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告白
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祥吾が家に帰ってきたのはそれからきっちり一週間後だった。彼は結局謝ることはなかった。それを出来たのは、有川が記者会見をしたから。
有川たち若い女性の担当者は、自ら望んで体を捧げたこと。有川は特に妊娠をしていた。それは自分が望んで妊娠し、彼に迷惑をかけないという条件での行為だった。
だがそれでも祥吾はそれに乗ってしまったと、批判をする声はあったが結局彼の保身は守られたのだ。
だが真実はわからない。有川が心底祥吾のことを想い、虚偽の発言をしている可能性だってあるのだから。真実など春川にもわからないのだ。
その記者会見をテレビで見ていた嵐は、鼻で笑っていた。あいつらしいと。昔から女性を踏み台にして小説を書いていたヤツだ。結局祥吾は、牧原絹恵と何も変わらない。彼女だって男を踏み台にして今の地位を獲得していったのだから。
「父さん。」
彼の控え室に、東がやってきた。
「東子。どうした。」
「今日はありがとう。」
「どうしたんだ。明日雪か?」
そう言って嵐は笑った。しかし彼女は首を横に振る。
「あたしの企画通してくれたの父さんだって言ってたから。」
「桂か?くそ。あいつもいらないことをしゃべるヤツだな。」
そう言って彼はテレビを消す。
「桂もあんまり出れなくなってきたな。」
「この間映画の製作会社の人と話をしたの。」
東はそう言って彼の隣に座った。彼女は髪が伸びて、女性らしくなったと思う。おそらく男が出来たのだ。理解のある男で良かった。女性がこういう仕事をしていると、どうしても股が緩いと思われがちだったから。
「桂さん、今度また映画の出演を決めたって。映画の現場で桂さんを見て決めた監督さんが、声をかけたっていってたわ。」
「本格的にAV辞めちまうのかなぁ。あーあ。あいつほど駅弁長くできるヤツいねぇんだけどな。」
「でもAVなんて、一生出来る人いないわ。男の人なら尚更でしょ?」
「まぁな。あいつも気にしてたよ。イくまで時間かかるからな。そう言った意味では早漏の方が向いてんだけど。」
「でもやりたいって人多いんじゃない?」
「からかい半分ってヤツが多いかなぁ。思ったよりも甘い世界じゃねぇし。そういや、桂が言ってたか。」
「何を?」
「おばさんだろうとブスだろうとバカだろうと、立たせてよがらせるのが仕事なんだから、それが出来ねぇなら辞めちまえってな。」
「後輩か何かに言ってたの?」
「だったかな。」
「桂さんらしいわね。プライド高くて。」
東はそう言って机に置いてあるプロットを見た。そして女性の写真に目を通す。
「ストーリーセックスって、今時じゃないわよね。あまり売れないかも。」
「メーカーがバカなこと言ってんじゃねぇよ。おかしいところがあったら……あぁ。そういや、あいつに声かければ良かった。」
「あいつ?」
「秋野。」
「秋野?」
「あぁ、今はな。お前も知ってるヤツだよ。前は、春川って言ってたな。」
「あぁ。あの生意気なライター?」
「今からでも来れねぇかな。あいつもフリーだから動けそうだけど。」
そう言って嵐は携帯電話に手を伸ばす。するとドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
東が声をかけると、ドアが開いた。そこには春川の姿がある。
「嵐さん。ちょっと相談があるんですけど。」
「おータイミングばっちり。俺も相談があるんだよ。お前に。」
「何ですか?」
桂の現場に春川がやってくるのは久しぶりだった。今日は未亡人と義理の弟の設定で、ストーリーのしっかりした女性でも見れるAVを作るのだという。
「女性向けではないのですか?」
「女向けだったら、こんなにヨリはつくんねぇよ。でも割とストーリーがしっかりしてたら、女も見ることはあるんだと。」
「へぇ。そんなものなんですね。」
「お前、最初何を見たんだ?」
「何だったかな。ストーリーものではなかったと思います。確か……女性一人が姦されるヤツ。」
「えっ?それってレイプものってヤツじゃ……。」
驚いて東は彼女を見る。しかし彼女は笑いながら言った。
「ぜんぜん参考にならなかったんですよ。最後の方浣腸プレイとか、溜めてた精子飲ませたりさ。だから次はなるべくノーマルなのって思いながら、レンタル屋さんに行きましたから。」
「マジでか。あんた、どれだけ……。」
根性が座っているとかそう言う意味じゃない。おそらく羞恥心よりも好奇心が勝つのだろう。
「まぁいいや。で、あんたの頼みって何だよ。」
「あー。今日アレ、自慰するんでしょ?」
「あぁ。そうだよ。女のオナニーから始めるんだけど。」
「見せて。」
「何で?」
「風俗行ったらヤクザに声かけられて、今度来たら働いてもらうって脅されたんですよ。ケチくさくない?オナニー見せて欲しいっていっただけなのに。」
そう言って彼女は頬を膨らます。すると東は笑い、彼女を見た。
「そんなに見たいんですか?」
「そうですね。今度道具のレビューかいて欲しいって言われてるし。」
「自分で使えばいいのに。」
「やーだ。そこまで寂しくないから。」
手のひらをひらひらと振る。その行動がおばさんのようで、東は少し笑った。
「でも道具を使って反応を見るのって、多分ノーマルなものじゃなくて、レズものの方が需要あるかもしれないですよ。」
「あー。なるほど。また日を改めてこようかな。そうだ。アリスさんのものだったら……。」
「秋野。」
嵐は立ち上がると、彼女の肩に手を回す。
「何ですか?」
「今日は居ろよ。」
「何で?」
「ストーリーセックスなんだよ。今日。お前の意見聞きたいから。」
「ストーリーセックス?どんなシチュエーションなんですか?」
「未亡人もの。」
「……面白そうですね。」
「だろ?お前好きそうだなって思ったんだよ。」
だが未亡人と聞いて、少し複雑な気分になった。この間、嵐の現場を見に行ったとき、未亡人の役をしていたのは彼女の姉である夏だったから。
「東。悪いけど、日菜の様子を見に行ってくれないか。あいつムラっ気があるから。」
肩から手を離して、東にそれを頼む。
「気分によっては撮影の時間が下がりそうよね。わかった。ちょっと行ってくる。」
東はそれだけ言うと、部屋を出ていく。すると嵐は春川にソファに座るよう促した。その隣に嵐も座る。
「さてと……。本題にいこうか。」
「……やっぱりなんか狙ってたんですね。」
「あぁ。あんた、好き好んで桂の現場に来るわけねぇもんな。デキてんなら尚更だろ?」
「嵐さん。」
すると嵐は軽くため息をついて、普段吸わない煙草に手を伸ばす。
有川たち若い女性の担当者は、自ら望んで体を捧げたこと。有川は特に妊娠をしていた。それは自分が望んで妊娠し、彼に迷惑をかけないという条件での行為だった。
だがそれでも祥吾はそれに乗ってしまったと、批判をする声はあったが結局彼の保身は守られたのだ。
だが真実はわからない。有川が心底祥吾のことを想い、虚偽の発言をしている可能性だってあるのだから。真実など春川にもわからないのだ。
その記者会見をテレビで見ていた嵐は、鼻で笑っていた。あいつらしいと。昔から女性を踏み台にして小説を書いていたヤツだ。結局祥吾は、牧原絹恵と何も変わらない。彼女だって男を踏み台にして今の地位を獲得していったのだから。
「父さん。」
彼の控え室に、東がやってきた。
「東子。どうした。」
「今日はありがとう。」
「どうしたんだ。明日雪か?」
そう言って嵐は笑った。しかし彼女は首を横に振る。
「あたしの企画通してくれたの父さんだって言ってたから。」
「桂か?くそ。あいつもいらないことをしゃべるヤツだな。」
そう言って彼はテレビを消す。
「桂もあんまり出れなくなってきたな。」
「この間映画の製作会社の人と話をしたの。」
東はそう言って彼の隣に座った。彼女は髪が伸びて、女性らしくなったと思う。おそらく男が出来たのだ。理解のある男で良かった。女性がこういう仕事をしていると、どうしても股が緩いと思われがちだったから。
「桂さん、今度また映画の出演を決めたって。映画の現場で桂さんを見て決めた監督さんが、声をかけたっていってたわ。」
「本格的にAV辞めちまうのかなぁ。あーあ。あいつほど駅弁長くできるヤツいねぇんだけどな。」
「でもAVなんて、一生出来る人いないわ。男の人なら尚更でしょ?」
「まぁな。あいつも気にしてたよ。イくまで時間かかるからな。そう言った意味では早漏の方が向いてんだけど。」
「でもやりたいって人多いんじゃない?」
