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第三幕 伝言ふたつ
24.頑固すぎる二人
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みんなの視線が掃除機に吸い込まれるように私の顔へ集まった。これまでこちらを見ようともしなかったおじいさんまで、お化けでも見ているかのように凝視してくるものだから、オロオロと挙動不審になってしまいそうな心持ちになる。
でも八尋さんだけは優しい微笑みのまま、小さくうなずいてくれているじゃないか。「大丈夫。頑張れ」とダンディーな声が脳裏に直接響いてくるようで、もう一歩踏み込む勇気がムクムクとわいてきた。
私は美憂さんにフクを抱っこさせ、おじいさんの前の席に座らせると、おじいさんの方を向いて言った。
「お客様。もう時間がありません。何かお話ししたいことがあるなら今のうちです」
おじいさんがギョロリと猛禽類が獲物をとらえたかのような目で私を睨みつける。
口は堅く閉ざされたままで、「何も話すものか」と石のように固い意志がひしひしと伝わってきた。
だけどここで怖気づくわけにはいかない。私はおじいさんの手元にある本に目をやりながら問いかけた。
「奥様のこと……。後悔されているのではありませんか?」
この言葉がおじいさんの逆鱗に触れてしまったようだ。
「赤の他人のおまえに何が分かる!!」
声を荒げた彼は、ダンとテーブルを手で叩きつけた。
ビリビリと空気が張り詰め、他のお客様の視線もこちらに集まったが、
「申し訳ございません。大丈夫ですから、お気になさらないでください」
八尋さんが各テーブルを回って必死に注意をそらしてくれている。
今までどんなお客様に対しても「諦めるのを待つしかないんだ」と言っていた八尋さんが、どうしてここまでしてくれるのか、私にはまったく分からない。でも、だからこそ、おじいさんの抱えている『後悔』を解き放てねばならないという使命感が強まった。
一度、目をつむって考えを整理する。
私の賭けは「おじいさんは奥様のことで後悔しているのではないか」ということ。その結果は、おじいさんが感情的になったことで『当たり』であるのは間違いなさそうだ。となれば彼がここにきた理由は。
――天国にいる奥様にフクを通じて伝言を届けてもらいたい。
でしかない。
そのためにはフクにもおじいさんの話を聞く姿勢になってもらう必要があるが、彼も頑なにおじいさんに対して心を開こうとしていないのだ。
腰を落とした私は、フクと視線を合わせた。
「お願い、フクくん。おじいさまの話を聞いてあげてくれないかな?」
「嫌だね。こんなやつの話なんか聞いてやるもんか」
即答で拒否される始末……。
もうっ! 二人ともどれだけ頑固なのよ!
どうしたものかと首をひねる。
しかしその直後だった。意外なところから声が飛んできたのは――。
「ずいぶんな言い方じゃねえか。でもな。あんたもじいさんに言いたいことがあったから、こうしてここにやってきたんだろ? 本当に何もしゃべりたくなければ、姿を見せないまま黄泉に行けばよかったんだからよ」
そう。私に助け舟を出したのは、これまで沈黙を守り続けていたソラだったのである。
でも八尋さんだけは優しい微笑みのまま、小さくうなずいてくれているじゃないか。「大丈夫。頑張れ」とダンディーな声が脳裏に直接響いてくるようで、もう一歩踏み込む勇気がムクムクとわいてきた。
私は美憂さんにフクを抱っこさせ、おじいさんの前の席に座らせると、おじいさんの方を向いて言った。
「お客様。もう時間がありません。何かお話ししたいことがあるなら今のうちです」
おじいさんがギョロリと猛禽類が獲物をとらえたかのような目で私を睨みつける。
口は堅く閉ざされたままで、「何も話すものか」と石のように固い意志がひしひしと伝わってきた。
だけどここで怖気づくわけにはいかない。私はおじいさんの手元にある本に目をやりながら問いかけた。
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この言葉がおじいさんの逆鱗に触れてしまったようだ。
「赤の他人のおまえに何が分かる!!」
声を荒げた彼は、ダンとテーブルを手で叩きつけた。
ビリビリと空気が張り詰め、他のお客様の視線もこちらに集まったが、
「申し訳ございません。大丈夫ですから、お気になさらないでください」
八尋さんが各テーブルを回って必死に注意をそらしてくれている。
今までどんなお客様に対しても「諦めるのを待つしかないんだ」と言っていた八尋さんが、どうしてここまでしてくれるのか、私にはまったく分からない。でも、だからこそ、おじいさんの抱えている『後悔』を解き放てねばならないという使命感が強まった。
一度、目をつむって考えを整理する。
私の賭けは「おじいさんは奥様のことで後悔しているのではないか」ということ。その結果は、おじいさんが感情的になったことで『当たり』であるのは間違いなさそうだ。となれば彼がここにきた理由は。
――天国にいる奥様にフクを通じて伝言を届けてもらいたい。
でしかない。
そのためにはフクにもおじいさんの話を聞く姿勢になってもらう必要があるが、彼も頑なにおじいさんに対して心を開こうとしていないのだ。
腰を落とした私は、フクと視線を合わせた。
「お願い、フクくん。おじいさまの話を聞いてあげてくれないかな?」
「嫌だね。こんなやつの話なんか聞いてやるもんか」
即答で拒否される始末……。
もうっ! 二人ともどれだけ頑固なのよ!
どうしたものかと首をひねる。
しかしその直後だった。意外なところから声が飛んできたのは――。
「ずいぶんな言い方じゃねえか。でもな。あんたもじいさんに言いたいことがあったから、こうしてここにやってきたんだろ? 本当に何もしゃべりたくなければ、姿を見せないまま黄泉に行けばよかったんだからよ」
そう。私に助け舟を出したのは、これまで沈黙を守り続けていたソラだったのである。
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