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二人は店を出た。
喬は手を合わせて美貴に謝った。
「ごめん! ホントごめん! 嫌な思いをさせてしまって、ごめん!」
「別に本間君のせいじゃないし...」
美貴は中年男に腹が立ってムカムカしていたが、今まで何か悪いことが自分に起こっても、見てみぬフリをする人ばかりで、誰も助けてくれなかったので、喬の行動に感動し、すごく嬉しい気分になっていた。
「イヤ、オレが誘わなければこんな嫌な思いはしなかったはずだ。ごめん! あんなクソ野郎がいるとは思わなかった」
「いろんな人が集まるから、あんなヤツがいても不思議じゃないわ」
もう美貴の怒りは収まっていた。
「...この埋め合わせに、もんじゃ食べに行かない?」
「もんじゃ?」
「おふくろがもんじゃの店をやってるんだ」
「へ~、知らなかった! 海鮮もんじゃ食べたい!」
「っしゃ! 決まりだな!」
喬は笑った。
喬の嬉しそうな笑顔を美貴は今でもハッキリと覚えていた。
そして、母子家庭をガッツで切り盛りする喬の母に会い、美貴の、今までとは全く違う新しい人生が始まった。
誕生日プレゼントに喬がスカートを買ってくれた。早速デートの時にはいたら、
「ズボンもいいけど、スカートも似合うよ!」
と照れながら嬉しそうな顔の喬を見て、なぜだか自分がすごく大事にされてると実感し、嬉しくてたまらなかった。
「オレ、美貴の家族になりたい」
喬のプロポーズの言葉だった。
この人となら自分の家族を作っていける、家族になれる、そう信じて疑わなかった。
結婚式までの思い出が走馬灯のように頭を巡った。
喬はずっと家族を大切にしてくれると信じていたのに。
美貴はお腹を触った。
(私は両親みたいにはならないわ。お腹の子は私の子。一人でも育ててみせる!)
涙を拭いて、昔、喬の母が語ってくれた言葉を思い出した。
『辛い時は鏡を見て、とびっきりの笑顔の練習をするの。そうすると、脳が騙されて前向きな気分になるのよ』
美貴は顔を上げ、口角を上げた。
ふふふと笑った。
「大体、今のタカシは私の喬じゃないじゃん! 宇宙から研修に来ている別人じゃん? 悩む必要ないよね? やめたやめた! 泣くのやめた! 水分補給しなきゃ!」
美貴は寂しい気持ちに自分が浸らないよう、ショーウィンドウや道端の催し物をわざと見て、明るい気持ちを保ちながら家に帰ることにした。
タカシは夜12時過ぎに帰ってきた。
美貴は先にベッドに入っていたが、喬の母が起きて待っていた。
「喬、遅いじゃないの! 連絡もせずに。美貴ちゃん、具合が悪いってもう寝たわよ!」
「具合が悪い? どうしたの?」
タカシは心配して寝室へ行った。
タカシはベッドの横でひざまずき、眠っている美貴の顔をジッと見た。
美貴の手をそっと包むように触れた。
「美貴...」
「タカシ」
美貴はすぐに目を開けた。
「あっ、ごめん! 起こした?」
「ううん」
美貴は静かに微笑んだ。
「具合はどう? 大丈夫?」
「大丈夫よ。少し疲れただけ」
タカシが微笑むと美貴も微笑んだ。
「美貴」
「タカシ」
同時に互いの名前を呼んだ。タカシが笑いながら言った。
「美貴から話して」
「う~ん...今話そうと思ったんだけど、もう遅いから、明日、お義母さんがいないところで話したい」
「わかった」
「タカシの話はなに?」
美貴は笑顔を見せた。
タカシはちょっと照れくさい感じだった。
「実は...彼女がオレを迎えに来たんだ」
美貴から笑顔が消えた。
(ズバリ言いやがったな...この野郎...)
照れながらタカシは続けた。
「オレの彼女、覚えてる? 前に一度見せただろ? クルパピナンカニハミデタニクムリ。彼女が来てくれたんだ」
美貴はガバッと起きた。
「そっち!? 彼女って、そっちの?」
「そっち...?」
「宇宙人の、アメーバ星人のってこと」
「あっそうそう。そっちの。オレが地球にいることを見つけてくれたんだ。今、うちの会社の女の子の体に入っている」
(なるほど、そーゆーことか...)
