英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第1話 パーティーのお荷物だからって酷すぎないか?

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【主人公:ピート】



「なあ、ニック。本当にこのままギルドへ帰るつもりか?」


 ダンジョンの第53層。
 一夜を過ごすために張ったテントの中から声が聞こえてきた。

「トラビス、まさか今さらギルドの許可なくここまできたことを恐れているのかい?」

「そんなんじゃねえよ!」

「だったらこの【レベルストーン】をギルドに提出すれば、晴れてSランクの仲間入りだ。しかも史上最年少での達成。先に進むのは次のアタックでいいだろ?」

「もうっ。ニックったら鈍いのね。トラビスが言ってるのはアレをどうするかってことでしょ」

「イライザの言う通りだぜ。ニックはリーダーのくせして鈍すぎる」

 剣と魔法の両方に優れ、今やギルドのホープとして名を知られたパーティーのリーダー、ニック。
 攻撃と回復の両方の魔法を使いこなし、見た者を惹きつける美貌も相まって、『戦うアイドル』として有名な魔術師、イライザ。
 エリート騎士団出身で、熊を素手で倒せるほどに剛腕の持ち主でありながら、【上級剣術】のスキルを持つ無双の剣士、トラビス。
 そんな3人に加え『アレ』扱いの俺、パーティーのお荷物テイマー、ピート。

 今年で20歳になる俺たち4人は、パーティーを組んでいる。
 Gからスタートした冒険者ランクも、今や上から2つ目のAだ。

 AランクからSランクへ昇格するにはダンジョンの第51層以降に到達せねばならない。
 そして特定の階層にたどり着いたことを証明するには、階層ごとに形や色の異なる【レベルストーン】と呼ばれるアイテムを入手する必要があり、今日、俺たち一行は第53層のレベルストーンを手に入れたのである。

「史上最年少でのSランク到達、という名誉に、アレが名を連ねるのはどうなのよ? ってことに決まってんだろうが!」


 今はモノ扱いをされている俺だって、彼らとパーティーを組んだばかりの頃は活躍していたんだ。
 
 ――レベル1でゴーレムを使役する天才テイマー!

 通常、テイマーが使役できるモンスターは、自身のレベルによって異なる。
 レベルが低いうちは、ゴブリンやスライムといった戦闘能力の低いモンスターしか使役できない。
 しかし俺は初めからゴーレムを使役できた。

 今でも俺にとってのかけがえのない相棒。サンと名付けた。

 サンは魔法こそ使えないものの、攻守に優れ、魔法への耐性も強い。
 人間で言えばレベル20くらいのステータスを誇る。

 そんなモンスターをレベル1から扱えたんだから、そりゃあ、ギルド内で話題にもなったさ。

 ――僕とパーティーを組んでみないか!

 冒険者登録を済ませたばかりにも関わらず、「100年に1人の逸材」と呼び声高かったニックから声をかけられた時は、ほんと有頂天だったな。

 ものごころついた時から両親はおらず、家族もいなかった俺にとって、誰かに頼られるというのは、すごく新鮮でこの上ない喜びだった。

 ――俺をピートと同じパーティーに加えてくれ! 絶対に役立ってみせるから!

 ――私もピートさんと一緒がいいなぁ! お願いっ! 仲間にして!

 トラビスとイライザから頭を下げられ、パーティーを結成した時は夢と希望に満ち溢れていたよ。
 だけど今思えば、冒険が始まる前が俺にとっての全盛期だったんだよな……。

 それでもしばらくは順調だった。
 なにせサンが前面に立って戦ってくれるんだからな。
 仲間たちはほぼ何もしないで経験値と報酬を手に入れ、次々とレベルアップしていったさ。
 もちろんギルドのランクも一気に駆け上がっていった。

 けど俺を見る目はBランクに認められた時から、ガラリと変わった。
 なぜなら俺はゴーレム以外を使役することができなかったからだ。
 
 Bランクで戦うモンスターのレベルは軽く30を超える。
 俺もレベル30に到達した。
 だが状況は変わらず。
 相棒はサンより他はいなかった。
 
 こうして俺は『パーティー期待の星』から『パーティーのお荷物』に見事に転落したってわけだ。

 ――おい、ジェレミー。あれ見ろよ。あいつまだニックたちと一緒にいやがるぜ。

 ――なんだ、マット? ああ、ピートね。まったくニックも面倒見いいよなぁ。あんな役立たずをAランクになってからも飼ってあげてるんだから。

 ――ははは! ほんとだな! イライザとトラビスも可哀そうだ!
 
 ギルドに戻るたびに周囲から馬鹿にされ、ダンジョンに入れば炊事、洗濯、斥候、罠の解除など、あらゆる雑用を押しつけられている。

 今もこうして、仲間たちが温かいテントで過ごしている間、俺とサンは見張り番を言いつけられ、冷たい空気の中で一夜を過ごさねばならないのだ。

 当然文句を言える立場でないのは分かってるけど……。

「待ってくれ。君たちは彼のことをどうしようって言うんだ?」

「そんなのはリーダーのあんたが考えることだろ。とにかく俺はアレが俺たちと同じ名誉を受けるのはぜってぇに許さねえからな」

「私もよ。横に並ぶだけで虫唾が走るんだから」

「そこまで言わなくても……」

「おいおい、待てよ。雑用しか能のないクズと俺たちが同じ扱いでも文句ないって言うつもりか?」

「そうとは言ってないつもりだが……」

「あはっ。やっぱりニックもアレの働きには納得いってないんじゃん」

「とにかくだ。おまえが何もしないつもりなら、俺にだって考えがあるからな」

「あはは。トラビスは狂犬だからね。何をするか知らないよぉ」

「……ああ、分かった。考えておくよ」


 そこで会話が途切れ、テントの中の灯りが消えた。

 悪いことをしているわけでも、さぼっているわけでもない。
 これでも一生懸命パーティーに貢献しているつもりだ。
 雑用は昼夜を問わずこなし続けている。
 それなのになぜか、耐えがたい罪悪感が胸をしめつける。

「グゥ……」

 心配そうな目をしたサンがそっと俺の肩に毛布をかけてきた。

「ありがとな」

 俺はサンの大きな手をポンとたたき、冷たい岩の上で横になった。

 今はあれこれ考えても仕方ない。
 なるようにしかならないから。
 明日はきっといい日になるさ。

 ……けど、そんなちっぽけな願いすら叶わないことになるんだよな。
 いや、大逆転の人生がはじまるって意味で言えば「明日はいい日」なのかもしれない。


 まあ、とにかく明日はとんでもない一日になるってわけで――。

 
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