英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第59話 初めての対決の終わり

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「ということだ。だから帰ってくれ」
「おい、待て! 何がどうなって、『ということ』なんだい? 僕にはサッパリ分からない。こっち来てちゃんと説明してくれ。なんだったら僕がそっちへ行ってもいい」
「だから空気を読んで早く立ち去れ、ってことだよ」
「んなっ……! ピートのくせに生意気な口を叩くな!!」

 こっちに言わせればクソニックのくせに、だ。
 ああ、もうめんどくさいな。
 橋げた戻さないとこっち側に渡ることすらできないって言うんだぜ?
 だったら渡らずに帰ればいいのに、「いつから君はそんなに冷たい男になったんだい?」だとさ。

「まあ、そうカッカするな。冷静にいこうぜ。冷静に」
「僕はいたって冷静さ。君の方こそ冷静に考えれば分かるだろう? 僕はそっちに行けなくて困ってる。だからその橋を早く元に戻してほしい」
「橋を戻したら帰ってくれるのか?」
「それは約束できないね。だって……おい、ちょっと待て! なんでそこで立ち去ろうとする? 君には血が通っていないのか?」

 おまえに言われたくない。
 ブーメランって言葉を知ってるのか?
 こいつは。
 あ、今度鉄製のブーメラン作って拠点を守る武器にしてみようかな。

 ……って、今は目の前にいるうっとうしいヤツの対処が先決だよな。

「ピートさん、大丈夫ですか?」
「あっ! あいつ! まだいたー!!」
「……倒す」
「ピピがやるぅー!」

 ほら、みんな集まってきちゃった。
 こうなると余計にめんどくさいことになるぞ。

「とりあえず今日のところは帰ってもらうことにする。クソ野郎とはいえ元仲間だからな。モンスターを相手するように、本気で殴り合うのは気が引けるんだよ」

 仕方ない……。確か【飛翔】のスキルはMPの消費が0だったはずだ。
 あいつがこっちにきたら何をしでかすか分からないから、俺から出向いてやるとするか。

「今からそっち行くから、ちょっと待ってろ」

 俺は心配そうに見つめるサンの頭を優しくなでてから、ふわりと浮き上がった。
 外堀を越え、向こう岸に降り立つ――。
 ……と、次の瞬間。

「ホーリースラッシュ!!」

 ニックが俺に向かって剣を一閃させた。
 無防備かつ敵意のない相手に、自分の必殺技を繰り出してくるなんて……。
 ニックらしいというか。
 鬼畜の所業というか……。

 いずれにしても魔王の手下が『聖なるホーリー』と名の付く光属性のスキルを使うのは、ちょっと違うと思うぞ。

 ――パシッ。

 俺は人差し指と中指で彼の剣を挟んで止めた。
 あぜんとしたニックはすぐに表情を険しくして叫んだ。

「くっ……! 卑怯じゃないか!!」
「どの口が言うんだ? それに俺はまだ何もしてないだろ」
「いや、君は卑怯だ!! そんな力を持っているのに、僕たちの前では無能の振りをしていたんだからね! もし君が今の力を存分に発揮していたら、今ごろ僕たちは……」
「僕たちは?」
「…………」
「まさか最年少でSランクに昇格して、周囲から賞賛されていた、とでも言いたいのか?」

 ニックは口をわなわなと震わせたまま黙ってしまった。
 きっと彼も分かってるはずなんだ。
 全部、自分のせいだってことにな。
 だから何も言えなくなってしまったのだろう。
 でも今ここではっきりと思い知らせねば、彼に何を言っても通じない。

「忘れるなよ。おまえが俺の制止を振り切って第51層に足を踏み入れた。おまえが俺の注意を無視しして魔王アルゼオンの封印を解いた――もし俺が今の力をあの時発揮していたとしても、おまえの望むような未来は手に入らなかった。魔王は復活していたし、おまえは愚かにも彼の手下になっていただろうよ。トラビスやイライザの悲惨な末路だって同じことだ」

 そうさ。もし俺がずっと前に【モンスター・オートメーション】のスキルを身につけていたとしても、何一つ状況は変わらなかったはず。

 史上最年少でSランク昇格、なんてちっぽけな名誉にとらわれていた仲間たちと行動をともにしていた限りね。

「全部僕のせいだって言うつもりか……? トラビスが死んだのも、イライザが落ちぶれたのも。全部が全部、僕に責任があるとでも言いたいのか!」
「いや、そうは言わない。むしろ招いた結果の責任は全部自分自身にある、と思ってるよ。今、こうしてかつての仲間と敵味方に分かれているのもな」

 もしあの時……。

 ――ピート、やめとけ。あのニックという男はどうも胡散臭い。おまえがパーティーを組むのにはふさわしくない相手だぞ。

 ダニエルのおっさんの言うことを聞いていれば、俺はダンジョンの中で引きこもっていなかったに違いない。
 どこかにいる誰かとともに、楽しくダンジョンの探索をしていただろう。
 だから今の状況はすべて俺の意志で作り出したもの。
 それを認めない限りは先には進めないからな。
 
「でもさ。たとえどんなに状況が悪くても、あきらめなければ道は開けるって、サンが教えてくれたんだ」

 俺はちらっと向こう岸にいるサンを見た。
 こっちの声は届いていないのだろう。
 心配そうに俺を見つめている。
 俺は彼女に心の中で「ありがとう」と言ってからニックに向き直った。

「モンスターハウスでおまえたちに放置された時、サンは俺を守ることをあきらめなかった。だから俺は今、仲間になってくれたモンスターたちと楽しく暮らせている」
「ふーん、だから何だって言うんだい? そんなの僕には何の関係もないだろ?」
「ああ、関係ないな。関係ないけど、これだけは言わせてくれ。ニック」
「……イヤだ、と言っても口を開くつもりなんだろ?」

 ああ、その通りだ。
 だって俺はまだあきらめきれないんだ。
 かつての仲間のことをな――。

「あきらめんな。たとえどんな絶望的な状況でもな」
「あきらめる? 僕が?」
「ああ。そうだ。魔王アルゼオンの手下になってどうしようもなくなったんだろ? そこから抜け出そうとあきらめずに頑張るか、楽な方に流されてさらに落ちていくか。ニック。おまえの責任で選ぶんだ」

 ニックは口を半開きにして俺を凝視している。
 俺はその視線から逃げずに、ぐっと彼を見つめ返した。
 すると彼の方から目をそらしたのだった。

「ピートのくせに、偉そうな口を聞くなよ」
「そう思ってるうちは何も変わらないぞ」

 ニックはくるりと背を向けた。
 もうこれ以上は聞きたくない、ということだろう。

「僕に逆らったこと。後悔するなよ。それもピート、君自身の責任だからね」

 最後の最後まで小物っぷりを遺憾なく発揮しながら、ニックは立ち去っていった。
 
 もう二度とくるな、とはあえて言わなかったよ。
 どうせ次きた時も撃退するだけだしな。
 奇襲にそなえて監視の人数だけは増やしておこう。
 
 こうして俺とニックの初めての対決は、俺の圧勝に終わった。
 次に彼と顔を合わせるのは1年以上も先になるのだが……。

 それはまた別の話だ――。
 

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