美貴はさっき見た女の子のことを頭に浮かべた。
「帰る日が来たみたいだ」
タカシが笑顔で言うと美貴の表情が暗くなった。
「明日、母さんが病院へ行くから、その間に彼女をここへ連れてくるよ。美貴、オレの彼女に会ってくれる?」
美貴は一瞬返事に戸惑ったが、うんとうなずいた。悲しげな表情だった。
「そのあと、彼女の宇宙船でオレ達は星に帰るよ。そして、君の喬を君に返すよ」
タカシが微笑むと、美貴は悲しそうな目でジッとタカシを見つめた。
「タカシ...私、妊娠したの」
「マジで! やったぞ! 美貴!」
タカシは喜んで美貴を抱きしめた。
「正真正銘、喬の子だ! 喬も大喜びだよ!」
美貴は寂しい気持ちを抑えきれずタカシに抱きついた。
「タカシ、行かないで...もっとタカシといたい....」
タカシは美貴を強く抱きしめた。
「ありがとう、美貴。そう言ってくれてすごく嬉しいよ。オレ、美貴と出会えてよかった。この星を選んでよかった」
「私も...タカシと出会えてよかった。楽しかった。この日が来るとわかっていたけど、すごい寂しい.....」
「美貴のおかげでいろんなことを学べたよ。オレはこの星を過小評価していた。文明が遅れていても大事なのは心の在り方だよな」
美貴は涙をこぼした。
「行かないで....寂しいよ...」
「..美貴...また会いにくるよ」
「.......」
美貴とタカシはしばらくの間しっかりと抱き合ったままだった。
(やっと喬に会える...嬉しいけど、タカシと別れるのは辛いな.....寂しいな...)
美貴はずっと涙が止まらなかった。
次の日、朝早く喬は家を出た。
喬の母が病院へ出かけると、美貴はベランダでボーッとしながら外を眺めていた。
手のひらでキノコのキーホルダーをコロコロ転がした。
「ホントは途中で気付いてたんだ...コレが喬の宇宙船だって...でも、喬に帰ってほしくなかったから知らんぷりしてた.....ごめんね、タカシ...まさか彼女が迎えに来るなんて、さすが宇宙人...」
喬は手を合わせて美貴に謝った。
「ごめん! ホントごめん! 嫌な思いをさせてしまって、ごめん!」
「別に本間君のせいじゃないし...」
美貴は中年男に腹が立ってムカムカしていたが、今まで何か悪いことが自分に起こっても、見てみぬフリをする人ばかりで、誰も助けてくれなかったので、喬の行動に感動し、すごく嬉しい気分になっていた。
「イヤ、オレが誘わなければこんな嫌な思いはしなかったはずだ。ごめん! あんなクソ野郎がいるとは思わなかった」
「いろんな人が集まるから、あんなヤツがいても不思議じゃないわ」
もう美貴の怒りは収まっていた。
「...この埋め合わせに、もんじゃ食べに行かない?」
「もんじゃ?」
「おふくろがもんじゃの店をやってるんだ」
「へ~、知らなかった! 海鮮もんじゃ食べたい!」
「っしゃ! 決まりだな!」
喬は笑った。
喬の嬉しそうな笑顔を美貴は今でもハッキリと覚えていた。
そして、母子家庭をガッツで切り盛りする喬の母に会い、美貴の、今までとは全く違う新しい人生が始まった。
誕生日プレゼントに喬がスカートを買ってくれた。早速デートの時にはいたら、
「ズボンもいいけど、スカートも似合うよ!」
と照れながら嬉しそうな顔の喬を見て、なぜだか自分がすごく大事にされてると実感し、嬉しくてたまらなかった。
「オレ、美貴の家族になりたい」
喬のプロポーズの言葉だった。
この人となら自分の家族を作っていける、家族になれる、そう信じて疑わなかった。
結婚式までの思い出が走馬灯のように頭を巡った。
喬はずっと家族を大切にしてくれると信じていたのに。
美貴はお腹を触った。
(私は両親みたいにはならないわ。お腹の子は私の子。一人でも育ててみせる!)
