王道くんと、俺。

葉津緒

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第六章

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「あの、ええとですね。そういえば今日ここへ来る前に、親衛隊の皆からすごく応援? というか激励? されてしまいました。
『副隊長、頑張ってください』
『あんな転入生なんかに負けないで!』
『郁人様の胃袋、しっかりつかんできてくださいね』
……みたいな感じの内容だったかなと」


「ああ、なるほど。転入生か」

「胃袋つかめるのはポイント大きいもんなぁ」

「確かに山内先輩の料理は旨い」


うんうん、とうなずく三人。慎平先輩がポッと赤くなる。
とその時だった。
突然バスルームから大きな音が聞こえて――


「郁人!」


瞬時に誰よりも早く、優馬は駆け出していた。



<NO SIDE・終わり>






「……うわぁ、これはひどい。俺の首辺りとかちょっと変な病気みたい」


鏡に映る自分の姿にぎょっとして息をのむ。
晴巳せんせぇに手当てしてもらった際のガーゼを剥がせば、いくつも散らばる皮下出血の跡キスマーク
それに噛み傷まで。まるで(甘)噛み癖のある犬か猫にでもやられたみたい。
こんなの、思わずため息も出ちゃうよね。

他にも叩かれたせいで少し赤く腫れた頬や、強くつかまれた跡が残る手首。中庭で押し倒されたときに負った擦り傷……は、やっぱり背中側に多い。
あの二人よくあんな場所でヤる気になれるなぁ。痛くないのかな。単に俺が抵抗して暴れたから怪我しちゃっただけ?


「あー、こんなトコまで」


胸の小さな傷に気づいてそっと指先で触れる。
たったそれだけなのに、ゾワリと鳥肌が立つ。
あの二人に襲われて無理やりされた行為が、触られた身体が――の記憶を重ねてしまう――ひどく嫌で。
気がつけば赤くヒリヒリと痛むほど、ゴシゴシこするように洗ってた。


「あ、そうか。あとで優ちゃんに薬塗ってもらうんだっけ。だからこれ以上は我慢しないと。バレたらまた心配させちゃうから……っと、あれ」


手が滑って、シャワーヘッドやらボトルやら色んなものを浴室の床に落としちゃった。どうしよう、床に傷とかついてないかな。
ああ、今日は本当に色々あったし実はかなり疲れてるのかも。うまく頭が回らないや。
ん?
誰かが走ってくるような足音が――


「大丈夫か郁人!? 今の音はなん、だ」


バンッと浴室の扉が開き、血相を変えて突入してきたのは優ちゃんでした。


「ゆ、優ちゃんごめんねぇ。ちょっと手が滑っただけなんだけど……?」


目を見開き、俺を凝視したままカチンと固まる優ちゃん。え、何どうしたのまばたきしようよ怖いから。
ねえ動いてー、開きっぱの扉から冷気も入り込んでちょっと寒いし。


「くしゅんっ」

「わ、悪い! 問題ないならいいんだ。け、怪我とかしてないか?」


俺のくしゃみの音に反応したのか、ようやく再起動する優ちゃん。


「大丈夫、してないよー」

「そ、そうか。なら、しっかり温まってから、で、出てこいよッ」


早口でそう言い残すと慌てて出ていきました。変なの。でも多分また心配してくれたんだよね。
ふふっ、本当にもぉ優ちゃんてば。

.
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