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第38話
(21)
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情欲が冷めることを許さないとばかりに、道具で内奥を嬲られる。否応なく肉の愉悦を引きずり出され、円を描くように道具を動かされると、尾を引く甘い呻き声を上げてしまう。奥深くまで捩じ込まれて苦しいはずなのに、和彦の欲望は再び身を起こしていた。
両足を大きく開いた格好を取らされ、その中心に守光が顔を埋めてくる。
「あっ、ふあっ……」
欲望を守光の口腔に含まれていた。先端を舌先でくすぐられたあと、きつく吸引される。同時に、内奥で道具を動かされ、和彦は腰を揺らす。
軽い絶頂を迎えたような気もするが、まるで波のように絶え間なく快感を送り込まれ、和彦は惑乱していた。口淫の合間に守光に囁かれるままに、卑猥な言葉を口走り、獣のような姿勢も取る。
守光によって限界まで精を搾り取られ、ようやく内奥から道具を引き抜かれたとき、和彦は息も絶え絶えになっていた。一方的に快感を与えられる代わりに、思考力を奪われたようで、まるで自分が肉でできた人形になったような感覚に陥る。
そんな和彦を満足げに見下ろしてから、守光に唇を塞がれた。行為の仕上げとばかりに、触れ合わせた舌先を伝って口腔に流し込まれたのは、和彦自身が放った精だった。
「んっ、ん」
わずかに抵抗の意思を示したが、吐き出すことは叶わず、唾液とともに自分の精を嚥下していた。
濡れた唇を守光に拭われて、和彦はぼんやりとする。全身が汗と精と潤滑剤で汚れてしまい、一刻も早く体を洗ってしまいたいと思いながらも、腕を持ち上げる気力も湧かない。
体を起こした守光が傍らに座り、和彦の髪に指を絡めてきた。
「あんたは従順だが、わしに対して常に、心を硬い殻で覆っている……、いや、守っている気がする。わしに心を探られるのが怖いかね?」
和彦はふうっと息を吐き出すと、何も考えられないまま、だからこそ正直に答えた。
「はい……」
頭の片隅で、守光と俊哉の関係について聞かなければと思うが、どう切り出せばいいのか、会話の糸口を見つけられない。
「だが今は、そうでもないだろう。あんたの体と心を、快感でドロドロに溶かしたつもりだ。こうでもしないと、あんたは素の反応を見せてくれないと思ったんだ」
和彦はゆっくりと瞬きを繰り返しながら、ひたすら守光の顔を見上げる。
穏やかな表情のまま、守光が静かな口調で切り出した。
「――明後日、あんたの父親である佐伯俊哉と会ってほしい」
即座には、守光の言葉を理解できなかった。
「えっ……」
「やむをえない理由で、あんたの父親と連絡を取ることになり、そのとき言われたんだ。息子が安全な生活を送れているのか確認したい。二人きりで会わせてくれと」
「……嫌、です。まだ、父には――」
頭で考えるより先に、答えを口にしていた。そしてそれが、自分の偽らざる本心なのだと実感していた。
和彦はもう一度、嫌です、と言って首を横に振る。一気に押し寄せてきた切迫した危機感に、呼吸すら危うくなっていた。しかし守光は――俊哉もだが、容赦なかった。
「残念だが、あんたに拒否権はない。佐伯俊哉に言われたよ。息子に会わせないなら、警察に相談すると。そうなると、誰が困ると思う? 優しいあんたなら、わかるだろう」
俊哉は鷹津と繋がっている。その鷹津を通じて、和彦がこちらでどんな生活を送っているかを把握している。それなのに、守光に本当にこんなことを言ったのだとしたら、目的はどこにあるのか。
考えたいのに思考力は鈍いままだ。このとき、電話越しに俊哉に言われた言葉を思い出した。
『わたしと話したことは、絶対に誰にも悟られるな』
ああ、と和彦は吐息を洩らす。自分の身柄を巡って、守光と俊哉の交渉が始まるのだと、ようやく悟った。
俊哉に居場所を知られた時点で、こんな瞬間は遅かれ早かれ訪れるとわかっていた。だが、和彦はなんの行動も起こさなかった。その理由は簡単で、あまりに子供じみていた。
ただ、今の生活を失いたくなかったのだ。
「当然、佐伯俊哉は、あんたを返せと言うだろう。しかしわしは、手放したくない。わしだけでなく、賢吾も千尋も、それ以外の男たちも。長嶺組にとっても総和会にとっても、あんたはもう欠かせない存在だ。さあ、どうするか――。それを考えるためにも、あんたは父親に会う必要がある」
