70 / 88
第70話 俺はソフィのことを大切にすると約束する!
しおりを挟むソフィと名乗る聖女(自称)に結婚を申し込まれた俺。
ちょっとだけドキドキしちゃったのは否めないよ。
だって女の子の方から言い寄られた経験なんて今まで一度だってなかったんだから。
けど本気で結婚なんてするつもりは当然ない。
「悪いがそれはできない」
「どうして?」
「だって俺はあんたのことを知らない。あんたは俺のことを知っているのか?」
「ふふ。そう言われればまだお名前をうかがってませんでしたわね」
そう無邪気に問いかけてくるソフィ。
白い頬に小さなほくろ。艶やかな黒髪に長いまつげ。はっきりした目鼻立ちにふっくらした唇。
こうして目の前にしてみると邪気のようなものはまったく感じず、むしろ昔からの知り合いのような心地よさすら感じるのは気のせいだろうか。
「ああ、ごめん。俺はピートだ」
「ふふ。これで私たち立派な知り合いですわ。さあ、愛の契約をしましょう!」
「でも……」
反論しようとした俺の唇をソフィは人差し指で抑えた。
「これから互いのことを知っていけばいいと思いません?」
ドキンと胸が高鳴った。
顔がかっと熱くなる――。
このままソフィの言う通りに『結婚』してしまってもいい気がしてきた。
……が、ふと目に入ったサンの悲しげな顔で我に返った。
「いやいや。お、お、俺には……」
「ふふ。別に大切な方がいらしても関係ないですわ。私たちの間に愛があれば」
ソフィがちらっとサンを見た。
も、も、もしかしてサンのことを俺の『大切な人』って勘違いしてるのか?
いや、確かに彼女は大切な人だけど、そうじゃないって言うか……。
そもそもサンは『人』じゃないしだな。
「……ん? 待てよ。もしかして……!」
俺は急いでステータス画面を開いた。
「どうかされたのですか?」
きょとんとしたソフィのステータスを確認する。
そして映し出された表示を見て、思わず笑みがこぼれた。
「あはは! やっぱりそうか!」
「い、いきなりどうしちゃったのですか?」
ソフィの両肩をつかんだ俺は、力強い口調で告げた。
「俺はソフィのことを大切にすると約束する! だから契約してくれないか?」
彼女は大きな瞳をさらに大きくしてポカンとしていたが、すぐに嬉しそうな眩しい笑顔になった。
「ええ! もちろんですわ!」
サンたちが不可解そうな視線を俺に向けている。
でもこれでいい。
俺はそう確信していた。
◇◇
そもそもダンジョンの第99層に、いくら『無敵の聖女』(自称)だとしても、女の子一人で暮らしている、なんて考えられないと思わないか?
たとえ教会が安全だとしても、水や食糧は確保できるとは思えない。
それに複数のモンスターを従えているのも不思議だった。
……となると考えられるのは一つしかない。
ソフィ自身がモンスターであること――。
ピピと同じように人間に変化できるスキルが使えるのだろう。
そこで俺は彼女のステータスを確認したわけだ。
結果は予想通りだった。
---------------
名前:ソフィ
種族:堕天使
進化レベル:究極(聖女)
レベル:500
HP:35780
MP:157650
腕力:1200
防御力:1100
魔力:6785
スピード:1100
スキル:
リザレク、デバイン・レイ、ホーリー・プリズン、ホーリー・ウォール、エリクサー・ヒール、人間に変化
性格:非常に楽観的、天然
状態:運命の人との出会いを待つ
----------------
正直言って、こんなにすごいステータスの持ち主とまでは想像してなかった。
しかも進化レベルが『究極』って……。
もしソフィを仲間にスカウトすることができたなら、【ステータス同化】のスキルによって、俺のHP、MP、魔力が大幅に強化されることになる。
この頃は仲間のモンスターが一気に増えたから、使役するのにMPの配分が難しいと感じていたところだった。現に半日はボケっとしたままのモンスターも少なくなかったからな。
MPが15万もあれば、まさに無敵。
