出遅れ勇者の無双蹂躙~世界滅亡寸前からの逆襲~

友理潤

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第2章

コウヤの里の生き残り7

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メディーナは『ヘルファイア』を唱えてきた。
水晶の中では、里を焼き尽くした邪悪な炎の魔法だ。

「お前など焼け死んでしまぇ!!」

「ジェイ!危ない!逃げて!!」

真っ黒な炎が俺を包む。
そしてそれは他に燃え広がる事なく、火は俺に延焼を集中させていた。
さながらメディーナの怨念を示すかの様に、執拗に俺にまとわりついている。

「あはは!ああ、燃えていくぅ!素敵な光景だわ!」

「…この程度の魔力か…」

俺は心の底から残念そうにつぶやいた。炎にまかれながら…

「ああん!?もうすぐ貴様は灰になるんだよ!強がりも大概にしないと、かえってかっこ悪いわよぉ!」

「…ぬるいっ!」

ボンッ!

俺の声と共に、体の周りに風が巻き起こり、炎を一瞬にして消し飛ばした。

「な、なんなのよ!?あんたは…」

「…勇者だ」

メディーナの顔には恐怖が浮かび上がっている。
武器である鎌も、奇襲をかけた毒蛇も、そして渾身の魔法攻撃も…
全ての攻撃手段を防がれたのだ。
もう彼女になすすべは残っていない。
そこにあるのは『死』と言う敗北だけであった。

「…そろそろ仕上げだな」

俺はさらなる絶望へとメディーナをいざなうべく、一気に殺気を高めた。

「ひ、ひぃ!」

思わず彼女から恐怖にひきつった情けない声が発せられた。
その目はすっかり怯えている。

俺はひたりひたりと彼女に近付いていった。
まるで死刑執行人が死刑囚の独房に向かうように。

「来るな!こっちへ来るなぁ!!」

背中見せて一目散に逃げ出すメディーナ。
その姿はとてもこの里の人間を虐殺したとは思えない無様なものだった。

「…逃がすか、クズ野郎」

グンッ!

俺は彼女の背中を追いかけた。
まるで瞬間移動しているかの様なスピードで…

すぐにメディーナの横に並ぶ。
そして彼女の耳元でささやいた。

「…逃げても無駄だ」

ガッ!!

俺は彼女の顔を鷲掴みにする。

「!!?」

メディーナは何が起こったのか理解できていないようだ。

「…戻れ」

ブーン!!

俺は彼女を顔をつかんで持ち上げると、そのまま元の場所へと投げ飛ばした。

ドシーン!!

「ぐはぁっ!!…ガハッ!ガハッ!」

背中から落ちたメディーナは一瞬呼吸が止まり、咳き込んだ。

「くそ…こうなったら!」

呼吸を整え立ち上がった彼女は、
「冥界の神ハーデスよ!我の恨みを呪いとなりてかの者に刻め!『カーズエンチャント』!!」
と闇の上位魔法を唱えた。
この魔法は相手に呪いをかけて、条件が揃えば、その息の根を止めるというものだ。

メディーナはその魔法を…

ティナに向かって唱えた。

「がぁ~~~!!」

ティナは不気味な声を出して、苦しみ出した。
全身の血管は浮き出て、目は充血している。
ティナは完全に呪われた。

メディーナの顔が今度は小賢しい悪魔の様に歪む。

「あは!勇者!この女の呪いを解いてほしくば、大人しく私に殺されるがいい!」

「…醜い…」

「ああん!?この私に醜いだと!?」

「…姑息な手だ」

「ふん!強がりもそこまでよ!目の前でこの女が死に行く様をじっくりと拝めるか、私に土下座した上で己が死ぬか…
早くどちらかを選ぶのねぇ」

「…もう一つあるだろ…?選択肢」

俺がさらに殺気を高めて、ニタリと微笑んだ。

「…お前を殺す…という選択肢だ」


メディーナの顔が再び恐怖にひきつる。

「こ、この魔法は唱えた本人しか呪いが解けないのよ!」

「…だからどうした?」

「だ、だから私を殺したら…」

「…俺をなめるな」

「な、なにを!」

彼女の言葉を待たずして俺は魔法を唱える。

「全てを癒し、清める聖女よ!悪しき呪いを消しはらえ!『ディバイン・デスペル』」

「せ…聖女の魔法だと…まさかお前は…」

メディーナの驚愕の声を無視して、優しい光がティナを包む。
そして彼女の全身を包み込んだ時、
「祝福のキスを…」
と俺はティナに口づけした。

チュ…

「んん…ん…」

クチュ…クチュゥ…

ティナは全く必要ないのだが、積極的に舌を絡ませてくる。

包んでいた光がティナの中へ吸い込まれていく。

全ての光が彼女の中に収束し終えると、俺は彼女から離れた。

「…どうだ?」
とティナの体から呪いが解けたかうかがう。

そのティナは俺の魔法の効果で傷だらけだった顔もすっかり綺麗になり、恍惚とした表情で俺を見つめている。

「美味しかったわ。ごちそうさま」
と元気そうな彼女を見て、俺は安心した。

様子を食い入る様にして見ていたメディーナ。
目の前で起きた事に納得がいかないのか、錯乱状態で再び俺に問いかけた。

「貴様は聖女の手下なのか!!?」

俺はメディーナの方を向くと答えた。

「…その答えの対価は…」

ダッ!

目にも止まらぬ速度で、メディーナとの差を一気に詰める。

ガッ!!

「ぐあっ!!」

俺は彼女の首をつかんで持ち上げた。

「や、やめろ…」

足をばたつかせて最後の抵抗をするが、俺はさらにつかんだ手の力を強める。

メキッ…メキッ…

メディーナの首の骨がきしみだした。
彼女は涙を流して
「やめて…ください…お願いします…」
と懇願してきた。

「…答えを先にやろう」

「そんなの…いいから…放して…」

「…聖女は…」

ググッ…

「!!!??」

息が出来ずに言葉がなくなるメディーナ。そんな彼女を睨み付けたまま俺は答えた。

「…俺の師であり敵だ」

グシャッ!バキッ!

その瞬間…
メディーナの首と首の骨は同時に潰れた。

ドサッ…

恐怖と絶望を写した彼女の死に顔は、この世のものとは思えないほど、醜かった。

「…ぬるすぎる…」

と俺は彼女に対する正直な感想を吐き捨てて、この戦闘を終えた。

◇◇

戦いを終えた俺はティナに近づく。

「…お前の無念…果たせたか?」

俺の質問に顔を曇らせるティナ。
やはり復讐を果たす事で生まれる達成感では、心に刻まれた深い傷は癒せないのだ。
その事に気付いたティナの心情は複雑だったのだろう。

「…そうか…」

俺はそれ以上かける言葉を失い、その場を離れようとした。
ティナを一人にしてあげようと思ったのだ。

ガシ…

その俺を背後からしかっりと抱きしめるティナ。
サヤにはない大きく柔らかな感触が俺の背中に暖かく当たっている。

「私は…私は多くのかけがえのないものを失った…
でも…今…大切な人に出会えた…今はそれがすごく嬉しい…不謹慎かしら…はしたないかしら…」

「…そうは思わない」

「えへへ、ありがとう。あなたは優しくて強いのね」

そう言うとティナと俺は向き合う。
ティナは悪戯そうに舌を出して言った。

「ねぇ、ジェイ。まだ戦えるよね?」

「…当たり前だ」

彼女はまだ俺に復讐の戦いを挑む気なのだろうか?
しかしそれは俺の予想していたものと違っていた。

「じゃあ…いただきます」

チュ…クチュ…

濃厚なキス…
これがこれから始まる戦いの事か…
俺たちは口を絡めたまま、小屋の中へと消えていった。
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