英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第80話 絶体絶命再び

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「ルナ……。どうしてここに?」

「それをお話ししている場合ではないでしょ。カーリー。準備はいいかしら?」

 いつも通り澄まし顔のルナが柔らかな口調で問いかける。

「……もちろん」

 カーリーが力強く答えると、ルナは微笑みを浮かべた。
 
「結構。なら私は右。あなたは左をお願い」

「……すぐに片付けてルナを助ける」

「ふふ。それはこっちのセリフよ」

 そう言い残すなり二人はミノタウロスに向かって駆け出す。

 残された私の周囲がぽかりと空いた。
 私が埋めるべき空間はどっちだろう?

 右のルナか。
 それとも左のカーリーか。

 ううん……。違う。

 もう迷わない。
 みんなが作ってくれた道を進むだけだもの。

 ――タンッ!

 軽い足音ともに前に進む。
 まぶしい光のせいで目を開けることすら厳しくなってきた。

 でも立ち止まるものか!

 ピートさん!
 私は……私は……。

 絶対にあなたを助けてみせます――!!


◇◇

 どれくらい戦っただろうか。
 いや、どれくらい逃げ回っていたのか、って方が正しいか。

「はぁはぁ」

 さすがに息が切れてきた。
 ニックのやつ……。本気で斬ったり殴ったりしてくるものだから、HPもかなり減っている。
 それだけじゃない。
 仲間たちが数か月かけて作った外壁が見る影もないくらいにボロボロだ。
 
 これ以上は好き勝手させたくないが、こっちの攻撃が通じないんじゃどうしようもない。
 
「どうしたんだい? もう終わりかい?」

 あれだけ派手に暴れておきながら、ケロッとした顔してやがる。
 ステータスにはないが基礎体力もかなり向上してるんだろうな。

「まだまだこれからだよ……」

 草原のど真ん中で膝に手をつきながら息を整える。

「あはは! 僕と君の仲じゃないか。そう、強がらなくてもいい」
「強がりを言うタイプじゃないのは、俺とおまえの仲なら分かってるはずだが?」

 実際のところ、結構ヤバイ。
 俺自身の体力、というのもあるが、もっと悪いのはガルーを閉じ込めたホーリー・プリズンだ。
 目の前に立つニックの奥に目をやると、その格子の光が薄くなっているのが見えた。

 もうすぐソフィのMPが底をつきるって証だな。
 さすがにガルーとニックの2人を相手に追いかけっこは不可能だ。

「でも僕の方はそろそろ飽きちゃったよ。だから――」

 今度はニックがちらりと俺の背後に目をやる。
 その視線の先にあるのは作戦本部の塔。

 ヤツの狙いはソフィか……!

「やめろ!!」

 叫んだ俺はニックに向かって飛び込む。
 狙いは剣が握られている彼の右手だ。
 
 ――バシィッ!

 思いっきりはたいたがびくともしない。
 ひとりでに顔が歪む。
 ニックはニタリと口角を上げ、ホーリー・スラッシュを塔目がけて放った。

 ――ドォォォォン!

 轟音とともに塔が崩れ落ちる。

「ソフィ!!」

 究極進化したモンスターとはいえ、がれきの下敷きになったらただじゃすまないだろう。
 急いで駆けつけると、「あたた……」とおでこをさすりながら塔の脇の草むらからソフィが姿をあらわした。
 どうやらニックの一撃が塔を直撃する前に脱出したようだ。
 ひとまずほっと肩をなでおろす。

「大丈夫か?」
「ええ、なんとか。でも……」

 そこで言葉を切ったソフィは視線を遠くへやる。
 振り返ってみると、ホーリー・プリズンの光が消えていた。

 ガルーが外に出てくるか……。
 もはや絶体絶命だな。

「申し訳ございません、ピート様」
「ソフィが謝る必要はない。むしろこれまでよく頑張ってくれたな。今はゆっくり休んでいてくれ」
「ピート様……。私、最後まで戦います!」

 MPが底をつきかけているソフィ。強烈な疲労感に襲われているはずなのに気丈に振舞っているあたり、かなりの根性があるのは認めるよ。
 でもニックとガルーは根性だけでどうにかなる相手じゃない。

「まずは回復だ。戦えるだけのMPを回復させたら、また呼び戻すから」
「はい、分かりました……」

 しゅんとうつむいたソフィをモンスターボックスに素早く収納する。
 彼女には申し訳ないが、今は一刻を争う。

 もう間もなくニックたちは俺の元までやって来るだろう。
 ここを抜けられたらすぐに第54層だ。
 仲間たちが大勢いるうえに、『鎖の封印』もある。

「絶対に通すものか」

 気持ちが口をついて出てきた。
 ……が、これと言って策はない。
 残された希望はたった一つ。

 サンたちが究極進化を遂げること。

「あははは!! ついに追い詰めたよ!! 君の負けだ!!」

 ニックの高笑いが耳をつんざく。
 勝利を確信したかのように、ゆっくりと近づいてくるその姿が視界に入ってきた。
 
 頼む、サン!

 祈るように目をつむったその時――。
 
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