無敵の聖女と彼女が言ってたのもあながち間違ってなかった、ってことか。
「私、嬉しいですわ!! この日が来るのをずっと待ちわびておりましたの!!」
目を輝かせながら喜びをあらわにするソフィ。
仲間になれば大切にするのは当然だし、仲間にするためには『主従契約』を結ばないといけないから『契約してくれないか』と問いかけたのも、別に間違っちゃいない。
けど……。罪悪感がハンパないのはなぜだろう……。
「あのぉ……。一応言っておくが、俺の言う『契約』はあんたの考えてる『結婚』とは意味がまったく違うんだが、それでもいいか?」
ソフィはニコリと微笑んだ。
「大丈夫ですわ。私は言葉にはとらわれませんし、そもそも『結婚』というものが何なのか分かりませんもの」
「でもさっき『結婚式をしよう』って……」
「ふふ。運命の人と結ばれる儀式のことでしょう? それくらいは知ってますわ。でもあなたの言う『契約』なるものが、結婚式の代わりになるなら、それでもいいのです」
「そういうものなのか?」
「ええ。だって、私を大切にしてくれる人間と再び出会えた――それだけでもじゅうぶんに幸せなのですから!」
「ん? 再び、って言ったか? ということは以前にも俺のような人間がいたってことか?」
「ええ、もちろん! マリウス様ですわ!」
「マリウス……って、魔王アルゼオンを封印した、英雄マリウスのことか!?」
「ふふ。その通りですわ。マリウス様と最後にお会いした時に、こう言い残してくださったの。『多くのモンスターを従えて君に会いにきた人間が運命の人だよ。その人と結ばれるんだ』と」
あの英雄マリウスが、俺がここに現れることを予言していた――。
いや、正確には『自分と同じ能力を持った人間の出現』を予知していたということ。
どういうことだ……?
そもそもなぜ彼はこんなところにソフィを置いていったのだろう?
「さあ、愛の契約をいたしましょう!」
色々と疑問はつきないが、ここでのんびりしている場合じゃない。
ソフィを仲間にした後、拠点に帰ってから考えることにしよう。
「よし、じゃあ確認するけど、俺の仲間になってくれないか?」
「はい! ピート様!」
こうして聖女ソフィが仲間に加わった。
0
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
『捨てられシスターと傷ついた獣の修繕日誌』~「修理が遅い」と追放されたけど、DIY知識チートで壊れた家も心も直して、幸せな家庭を築きます
エリモコピコット
ファンタジー
【12/6 日間ランキング17位!】
「魔法で直せば一瞬だ。お前の手作業は時間の無駄なんだよ」
そう言われて勇者パーティを追放されたシスター、エリス。
彼女の魔法は弱く、派手な活躍はできない。 けれど彼女には、物の声を聞く『構造把握』の力と、前世から受け継いだ『DIY(日曜大工)』の知識があった。
傷心のまま辺境の村「ココン」に流れ着いた彼女は、一軒のボロ家と出会う。 隙間風だらけの壁、腐りかけた床。けれど、エリスは目を輝かせた。
「直せる。ここを、世界で一番温かい『帰る場所』にしよう!」
釘を使わない頑丈な家具、水汲み不要の自動ポンプ、冬でもポカポカの床暖房。
魔法文明が見落としていた「手間暇かけた技術」は、不便な辺境生活を快適な楽園へと変えていく。
やがてその温かい家には、 傷ついた銀髪の狼少女や、 素直になれないツンデレ黒猫、 人見知りな犬耳の鍛冶師が集まってきて――。
「エリス姉、あったか~い……」「……悔しいけど、この家から出られないわね」
これは、不器用なシスターが、壊れた家と、傷ついた心を修繕していく物語。 優しくて温かい、手作りのスローライフ・ファンタジー!
(※一方その頃、メンテナンス係を失った勇者パーティの装備はボロボロになり、冷たい野営で後悔の日々を送るのですが……それはまた別のお話)
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる