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第39話
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肩にかかった賢吾の手が動き、ゆっくりと腕をさすられる。ますます引き寄せられ、ぴったりと賢吾に身を寄せると、浴衣の衿の合わせからさりげなく片手が侵入してくる。甘く淫らな予感に、ズキリと和彦の胸が疼く。
「うちとしては、もっと甘えてもらってもいいぐらいなんだがな」
「ときどき、たっぷり甘えさせてもらうから、いいんだ。すごくほっとできるし、ここは居心地がいいと実感できる」
「先生は、一人で過ごす時間が必要か。……俺たちとは違う、繊細な生き物だからな。無理に閉じ込めて、窒息させたくない」
ぐっと手が深く差し込まれ、荒々しい手つきで胸元をまさぐられる。和彦は思わず賢吾の膝に手をかけた。
「千尋は、まだ帰ってないのか……?」
「なんだ。三人で楽しみたかったのか」
「違っ……。何度でも言うが、宿でのようなことは、二度と嫌だからな。本当に、あとが大変で――」
こちらは必死で訴えているというのに、賢吾はニヤニヤと笑っている。
「大変なのは、俺もだな。一週間以上、先生と一緒に寝られない。隣にいると、寝ぼけて襲いかかっちまいそうで」
「……それの何が大変なんだ」
「蛇の生殺しって言葉があるだろ。毎晩、俺はそれを味わってる」
刺激され続けているうちに、胸の突起が硬く敏感に尖る。さんざんてのひらで転がされたあと、賢吾の指先に捉えられ、和彦は喉の奥から声を洩らす。誘われるように顔を寄せてきた賢吾と唇を重ね、柔らかく吸い合う。
「千尋は用があって今夜も泊まりだ。総和会とは別件でな。あいつも、呼ばれたらあちこちに顔を出す立場になったんだ。そうやって顔を広めてから、満を持して、長嶺組の正当な跡目として披露できる。それまでは、長嶺組の坊ちゃん扱いだな」
「それでもここのところ、それらしくなった」
「極道らしくなった、ということか?」
どうかな、と返事を濁すと、短く笑った賢吾に軽く唇に噛みつかれた。囁かれて、促されて立ち上がった和彦は、肩を抱かれながら隣の部屋へと移動する。
すでに延べられていた布団の上に押し倒され、いきなり下着を引き下ろされる。のしかかってきた賢吾に有無を言わせず唇を塞がれた。和彦は条件反射のように、賢吾が着ているシャツの下に手を潜り込ませようとしたが、柔らかな口調で窘められた。
「煽るなよ、先生。これでも本当に、先生の体を気遣っているんだ。――まだ〈ここ〉に、無体はできねーからな。だが、俺恋しさで部屋に来てくれたのに、何もせず帰すのも忍びない」
そう言って賢吾の片手が下肢に伸び、秘裂を指先でまさぐられる。
「別に、そんなつもりで――」
来たわけではない、と言いたかったが、結局言葉となっては出てこない。用もないのにここに来たということは、賢吾にこう言われても仕方ないのだ。
内奥の入り口を指の腹で撫でられ、声を上げる。
「あっ……」
「まだ痛むか?」
「……もう、気にならなくなった」
「まだ少し腫れているような気もするが」
気遣っているようで、賢吾の指の動きは確実に、和彦の官能を引き出そうとしている。敏感で繊細な部分を執拗に撫でられながら、口腔に舌を押し込まれ、じっくりと粘膜を舐められる。和彦は懸命に賢吾の肩に掴まりながら、何度も爪先を布団の上で滑らせていた。
「はあ、あっ、もっ……、触る、な……」
乱れた息の下、弱々しく訴えるが、賢吾には逆効果だったようだ。邪魔だと言わんばかりに茶羽織を肩から下ろされたうえに、浴衣の前を大きくはだけさせられる。
熱を帯びた眼差しで賢吾に見下ろされると、身を焼くような羞恥に襲われるが、和彦はすぐにそれが、狂おしい情欲のうねりに姿を変えることを知っている。
体の負担も考えず、見境なく求めてしまう事態を危惧して、上体を捩って賢吾の下から抜け出そうとする。しかし、そんな和彦を余裕たっぷりに賢吾が押さえつけた。
「乱れた浴衣も相まって、実にそそる姿だな。俺を誘っているだろ」
「都合よく解釈するな。ぼくの体を気遣っているんじゃないのかっ……」
「だったら、俺によく見せてくれ。ついでに、消毒もしてやる。なんたって、気遣っているからな」
そう言う賢吾の声は笑っている。和彦は必死に前に這い出そうとするが、逞しい腕に易々と腰を抱え込まれ、引き寄せられる。浴衣の裾をたくし上げられ、強引に足の間を開かされたときには、もう抵抗する気力は奪われていた。
