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第3章 種族進化

第72話 覚醒ソラVS霊神鹿エイクスュルニル

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 俺とエイクスュルニルはお互いに向き合い戦闘態勢に入る。

 この戦闘は勝ち負けが重要ではないが、どうせなら勝ちたい。

 だが、エイクスュルニルのlevel downは既に効果が切れており、levelでは圧倒的に俺が負けているため勝ち目はないと言ってもいいだろう。

 しかし今は全く負ける気がしないし、物凄く調子がいい。

 体も軽いし頭がスッキリしており、いつもよりも頭の回転が速く感じる。

 更に相手の呼吸音や心音、筋肉の音までもが耳に入ってきて相手の次の行動が手にとるように分かってしまう。

「エレノア、始まりの合図を頼めるか? エイクスュルニルもそれでいいか?」

「え!? 私ですか!? いやたしかに私しか居ないですね。わかりました、お引き受けします」

『私もそれでいいですよ。それと私のことはエイクで結構』

「そうか、ならエイクと呼ばせてもらおう。それと手加減などはなさらない方が良いかと。多分今の俺は手加減して勝てる相手ではないだろう?」

 自分で言っておいて不遜だと思うが、紛れもない事実だ。

 流石に肉体だけだと手加減されても負けるだろうが、俺には《聖剣白夜》と《魔剣闇夜》がある。

 今もしっかりと腰に装着しているため、ステータスも上がっているはずだ。

『……確かに手加減して勝てる相手ではないでしょう。ならば私も———全力で行かせてもらいます!!』

 その瞬間エイクから膨大な神気が発生する。

 なぜ神気とわかるかと言うと、どう言う原理かは分からないが、俺の神気が共鳴しているのだ。

 そしてエイクの神気は俺よりも遥かに濃密で力強い。

 ヤバいな……これは8割くらいにしてもらった方がよかったかもしれない。

 しかし男に二言はない。

 俺は予めどちらの刀も抜刀しておく。

 どうせ居合などしている暇はない。

 それと同時に《聖剣気》と《魔剣気》も纏う。

「準備完了だ。俺はいつでも大丈夫だ」

『私も同じく』

 2人が同意したのを確認したエレノアが合図を出す。

「そ、それでは———始めッッ!!」

 先に動き出したのはエイクだった。

 神速の速さで俺の後ろに回り、角を器用に振り回して俺に攻撃しようとしてきた。

 俺は即座にバックステップで避ける。

 見える……ッ! 全然見えなかった速度にもついて行けている!!

 俺は確実に強くなっていることを実感して思わず笑みが漏れる。

『流石ですね……私の本気の速度についていけるものは中々居ないというのに。これなら本気でも大丈夫そうですね』

 どうやら今の一回で俺の実力を確認しようとしたみたいだ。

 そしてエイクのお眼鏡にかなったようだ。

「次は俺から行かせてもらおう」

 俺は本気で地面を踏み込み、一気にエイクの懐に入る。

「疾ッッ!!」

『はっ!!』

 そしてエイクの胴体めがけて神速の斬撃を放つ。

 しかし『ガキンッ!!』と言う音とともに角では弾かれてしまったが、すぐにもう片方の刀で再び斬りかかる。

 しかしこれは空振りに終わった。

 一旦離れて体勢を立て直す。

 チッ、流石にそんなに簡単には当たってくれないか。

 なら———

「———奥義【白夜を切り裂く一閃】」

 一瞬で納刀し居合の構えを取り、エイクの懐に飛び込むようにして抜刀。

 この世で最も暗い斬撃がエイクを食い殺そうと襲いかかる。

 あと少しで当たると言うこと所で、突如エイクの角に神気が集まり太陽の如く輝き出す。

『【神技:擬似太陽神ラー】ッッ!!』

 そう言った瞬間、エイクに迫っていた【白夜を切り裂く一閃】が突如燃え出し、一瞬にして灰になって消えてしまった。

「な———ッッ!?」

 俺は突然のことで一瞬で動きが鈍る。

 エイクはその隙を逃さず、俺に先ほどと同じ技を繰り出してきた。

 その攻撃は物凄いスピードで迫ってくるが、俺にはゆっくりに見える。

 その理由は、先ほどエイクがやったように神気を目に集めてみたのだ。

 そうだな、名付けるなら———

「———【神技:神眼】かな?」

 俺は必要最低限の動きで攻撃を躱す。

『なっ!? 嘘っ!?』

 今度はエイクが驚く番だった。

 そしてエイクと同じく俺も隙を決して見逃さない。

 一気に接近し刀を振り下ろす。

 しかしエイクは器用に体勢を変えて攻撃をいなしてくるが……

「想定内ッッ!!」

『な———ッッ!?』

 もう片方の刀を水平に振り抜く。

 すると流石に避けれないと判断したのか、神気を集めて防御をしていた。

 なるほどな……ああ言う使い方もあるのか。

 俺はいつもよりも優れた五感と六感でエイクがどうやっていたのか即座に分析。

 その間にも連撃を続ける。

 俺の強みは二刀流の手数が多いことだ。

 なので正確に無駄な動きはせず、感覚に従って相手の次の攻撃を阻むように攻撃を繰り出し続ける。

 するとそろそろキツくなってきたのか、一瞬動きが止まったかと思った瞬間、気付けば後ろに回られており、モロに蹴りを食らった。

「グハッ———!? ガハッ、ゴホッ!!」

 強烈な振動と共に痛みが俺を襲ってくるが、気にせずに攻撃に転じる。
 
 そうでもしないとまた攻撃を食らってしまうからだ。

 しかしそれでは俺の勝ちは絶対にないんだよな……。

 俺はこの少しの間に実力差がものすごく離れている事に気がついていた。

 エイクは本気でやると言いながらも多分まだ8割程の力しか出していないだろう。

 此方は見よう見まねだが神技まで使っているのに押されている。

 これがlevelもそうだが、経験の差というやつだろう。

 しかし歴戦の猛者に一度でいいから一泡吹かせたい。

 ……よし、これが使えるか分からないが、やってみるだけやってみよう。

 俺は物凄い数の攻撃を捌きながらタイミングを伺う。

 すると突然俺の神眼がある光景を映す。

 それはエイクが中々ミスをしない俺にイラッと来たのか、強めの攻撃を放ってきて、俺がなす術なく吹き飛ばされている光景だった。

 普通ならここで絶望するだろうが、今の俺には絶好のチャンスだった。

 俺はなんとか必死に攻撃を躱したりいなしたり、たまに反撃しながら時間を稼いでいると、遂にその時が来た。

 エイクが神眼で見た光景と同じモーションに入る。

 俺はその瞬間に叫びながらある魔法を発動させる。

「【闇魔法:フォース・スロウ】ッッ!!」

 この魔法は1度に3度までしか重ねがけできないスロウを一気に4回重ねがけできる高位魔法だ。

 それでもエイクにはほとんど効かないが、それで十分。

 証拠にエイクが突然自身が遅くなって戸惑っている。

 俺はその一瞬のうちに2つの刀を納刀、抜刀の間に神速でエイクの懐に入る。

 そして2つの刀の専用スキルを発動させる。

「奥義【闇夜を切り裂く一閃】【白夜を切り裂く一閃】ッッ!!」

 白と黒の2つの斬撃は吸い込まれるようにしてエイクに直撃した。


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