13 / 119
第二章 日常
若者達 ①
しおりを挟む
時刻は11時、ホテルはチェックアウトの最終時刻でフロントはごった返していた。
ロビーには准一、智成、茂の三人もいた。三人はチェックアウトを済ませ和也のところにやってきた。
和也の嫁も隣にいて、嫁も交えて別れの挨拶になった。
智成から和也は智成が勤めている会社の名刺を渡された。
准一と智成はここからそう遠くない場所へ、それぞれの車で帰るようだ。
茂は智成の車で近くの駅まで送ってもらいそこから特急で東京まで帰るようだった。
和也はこの短い旅行で起こった事や、数々の官能的な出来ごとを思い名残惜しかった。
「きっと准一も智成もそうであろう・・・」和也は思った。
「茂君は電車の切符はとってあるの?」唐突に嫁が茂に聞いた。
「はい、え?あ、まだとっていないです・・・」茂は爽やかな屈託のない笑顔で嫁に返答する。
「ならうちの車に乗って行けばいいじゃない、どうせ同じ方向なんだから、ね、いいでしょう、あなた!」
「えっ?ああ、茂君さえ良ければ、いいよ」和也はあまりの唐突で予想しない出来ごとにあっけに取られたが、断る理由もないと思った。
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えます!」茂は即決する。
突然の嫁の提案で、和也家族と茂は東京まで一緒に帰ることになった。
茂は礼儀正しく話し上手、智成の開けっ広げの真っ直ぐさとは違った物腰柔らかな理知的な感じがする青年であった。
茂は母子家庭で父親がいない・・・柔道整復師の学校は学費が高く、出来るだけ母親に負担をかけたくないとの理由から、奨学金とマッサージのアルバイトで生計を立てていた。
帰りの特急代が浮くことは、茂にとっては本当にありがたかったのだ。
思いがけずの茂の同乗のお陰で会話が飛び交い車内は楽しい空間となった。
茂がいなかったら和也は黙々と運転をし、長女はスマホをずっと見て、嫁と次女がずっと話している状態だったはずだ。
「そう言えば・・・嫁の好みはスポーツマンのガタイ系男子だったな・・・」和也はふと昔を振り返った・・・
「もしかしたら茂のことを嫁は気に入っているのだろうか・・・いやいや、子どもが女ばかりだから、男の子が欲しかったとか?」和也は想像を巡らせた。
しかしいずれにせよ嫁が茂に対して好感を抱いているのは間違いなさそうだ。
和也だって今でこそ欠点や文句ばかり言われているが、かつてはラグビー部に所属していた爽やかなガタイ系男子であった。
そして嫁も若い頃はスタイル抜群で可愛いらしく、周囲からは人気もあったのだった。
「今じゃあ、小うるさくなってしまった・・・」和也はため息をつく・・・
茂の同乗で車中は楽しくなり、和也も茂に感謝した。
茂のアパートは和也の家から二駅と、かなり近いことがわかった。
嫁は夕食をうちで食べていくようにとしつこく茂を誘う。
旅行帰りの夕食は、いつもなら面倒なので外食か、テイクアウトの簡単なもので済ませているのだが・・・
今日はスーパーに寄って帰ると嫁はいつになく張り切っている。
「こんなに楽しそうな嫁を見たのは久しぶりだ・・・」和也は思った。
スーパーに寄って食材を選ぶ嫁。嫁の後を茂はカートを押して着いていく。さらに和也はのんびりと嫁と茂の後を着いていく。
食材の買い物の最中は、娘たち二人は車の中で寝ていた。
家に着いては張り切って料理をする嫁。
「あなた、今日はお酒は飲まないでね、茂君を送っていってもらわないと行けないから・・・」
和也は茂をアパートまで送るのは嫌ではなかったが、嫁は茂に随分と熱をあげているように思えた。
旅行で疲れているはずの嫁が、がっつり系男子が喜びそうな料理をふんだんに用意し、茂を囲んだ食卓は茂のトークも手伝って、楽しいものになった。
「またいつでも遊びにいらっしゃい、お腹いっぱい食べさせてあげる!」嫁は上機嫌で茂と連絡先の交換までしている。
夕食後、和也は約束通り茂を車で送る。
帰りの車内で茂から准一との関係をさりげなく聞かれた。
「茂は何か知っているのかも知れない・・・」和也は思った。
「茂君、ラグビー部の先輩と後輩の間柄で槙田さんは凄く俺に目を掛けてくれて、世話になったんだ・・・」和也はあっさりと答えた。
「はい、槙田先生からはそのように聞いております・・・」
そうこうしているうちに、車は茂のアパートに到着した。
「和也さん、狭くて汚い場所ですが、寄って行きませんか?コーヒー入れますから」
「茂君、ありがとう、でも今日はちょっと時間が遅いからまた今度寄らせてもらうよ」
茂は車を降りて深々と頭を下げ、車が発進するまで見送ってくれる。
和也は車のバックミラー越しにその光景を見ていた。