剥き出しとなった腿を掴んでくる指の力強さに、内心、少しだけ和彦は怯える。賢吾に限って暴力的な行為に及ばないとわかってはいるが、本能的な反応はどうしようもない。
「うちとしては、もっと甘えてもらってもいいぐらいなんだがな」
「ときどき、たっぷり甘えさせてもらうから、いいんだ。すごくほっとできるし、ここは居心地がいいと実感できる」
「先生は、一人で過ごす時間が必要か。……俺たちとは違う、繊細な生き物だからな。無理に閉じ込めて、窒息させたくない」
ぐっと手が深く差し込まれ、荒々しい手つきで胸元をまさぐられる。和彦は思わず賢吾の膝に手をかけた。
「千尋は、まだ帰ってないのか……?」
「なんだ。三人で楽しみたかったのか」
「違っ……。何度でも言うが、宿でのようなことは、二度と嫌だからな。本当に、あとが大変で――」
こちらは必死で訴えているというのに、賢吾はニヤニヤと笑っている。
「大変なのは、俺もだな。一週間以上、先生と一緒に寝られない。隣にいると、寝ぼけて襲いかかっちまいそうで」
「……それの何が大変なんだ」
「蛇の生殺しって言葉があるだろ。毎晩、俺はそれを味わってる」
刺激され続けているうちに、胸の突起が硬く敏感に尖る。さんざんてのひらで転がされたあと、賢吾の指先に捉えられ、和彦は喉の奥から声を洩らす。誘われるように顔を寄せてきた賢吾と唇を重ね、柔らかく吸い合う。
「千尋は用があって今夜も泊まりだ。総和会とは別件でな。あいつも、呼ばれたらあちこちに顔を出す立場になったんだ。そうやって顔を広めてから、満を持して、長嶺組の正当な跡目として披露できる。それまでは、長嶺組の坊ちゃん扱いだな」
「それでもここのところ、それらしくなった」
「極道らしくなった、ということか?」
どうかな、と返事を濁すと、短く笑った賢吾に軽く唇に噛みつかれた。囁かれて、促されて立ち上がった和彦は、肩を抱かれながら隣の部屋へと移動する。
すでに延べられていた布団の上に押し倒され、いきなり下着を引き下ろされる。のしかかってきた賢吾に有無を言わせず唇を塞がれた。和彦は条件反射のように、賢吾が着ているシャツの下に手を潜り込ませようとしたが、柔らかな口調で窘められた。
「煽るなよ、先生。これでも本当に、先生の体を気遣っているんだ。――まだ〈ここ〉に、無体はできねーからな。だが、俺恋しさで部屋に来てくれたのに、何もせず帰すのも忍びない」
そう言って賢吾の片手が下肢に伸び、秘裂を指先でまさぐられる。
「別に、そんなつもりで――」
来たわけではない、と言いたかったが、結局言葉となっては出てこない。用もないのにここに来たということは、賢吾にこう言われても仕方ないのだ。
内奥の入り口を指の腹で撫でられ、声を上げる。
「あっ……」
「まだ痛むか?」
「……もう、気にならなくなった」
「まだ少し腫れているような気もするが」
気遣っているようで、賢吾の指の動きは確実に、和彦の官能を引き出そうとしている。敏感で繊細な部分を執拗に撫でられながら、口腔に舌を押し込まれ、じっくりと粘膜を舐められる。和彦は懸命に賢吾の肩に掴まりながら、何度も爪先を布団の上で滑らせていた。
「はあ、あっ、もっ……、触る、な……」
乱れた息の下、弱々しく訴えるが、賢吾には逆効果だったようだ。邪魔だと言わんばかりに茶羽織を肩から下ろされたうえに、浴衣の前を大きくはだけさせられる。
熱を帯びた眼差しで賢吾に見下ろされると、身を焼くような羞恥に襲われるが、和彦はすぐにそれが、狂おしい情欲のうねりに姿を変えることを知っている。
体の負担も考えず、見境なく求めてしまう事態を危惧して、上体を捩って賢吾の下から抜け出そうとする。しかし、そんな和彦を余裕たっぷりに賢吾が押さえつけた。
「乱れた浴衣も相まって、実にそそる姿だな。俺を誘っているだろ」
「都合よく解釈するな。ぼくの体を気遣っているんじゃないのかっ……」
「だったら、俺によく見せてくれ。ついでに、消毒もしてやる。なんたって、気遣っているからな」
そう言う賢吾の声は笑っている。和彦は必死に前に這い出そうとするが、逞しい腕に易々と腰を抱え込まれ、引き寄せられる。浴衣の裾をたくし上げられ、強引に足の間を開かされたときには、もう抵抗する気力は奪われていた。
剥き出しとなった腿を掴んでくる指の力強さに、内心、少しだけ和彦は怯える。賢吾に限って暴力的な行為に及ばないとわかってはいるが、本能的な反応はどうしようもない。
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