守光が耳元に顔を寄せ、賢吾によく似た太く艶のある声で囁いた。
「わしらが、あんたを大事に扱っていると証明するために」
両足を大きく開いた格好を取らされ、その中心に守光が顔を埋めてくる。
「あっ、ふあっ……」
欲望を守光の口腔に含まれていた。先端を舌先でくすぐられたあと、きつく吸引される。同時に、内奥で道具を動かされ、和彦は腰を揺らす。
軽い絶頂を迎えたような気もするが、まるで波のように絶え間なく快感を送り込まれ、和彦は惑乱していた。口淫の合間に守光に囁かれるままに、卑猥な言葉を口走り、獣のような姿勢も取る。
守光によって限界まで精を搾り取られ、ようやく内奥から道具を引き抜かれたとき、和彦は息も絶え絶えになっていた。一方的に快感を与えられる代わりに、思考力を奪われたようで、まるで自分が肉でできた人形になったような感覚に陥る。
そんな和彦を満足げに見下ろしてから、守光に唇を塞がれた。行為の仕上げとばかりに、触れ合わせた舌先を伝って口腔に流し込まれたのは、和彦自身が放った精だった。
「んっ、ん」
わずかに抵抗の意思を示したが、吐き出すことは叶わず、唾液とともに自分の精を嚥下していた。
濡れた唇を守光に拭われて、和彦はぼんやりとする。全身が汗と精と潤滑剤で汚れてしまい、一刻も早く体を洗ってしまいたいと思いながらも、腕を持ち上げる気力も湧かない。
体を起こした守光が傍らに座り、和彦の髪に指を絡めてきた。
「あんたは従順だが、わしに対して常に、心を硬い殻で覆っている……、いや、守っている気がする。わしに心を探られるのが怖いかね?」
和彦はふうっと息を吐き出すと、何も考えられないまま、だからこそ正直に答えた。
「はい……」
頭の片隅で、守光と俊哉の関係について聞かなければと思うが、どう切り出せばいいのか、会話の糸口を見つけられない。
「だが今は、そうでもないだろう。あんたの体と心を、快感でドロドロに溶かしたつもりだ。こうでもしないと、あんたは素の反応を見せてくれないと思ったんだ」
和彦はゆっくりと瞬きを繰り返しながら、ひたすら守光の顔を見上げる。
穏やかな表情のまま、守光が静かな口調で切り出した。
「――明後日、あんたの父親である佐伯俊哉と会ってほしい」
即座には、守光の言葉を理解できなかった。
「えっ……」
「やむをえない理由で、あんたの父親と連絡を取ることになり、そのとき言われたんだ。息子が安全な生活を送れているのか確認したい。二人きりで会わせてくれと」
「……嫌、です。まだ、父には――」
頭で考えるより先に、答えを口にしていた。そしてそれが、自分の偽らざる本心なのだと実感していた。
和彦はもう一度、嫌です、と言って首を横に振る。一気に押し寄せてきた切迫した危機感に、呼吸すら危うくなっていた。しかし守光は――俊哉もだが、容赦なかった。
「残念だが、あんたに拒否権はない。佐伯俊哉に言われたよ。息子に会わせないなら、警察に相談すると。そうなると、誰が困ると思う? 優しいあんたなら、わかるだろう」
俊哉は鷹津と繋がっている。その鷹津を通じて、和彦がこちらでどんな生活を送っているかを把握している。それなのに、守光に本当にこんなことを言ったのだとしたら、目的はどこにあるのか。
考えたいのに思考力は鈍いままだ。このとき、電話越しに俊哉に言われた言葉を思い出した。
『わたしと話したことは、絶対に誰にも悟られるな』
ああ、と和彦は吐息を洩らす。自分の身柄を巡って、守光と俊哉の交渉が始まるのだと、ようやく悟った。
俊哉に居場所を知られた時点で、こんな瞬間は遅かれ早かれ訪れるとわかっていた。だが、和彦はなんの行動も起こさなかった。その理由は簡単で、あまりに子供じみていた。
ただ、今の生活を失いたくなかったのだ。
「当然、佐伯俊哉は、あんたを返せと言うだろう。しかしわしは、手放したくない。わしだけでなく、賢吾も千尋も、それ以外の男たちも。長嶺組にとっても総和会にとっても、あんたはもう欠かせない存在だ。さあ、どうするか――。それを考えるためにも、あんたは父親に会う必要がある」
守光が耳元に顔を寄せ、賢吾によく似た太く艶のある声で囁いた。
「わしらが、あんたを大事に扱っていると証明するために」
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