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二年目
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数日しても、藤堂先生の噂は絶えなかった。怒鳴るのはうちのクラスに限ったことではなかったからのようで、よく言えば厳しい。悪く言えば、パワハラだと言われていた。
でもまぁいい傾向じゃないかな。あまり厳しい先生が居なかったから、冷水を被ったように英語の授業はぴりっとなるから。
だけど変な噂は立つものだ。
「桜ぁ。英語の訳やってる?」
「うん。どうしたの?」
「出席番号で言うと、あたし当たりそうなんだよねー。見せてー。」
向日葵はそう言って私のノートを見て、自分のノートに書き写していた。
「そう言えばさ、藤堂先生ってさ元ヤクザって知ってる?」
「ヤクザが教師になれるわけないよ。噂でしょ?」
「でもいろいろ言われてるよ。入れ墨あるとかさ、ヤクザと繋がりがあるとかさ。」
急に黙ってしまう。入れ墨は柊さんにもあるし、ヤクザと繋がりがあったのは過去だけど、あるだけでそんな噂が立つんだ。
「あ、ごめん。」
向日葵はペンを止めて謝った。そっか。向日葵は柊さんのことを知っているから謝ったんだ。
「ううん。大丈夫。柊さんにとってはどれも事実だから。」
「ヤクザは過去でしょ?」
「そうね。」
「でもそう言うのと繋がりがあるのかなぁ。藤堂先生も。」
偶然同じ名前の人が居るわけ無い。たぶん外見は似ていないけれど、きっとあの人は茅さんのお兄さんなんだ。血の繋がりはないけれど。
血の繋がりだけで言えば、百合さんの弟ってことか。
「……どうしたの?黙っちゃって。」
「うーん。入れ墨あるだけでその人を判断するんだなぁって思って。」
「まぁね。確かに今はファッション感覚でいれる人も多いけど、一応教師だもんね。入れ墨とかは厳しいんじゃないのかな。」
外を見る。空は高く、秋の訪れを予感させていた。
「向日葵は彼氏とうまくやってる?」
「喧嘩しながらね。あたしやっぱちょっとブラコンあったのな。何言っても許してくれるし、何よりさぁ、高校生とは違うからさ。」
「そりゃそうでしょ。高校生じゃないもの。」
「じゃなくってさ、ほら、あれがさ。」
「あぁ。」
やっと意味がわかった。女の子もセックスの話題って好きだよな。
「テクが違うから。」
「ふーん。そんなモノなのかな。」
「桜はさ、一人しかないからわかんないじゃない?」
「一人で十分よ。」
「もったいなーい。」
まぁ。正確には一人ではないんだけど。
そのとき予鈴がなり、向日葵は急いでノートを写しだした。
放課後、私は担任に呼び出されて職員室にいた。ヒジカタコーヒーのことについて話があるらしい。
「じゃあ、ヒジカタコーヒーの願書は出さないということでいいかな。」
「はい。」
若いその担任は、頭をかきながらヒジカタコーヒーの求人票を眺めていた。
「確かに離職率は高いが、君なら続くと思っていたのだけどね。」
「……すいません。ちょっと勉強したいことがあって。」
本当に勉強したいなら、学校を中退してでもいきたいと思うんだけどね。さすがにそれは瑠璃さんも反対したし。
「働きながら勉強するってことか。」
「はい。」
「身内?」
「……身内ではないのですが、お世話になった方にコーヒーのことを学ばせてもらえるということなので。」
「バリスタの専門学校とかあるけど、そっちではいけないのか。」
「バリスタライセンスをとりたいのだったら、そっちへ行きますけどそういうことじゃないので。」
「……。」
「何か問題でも?」
「いいや。ヒジカタコーヒーさんは、君に是非来て欲しいというオファーがあったのでね。」
「……。」
「君の口から断りをいれることはできるかな。」
「はい。」
「学校に今度の金曜日の十時に来てくれるらしい。」
「わかりました。」
茅さんのいうとおり、もしかしたら瑠璃さんのところで焙煎を学んだ後、そのカフェに行くのが一番いいのかもしれない。だけど、いつまでかかるかわからないことにつき合わせるわけにもいかないし、それに……きっと柊さんはこの街にきっと戻りたくないと思っているだろうから。
職員室を出ると、私はバイトへいこうと靴箱の方へ向かっていった。そのとき、後ろから声をかけられる。振り返るとそこには藤堂先生が居た。
「桜さん。」
「……。」
フランクな学校だから名前で呼ばれるのは慣れているけど、この人に名前を呼ばれると何となく違和感があるなぁ。
「どうしました。」
「ヒジカタコーヒーの話を聞きました。そこは……。」
「弟さんがいらっしゃいますよね。藤堂茅さん。」
「やっぱり知ってましたか。」
髪が長くないだけ。柊さんに似てる。その仕草も、声も。とても似ている。だけど粗野じゃない。スマートな人だ。だけど雰囲気は怖い。ヤクザに見えるというのもうなずける。
「えぇ。うちのお客様ですし……。」
「お客様?」
「えぇ。バイト先の。」
「バイト先は、どちらになりますか。」
「南町の「窓」という店です。今度いらしてくださいね。」
