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月曜の朝、美貴は起きると吐き気がしてトイレに駆け込んだ。
(土曜日は真佐希君が来て少し飲んだけど、日曜日はなんともなかったのよね...何か変なもの食べたかしら...?)
美貴はハッとして、トイレの収納ボックスから妊娠検査薬を取り出し試してみた。
陽性だった。
「マジで...」
美貴は会社を休み病院へ行くことにした。
タカシは鼻歌を歌いながら会社でエレベーターを待っていた。
エレベーターのドアが開くと恵理が乗っていた。
タカシは恵理を見ると固まった。そのまま吸い込まれるようにエレベーターの中へ入った。
しばらくの間、二人は互いに無言でジーッと見つめ合い、突然、ガシッと強く抱き合った。
美貴は病院からニコニコ顔で出てきた。
タカシの会社の近くの病院だった。
「ふふふ! タカシ、ビックリするかなぁ? メールしよっかな? 口頭で知らせよっかな?どうしよう、あ~ドキドキする! お義母さんに知らせると、絶対、先に言っちゃうしな~。どうしよ? う~ん、まずはお茶しよっと!」
気分がいい美貴は、お洒落なカフェを探した。
「あそこにしよっかな? あっちもいいなぁ...」
どのカフェにしようかとキョロキョロしていると、
「え..? タカシ?」
タカシと、いつか見た女の子が腕を組んで歩いているのが目に入った。
美貴は不安になり後を追った。
二人は電車に乗った。電車内でも女はタカシにベッタリで、タカシも嬉しそうな顔だった。
電車を降りた後、二人は女のマンションへ入っていった。
(ウソ.....)
美貴は足が動かなかった。立っているのが精一杯だった。
茫然と立ち尽くしたまま時間が経った。ゆっくりと、倒れないように歩き出した。
建物の間の暗い細道に入り、しゃがみ込むと、
「わあぁぁ~~~っ!!」
と大声で泣き出した。
喬は絶対こんなことをしないと信じていたのに!
家族を大切にしてくれると信じていたのに!
美貴は子供の頃を思い出した。
父親が、美貴の知らない女を家へ連れ込んでは母親に辛い思いをさせていた。母はヒステリーになり、美貴へ辛く当たった。とうとう母は家出し、その後、父は再婚したが、美貴はその再婚相手からさんざん嫌がらせを受けた挙げ句、施設に入れられた。父も母も病気で亡くなった後は、後妻や親戚から父や母の面倒を見てやったということでお金をしつこく要求された。
(誰も信用するもんか。お金だけが全てだ)
美貴はそう思って仕事を頑張っていた。タイムカードを定時で打刻し、サービス残業をしては夜遅くまで仕事を頑張るという日々を送っていた。
ある日、同じ会社で働いていた喬が美貴に話しかけた。
「杉森さんは、どうしてスカートをはかないの?」
笑顔の喬に美貴は冷たい表情を向けた。
「動きにくいからよ」
「あ~、確かに。杉森さんは動きが早いもんね。でも、スカート姿の杉森さんて似合うと思うな」
「いいの! 素敵な女性は目指してないから。仕事しやすい服が好きなの」
無愛想な美貴に他の男性社員は無愛想な態度をとったが、喬だけはいつも笑顔で話しかけてきた。
そんな喬に笑顔で話そうと思いながらも、意地っ張りな美貴はそれができないでいた。
ある日、喬がいつものように笑顔で美貴のそばに来た。
「明後日、語学交換交流会に参加するんだけど、よかったら杉森さんも一緒に行かない? 英語を勉強してるんでしょ? 海外から来た観光客とかと英会話できるよ」
商社の仕事は好きだが、英語が苦手な美貴だった。行くのは億劫だったが、笑顔の喬に応えたい気持ちが強かった。
「へぇ、なんかおもしろそう!」
美貴は喬のために自分を変えようと勇気が湧いた。
喬に誘われるまま参加した交流会で、美貴は喬とは別のテーブルに案内された。
(一緒じゃないんだ...残念...でも頑張らなきゃ!)
美貴は笑顔を作り、同じテーブルの日本人の中年の男に挨拶した。すると男はニヤッとし、
「おまえも外人の男とヤりたくてここへ来たんだろ? どこの国の男とヤりたいの? そんなに飢えてんなら、オレ、ホテルに行ってやってもいいぜ」
バカにする口調で言った。
突然の男の言葉に美貴は怒りで体が震え、すぐに声を出して言い返せなかった。
固まっている美貴に、男は尚も続けた。
「おまえみたいな女、全然タイプじゃないけどホテルに行ってやるんだから、ホテル代はおまえが出せよ。ちゃんとオレに土下座してお礼を言えよな。ほら行くぞ、来いよ!」
美貴は拳を握りしめた。
「あんたみたいなクソジジイ、ホント吐き気がするわ」
震える声で男に言い返した。
その後、美貴はすぐに立ち上がり、別のテーブルに移動した。何事もなかったように、海外からの観光客や日本人達と英語で会話をした。
すると、その中年男が移動先のテーブルに来て、美貴の話し相手の男性達に向かって、
「オイ、おまえら気をつけろよ。この女、すごい飢えてるから油断するとファックされるぞ!」
とニタニタ嘲笑しながら言った。
「いい加減なこと言わないでください!」
美貴は怒鳴った。
「なんだよ。オレが他の女と話したからって妬くなよ! オレの股間のマグナムがほしいんだろ。入れてやるよ。ほら、さっさとパンツ脱いで足開けよ。土下座したら入れてやるよ!」
笑いながら話す男に周りの参加者がドン引きすると、男は「なんちゃって」と舌をペロっと出しておちゃらけて見せた。
「ちょっとした痴話喧嘩だ。みんなゴメンな」
中年男はいかにも美貴とつきあっているような言い方をした。
怒りと悔しさで体を震わせてる美貴に、男はやさしく、
「来いよ。無理すんなよ。寂しいんだろ? 抱いてやるよ」
とささやいた。
美貴は男を睨みつけ、殴りかかろうとした、その時だった。喬がイスをその男の膝裏に蹴り当てたのだ。
「わわわっ!!」
男が急に倒れ、隣のテーブルに座っていた若い女にもたれた。
「きゃー!!」
女は悲鳴をあげ、中年男を強く押し退けた。
「何よもう! もたれかかんないでよ、このどスケベ!!」
女の大きな怒鳴り声が店内に響き渡った。
カフェのスタッフがかけつけると、喬は美貴の手を引っ張った。
「ここを出よう!」
(土曜日は真佐希君が来て少し飲んだけど、日曜日はなんともなかったのよね...何か変なもの食べたかしら...?)
美貴はハッとして、トイレの収納ボックスから妊娠検査薬を取り出し試してみた。
陽性だった。
「マジで...」
美貴は会社を休み病院へ行くことにした。
タカシは鼻歌を歌いながら会社でエレベーターを待っていた。
エレベーターのドアが開くと恵理が乗っていた。
タカシは恵理を見ると固まった。そのまま吸い込まれるようにエレベーターの中へ入った。
しばらくの間、二人は互いに無言でジーッと見つめ合い、突然、ガシッと強く抱き合った。
美貴は病院からニコニコ顔で出てきた。
タカシの会社の近くの病院だった。
「ふふふ! タカシ、ビックリするかなぁ? メールしよっかな? 口頭で知らせよっかな?どうしよう、あ~ドキドキする! お義母さんに知らせると、絶対、先に言っちゃうしな~。どうしよ? う~ん、まずはお茶しよっと!」
気分がいい美貴は、お洒落なカフェを探した。
「あそこにしよっかな? あっちもいいなぁ...」
どのカフェにしようかとキョロキョロしていると、
「え..? タカシ?」
タカシと、いつか見た女の子が腕を組んで歩いているのが目に入った。
美貴は不安になり後を追った。
二人は電車に乗った。電車内でも女はタカシにベッタリで、タカシも嬉しそうな顔だった。
電車を降りた後、二人は女のマンションへ入っていった。
(ウソ.....)
美貴は足が動かなかった。立っているのが精一杯だった。
茫然と立ち尽くしたまま時間が経った。ゆっくりと、倒れないように歩き出した。
建物の間の暗い細道に入り、しゃがみ込むと、
「わあぁぁ~~~っ!!」
と大声で泣き出した。
喬は絶対こんなことをしないと信じていたのに!
家族を大切にしてくれると信じていたのに!
美貴は子供の頃を思い出した。
父親が、美貴の知らない女を家へ連れ込んでは母親に辛い思いをさせていた。母はヒステリーになり、美貴へ辛く当たった。とうとう母は家出し、その後、父は再婚したが、美貴はその再婚相手からさんざん嫌がらせを受けた挙げ句、施設に入れられた。父も母も病気で亡くなった後は、後妻や親戚から父や母の面倒を見てやったということでお金をしつこく要求された。
(誰も信用するもんか。お金だけが全てだ)
美貴はそう思って仕事を頑張っていた。タイムカードを定時で打刻し、サービス残業をしては夜遅くまで仕事を頑張るという日々を送っていた。
ある日、同じ会社で働いていた喬が美貴に話しかけた。
「杉森さんは、どうしてスカートをはかないの?」
笑顔の喬に美貴は冷たい表情を向けた。
「動きにくいからよ」
「あ~、確かに。杉森さんは動きが早いもんね。でも、スカート姿の杉森さんて似合うと思うな」
「いいの! 素敵な女性は目指してないから。仕事しやすい服が好きなの」
無愛想な美貴に他の男性社員は無愛想な態度をとったが、喬だけはいつも笑顔で話しかけてきた。
そんな喬に笑顔で話そうと思いながらも、意地っ張りな美貴はそれができないでいた。
ある日、喬がいつものように笑顔で美貴のそばに来た。
「明後日、語学交換交流会に参加するんだけど、よかったら杉森さんも一緒に行かない? 英語を勉強してるんでしょ? 海外から来た観光客とかと英会話できるよ」
商社の仕事は好きだが、英語が苦手な美貴だった。行くのは億劫だったが、笑顔の喬に応えたい気持ちが強かった。
「へぇ、なんかおもしろそう!」
美貴は喬のために自分を変えようと勇気が湧いた。
喬に誘われるまま参加した交流会で、美貴は喬とは別のテーブルに案内された。
(一緒じゃないんだ...残念...でも頑張らなきゃ!)
美貴は笑顔を作り、同じテーブルの日本人の中年の男に挨拶した。すると男はニヤッとし、
「おまえも外人の男とヤりたくてここへ来たんだろ? どこの国の男とヤりたいの? そんなに飢えてんなら、オレ、ホテルに行ってやってもいいぜ」
バカにする口調で言った。
突然の男の言葉に美貴は怒りで体が震え、すぐに声を出して言い返せなかった。
固まっている美貴に、男は尚も続けた。
「おまえみたいな女、全然タイプじゃないけどホテルに行ってやるんだから、ホテル代はおまえが出せよ。ちゃんとオレに土下座してお礼を言えよな。ほら行くぞ、来いよ!」
美貴は拳を握りしめた。
「あんたみたいなクソジジイ、ホント吐き気がするわ」
震える声で男に言い返した。
その後、美貴はすぐに立ち上がり、別のテーブルに移動した。何事もなかったように、海外からの観光客や日本人達と英語で会話をした。
すると、その中年男が移動先のテーブルに来て、美貴の話し相手の男性達に向かって、
「オイ、おまえら気をつけろよ。この女、すごい飢えてるから油断するとファックされるぞ!」
とニタニタ嘲笑しながら言った。
「いい加減なこと言わないでください!」
美貴は怒鳴った。
「なんだよ。オレが他の女と話したからって妬くなよ! オレの股間のマグナムがほしいんだろ。入れてやるよ。ほら、さっさとパンツ脱いで足開けよ。土下座したら入れてやるよ!」
笑いながら話す男に周りの参加者がドン引きすると、男は「なんちゃって」と舌をペロっと出しておちゃらけて見せた。
「ちょっとした痴話喧嘩だ。みんなゴメンな」
中年男はいかにも美貴とつきあっているような言い方をした。
怒りと悔しさで体を震わせてる美貴に、男はやさしく、
「来いよ。無理すんなよ。寂しいんだろ? 抱いてやるよ」
とささやいた。
美貴は男を睨みつけ、殴りかかろうとした、その時だった。喬がイスをその男の膝裏に蹴り当てたのだ。
「わわわっ!!」
男が急に倒れ、隣のテーブルに座っていた若い女にもたれた。
「きゃー!!」
女は悲鳴をあげ、中年男を強く押し退けた。
「何よもう! もたれかかんないでよ、このどスケベ!!」
女の大きな怒鳴り声が店内に響き渡った。
カフェのスタッフがかけつけると、喬は美貴の手を引っ張った。
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