋の目の色が変わり、しなやかな獣のような動きで身を起こし、和彦にのしかかってくる。
「――次は、俺の番ですね」
力の抜けた両足を抱え上げ、中嶋が腰を密着させてくる。物欲しげにひくついている内奥の入り口に、欲望の先端が擦りつけられ、思わず和彦は喉を鳴らす。中嶋は一息に、内奥の深い場所までやってきた。
「んうっ……」
和彦が仰け反ると、露わになった喉元を舐め上げられる。深く繋がったところで、貪るように唇と舌を吸い合い、汗とローションで濡れた肌をぴったりと重ねる。
「やっぱり、先生の中は気持ちいい。溶けそうですよ。熱くて、きつくて、柔らかくて。とても具合がいい」
「君の中も、そうだった」
和彦の答えに、内奥で中嶋のものがドクンと脈打つ。小さく悦びの声を上げると、内奥深くを大きく一度だけ突き上げられ、今度は大きく喘ぎ声をこぼす。
両足を大きく左右に広げられ、繋がっている部分を中嶋にじっくりと観察されながら、律動を繰り返される。
「はあっ、あっ、あっ……ん、んくぅっ、はっ、ああっ」
中からの刺激によって、和彦の欲望は再び身を起こし、先端から透明なしずくを垂らしていた。
「いやらしいな、先生。さっき、俺の中でイッたばかりなのに」
笑いを含んだ声でそう言った中嶋が、和彦の欲望を軽く扱く。反射的に上体を捩ろうとしたが、すかさず内奥を突かれ、痺れるような快感が腰から這い上がってくる。
再び欲望を内奥深くまで埋め込んだ中嶋が、動きを止める。その代わり、ローションを手に取って体温で温めると、和彦の胸元や腹部へと施してきた。心地よさに吐息を洩らした和彦は、照れ隠しに呟く。
「あとで、新しいラグを買っておかないと……」
「共同責任ということで、あとで秦さんに謝っておきますよ」
和彦は声を洩らして笑っていたが、中嶋が律動を再開し、すぐに尾を引く嬌声を上げる。中嶋に抱き締められ、両腕の中で滑る体を奔放に捩って乱れていると、ふいに、内奥から欲望が引き抜かれ、下腹部から胸元にかけて、中嶋の精が飛び散った。
「……さすがに、本部に帰る先生の中に、俺の精液を残すわけにはいきませんからね」
息を乱しながらの中嶋の言葉に、納得せざるをえない。
「そんなことまで、頭が回ってなかった……」
和彦が率直に告げると、中嶋がゾクゾクするほど挑発的な表情で応じた。
「そんなに、気持ちよかったですか?」
「気持ちよかった。自分が浅ましい人間なんだと実感させられた。……周りの男たちが大層な扱いをしてくれるから思い違いをしていた。ぼくは、オンナであろうがなかろうが、本来、こういう人間なんだ。プライドが傷ついたなんて発言は、おこがましかったな」
「先生は、自分を正しく客観視しようとしすぎですよ。誰も採点なんてしないんだから、気楽に」
中嶋の発言に、正直驚いた。和彦は目を丸くしたあと、苦々しい顔となる。
「子供の頃からの癖だな。採点はされていた。――父親から」
まるで慰めようとするかのように中嶋に頬を撫でられたが、ローションがついてしまい、思わず破顔する。
唇を重ね、抱き合いながら、精がこびりついた下肢を密着させているうちに、中嶋を組み敷く格好となる。和彦は、高ぶった欲望をためらいもなく、潤んだ内奥に再び埋め込んだ。
気だるさと、清々しさをまとった和彦が本部に戻ったとき、すでに日付は変わっていた。堂々の夜遊びだ。
エレベーターを降り、ラウンジの前を通り過ぎようとして、ぎょっとする。誰もいないと思っていたが、ソファの背もたれの向こうで大きな影が動いたからだ。姿を見せたのは南郷だった。どうやら、ソファに深くもたれかかっていたらしい。
和彦が全身の毛を逆立てる勢いで警戒すると、南郷は露骨に頭の先からつま先まで眺めてきた。そして、芝居がかった下卑た笑みを見せた。
「わかってはいるつもりだったが、あんたはやっぱり大したタマだ」
「……どういう意味ですか」
和彦は、南郷から話しかけられたことに、不快さを隠そうともせず応じる。
「ほんの数日前に、あんたと三田村さんが熱い仲だという話をしたが、そのあんたが、今夜はあの中嶋と寝たのかと思ってな。三田村さんのことでムキになったあんたが、どんな気持ちで中嶋に抱かれていたのか、ぜひとも聞きたいもんだ」
「そんなことを言うために、ここで待っていたんですか。遊撃隊の隊長というのも、ずいぶん暇なんですね」
冷ややかな眼差しとともに、ささやかな皮肉を返す。さすがに南郷は、少なくとも表立っては気を悪くした素振りすら見せず、それどころか興味深そうな表情を浮かべた。
「出かける前はイライラしている様子だったが、さすがにヌイてきたあとだと、余裕があるな」
「下品な言い方はやめてください」
そう言い置いて立ち去ろうとしたが、大股で歩み寄ってきた南郷に肩を掴まれる。ゾクッと鳥肌が立つような感覚に襲われ、咄嗟にその手を払い退ける。睨みつけようとした先で、南郷は能面のような無表情となっていた。怒気を含んだ顔をされるより、よほどこちらのほうが凄みがあった。
気圧され、後退りかけた和彦だが、寸前のところで堪える。ここで怯めば、ようやく〈マシ〉になった気持ちが、また揺れると思ったのだ。それは中嶋に申し訳ない。
和彦は皮肉っぽい口調で南郷に言った。
「どうして――、抱かれていたと思うんですか?」
意味がわからなかったらしく、南郷が首を傾げる。
「何が言いたいんだ、先生」
「簡単な話です。〈オンナ〉だって、男を抱けるんですよ、南郷さん」
南郷がゆっくりと目を開く様子を見届けて、今度こそ和彦はその場を立ち去った。
和彦は、中嶋の欲望をくすぐるように撫でてから、柔らかな膨らみをてのひらに包み込む。ビクリと中嶋の体が震え、間欠的に声を上げる。内奥を緩やかに突きながら、柔らかな膨らみを優しく揉みしだき、探り当てた弱みを指先で弄る。
内奥が激しく蠢き、和彦の欲望を舐め上げるように刺激してくる。普段、自分もこんなふうに反応しているのだとしたら、男たちが執拗にこの部分を攻めてくるのもわかる気がした。
中嶋の興奮を鎮めるため、柔らかな膨らみから手を離し、ビクビクと震えている内腿に指先を這わせてくすぐる。激しい律動は必要なかった。和彦は二度、三度と内奥から欲望を出し入れしたあと、ぐうっと奥深くへと押し入り、絶頂を迎える。
精が注ぎ込まれていると感じたのか、中嶋の内奥が激しい収縮を繰り返し、まるで絞り上げるように和彦の欲望を咥え込む。
腰から溶けてしまいそうな快感は数瞬のうちに去り、次に押し寄せてきたのは脱力感だった。和彦は大きく息を吐き出してから体を離すと、中嶋の隣に転がる。
手足の指先にまで充足感が満ちていき、全身から汗が噴き出す。自分が主導して動くとやはり体の反応がいつもとは違う。これまでも中嶋とは体を重ねていたが、今夜は特別な気がした。
中嶋がしどけなく髪を掻き上げて顔を上げ、熱っぽい眼差しを向けてくる。
「やみつきになりそうですよ。先生とのセックス。秦さんも三田村さんもいないから、本気を出しました?」
「君のほうこそ、いままでと反応が違った。本気でぼくに応えてくれたか?」
ここで中嶋の目の色が変わり、しなやかな獣のような動きで身を起こし、和彦にのしかかってくる。
「――次は、俺の番ですね」
力の抜けた両足を抱え上げ、中嶋が腰を密着させてくる。物欲しげにひくついている内奥の入り口に、欲望の先端が擦りつけられ、思わず和彦は喉を鳴らす。中嶋は一息に、内奥の深い場所までやってきた。
「んうっ……」
和彦が仰け反ると、露わになった喉元を舐め上げられる。深く繋がったところで、貪るように唇と舌を吸い合い、汗とローションで濡れた肌をぴったりと重ねる。
「やっぱり、先生の中は気持ちいい。溶けそうですよ。熱くて、きつくて、柔らかくて。とても具合がいい」
「君の中も、そうだった」
和彦の答えに、内奥で中嶋のものがドクンと脈打つ。小さく悦びの声を上げると、内奥深くを大きく一度だけ突き上げられ、今度は大きく喘ぎ声をこぼす。
両足を大きく左右に広げられ、繋がっている部分を中嶋にじっくりと観察されながら、律動を繰り返される。
「はあっ、あっ、あっ……ん、んくぅっ、はっ、ああっ」
中からの刺激によって、和彦の欲望は再び身を起こし、先端から透明なしずくを垂らしていた。
「いやらしいな、先生。さっき、俺の中でイッたばかりなのに」