私はそういってその場を離れた。あまり関わらない方がいい。そう思ったから。
彼は……茅さんのお兄さん。そして百合さんの血の繋がった弟。きっと茅さんとは比較にならないほど、柊さんを恨んでいるんだろうから。
でもまぁいい傾向じゃないかな。あまり厳しい先生が居なかったから、冷水を被ったように英語の授業はぴりっとなるから。
だけど変な噂は立つものだ。
「桜ぁ。英語の訳やってる?」
「うん。どうしたの?」
「出席番号で言うと、あたし当たりそうなんだよねー。見せてー。」
向日葵はそう言って私のノートを見て、自分のノートに書き写していた。
「そう言えばさ、藤堂先生ってさ元ヤクザって知ってる?」
「ヤクザが教師になれるわけないよ。噂でしょ?」
「でもいろいろ言われてるよ。入れ墨あるとかさ、ヤクザと繋がりがあるとかさ。」
急に黙ってしまう。入れ墨は柊さんにもあるし、ヤクザと繋がりがあったのは過去だけど、あるだけでそんな噂が立つんだ。
「あ、ごめん。」
向日葵はペンを止めて謝った。そっか。向日葵は柊さんのことを知っているから謝ったんだ。
「ううん。大丈夫。柊さんにとってはどれも事実だから。」
「ヤクザは過去でしょ?」
「そうね。」
「でもそう言うのと繋がりがあるのかなぁ。藤堂先生も。」
偶然同じ名前の人が居るわけ無い。たぶん外見は似ていないけれど、きっとあの人は茅さんのお兄さんなんだ。血の繋がりはないけれど。
血の繋がりだけで言えば、百合さんの弟ってことか。
「……どうしたの?黙っちゃって。」
「うーん。入れ墨あるだけでその人を判断するんだなぁって思って。」
「まぁね。確かに今はファッション感覚でいれる人も多いけど、一応教師だもんね。入れ墨とかは厳しいんじゃないのかな。」
外を見る。空は高く、秋の訪れを予感させていた。
「向日葵は彼氏とうまくやってる?」
「喧嘩しながらね。あたしやっぱちょっとブラコンあったのな。何言っても許してくれるし、何よりさぁ、高校生とは違うからさ。」
「そりゃそうでしょ。高校生じゃないもの。」
「じゃなくってさ、ほら、あれがさ。」
「あぁ。」
やっと意味がわかった。女の子もセックスの話題って好きだよな。
「テクが違うから。」
「ふーん。そんなモノなのかな。」
「桜はさ、一人しかないからわかんないじゃない?」
「一人で十分よ。」
「もったいなーい。」
まぁ。正確には一人ではないんだけど。
そのとき予鈴がなり、向日葵は急いでノートを写しだした。
放課後、私は担任に呼び出されて職員室にいた。ヒジカタコーヒーのことについて話があるらしい。
「じゃあ、ヒジカタコーヒーの願書は出さないということでいいかな。」
「はい。」
若いその担任は、頭をかきながらヒジカタコーヒーの求人票を眺めていた。
「確かに離職率は高いが、君なら続くと思っていたのだけどね。」
「……すいません。ちょっと勉強したいことがあって。」
本当に勉強したいなら、学校を中退してでもいきたいと思うんだけどね。さすがにそれは瑠璃さんも反対したし。
「働きながら勉強するってことか。」
「はい。」
「身内?」
「……身内ではないのですが、お世話になった方にコーヒーのことを学ばせてもらえるということなので。」
「バリスタの専門学校とかあるけど、そっちではいけないのか。」
「バリスタライセンスをとりたいのだったら、そっちへ行きますけどそういうことじゃないので。」
「……。」
「何か問題でも?」
「いいや。ヒジカタコーヒーさんは、君に是非来て欲しいというオファーがあったのでね。」
「……。」
「君の口から断りをいれることはできるかな。」
「はい。」
「学校に今度の金曜日の十時に来てくれるらしい。」
「わかりました。」
茅さんのいうとおり、もしかしたら瑠璃さんのところで焙煎を学んだ後、そのカフェに行くのが一番いいのかもしれない。だけど、いつまでかかるかわからないことにつき合わせるわけにもいかないし、それに……きっと柊さんはこの街にきっと戻りたくないと思っているだろうから。
職員室を出ると、私はバイトへいこうと靴箱の方へ向かっていった。そのとき、後ろから声をかけられる。振り返るとそこには藤堂先生が居た。
「桜さん。」
「……。」
フランクな学校だから名前で呼ばれるのは慣れているけど、この人に名前を呼ばれると何となく違和感があるなぁ。
「どうしました。」
「ヒジカタコーヒーの話を聞きました。そこは……。」
「弟さんがいらっしゃいますよね。藤堂茅さん。」
「やっぱり知ってましたか。」
髪が長くないだけ。柊さんに似てる。その仕草も、声も。とても似ている。だけど粗野じゃない。スマートな人だ。だけど雰囲気は怖い。ヤクザに見えるというのもうなずける。
「えぇ。うちのお客様ですし……。」
「お客様?」
「えぇ。バイト先の。」
「バイト先は、どちらになりますか。」
「南町の「窓」という店です。今度いらしてくださいね。」
私はそういってその場を離れた。あまり関わらない方がいい。そう思ったから。
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