「からかい半分ってヤツが多いかなぁ。思ったよりも甘い世界じゃねぇし。そういや、桂が言ってたか。」
「何を?」
「おばさんだろうとブスだろうとバカだろうと、立たせてよがらせるのが仕事なんだから、それが出来ねぇなら辞めちまえってな。」
「後輩か何かに言ってたの?」
「だったかな。」
「桂さんらしいわね。プライド高くて。」
東はそう言って机に置いてあるプロットを見た。そして女性の写真に目を通す。
「ストーリーセックスって、今時じゃないわよね。あまり売れないかも。」
「メーカーがバカなこと言ってんじゃねぇよ。おかしいところがあったら……あぁ。そういや、あいつに声かければ良かった。」
「あいつ?」
「秋野。」
「秋野?」
「あぁ、今はな。お前も知ってるヤツだよ。前は、春川って言ってたな。」
「あぁ。あの生意気なライター?」
「今からでも来れねぇかな。あいつもフリーだから動けそうだけど。」
そう言って嵐は携帯電話に手を伸ばす。するとドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
東が声をかけると、ドアが開いた。そこには春川の姿がある。
「嵐さん。ちょっと相談があるんですけど。」
「おータイミングばっちり。俺も相談があるんだよ。お前に。」
「何ですか?」
桂の現場に春川がやってくるのは久しぶりだった。今日は未亡人と義理の弟の設定で、ストーリーのしっかりした女性でも見れるAVを作るのだという。
「女性向けではないのですか?」
「女向けだったら、こんなにヨリはつくんねぇよ。でも割とストーリーがしっかりしてたら、女も見ることはあるんだと。」
「へぇ。そんなものなんですね。」
「お前、最初何を見たんだ?」
「何だったかな。ストーリーものではなかったと思います。確か……女性一人が姦されるヤツ。」
「えっ?それってレイプものってヤツじゃ……。」
驚いて東は彼女を見る。しかし彼女は笑いながら言った。
「ぜんぜん参考にならなかったんですよ。最後の方浣腸プレイとか、溜めてた精子飲ませたりさ。だから次はなるべくノーマルなのって思いながら、レンタル屋さんに行きましたから。」
「マジでか。あんた、どれだけ……。」
根性が座っているとかそう言う意味じゃない。おそらく羞恥心よりも好奇心が勝つのだろう。
「まぁいいや。で、あんたの頼みって何だよ。」
「あー。今日アレ、自慰するんでしょ?」
「あぁ。そうだよ。女のオナニーから始めるんだけど。」
「見せて。」
「何で?」
「風俗行ったらヤクザに声かけられて、今度来たら働いてもらうって脅されたんですよ。ケチくさくない?オナニー見せて欲しいっていっただけなのに。」
そう言って彼女は頬を膨らます。すると東は笑い、彼女を見た。
「そんなに見たいんですか?」
「そうですね。今度道具のレビューかいて欲しいって言われてるし。」
「自分で使えばいいのに。」
「やーだ。そこまで寂しくないから。」
手のひらをひらひらと振る。その行動がおばさんのようで、東は少し笑った。
「でも道具を使って反応を見るのって、多分ノーマルなものじゃなくて、レズものの方が需要あるかもしれないですよ。」
「あー。なるほど。また日を改めてこようかな。そうだ。アリスさんのものだったら……。」
「秋野。」
嵐は立ち上がると、彼女の肩に手を回す。
「何ですか?」
「今日は居ろよ。」
「何で?」
「ストーリーセックスなんだよ。今日。お前の意見聞きたいから。」
「ストーリーセックス?どんなシチュエーションなんですか?」
「未亡人もの。」
「……面白そうですね。」
「だろ?お前好きそうだなって思ったんだよ。」
だが未亡人と聞いて、少し複雑な気分になった。この間、嵐の現場を見に行ったとき、未亡人の役をしていたのは彼女の姉である夏だったから。
「東。悪いけど、日菜の様子を見に行ってくれないか。あいつムラっ気があるから。」
肩から手を離して、東にそれを頼む。
「気分によっては撮影の時間が下がりそうよね。わかった。ちょっと行ってくる。」
東はそれだけ言うと、部屋を出ていく。すると嵐は春川にソファに座るよう促した。その隣に嵐も座る。
「さてと……。本題にいこうか。」
「……やっぱりなんか狙ってたんですね。」
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