英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第27話 【閑話】ニックにざまぁするまで⑤

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 こうして僕は魔王の奴隷となった。
 けど後悔なんかしてない。
 アルゼオンは前にこう言ってたからね。

 ――ゆくゆくは世界の半分をくれてやってもよい。もちろん働き次第ではあるがな。

 どうせギルドでSランクになろうとも、しょせんは狭い世界でいい気になるだけ。
 だったら魔王のもとで功績をあげ、世界の半分を我が手に納めてみせよう。
 それくらいスケールの大きい方が、僕にはふさわしいからね。
 しかしアルゼオンの唇はカサカサだった。
 僕のプルプルの唇が傷ついていないか心配だよ。

「よし、我が子ニックよ。さっそく貴様に一つ頼みたいことがある」
「ふふ。ご主人様、何なりと」
「このダンジョンの先にある『鎖の封印』を解け。さすれば我はさらなる自由を得る」
「お安い御用です。……が、僕からも一ついいですか?」
「なんだ?」
「僕を誰にも負けないくらい強くしてほしい」
「ククク。よかろう。ほれ、こっちへこい」

 アルゼオンはしわだらけの唇を僕の唇に重ねた。
 じじいとキスか……。まあ、これも僕が強くなるためなら我慢だ。
 
 ――ドンッ!

 何かがはじける音がしたかと思うと、全身に力がみなぎってきた。

「おおおおおお!!」

 らしくもない喜びと驚きの入り混じった声が漏れる。
 ステータスを確認したところ、レベルは226。これまでコツコツやってようやく50に到達したばかりというのに、単なるキスで4倍になるんだからね。
 やはり僕は間違っていなかった。
 アルゼオンの奴隷になれたのは幸運だったということだ。
 しかも腕力、魔力、防御、スピード、全ての能力が700を超えている。
 間違いない。今の僕はあらゆる人間よりも強い。

「どうだ?」
「素晴らしいです! さすが我がご主人様! ……が、もう一つよろしいでしょうか?」
「くくく。強欲なやつめ。だが嫌いではないぞ。望みを言え」
「犬がほしいんです。僕にも犬が」

 僕はヒューヒューと息をするのがやっとのトラビスに視線をやった。

「くくく。とことん非道な男よのう。だがさっきも言った通り、嫌いではない。むしろこんなにニンゲンを好きになったのは何百年ぶりのことで興奮すら覚えておる。よかろう。お主を死霊使いネクロマンサーにしてやろうではないか」
「ネクロマンサー……」
「その名の通り、死した者を眷属にできる力のことだ」
「フフフ。素晴らしい!」
「くくく。もしかしたら貴様も余と同じスキルを身につけられるかもしれぬ」

 魔王アルゼオンと同じスキル……考えただけでゾクゾクする。
 ついに僕にも明るい未来が開けてきたな!

「では、教えてくれ。僕はどうやったら死者たちを犬にできるんだい?」
「とどめじゃよ。その手で相手を殺す。たったそれだけのことだ」

 アルゼオンはニタリと笑ってトラビスを見た。

「や……やめろ……」

 命の危機をさとってか、トラビスが懸命に声を振り絞る。

「くくく。ちょうどいい試験だ。貴様にかつての仲間にとどめをさすだけの度胸があるかな?」

 アルゼオンは「難しいだろう」と言わんばかりにそう問いかけてきた。
 そうだよな。
 トラビスは僕の大切な仲間。
 僕がさらなる高みに到達するには不可欠な存在。
 だから僕は……。

「悪く思うな。これもさだめだ」

 トラビスの心臓に剣を突き立てた。
 何の躊躇もなくね。
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