涙を拭いて、昔、喬の母が語ってくれた言葉を思い出した。
『辛い時は鏡を見て、とびっきりの笑顔の練習をするの。そうすると、脳が騙されて前向きな気分になるのよ』
美貴は顔を上げ、口角を上げた。
ふふふと笑った。
「大体、今のタカシは私の喬じゃないじゃん! 宇宙から研修に来ている別人じゃん? 悩む必要ないよね? やめたやめた! 泣くのやめた! 水分補給しなきゃ!」
美貴は寂しい気持ちに自分が浸らないよう、ショーウィンドウや道端の催し物をわざと見て、明るい気持ちを保ちながら家に帰ることにした。
タカシは夜12時過ぎに帰ってきた。
美貴は先にベッドに入っていたが、喬の母が起きて待っていた。
「喬、遅いじゃないの! 連絡もせずに。美貴ちゃん、具合が悪いってもう寝たわよ!」
「具合が悪い? どうしたの?」
タカシは心配して寝室へ行った。
タカシはベッドの横でひざまずき、眠っている美貴の顔をジッと見た。
美貴の手をそっと包むように触れた。
「美貴...」
「タカシ」
美貴はすぐに目を開けた。
「あっ、ごめん! 起こした?」
「ううん」
美貴は静かに微笑んだ。
「具合はどう? 大丈夫?」
「大丈夫よ。少し疲れただけ」
タカシが微笑むと美貴も微笑んだ。
「美貴」
「タカシ」
同時に互いの名前を呼んだ。タカシが笑いながら言った。
「美貴から話して」
「う~ん...今話そうと思ったんだけど、もう遅いから、明日、お義母さんがいないところで話したい」
「わかった」
「タカシの話はなに?」
美貴は笑顔を見せた。
タカシはちょっと照れくさい感じだった。
「実は...彼女がオレを迎えに来たんだ」
美貴から笑顔が消えた。
(ズバリ言いやがったな...この野郎...)
照れながらタカシは続けた。
「オレの彼女、覚えてる? 前に一度見せただろ? クルパピナンカニハミデタニクムリ。彼女が来てくれたんだ」
美貴はガバッと起きた。
「そっち!? 彼女って、そっちの?」
「そっち...?」
「宇宙人の、アメーバ星人のってこと」
「あっそうそう。そっちの。オレが地球にいることを見つけてくれたんだ。今、うちの会社の女の子の体に入っている」
(なるほど、そーゆーことか...)
美貴はさっき見た女の子のことを頭に浮かべた。
「帰る日が来たみたいだ」
タカシが笑顔で言うと美貴の表情が暗くなった。
「明日、母さんが病院へ行くから、その間に彼女をここへ連れてくるよ。美貴、オレの彼女に会ってくれる?」
美貴は一瞬返事に戸惑ったが、うんとうなずいた。悲しげな表情だった。
「そのあと、彼女の宇宙船でオレ達は星に帰るよ。そして、君の喬を君に返すよ」
タカシが微笑むと、美貴は悲しそうな目でジッとタカシを見つめた。
「タカシ...私、妊娠したの」
「マジで! やったぞ! 美貴!」
タカシは喜んで美貴を抱きしめた。
「正真正銘、喬の子だ! 喬も大喜びだよ!」
美貴は寂しい気持ちを抑えきれずタカシに抱きついた。
「タカシ、行かないで...もっとタカシといたい....」
タカシは美貴を強く抱きしめた。
「ありがとう、美貴。そう言ってくれてすごく嬉しいよ。オレ、美貴と出会えてよかった。この星を選んでよかった」
「私も...タカシと出会えてよかった。楽しかった。この日が来るとわかっていたけど、すごい寂しい.....」
「美貴のおかげでいろんなことを学べたよ。オレはこの星を過小評価していた。文明が遅れていても大事なのは心の在り方だよな」
美貴は涙をこぼした。
「行かないで....寂しいよ...」
「..美貴...また会いにくるよ」
「.......」
美貴とタカシはしばらくの間しっかりと抱き合ったままだった。
(やっと喬に会える...嬉しいけど、タカシと別れるのは辛いな.....寂しいな...)
美貴はずっと涙が止まらなかった。
次の日、朝早く喬は家を出た。
喬の母が病院へ出かけると、美貴はベランダでボーッとしながら外を眺めていた。
手のひらでキノコのキーホルダーをコロコロ転がした。
「ホントは途中で気付いてたんだ...コレが喬の宇宙船だって...でも、喬に帰ってほしくなかったから知らんぷりしてた.....ごめんね、タカシ...まさか彼女が迎えに来るなんて、さすが宇宙人...」
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