英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第71話 お礼に今夜は『ご奉仕』させていただきますわ!

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◇◇

 ソフィはエアリスたちのことをすぐに解放してくれた。

「私、知ってますの。こういうのって『本命』と『愛人』って言うのでしょう? ふふ。もちろん私が『本命』ですわ!」

 どこからそういう言葉を仕入れたのやら……。
 いちいち否定すれば余計に怪しくなるので、さらりと話題を変える。

「なあ、こいつらも仲間にさせてもらっていいか?」

 こいつら、というのは鎧のモンスターのこと。『セインツ・ナイト』というらしい。

「ええ、もちろん。私のものはすべてピート様のものですもの」
「そうか。ありがとう。なら遠慮なく仲間にさせてもらうよ」

 ということで、セインツ・ナイトたちも仲間に加わえさせてもらえたよ。
 俺たちはセインツ・ナイトを教会に残し、ソフィを連れて拠点に戻ったのだった。

◇◇

 みんなにソフィのことを紹介した後、早速彼女の部屋を作ることにした。
 つい最近まで1000個も部屋を作ったからな。
 1個作るくらいは、どうってことない。
 しかし俺たちのことを知らないソフィにしてみれば、驚きだったようだ。
 部屋に入ったとたんに、くるくると回って喜びを爆発させた。

「ふわぁ! すごいですわ!! ここが私とピート様の『愛の巣』ってことですのね!」

 ソフィの発言はいつもちょっとズレていてドキドキ……というよりハラハラしてしまう。

「というより、ソフィが一人で使っていい部屋だ。基本的には【オートテイム】にしておくから、行動も全部自由にしていいぞ。あ、ただし第53層を出る時だけは俺に声をかけてほしい。いいね」

「ふふ。安心してください。愛する人の近くにいるのが私にとっての一番の幸せですの。だからここを離れるつもりはありませんわ」

「そうか。ならよかった」

「ピート様にはとても感謝しております。お礼に今夜は『ご奉仕』させていただきますわ!」

 待て待て、その発言は爆弾すぎる。
 きっと意味もよく分かってないだろうし。
 俺は話題を変えた。

「ご奉仕はいいから、教えてほしいことがあるんだ」

「ふふ。聞かなくても分かってますわ。私がなぜ第99層の教会の中にいたのか、ってことでしょう?」

「え? あ、ああ。その通りだ。教えてくれるか?」

 ソフィはベッドに腰をかけて、隣をポンポンと叩いた。
 ここに座って、ということだろう。
 言われた通りに座る。
 すると彼女はいきなりぎゅっと手を握ってきた。

「今から言うことはくれぐれもご内密に。いいですね?」

 顔をグイッと近づけたソフィはじーっと俺を見つめてくる。
 ドキッと胸が高鳴ったが、目の前にはサンもいるしな。
 と、とにかく平然とした態度を貫かなくては!

「ああ、分かった。だから手を離してくれないか?」

「ふふ。別に私はこのままでもいいのですけど」

 ソフィがちらっとサンに視線をやる。
 サンは冷たい目でその視線を受け止めた。

 ちょっとした沈黙が流れる――。

 おいおい、なんだ?
 この一触即発の空気は……。

「仕方ないですわね」と言って、俺からちょっと離れたソフィは声の調子を落として、第99層にいた理由を語りだした。

「私、マリウス様に言いつけられてましたの。運命の人と出会うまで、教会の奥にある『究極進化の封印』を守るように、と――」

 それは俺たちの未来を変えるような内容だった。
 『究極進化の封印』とはその名の通りで、その封印を解いたモンスターは、進化レベルを『究極』にすることができるらしい。
 
「でも誰でも究極進化できるとは限りませんの」

「どういうことだ?」

「ふふ。まずは進化レベルが『3』であること。それから封印を解く前に『試練』がありますの。その『試練』をクリアしたモンスターのみ、究極進化を遂げることができるのですよ」

「どんな試練なんだ?」

「さあ……。モンスターによって違うとマリウス様はおっしゃってましたわ。私の場合は……ふふ。ご主人様への『ご奉仕』の仕方を問われましたわ」

 意味ありげに口角を上げるソフィ。
 ごくりと唾を飲みこんだ俺を見て、サンがぷくりと頬を膨らませる。
 俺は「ごほん」と咳払いをして先を促した。

「なるほど。分かった。ところで、ソフィが封印を守っていたのは、運命の人……つまりマリウスと同じスキルを持った人が現れるまででよかったのか?」

「ええ。だってピート様にとってあの封印が必要になることをマリウス様はご存じだったのですもの」

「それはいったい……」

 そう言いかけた次の瞬間だった。
 
 ――ドタドタドタッ!

 慌ただしい足音が聞こえてきたかと思うと、勢いよくドアが開けられた。
 第52層の偵察隊を指揮していたグリンだ。
 彼は血相を変えて告げてきたのだった。

「ご主人! ヤバいことが起こりましたぞ!」

「どうした?」

 俺が問いかけたと同時に今度はピピが風のように部屋に飛んできた。

「ピート! たいへん! ガルーがおそってきたー!!」

「ガルー? いったいなんのことだ?」

「かつて私たちと一緒にマリウス様に仕えていたドラゴンですわ」

 マリウスが従えていたドラゴンと言えば……。

「エンシェント・ブラックドラゴン」

 グリン、ピピ、ソフィが一斉にうなずいた。
 まずい。これは本当にヤバいことが起こっちまったな――。

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