笑いを含んだ声でそう言った中嶋が、和彦の欲望を軽く扱く。反射的に上体を捩ろうとしたが、すかさず内奥を突かれ、痺れるような快感が腰から這い上がってくる。
再び欲望を内奥深くまで埋め込んだ中嶋が、動きを止める。その代わり、ローションを手に取って体温で温めると、和彦の胸元や腹部へと施してきた。心地よさに吐息を洩らした和彦は、照れ隠しに呟く。
「あとで、新しいラグを買っておかないと……」
「共同責任ということで、あとで秦さんに謝っておきますよ」
和彦は声を洩らして笑っていたが、中嶋が律動を再開し、すぐに尾を引く嬌声を上げる。中嶋に抱き締められ、両腕の中で滑る体を奔放に捩って乱れていると、ふいに、内奥から欲望が引き抜かれ、下腹部から胸元にかけて、中嶋の精が飛び散った。
「……さすがに、本部に帰る先生の中に、俺の精液を残すわけにはいきませんからね」
息を乱しながらの中嶋の言葉に、納得せざるをえない。
「そんなことまで、頭が回ってなかった……」
和彦が率直に告げると、中嶋がゾクゾクするほど挑発的な表情で応じた。
「そんなに、気持ちよかったですか?」
「気持ちよかった。自分が浅ましい人間なんだと実感させられた。……周りの男たちが大層な扱いをしてくれるから思い違いをしていた。ぼくは、オンナであろうがなかろうが、本来、こういう人間なんだ。プライドが傷ついたなんて発言は、おこがましかったな」
「先生は、自分を正しく客観視しようとしすぎですよ。誰も採点なんてしないんだから、気楽に」
中嶋の発言に、正直驚いた。和彦は目を丸くしたあと、苦々しい顔となる。
「子供の頃からの癖だな。採点はされていた。――父親から」
まるで慰めようとするかのように中嶋に頬を撫でられたが、ローションがついてしまい、思わず破顔する。
唇を重ね、抱き合いながら、精がこびりついた下肢を密着させているうちに、中嶋を組み敷く格好となる。和彦は、高ぶった欲望をためらいもなく、潤んだ内奥に再び埋め込んだ。
気だるさと、清々しさをまとった和彦が本部に戻ったとき、すでに日付は変わっていた。堂々の夜遊びだ。
エレベーターを降り、ラウンジの前を通り過ぎようとして、ぎょっとする。誰もいないと思っていたが、ソファの背もたれの向こうで大きな影が動いたからだ。姿を見せたのは南郷だった。どうやら、ソファに深くもたれかかっていたらしい。
和彦が全身の毛を逆立てる勢いで警戒すると、南郷は露骨に頭の先からつま先まで眺めてきた。そして、芝居がかった下卑た笑みを見せた。
「わかってはいるつもりだったが、あんたはやっぱり大したタマだ」
「……どういう意味ですか」
和彦は、南郷から話しかけられたことに、不快さを隠そうともせず応じる。
「ほんの数日前に、あんたと三田村さんが熱い仲だという話をしたが、そのあんたが、今夜はあの中嶋と寝たのかと思ってな。三田村さんのことでムキになったあんたが、どんな気持ちで中嶋に抱かれていたのか、ぜひとも聞きたいもんだ」
「そんなことを言うために、ここで待っていたんですか。遊撃隊の隊長というのも、ずいぶん暇なんですね」
冷ややかな眼差しとともに、ささやかな皮肉を返す。さすがに南郷は、少なくとも表立っては気を悪くした素振りすら見せず、それどころか興味深そうな表情を浮かべた。
「出かける前はイライラしている様子だったが、さすがにヌイてきたあとだと、余裕があるな」
「下品な言い方はやめてください」
そう言い置いて立ち去ろうとしたが、大股で歩み寄ってきた南郷に肩を掴まれる。ゾクッと鳥肌が立つような感覚に襲われ、咄嗟にその手を払い退ける。睨みつけようとした先で、南郷は能面のような無表情となっていた。怒気を含んだ顔をされるより、よほどこちらのほうが凄みがあった。
気圧され、後退りかけた和彦だが、寸前のところで堪える。ここで怯めば、ようやく〈マシ〉になった気持ちが、また揺れると思ったのだ。それは中嶋に申し訳ない。
和彦は皮肉っぽい口調で南郷に言った。
「どうして――、抱かれていたと思うんですか?」
意味がわからなかったらしく、南郷が首を傾げる。
「何が言いたいんだ、先生」
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