ロビーには准一、智成、茂の三人もいた。三人はチェックアウトを済ませ和也のところにやってきた。
和也の嫁も隣にいて、嫁も交えて別れの挨拶になった。
智成から和也は智成が勤めている会社の名刺を渡された。
准一と智成はここからそう遠くない場所へ、それぞれの車で帰るようだ。
茂は智成の車で近くの駅まで送ってもらいそこから特急で東京まで帰るようだった。
和也はこの短い旅行で起こった事や、数々の官能的な出来ごとを思い名残惜しかった。
「きっと准一も智成もそうであろう・・・」和也は思った。
「茂君は電車の切符はとってあるの?」唐突に嫁が茂に聞いた。
「はい、え?あ、まだとっていないです・・・」茂は爽やかな屈託のない笑顔で嫁に返答する。
「ならうちの車に乗って行けばいいじゃない、どうせ同じ方向なんだから、ね、いいでしょう、あなた!」
「えっ?ああ、茂君さえ良ければ、いいよ」和也はあまりの唐突で予想しない出来ごとにあっけに取られたが、断る理由もないと思った。
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えます!」茂は即決する。
突然の嫁の提案で、和也家族と茂は東京まで一緒に帰ることになった。
茂は礼儀正しく話し上手、智成の開けっ広げの真っ直ぐさとは違った物腰柔らかな理知的な感じがする青年であった。
茂は母子家庭で父親がいない・・・柔道整復師の学校は学費が高く、出来るだけ母親に負担をかけたくないとの理由から、奨学金とマッサージのアルバイトで生計を立てていた。
帰りの特急代が浮くことは、茂にとっては本当にありがたかったのだ。
思いがけずの茂の同乗のお陰で会話が飛び交い車内は楽しい空間となった。
茂がいなかったら和也は黙々と運転をし、長女はスマホをずっと見て、嫁と次女がずっと話している状態だったはずだ。
「そう言えば・・・嫁の好みはスポーツマンのガタイ系男子だったな・・・」和也はふと昔を振り返った・・・
「もしかしたら茂のことを嫁は気に入っているのだろうか・・・いやいや、子どもが女ばかりだから、男の子が欲しかったとか?」和也は想像を巡らせた。
しかしいずれにせよ嫁が茂に対して好感を抱いているのは間違いなさそうだ。
和也だって今でこそ欠点や文句ばかり言われているが、かつてはラグビー部に所属していた爽やかなガタイ系男子であった。
そして嫁も若い頃はスタイル抜群で可愛いらしく、周囲からは人気もあったのだった。
「今じゃあ、小うるさくなってしまった・・・」和也はため息をつく・・・
茂の同乗で車中は楽しくなり、和也も茂に感謝した。
茂のアパートは和也の家から二駅と、かなり近いことがわかった。
嫁は夕食をうちで食べていくようにとしつこく茂を誘う。
旅行帰りの夕食は、いつもなら面倒なので外食か、テイクアウトの簡単なもので済ませているのだが・・・
今日はスーパーに寄って帰ると嫁はいつになく張り切っている。
「こんなに楽しそうな嫁を見たのは久しぶりだ・・・」和也は思った。
スーパーに寄って食材を選ぶ嫁。嫁の後を茂はカートを押して着いていく。さらに和也はのんびりと嫁と茂の後を着いていく。
食材の買い物の最中は、娘たち二人は車の中で寝ていた。
家に着いては張り切って料理をする嫁。
「あなた、今日はお酒は飲まないでね、茂君を送っていってもらわないと行けないから・・・」
和也は茂をアパートまで送るのは嫌ではなかったが、嫁は茂に随分と熱をあげているように思えた。
旅行で疲れているはずの嫁が、がっつり系男子が喜びそうな料理をふんだんに用意し、茂を囲んだ食卓は茂のトークも手伝って、楽しいものになった。
「またいつでも遊びにいらっしゃい、お腹いっぱい食べさせてあげる!」嫁は上機嫌で茂と連絡先の交換までしている。
夕食後、和也は約束通り茂を車で送る。
帰りの車内で茂から准一との関係をさりげなく聞かれた。
「茂は何か知っているのかも知れない・・・」和也は思った。
「茂君、ラグビー部の先輩と後輩の間柄で槙田さんは凄く俺に目を掛けてくれて、世話になったんだ・・・」和也はあっさりと答えた。
「はい、槙田先生からはそのように聞いております・・・」
そうこうしているうちに、車は茂のアパートに到着した。
「和也さん、狭くて汚い場所ですが、寄って行きませんか?コーヒー入れますから」
「茂君、ありがとう、でも今日はちょっと時間が遅いからまた今度寄らせてもらうよ」
茂は車を降りて深々と頭を下げ、車が発進するまで見送ってくれる。
和也は車のバックミラー越しにその光景を見ていた。
21
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる