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第46話 会心の一撃×2発
しおりを挟む「ガウッ!!」
ブラック・ファングが襲いかかってきた。
今「ガウッ」って言ったよな?
モンスタートークが通じないってことは、やっぱりモンスターじゃないのかな。
――ひょいっ。
ブラック・ファングの突進をあっさりかわす。
確かに普通の人間にしたらかなり速いよ。目に見えないくらいに。
でも今の俺には大したことない。
「ガウガウッ!!」
うん、やっぱり何言ってるか分からんな。
けど「てめえ、これならどうだ!」って叫んでるのは何となく分かる。
だって今度は牙ではなくて、爪で引っかいてきてるし。
――タンッ!
俺は軽く地面を蹴って、ふわりと宙を舞う。
爪の攻撃が空振りに終わったブラック・ファングはわずかに態勢を崩した。
そこを見逃すはずもない。
「ほっ!」
落下しながら肘鉄をブラック・ファングの背中に落とした。
――ガツンッ!
骨まで肘がめり込む。
手ごたえ抜群!
「キャウンッ!」
ブラック・ファングの顔がわずかに歪んだ。
だがそれもつかの間、鋭い牙とツメで息もつかせぬ連続攻撃をしかけてきた。
まあ、こっちもほんのあいさつ代わりのつもりだったからな。
相手が前のめりになって反撃してくるのは想定内だ。
俺は上半身の動きだけでそれらを綺麗にかわす。
「ガアアアッ!」
今度は同時攻撃ね。なかなか器用なもんだな。
ステップで横に回避し、ちょっとだけ距離ができる。
「牙もツメも届かないぞ。次はどうするつもりだ?」
そう問いかけた直後、ブラック・ファングの目が光った。
「魔法か」
「ガアアアアア!!」
大きく開けられた口から黒い閃光が一直線に俺へ向かって伸びてくる。
闇属性だろうか?
まあ、なんだって関係ないけどなっ!
「ピートさん!!」
「危ない!!」
サンとサマンサばあちゃんが叫ぶ。
だが心配無用。相手から感じる魔力は俺の2分の1にも満たないからな。
――バシィィィ!!
片手で横に払うと、閃光は向きを変えて青空の向こうへ消えていく。
手の甲がちょっと赤くなったけど、まったく問題なしだ。
「グゥゥ……」
お、さすがに顔色が変わってきたぞ。
まだまだこんなもんじゃないだろ?
ニタリと口角を上げ、くいっと手招きをする。
「ガウッ!!」
挑発に乗って怒り狂うブラック・ファング。
やぶれかぶれの突進か。
もう打つ手なしってところだな。
だったら次はこっちの番だぜ!
「うりゃああああ!!」
大きく左足を踏み込み、態勢を低くする。
地面すれすれから繰り出された右の拳は、ブラック・ファングのあごに吸い込まれていった。
――ドゴォォォォン!!
カウンターアッパーの炸裂!
「ガフッ!!」
突進の力とアッパーの力が合わさって、凄まじい威力になっているはず。
ブラック・ファングは大きくのけぞりながら宙を舞った。
目の光が弱くなり、顔は恐怖に歪んでいる。
だが俺はさらに足を踏み込んだ。
「まだまだぁぁ!!」
サマンサばあちゃんの味わった絶望に比べたら、この程度で終わらせるわけがないだろ。
がら空きの腹目がけて左拳を振り下ろす。
――ボゴッッ!!
鈍い音ともに拳が腹の一番柔らかい部分にめり込んだ。
「うりゃああああ!!」
全力で拳を振り抜く。
「ガアアアア!!」
――ドォォォン!!
目がむき出しのまま、地面にたたきつけられたブラック・ファング。
ぴくぴくと2、3度痙攣した後、ピクリとも動かなくなった。
ダンジョンの中からじゃないからなのか、例の無機質な女性の声が聞こえてこないが、2発とも会心の一撃であったことは確かだ。
さすがにもう立てまい。
そう思ってサンとサマンサばあちゃんの方に振りむく。
だがサンの様子がおかしい。
口を半開きにして、わなわな震えている。
「ピートさん……。あれ……」
彼女が指さした方を見る。
ブラック・ファングは横たわったまま。
しかし問題はそこじゃない。
そのすぐ上、つまり空中……。
なんと黒い影のようなものがふわふわと浮かんでいたかと思うと、人間のシルエットに形を変えたのである。
俺の目も大きく見開かれた。
「なんだ……?」
「ククク。面白い。まさか【ウルバリルが倒されたらシナリオ】が発動する時がくるとはのう」
なんとしゃべりやがった。
しかも「シナリオ」って言ったよな、今?
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