英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第9話 【閑話】ニックへざまぁをするまで②

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「万能の女神よ! 傷つく者に最上の癒しを! エクセレントヒール!!」

 イライザが最上級の回復魔法を唱える。

「早く! 早く治してくれよぉぉ!! うがああああ!!」
「ちょっと! 暴れないでよ! 切り離された腕をくっつけるなんてやったことないんだから!」

 トラビスのことは彼女に任せておくしかなさそうだ。
 だったら僕がすべきことは一つ。
 僕は腰に差した剣を抜いた。

「ほう。小僧、余に逆らうと言うのか」

 絶望の魔王アゼルオン……。
 伝説の名を知らないわけがない。
 でも彼は本当にアゼルオンなのか?
 そもそもトラビスがケガをしたのは彼が油断していたからだけかもしれない。

「何事もやってみなければ分からない、というのが信条でね」
「くくっ。気に入ったぞ、小僧。ならかかってこい」
「では遠慮なく! 食らえっ! 【ホーリー・スラッシュ】!!」

 ホーリー・スラッシュはとっておきの剣技。
 Sランクの剣士でもめったに使いこなせないレアな技だ。
 だがアゼルオンと名乗った男は、素手で剣を払った。

 ――カンッ!

 高い音が響くとともに、剣が大きく弾かれる。
 同時にがら空きになった僕のみぞおちに、男の右こぶしが深々と突き刺さった。

 ――ドゴンッ!

「ぐはっ!!」

 目の前が一瞬真っ白になる。
 危うく意識が飛びかけた。

「うぐっ……」

 両膝をつき、うずくまることしかできない。
 その頭に男は足を置いた。

「勇敢と無謀の違いを学ぶことができたかね?」

 ダメだ……。
 実力が違い過ぎる……。
 もう疑いようがない。
 彼は伝説の魔王だ……。

「余は寛容でな。貴様たちのような身の程知らずでも、あるものを捧げれば助けてやろうと考えておる」

 アゼルオンが僕の頭から足を離す。
 僕はとっさに後ずさり、イライザたちとひとかたまりになった。

「このダンジョンのどこかに余を封印する石があったはず。その石を何者かが持ち出したから余は復活できたのだ」

 まさか第53層のレベルストーンか……?

「くくっ。その様子だと何か心当たりがあるな。その石がなければ人間は余を封じることはできぬ」
「つまりその石を渡せば命を助けてやる、と言いたいのか?」
「くくくっ。それだけではない。褒美として、生きたまま我が眷属としてやろう。ゆくゆくは世界の半分をくれてやってもよい。もちろん働き次第ではあるがな」

 どうするべきか、考えるまでもない。
 僕は立ち上がって雄たけびをあげた。

「ふざけるな!! 人間を苦しめる魔王の手下に喜んでなろうって裏切者は、誇り高き冒険者にはいない!!」

 僕は背後を振り返った。

「みんな! 僕たちの実力を見せてやるんだ!!」

 腕が治ったトラビスが俺の横に並ぶ。

「おうっ! やってやんよ!!」

 イライザもまた一歩離れたところから吠えた。

「私たち3人が相手よ!! 覚悟しなさい!」

 しかしアルゼオンは怯むどころか、むしろ心の底から楽しむように口角を上げた。

「ニックとやら。貴様、実にいい目をしている。ますます気に入ったぞ。他の2人は……殺す価値もないクズだ」
「てめえええええええ!!」

 怒り狂ったトラビスが剣を構えて飛び出していく。

「絶対に許さない!!」

 イライザも彼に続こうと一歩踏み出す。
 だが僕は彼女の肩をつかみ、耳元でささやいた。

「ダンジョンエスケープを使え」
「えっ?」
「使えるんだろ?」
「いや……、うん。でも私の魔力では2人までしか効果がないのよ」
「それでいい。ここを出るのは僕と君だから」
「本気で言ってるの? トラビスはどうするつもりなの?」

 イライザが大きく目を見張る。
 だが僕はもう決めていた――。

「彼は囮だ」

 アルゼオンに散々いたぶられ、泣き叫ぶトラビスをそのままにして、僕とイライザはダンジョンから脱出した。
 生きるためには仕方ない選択だったんだ。
 ピートやトラビスよりも、僕が生き延びた方がこの世界のためには何倍もいいに決まってるからね。
 ただでさえアルゼオンに多くの優秀な冒険者が殺されてしまったのだ。
 ギルドの人々はきっと僕たちの生還を涙を流して喜んでくれるだろう。
 だがそんな甘い予想は見事に外れた。
 ギルドに戻った僕たちを待ち構えていたのは、ギルド長のダニエルと数人の屈強な王国兵たちだった。

「ニック・ヘニングとイライザ・アロエだな。君たちには魔王アルゼオンを復活させた疑いがかかっている。容疑が晴れるまでは冒険者資格をはく奪し、王国軍の監視下に置かせてもらおう」
 
 そう……。
 僕の絶望はまだ始まったばかりだったのだ。
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